2015.09.30 Wednesday

八咫烏シリーズ『烏は主を選ばない』 阿部 智里

2作目にして、人型をとる八咫烏(やたがらす)の世界が広がり、これは「精霊の守り人」「十二国記」と同く、名ファンタジーシリーズになりそうな予感がします。また、「烏は主を選ばない」は、ファンタジーの形を借りたミステリでもあるので、謎解きの面白さもあるのです。

烏は主を選ばない あらすじ


八咫烏がくらす世界「山内」の中の北領、その地方豪族のぼんくら次男、雪哉は、ある事件がきっかけとなり、日嗣の御子の側仕えとして宮中へ出仕するハメになる。

雪哉がつかえることになった若宮・奈月彦は、その美しい容姿とは裏腹に、とてつもなくマイペースで、破天荒。たったひとりの側仕えとして、無茶振りをこなすほか、若宮の妓楼通いにつきあったり、博打のかたに下働きをさせられることに。雪哉は父親と約束した1年の条件で、嫌がりながらも、若宮の近習をつとめることになる。

若宮は、兄君・長束を差し置いて金烏(この世界での最高権力者)に指名されていたため、常に暗殺の危機を抱えていた。誰が味方で、誰が敵か。若宮の暗殺事件をめぐって宮中の権力が交錯する。

烏は主を選ばない (文春文庫)
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若宮暗殺を巡る、宮廷ミステリ


前回の「烏に単は似合わない」では、この若宮のお后候補として、4人の姫君が登殿し、若宮を待ち焦がれる間に様々な事件が起こるのですが、若宮はラストまで姿を表しません。

じゃあ、何をしていたかというと、その理由がこの「烏は主を選ばない」で語られます。なにせ、信頼できる味方が護衛の「山内衆」澄尾と雪哉しかいないという状態なので、敵を炙りだしたり、暗殺を阻止したりと忙しかったんですね。

姫たちのもとに通わなかったのも、姫たちに下手に期待を持たせたくなかったのと、暗殺の危険性があるからだったんですね。じゃあちゃんと説明しろよ、と思うのですが、どうもこの若宮、「言葉が圧倒的に少ない」(雪哉談)らしいのです。おそらく賢すぎて、相手も言わなくてもわかるだろ、わからない奴はいいや、と思っているフシがあります。

まあ、そんな手のかかる若宮ですが、雪哉も怒りながらも徐々に仲良くなっていくんですね。時々、若宮が投げてよこす「金柑の砂糖漬け」の描写が、若宮の、雪哉に対する信頼を表現しています。


前作「烏に単は似合わない」感想→

烏に単は似合わない (文春文庫)
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いよいよ八咫烏シリーズ外伝『烏百花 蛍の章』の発売が決まりました。これまでの短編に加えて書き下ろしも。

烏百花 蛍の章 八咫烏外伝

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八咫烏シリーズ


『烏に単衣は似合わない』
『烏は主を選ばない』
『黄金の烏』
『空棺の烏』
『玉依姫』
『弥栄の烏』
外伝『すみのさくら』
外伝『しのぶひと』
外伝『ふゆきにおもう』
外伝『まつばちりて』

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「烏に単は似合わない」の続編。いや「続編」という言い方は正確ではなくて、本書は前作と全く同じ時間に起きた別の出来事を描いた物語。著者はインタビューで、当初は前作と本書がひとつの物語だったことを明かしている。だから「続編」よりは「下巻」、いや「裏編」と
  • 本読みな暮らし
  • 2016/08/29 5:00 PM
「烏に単は似合わない」「烏は主を選ばない」に続く、八咫烏シリーズの第3弾。本書で物語が大きく動き出した感じだ。これまでの2巻は、それはそれで面白かったが、シリーズが描く物語としては序章、まだ何も始まってなかったことが分かる。八咫烏が、私たちと同じ人間
  • 本読みな暮らし
  • 2016/09/07 9:07 PM
 「烏に単は似合わない」「烏は主を選ばない」「黄金の烏」に続く、八咫烏シリーズの第4弾。出版界やファンタジー、ミステリーファンが注目するシリーズとなっている。八咫烏が、私たちと同じ人間の形になって暮らしている、という世界。平安京にも似たその宮廷を中心
  • 本読みな暮らし
  • 2017/07/30 4:56 PM
このシリーズの舞台は、八咫烏が、私たちと同じ人間の形になって暮らし、雅やかな感じが平安京を連想させる世界だった。「だった」と過去形なのは、本書は違うからだ。本書の舞台はなんと1995年の日本だ。主人公は東京に住む女子高校生の志帆だ。八咫烏からも平安京
  • 本読みな暮らし
  • 2017/09/22 9:44 PM
八咫烏シリーズの第6弾。これにて第一部の完結。 このシリーズの舞台は、八咫烏が、私たちと同じ人間の形になって暮らす「山内」と呼ばれる世界。ところが、前作の「玉依姫」はいきなり1995年の日本が舞台となった。そして今回は再び「山内」に物語が戻ってきた。
  • 本読みな暮らし
  • 2017/12/22 5:46 PM

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