2014.07.13 Sunday

「小太郎の左腕」 和田 竜

戦国時代、神の手を持つ鉄砲の名手を巡る戦いを描いた和田竜さんの「小太郎の左腕」。なんというか、悲しい物語です。

小太郎の左腕



敵対する児玉家との戦で傷ついた戸沢家の猛将・林半右衛門。半右衛門と家臣三十郎は、風変わりな猟師(地鉄砲)の爺と少年・小太郎に助けられる。半右衛門は命を助けてくれた褒美を問うと、小太郎は城下で行われる鉄砲の大会に出たいという。

半右衛門は望み通り、鉄砲大会に出場させるも、最初は的にあてることも出来ない小太郎だったが、半右衛門は小太郎の特徴に気付き、特別仕様の鉄砲を与えると、神の如き射撃の腕を発揮することになり…


戦国時代の悲劇


一見、凡庸に見える主人公が、実は、秘めたる才能をもっているというのは、「のぼうの城」でもみられた設定ですね。小太郎は、あの戦国時代の鉄砲専門集団、雑賀衆の生き残りで、神の如きと表される鉄砲の腕をもっていますが、それは平時では発揮されることのない才能です。

しかし、「のぼうの城」が戦国時代の痛快さを描いたとしたら、「小太郎の左腕」は戦国時代の悲劇を描いているのではないでしょうか。

時代の名も無き人々を描いた歴史ドラマ「タイムスクープハンター」でも、民が戦に駆り出されたり、巻き込まれていく様子が描かれています。そこには痛快さもかっこよさもなく、ただただ苦痛が与えられるだけでした。

ただ、人並みになりたいと願い、鉄砲をとった小太郎。兵を救うため、小太郎に銃を取らせるために、最も嫌う卑怯なまねに手を染める半右衛門。

このふたりが出会い、小太郎が銃をとったことで、運命が大きく変わっていきます。

たとえ戦国時代の価値観が、現代とは違ったものだとしても、戦いに巻き込まれる人の悲しみは変わらないのでしょう。

ただ、それでもやはり、小太郎の左腕による鉄砲技の場面は素晴らしいのですけれど。


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和田竜作品感想


のぼうの城
戦国時代余談のよだん
村上海賊の娘 上巻
村上海賊の娘 下巻

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Comment
日月さん☆おはようございます
小太郎の才能は、この時代にあっては特異なもの、それを見出されてしまったのも運命なのでしょうね。
とはいえ、お爺さんが亡くなった後に何の才能もない小太郎が1人残されてしまったら、それはそれで悲しい人生です。
厳しいけれど、あの結末で良かったとわたしは思っています。
  • Roko
  • 2014/07/15 09:52
Rokoさんへ
小太郎も、のぼうさまも、戦がなければ凡庸でいられたのですが、才能の持ち主というのは、運命がひきよせられてしまうのかもしれません。

私も、あの結末は好きです。小太郎であったからこそ、あの結末になったし、敵も味方もたすけれくれたんじゃないかと思うのです。
  • 日月
  • 2014/07/15 22:39





   
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小太郎の左腕posted with amazlet at 14.07.09 和田
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