2014.12.09 Tuesday

探偵役・折口信夫が古代の暗号を解く 「猿丸幻視行」 井沢 元彦

演劇集団キャラメルボックスの演出家にして読書家の、成井豊さんおススメの一冊、「新装版 猿丸幻視行」を読みました。

柿本人麻呂と猿丸大夫同一説を軸に、旧家に伝わる暗号を折口信夫が解いていくミステリーなのですが、この物語のもうひとつの特色として、過去の人物の意識下へのタイムスリップがあります。

パラドックスを生じないタイムトラベル


主人公香坂明は、民俗学を先行する大学院生。ある日、製薬会社の実験台として、意識だけを過去の人物とシンクロすることができる「意識だけ過去へ飛べるタイムトラベル」を依頼される。最初は渋っていた香坂だが、シンクロする人物が民俗学の巨匠折口信夫だと聞き、自分の家に伝わる暗号にまつわる事実を確かめるべく、タイムトラベルを承諾する。

この場合のタイムトラベルは、いわゆる普通のタイムトラベルとは異なり、様々な制限が生じますが、その分、タイムパラドックスを引き起こすことはないので、安全な時間旅行といえるかもしれません。

・行けるのは過去のみ
・シンクロできる人物に制限がある
・シンクロした相手の意識を乗っ取ることはできない(ただ観ているだけ)

こうして香坂は折口信夫の意識に入り込み、折口信夫の友人・柿本の家に伝わる人麻呂の暗号を解いている、まさにその場面に遭遇することになるのですが…。

探偵・折口信夫


折口信夫については「民俗学の権威で、天才」というくらいの認識しか持っていませんでした。この本を読もうと思った理由のひとつに折口信夫のことが少し学べると思ったからです。

この物語にでてくる若き日の折口信夫は、人並み外れた知識を持つものの、引っ込み思案でどもり気味の内気な青年として描かれています。憧憬を抱いている友人・柿本のために、彼の家に伝わる人麻呂と猿丸の和歌の謎を解き明かそうとします。

和歌の知識があればより一層面白いのでしょうが、なくても十分楽しめます。暗号解読表が出てくるミステリはやはりワクワクします。

やがて、暗号の一部を解読した信夫は、柿本の故郷へ招かれるものの、そこでまた思いもかけない事件に遭遇することになります。

後半は、タイムトラベルものというよりは、完全に探偵役となった折口信夫が暗号や殺人事件の謎を解いていく展開になっていって、タイムトラベルの内容が薄くなってしまったのがちょっと残念だったかな。

でも、ミステリとしてはとても面白い作品でしたし、古典を題材にしたミステリって読んだことがなかったので新鮮でした。これからも古典ミステリ読んでみようかな…。

新装版 猿丸幻視行 (講談社文庫)
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