『映画探偵: 失われた戦前日本映画を捜して』 高槻 真樹

2017.02.20 Monday

0
    映画探偵: 失われた戦前日本映画を捜して』読了。今は失われた戦前の映画を探す「探偵」たちを通して、映画黎明期から戦前までの映画の歴史と、幻の映画を追い求める人々の姿を追ったドキュメンタリー本です。


    幻の戦前映画を探して


    戦前、キネマ旬報などで名作と讃えられた作品は、いまではほとんど失われてしまい、見ることができません。それはどうも戦争の影響だけではなく、フィルムの性質(燃えやすい)、ずさんな上映体制など、複合的な理由によるものだそうです。

    映画探偵: 失われた戦前日本映画を捜して
    高槻 真樹 河出書房新社 売り上げランキング: 159,122


    現代では考えられない、戦前映画のトンデモな上映スタイル


    ・上映が終わったフィルムを、その場で裁断、販売することもあった。
    ・同じ脚本で違うタイトルの映画が撮られることがあった。
    ・上映側が勝手に編集、名前を変えて上映することもあった。

    …もう、現代では考えられないですね。(;´・ω・)こうしたことが、映画を探すことを困難にしているのです。

    海外で発見される日本映画


    しかし、それでも少しずつですが、失われた映画が発見されていきます。名作「忠次旅日記」は父親の遺品の中から、「何が彼女をさうさせたか」は、ロシアで見つかりました。このロシアでの映画の売買に関しても、ソ連崩壊直後だからできた、ドラマチックな話がでてきます。

    「何が彼女をさうさせたか」
    何が彼女をそうさせたか クリティカル・エディション [DVD]
    紀伊國屋書店 (2008-03-29)売り上げランキング: 60,969


    戦前の日本映画が海外で発見されるのは、当時日本が植民地化していた台湾、満州、朝鮮、満州や、移民の多いアメリカへ輸出されたり、植民地へ侵攻してきたロシア(ソ連)などに接収された可能性があるからだとか。

    確かに、アメリカ人と日系女性の恋を描いた映画「愛と哀しみの旅路 [DVD]」でも劇中で戦前の名オペレッタ「鴛鴦歌合戦」が使われていました。




    映画探偵たち


    今では幻となった戦前映画を探し出し、修復保存をおこなうフィルムセンターなどの公的機関から、民間で資金を募り収蔵、上映をづづける団体。映画のフィルムコレクターなど、一口に映画探偵といってもさまざまなタイプの探偵たちがいます。
    無声映画の解説をおこなっていた活動弁士たちもコレクターだったんだそうで、これは、興行用のフィルムを自前で用意しなければならなかったための苦肉の策だったらしいのですが。

    そして興味深かったのが、収集欲が過ぎて狂気的ですらあるコレクターたち。ときには人を騙してでもフィルムを手に入れたり、自分が貴重なフィルムを持っているかのごとく吹聴したり。

    こうしたコレクターの闇はどのジャンルにも共通しているようで、前に読んだ古書コレクターの小説『せどり男爵数奇譚 (ちくま文庫)』を思い出しました。

    これからもまだまだ、映画探索は続いてゆくのでしょうから、意外な場所で貴重な日本映画が発見されるかもしれません。
    レビューポータル「MONO-PORTAL」
    コメント
    コメントする
    トラックバック
    この記事のトラックバックURL