『世界の辺境とハードボイルド室町時代』 高野 秀行 清水 克行

2016.02.18 Thursday

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    面白い本を見つけました。『世界の辺境とハードボイルド室町時代』。女優の杏さんがラジオでおすすめしていた本。杏さんのセレクト本は、やっぱりはずれがない(^^)。

    世界の辺境とハードボイルド室町時代』は、アフリカのソマリランドに詳しいノンフィクション作家と、日本中世史の専門家。何のつながりもないように見えるこの2人が出会い、話すことで、全く新しい世界が見えてきます。

    対話形式で書かれているので、難しいテーマでも、さくさく読めます。

    世界の辺境とハードボイルド室町時代
    高野 秀行 清水 克行 集英社インターナショナル 売り上げランキング: 11,029


    「独裁者は平和がお好き」奇妙なタイトルの理由


    世界の辺境とハードボイルド室町時代』タイトルからして、なんじゃこりゃ?と好奇心を刺激されます。でも、中身の目次もタイトルに負けず劣らず、面白い。

    けれど、読んでみると実に理にかなってるんですね。この「独裁者は平和がお好き」でも、麻薬栽培に携わる権力者は、支配する農民たちにアヘンを吸わせないし、揉め事を解決したりするそうです。麻薬の生産能力が落ちるから、支配地域では平和がいちばんなのだとか。


    作家と学者の、異種交流譚


    世界の辺境とハードボイルド室町時代』を読んで、『銃・病原菌・鉄』を読んだ時とおなじ感覚だな、と思いました。

    『銃・病原菌・鉄』も、今まで縦割りだった歴史を、横から、人間の食料生産と環境という「地理的な解釈」をくわえて、新しい世界を私たちに見せてくれた本ですが、この『世界の辺境とハードボイルド室町時代』もそうです。

    ノンフィクション作家と歴史学者という、まったくの異業種同士が話すことによって、意外な、新しい発見を見せてくれます。、一見、異分野の知識が組み合わさることで、歴史、辺境への理解がより深まるようになっています。

    異なる世界への認識と理解


    上橋菜穂子さんの著書『明日は、いずこの空の下』によると、「辺境」とは、英語で「フロンティア」の意味があるそうです。そして、「フロンティア」は「異文化と出会う最先端」でもあるわけです。

    アジア・アフリカの辺境と、室町時代、現代日本とは環境も行き方も考え方も違う「異世界」と交流し、文書を読み解き、認識することで、自分たちが生きている世界だけがいいわけじゃないと感じることは、私達の周りの問題に対しても解決のヒントにもなるのじゃないでしょうか。

    とはいえ、「客になったらやりたい放題にしてよい」ってソマリアのルールはちょっと受け入れるのに時間がかかりそうだな…(;´・ω・)

    高野秀行さんと清水克行さんは、そんな「フロンティア」を、フィールドワークや古文書から発見・発掘して私達にみせてくれる、冒険家のような存在なのかもしれません。

    お二人の書いた本も、読んでみたくなりました。

    謎の独立国家ソマリランド
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    喧嘩両成敗の誕生 (講談社選書メチエ)
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    高野秀行さんの奥様って『北里大学獣医学部 犬部!』を書いた片野ゆかさんなんですね。夫婦揃って、良い本書くなあ。

    犬部!
    犬部!
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    レビューポータル「MONO-PORTAL」
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