「ミッドナイト・バス」 伊吹 有喜

2015.06.04 Thursday

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    新潟を舞台に、家族の再生とバスの乗客たちの人生の一コマが綴られる「ミッドナイト・バス」読了。

    やっぱり、伊吹有喜さんの書く物語はいいなあ。普通の人たちの悲喜こもごもを、やさしい視点で描き出していて。どこにでもありそうだけど、気がつくと引き込まれている。おすすめです。

    本の中には辛いこともあるけれど、読んでいて共感するし、希望をもらえます。

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    『ミッドナイト・バス』 あらすじ


    高速バス・白鳥交通の運転手・利一は、偶然自分の運転するバスに、16年前に別れた妻・美幸と再会する。長く心を残した元妻との再会が、利一の家族と、恋人・志穂との関係に波紋をなげかけることに。

    父親、恋人、そして元夫として、利一は彼らとの問題に直面し、無骨ながらも彼らとの関係を修復しようとするが…。

    家族の再生を軸に、バス乗客の人生が交錯する


    「ミッドナイト・バス」は基本、利一と恋人の志穂、息子の玲司、娘の彩菜、そして元妻の美幸の関係とそれぞれの抱える問題について描かれていますが、その合間に、高速バスの乗客の人生の一コマが描かれます。

    実は、その乗客たちは少しずつだけど、利一たちともつながりがあります。

    家族の物語だけだと、閉塞的で暗くなりそうですが、そこへ、他の人の視点を加える事で、物語がやさしくなる、というのかな。

    出てくる人がみんな、やさしいんだけど、その方向性が間違っていてすれちがってしまうのが切なく、それが少しずつ、糸をほどくように新たな関係を築いていくのが、読んでいてとてもうれしくなりました。


    毒の人


    伊吹有喜さんの話には、ひとり凄い毒のある人間がでてきて、その人が周りの善良な人を巻き込む展開が多いんですが、今回は故人である利一の母親が、そもそもの元凶のようです。美幸を追い出したのも祖母でしたし。ただ今回、もう死んでいるので具体的な描写はあまりなく、利一たち家族の再生に重きが置かれています。

    けれど、彩菜があれほど美幸に頑なだったのは、おそらく毒の祖母の影響なんでしょうね。死んでからも人を不幸にしていく、そんな人間にはなりたくないなあ。

    伊吹有喜作品 感想


    『彼方の友へ』
    『今はちょっと、ついてないだけ』
    『BAR追分』
    BAR追分シリーズ2『オムライス日和』
    BAR追分シリーズ3『情熱のナポリタン』
    『ミッドナイト・バス』
    『なでし子物語』
    『風待ちのひと』

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    コメント
    こんばんは^^
    一つの家族の16年分が書かれているので長さも感じましたが素敵なお話でした。
    利一の母親はホントひどかったですねー。
    死してなお人を傷つける人にはなりたくないですね。
    みんな自分と向き合って、少しずつ前に進めそうで良かったです。
    • by 苗坊
    • 2015/06/05 10:41 PM
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    ミッドナイト・バス著者:伊吹 有喜文藝春秋(2014-01-24)販売元:Amazon.co.jp 東京での過酷な仕事を辞め、故郷の新潟で深夜バスの運転手をしている利一。 ある夜、彼が運転するバスに乗 ...
    • 苗坊の徒然日記
    • 2015/06/05 10:40 PM
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