歴史と不思議の織りなす物語 『かたづの!』中島京子

2015.04.23 Thursday

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    戦国時代、青森・南部家に実在した女領主・寧々の生涯。それを、一本角のカモシカ「かたづの」によって語られる不思議な物語「かたづの!

    読んでいて、どこまでが史実で、どこからが幻想なのか、まったくわからなくなり、気がつくと、遠野物語の世界へも、足を踏み入れてしまうのです。

    「かたづの!」あらすじ


    戦国時代の青森・八戸で、角が一本しかない羚羊・片角が、八戸南部家の姫・弥々と出会う。弥々に命を助けられた縁で、片角は城にも出入りを許され、弥々の幼い姫たちと幸せな時間を過ごし、天珠をまっとうする。

    「かたづの」が角だけの存在なった頃、弥々の周囲では夫や息子が相次いで亡くなり、叔父である三戸領主・信直から無理難題を言い渡され、弥々は女領主になることを決意する。

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    歴史と不思議の、美しい織物のような作品


    「かたづの!」は史実を縦糸に、不思議を横糸にして模様を編んだ、美しい織物のような物語です。

    八戸南部氏の女領主・弥々の波乱万丈な人生を描いた作品ですが、その一方で、遠野物語のベースとなるような、不可思議な話が随所に織り込まれ、どこからが幻想で、どこからが史実なのだか、本当にわからなくなります。

    特に、私がすきだったのが、河童の総大将が弥々に惚れてしまい、彼女と顔立ちの似た河童の娘を娶り、弥々子と名乗らせたエピソードに興味をひかれました。実はこの弥々子は、後に利根川に住みつき、関東河童の総大将となるのです。弥々子がどれほど強いかは、畠中恵さんのしゃばけシリーズ「えどさがし」でも描かれています。

    女領主の一代記


    戦国時代の女領主と言えば、橘訐藺紊箘羂膨掌廚覆匹有名です。彼女たちは、家長を亡くし、家を守るため知恵を絞り、男たちを渡り合います。

    私は女性領主たちのさっそうとした姿に憧れをもっていたのですが、「かたづの!」の弥々の女領主生活は、多難だらけで、ちっとも気の休まる暇がありません。そのたび、弥々の知恵と、かたづのの神通力で苦難を乗り越えてきたのですが、大きすぎる力は、疑心を呼び、家臣や娘たちからも距離を置かれてしまいます。

    いくら戦国の世とはいえ、その苦悩や悲しみが、切なくて。
    女領主は女性が活躍するというよりは、危ない橋を最初に渡るかのような、危うい場面の連続なのですね。

    それでも、弥々は大切な人々を守るため、最後まで力をつくします。そしてまた、かたづのも、最後まで弥々につきしたがうことになります。そんな、奇妙で不可思議で、でもあたたかい絆に感動しました。

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    • よくばりアンテナ
    • 2015/04/25 11:23 PM
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