八咫烏シリーズ『烏に単は似合わない』 阿部 智里

2015.08.12 Wednesday

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    表紙絵と、奇妙なタイトルに惹かれて読んだ「烏に単は似合わない」、面白いです。八咫烏が支配する土地、「山内」を統べる金烏、その世継ぎの若君への入内をめざす貴族の姫が、宮中で遭遇する事件を軸に、不思議な八咫烏の世界が描かれます。



    『烏に単は似合わない』あらすじ


    八咫烏の世界「山内」を統べる金烏、その世継ぎの若宮へ入内を果たすべく、貴族の頂点である東西南北を司る四家からそれぞれの姫が登殿する。

    東家の二の姫・あせびは、病気の姉に変わり登殿することになった。西家の真赭の薄、南家の浜木綿、北家の白珠、各家の姫たちそれぞれが競い合い、若宮の心を射止めようとする。

    実はあせびは幼いころ、一度だけ若宮に会ったことがあり、それ以来若宮への思いを募らせていた。

    しかし、女官の自殺、不審者の侵入など、宮中でさまざまな事件が起こり、やがてそれは四人の姫たちを巻き込んでいき…。

    斬新な八咫烏シリーズの世界観


    モチーフとしては「十二国記」「後宮小説」「源氏物語」などの設定に共通点がみられるものの、八咫烏が支配する世界というのがなかなか斬新で、読んでいくにつれ、徐々に八咫烏の世界「山内」の謎が解かれるのが面白いですね。

    八咫烏の世界は、日本の平安時代に似ており、東西南北を統べる四家を頂点にした「宮烏」と呼ばれる貴族は、人の姿をとり、烏の形になることはなく、一方、庶民の「山烏」は烏の形へたびたび変化する。(烏の形をとらない=別の移動手段をもつことが、ステータスらしい)

    異世界恋愛ファンタジーかと思ったら、叙述トリックミステリだった


    幼いころ、心を通わせた少年少女が時を経て再会したとき、何が起こるのか。当然、読者は古典の「筒井筒」のような純愛をイメージします。

    それが「普通」で、「通説」だったから。物語の構成も雅に春夏秋冬、再びの春となっていて、これだけみたら、どうしたって純愛を期待してしまうのだけど、読んでいくうち、「…?」「…!」といった展開に。

    おもえばこの否定形のタイトル「烏に単は似合わない」にも、物語の本質が隠されているような気がします。

    このラストの展開は見事でしたが、私はちょっと後味の悪さを感じてしまったかな。でも、まともな展開じゃなかったからこそ面白いのですが。

    作者の阿部智里さん、この本を書かれた時は20代前半だったそうで、いやはや、異色の、そしてものすごい作家が誕生しました。それは、今後の展開を読んでいくとわかるのですが…。

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    『烏に単は似合わない』のコミカライズ。羽衣の変化シーンや雅な宮廷衣装など、山内の世界を漫画で楽しめますし、最後の謎解きの絵の迫力がすごいのでぜひ。
    コミカライズ『烏に単は似合わない』感想はこちら→

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    八咫烏シリーズ


    『烏に単衣は似合わない』
    『烏は主を選ばない』
    『黄金の烏』
    『空棺の烏』
    『玉依姫』
    『弥栄の烏』
    外伝『すみのさくら』
    外伝『しのぶひと』
    外伝『ふゆきにおもう』
    外伝『まつばちりて』
    外伝『あきのあやぎぬ』
    外伝『ふゆのことら』
    外伝『なつのゆうばえ』
    外伝『はるのとこやみ』
    外伝『ちはやのだんまり』
    外伝集『烏百花 蛍の章 八咫烏外伝』
    コミカライズ『烏に単は似合わない』

    レビューポータル「MONO-PORTAL」
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