2016.01.31 Sunday

『植民地時代の古本屋たち』 沖田 信悦

興味深い本を見つけました。『植民地時代の古本屋たち―樺太・朝鮮・台湾・満洲・中華民国 空白の庶民史』は現役の古本屋さんが書いた、戦前、日本の植民地だった地域での古本店ネットワークの記録です。

資料としての意味あいが強く、私のような素人が読むものとしては若干難解ではありますが、それでも当時の「外地」で、どんな風に書店が開かれ、何が売れたのか、当時の証言をもとに検証されています。



植民地時代の古本屋


樺太、台湾、朝鮮、中国大陸などで、日本人が進出していった土地には必ず書店や古書店があったらしいです。その土地ごとに売れ筋の本が異なり、朝鮮では教科書や思想、経済本が、台湾では実用書、絵本が喜ばれ、中国大陸では、日本と同じような本が好まれていたのだとか。

台湾や朝鮮では強制的な日本語教育がなされていたので、現地の人にも販売されたのかもしれません。

樺太の南半分は日本の領土で、水産やパルプなどに携わるたくさんの人々が暮らしていたそうです。古書店も各都市に存在したのだとか。

内地(日本国内)の古書店とも独自のネットワークがあったらしく、内地の古書店主がよく植民地へ買い付けに行ったそうで、この本の中にそれらの手記が載せられています。

引き上げの苦労


ソ連の侵攻時には、貴重な本は焚き付け代わりにされ、辞書はタバコの巻紙に、引き上げでは貴重な本を泣く泣く手放すことになった引き上げの苦労が語られます。


失われた町


古本屋巡りをしながら、いまはもう、失われた都市を探訪する。厳密にいえば、都市は今でも存在するのだけど、底はもう、日本人がすんでいた頃とはちがう町、外国にになってしまっているから。

決して、植民地を肯定するつもりはないのだけれど、「失われた地名」というのは、えらく懐古趣味を刺激されるのです。

『ノスタルジック・ホテル物語』は、日本国内はもとより、朝鮮や台湾、上海の日本人経営のホテルの歴史について綴られた1冊。こちらは当時のパンフレットや絵葉書が掲載され、読みやすい内容です。

ノスタルジック・ホテル物語 (コロナ・ブックス)
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おまけ・ビブリア古書堂の事件手帖について


『植民地時代の古本屋たち』の記述から、日本国内の古本屋とも売買ネットワークがあったそうです。当時の植民地出身の芥川賞作家も現れ、植民地時代にはずいぶん本の流通が盛んであったらしい。

古書ミステリ「ビブリア古書堂の事件手帖」。主人公栞子さんの母親・智恵子(えらく頭がきれる)は、ある珍しい本を探すために家族を捨て、旅に出ています。行動や軌跡から、もしかしたら、彼女の探す本は戦前の「外地」が関わっているのでは?と私は考えているのですが…。

ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~ (メディアワークス文庫)
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