2016.03.20 Sunday

『ローマとケルトの息子』ローズマリー・サトクリフ

「精霊の守り人」の作者、上橋菜穂子先生が影響を受けたイギリスの作家、ローズマリー・サトクリフの『ケルトとローマの息子』読了。これは、子どもに読ませるのがもったいないほど、骨太な歴史ファンタジーです。

ローマとケルトの息子 あらすじ


ローマ人でありながら、ケルトの氏族に育てられたベリック。周りからは「赤いたてがみ」(ローマの司令官がつける兜の色から)と差別されるが、鍛錬をつんで立派な戦士となる。しかし、村に不作と病が襲い、ベリックは災厄を連れてきたとして、村から追放されてしまう。ベリックはローマ軍に入るため旅にでるが、よこしまな商人に騙され奴隷に身を落とす。

ブリタニア(イギリス)からローマ、ゲルマニア(ドイツ周辺)、そしてまたブリタニアへ。過酷な運命に翻弄されるベリックのたどり着いた場所は…

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被支配者からの視点


サトクリフの名作『第九軍団のワシ』は、ローマ人の青年マーカスと、元奴隷のエスカの冒険譚で、征服者側のマーカス視点で描かれます。反対に、『ローマとケルトの息子』は、征服されたブリタニアの氏族の少年、ベリックからローマ側をみています。

ローマの支配は、インフラを整備し、現地の暮らしを向上させ、現地人との混血も進んだものの、やはり、支配者と、被支配者の間には、大きな隔たりがあり、

しかし、ベリックは本当はローマ人の血をひいているので、物語はより複雑で、ローマとケルト、どちらにも疎まれ、裏切られたベリックは孤独と疎外感に苛まれます。

様々な人間に裏切られ、手負いの狼のように傷ついたベリックが最後にたどり着くのが、ブリタニアで干拓事業を行うローマ軍人・ユスティニアス。彼もまた、つらい過去を背負った人間で、だからこそ、傷ついたベリックを家族として迎え入れてくれます。


大人が読みたい、骨太な歴史ファンタジー


ベリックが追い込まれていく様子が、とても生々しく描かれています。中でも恐ろしいのは、奴隷となってからの描写で、奴隷の生活はベリックの自由を奪うだけでなく、徐々に奴隷生活が当たり前として、何も感じなくなっていくのです。

そして、その後のガレー船での描写は、本当にひどい。奴隷はまだ、人間だったものが、どんどんと獣のように本能むきだしになっていくんです。

サトクリフはよくもまあ、こんな過酷な物語を、子供向けに書いたものです。しかしこれは、読んでおくべき話だと思います。そして、大人が読んでも十分読み応えのある物語です。

おまけ:食べ物表現


サトクリフは、食べ物の表現が非常に豊か。ブリタニアの丸焼きのイノシシや大鍋のシチュウ、ローマの子ヤギのミルク煮、アーモンドケーキなどの豪華料理。どれも歴史や当時の風俗を反映したごちそうがどれも美味しそう。

サトクリフの食べ物表現は、上橋菜穂子先生の作品の料理表現にも継承されているんだろうな。

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サトクリフ作品感想
『ケルトの白馬』→
『第九軍団のワシ』→

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