『ビブリア古書堂の事件手帖6 栞子さんと巡るさだめ』 三上 延
2014.12.28 Sunday
ビブリア古書堂の事件手帖、今回は全編太宰治作品です。今回は「栞子さんと巡るさだめ」とあるように、彼女のルーツについて、驚くべき事実が判明します。
前回の巻末、太宰治の希少本「晩年」に関する脅迫文が届き、大輔は第一巻「ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち」で、「晩年」を巡って栞子さんに怪我を負わせた犯人、田中俊雄に接触するものの、田中から逆に祖父が持っていた別の「晩年」を探して欲しいと依頼されます。
真相をつかむためにも依頼を受けた栞子さんと大輔は、関係者へ聞き込みをはじめ、事件に巻き込まれていくのですが…。
知己の同業者に事情を聞くと、栞子さんの祖父もまた、本に関する依頼を受けていたことを知ります。
太宰の書き込みがあったという(田中の祖父が持っていた)「晩年」を探し、富沢という人物に辿り着いたものの、田中の祖父が起こした蔵書盗難事件によって、疎遠になってしまった太宰研究会(ロマネスクの会)のメンバーと富沢氏の娘により、事件の真相解明を依頼されます。
栞子さんは、50年近く前の盗難事件についても、明晰な推理をみせ、見事に解決したのですが、そこには田中の祖父と、大輔の祖母の秘密が関わっており、田中を利用して本を手に入れようとした人物は…。
ここへきて、物語の鍵になる人物が出てきます。故人ではありますが、栞子さんの祖父の修行先の店主であり、希少本に異常な執着があり、強引な手段で手に入れる人物・久我山書房店主・久我山尚大。
その久我山の行為そのものが、今もなお亡霊のように栞子さんたちの身に災いをもたらしていきます。
この人物、これからも絡んできそうです。
栞子さんの「晩年」を奪おうとし脅迫文を送った、意外な犯人が判明します。確かに、最後まで読んでみると、一番しっくりくる動機をもっていますから。
その他、大輔が気がついてしまった、篠川智恵子(栞子さんの母)の出生の秘密。それこそが「巡るさだめ」なのかもしれません。
正体のわからない脅迫者、祖父母の代までさかのぼった因縁、もうひとつの晩年の行方…と、深刻な内容が続きますが、ちゃんとラブ要素も、それも(2人にしては)すっごいのが出てきます。(*´∀`*) まさにラブラブファイヤーですね。ちなみにラブラブファイヤーは第一巻に登場した顧客の坂口しのぶさんの命名です。
ここまでわかっていることをまとめてみました。
・正気じゃ手に入らない、とんでもない古書である
・彼女はそれを探すため、家を出た
・「台湾」でに志田に再会
・篠川智恵子が大輔くんの病室で読んでいたのは「聖書」(HOLY BIBLE)
・栞子さんの祖父は「クリスチャン」で神父を目指していた
・ビブリア古書堂の名前の由来はラテン語の聖書を指すビブリアから
「台湾」というキーワードから、以前「戦前に日本国外で出版、または執筆された、日本人作家の小説」ではないかと推理しました。6巻では新たに「キリスト教」というキーワードが追加されました。
「聖書」にからんだもので、たとえば「世界、または日本で最初に出版された聖書」というのも考えられますが、「聖書」については、以前、ギャラリーフェイクという漫画で取り上げていたので、できれば、違う結末だと嬉しいのですが…。
もうひとつ、キリスト教がらみで思い出したのが戦前、上海にあった内山書店です。
内山書店は日中文化人のサロンとしての役割を持ち、魯迅など中国人作家や、谷崎潤一郎など日本の作家とも親交があり、彼らの訪中時には世話をしていました。(内山完造著「そんへえ・おうへえ」→)
そして、店主の内山夫婦は、敬虔な「クリスチャン」でした。古書好きの間で内山書店は有名ですし、もしかしたら、栞子さんの母親が探す本は、内山書店がからんでいる希少本なのでは…と私は想像しています。例えば、谷崎や芥川、魯迅に金子光晴など、有名作家の未発表原稿を集めた、幻の単行本が密かに発行されていただとか…。
今後の展開で、智恵子が探していた本が何なのか、明かされていくといいのですが…。
・『ビブリア古書堂の事件手帖〜栞子さんと奇妙な客人たち〜』
・『ビブリア古書堂の事件手帖2〜栞子さんと謎めく日常〜』
・『ビブリア古書堂の事件手帖3〜栞子さんと消えない絆〜』
・『ビブリア古書堂の事件手帖4〜栞子さん2つの顔』
・『ビブリア古書堂の事件手帖5〜栞子さんと繋がりの時〜』
・『ビブリア古書堂の事件手帖6〜栞子さんと巡るさだめ〜』
・『ビブリア古書堂の事件手帖7〜栞子さんと果てない舞台〜』
・『ビブリア古書堂の事件手帖〜扉子と不思議な客人たち〜』
・『ビブリア古書堂の事件手帖II〜扉子と空白の時〜』
レビューポータル「MONO-PORTAL」
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第一章 走れメロス
