「イニシエーション・ラブ」 乾くるみ

2015.08.17 Monday

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    少し前に映画化され「ラスト2行のどんでん返し」に興味をひかれて読んでみた「イニシエーション・ラブ」。噂に違わぬラストのオチのインパクトに、他の読者同様、最後の2行を読んでから、最初から気になるところを読み返しました。

    「イニシエーション・ラブ」あらすじ


    鈴木は人数合わせで参加した合コンで、成岡繭子に一目惚れする。どうやら、繭子も好意をもってくれたらしく、電話番号を渡されたとこがきっかけで、2人は付き合うことに。(Side-A)

    やがて鈴木は静岡から東京に転勤になる。最初のうちはマユのために、足繁く静岡へ帰る鈴木だったが、同僚の女性・石丸から好意を寄せられるようになり…(Side-B)


    イニシエーション・ラブ (文春文庫)
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    恋愛小説が、どうミステリに化けるのか


    恋愛小説ではあるんです。殺人らしきものは起こらないし、探偵もでてこない。けれど、その張り巡らされたトリックが解き明かされた時、殺人とはまた違った怖さを感じました。

    「イニシエーション・ラブ」は、80年代後半が舞台で、前半と後半でSide-A、Side-Bと設定され、それぞれに70〜80年代に流行った音楽のタイトルがつけられています。

    実はこれが、この物語の最大のヒントだと思うのです。若い方はなじみがないかもしれませんが、昔、レコードというのは、A面、B面裏表があり、「ひっくり返さないと」裏の面が聞けないというしくみが、物語の軸となっています。

    あと、繭子の部屋にあった「十角館の殺人」もヒントといえばヒントかも。ラストシーンはもちろん違いますが、ラストに至る過程とか、細密なトリックな感じが似ている気がします。「十角館の殺人」を知っているミステリファンが、それを踏まえて読めば、謎は溶けるんじゃないかな。

    残念だったのは、80年代に生きていたせいかその頃の恋愛描写が、なんかこう、痛痒い感じがして、感情移入ができなかったことですかね。
    あと、ラブシーンがエロくない。理系の童貞くんからの視点なので、生物化学のレポートを読んでるみたい。
    あくまでミステリの前振りとして読んでしまっているので、恋愛ターンに「ときめき」が感じられなかったのが残念。

    イニシエーション・ラブ -あの頃カーステから流れていた80'S BEST HITS-
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    随分昔に友達から薦められて読んだものの、途中で挫折してしまい・・
    • ポコアポコヤ
    • 2015/08/27 12:26 PM
    ただの恋愛小説の筈はないよね何か変どうして記述が無いのかな?あれ?こんな話あったっけ?最後から二行目!なるほどね!そうか!必ず二度読みたくなる二度読んで、自分の目で確かめたいとなりますね私は二度は読みませんでしたが何度もページを繰り直して確認しました
    • 読書と映画とガーデニング
    • 2015/09/02 8:05 AM
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