幕末、武士の娘の日常「諫早菖蒲日記」 野呂邦暢

2019.05.27 Monday

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    古書店を舞台にした小説「森崎書店の日々」。この本が縁となり、野呂さんの本を知ることになりました。
    読書三昧の青春を綴った随筆「小さき町にて」から「諫早菖蒲日記」へ。本の縁が続いていきました。

    諌早菖蒲日記」は幕末、九州諫早藩の砲術指南役の娘、志津の視点から語られる物語です。



    幕末、藩の砲術指南役とくれば、「八重の桜」の八重さんのように、幕末の動乱に活躍する話かと思っていましたが、まったくそんなことはなく「諫早菖蒲日記」では、彼女の周りの日常が綴られているだけで、さしたる大事件は起こりません。

    けれども、読み始めると夢中になってしまいました。

    戊辰戦争のような、国を巻き込む大事件はありませんが、その当時、諫早で起こった大小の事件が綴られていきます。本明川の氾濫、主筋に当たる佐賀藩からの圧政、志津の家とライバル関係にある砲術家の台頭…。

    淡い恋心、新しい矢絣の着物が欲しくて駄々をこねたり、母親に内緒で河岸を観に行ったりと、ちょっとおてんばな様子や、大砲の影響で耳の遠い父親の耳がわりとして、来客の対応をするうちに、世情にもたけていくようすなど、志津の姿がいきいきと描かれます。

    考えてみれば、日本中の武士のだれもが、幕末の世情に関わって戦や暗躍をしていたわけではないんですよね。

    大きな出来事はおきないけれど、なんだかとても愛おしい物語でした。




    そういえば、「武士の家計簿」も幕末だけど、大きな事件が起こるわけではなかったっけ。

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