前回の巻末、太宰治の希少本「晩年」に関する脅迫文が届き、大輔は第一巻「ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち」で、「晩年」を巡って栞子さんに怪我を負わせた犯人、田中俊雄に接触するものの、田中から逆に祖父が持っていた別の「晩年」を探して欲しいと依頼されます。
真相をつかむためにも依頼を受けた栞子さんと大輔は、関係者へ聞き込みをはじめ、事件に巻き込まれていくのですが…。
知己の同業者に事情を聞くと、栞子さんの祖父もまた、本に関する依頼を受けていたことを知ります。
第二章 駆け込み訴へ
太宰の書き込みがあったという(田中の祖父が持っていた)「晩年」を探し、富沢という人物に辿り着いたものの、田中の祖父が起こした蔵書盗難事件によって、疎遠になってしまった太宰研究会(ロマネスクの会)のメンバーと富沢氏の娘により、事件の真相解明を依頼されます。
栞子さんは、50年近く前の盗難事件についても、明晰な推理をみせ、見事に解決したのですが、そこには田中の祖父と、大輔の祖母の秘密が関わっており、田中を利用して本を手に入れようとした人物は…。
ここへきて、物語の鍵になる人物が出てきます。故人ではありますが、栞子さんの祖父の修行先の店主であり、希少本に異常な執着があり、強引な手段で手に入れる人物・久我山書房店主・久我山尚大。
その久我山の行為そのものが、今もなお亡霊のように栞子さんたちの身に災いをもたらしていきます。
この人物、これからも絡んできそうです。
第三章 晩年
栞子さんの「晩年」を奪おうとし脅迫文を送った、意外な犯人が判明します。確かに、最後まで読んでみると、一番しっくりくる動機をもっていますから。
その他、大輔が気がついてしまった、篠川智恵子(栞子さんの母)の出生の秘密。それこそが「巡るさだめ」なのかもしれません。
おまけ:ラブラブファイヤー
正体のわからない脅迫者、祖父母の代までさかのぼった因縁、もうひとつの晩年の行方…と、深刻な内容が続きますが、ちゃんとラブ要素も、それも(2人にしては)すっごいのが出てきます。(*´∀`*) まさにラブラブファイヤーですね。ちなみにラブラブファイヤーは第一巻に登場した顧客の坂口しのぶさんの命名です。
おまけ:栞子さんの母・智恵子が探している本についての考察
ここまでわかっていることをまとめてみました。
・正気じゃ手に入らない、とんでもない古書である
・彼女はそれを探すため、家を出た
・「台湾」でに志田に再会
・篠川智恵子が大輔くんの病室で読んでいたのは「聖書」(HOLY BIBLE)
・栞子さんの祖父は「クリスチャン」で神父を目指していた
・ビブリア古書堂の名前の由来はラテン語の聖書を指すビブリアから
「台湾」というキーワードから、以前「戦前に日本国外で出版、または執筆された、日本人作家の小説」ではないかと推理しました。6巻では新たに「キリスト教」というキーワードが追加されました。
「聖書」にからんだもので、たとえば「世界、または日本で最初に出版された聖書」というのも考えられますが、「聖書」については、以前、ギャラリーフェイクという漫画で取り上げていたので、できれば、違う結末だと嬉しいのですが…。
もうひとつ、キリスト教がらみで思い出したのが戦前、上海にあった内山書店です。
内山書店は日中文化人のサロンとしての役割を持ち、魯迅など中国人作家や、谷崎潤一郎など日本の作家とも親交があり、彼らの訪中時には世話をしていました。(内山完造著「そんへえ・おうへえ」→)
そして、店主の内山夫婦は、敬虔な「クリスチャン」でした。古書好きの間で内山書店は有名ですし、もしかしたら、栞子さんの母親が探す本は、内山書店がからんでいる希少本なのでは…と私は想像しています。例えば、谷崎や芥川、魯迅に金子光晴など、有名作家の未発表原稿を集めた、幻の単行本が密かに発行されていただとか…。
今後の展開で、智恵子が探していた本が何なのか、明かされていくといいのですが…。
ビブリア古書堂の事件手帖シリーズ
・『ビブリア古書堂の事件手帖〜栞子さんと奇妙な客人たち〜』
・『ビブリア古書堂の事件手帖2〜栞子さんと謎めく日常〜』
・『ビブリア古書堂の事件手帖3〜栞子さんと消えない絆〜』
・『ビブリア古書堂の事件手帖4〜栞子さん2つの顔』
・『ビブリア古書堂の事件手帖5〜栞子さんと繋がりの時〜』
・『ビブリア古書堂の事件手帖6〜栞子さんと巡るさだめ〜』
・『ビブリア古書堂の事件手帖7〜栞子さんと果てない舞台〜』
・『ビブリア古書堂の事件手帖〜扉子と不思議な客人たち〜』
・『ビブリア古書堂の事件手帖II〜扉子と空白の時〜』
JUGEMテーマ:オススメの本
レビューポータル「MONO-PORTAL」
これは年明けにでも予約せねば。
何やら色んな事が徐々にでてきますね。
とんでもない本ってどんなのだろ???
ってなことで、今年ももうすぐ終わり。
来年もよろしくお願いします(≧∇≦)ノ彡