無性に翻訳本が読みたくなる。『翻訳百景』 越前 敏弥

2016.07.17 Sunday

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    BSの『久米書店』で紹介されていて、気になっていた一冊。私はこれまで、あまり海外の本を読んでなかったのですが『翻訳百景』を読んだら、無性に翻訳本が読みたくなりました。
    『翻訳百景』は、小説の翻訳を手がける文芸翻訳家である越前さんが、実際に翻訳を手がけた洋書の翻訳裏話を実例を踏まえつつ書かれています。

    翻訳、というと、難しくと思われるかもしれませんが、越前さんの文章がとてもおもしろく、洋書の楽しさ、翻訳業の楽しさ(苦しさ)にぐいぐいと引きこまれていきました。

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    ダ・ヴィンチ・コードと翻訳裏話


    翻訳と一口にいっても、通訳や映画字幕、それに小説の翻訳、これらはまったく違ったノウハウが必要なのだそうです。越前さんは、小説の翻訳家として、『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズの翻訳を手がけられています。『ダ・ヴィンチ・コード』では、馴染みのないキリスト教関連の単語をいかに日本語に(作品のイメージを崩さず)置き換えていくかが大変だったのだとか。

    実際に手がけられた『思い出のマーニー』などの文章を引用しつつ、どのように英語の文章を日本語に置き換えていくかが書かれています。

    それはなんだか、英文の世界を冒険して、自分の表現を探していく、ダンジョンのようなワクワク感があるのです。

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    翻訳者の個性


    実は、翻訳本は翻訳者によって差があります。たとえばO・ヘンリの小説の翻訳に『魔女のパン』と『善女のパン』という、反対の意味の、同じ話があります

    でも、読んでみると、どちらのタイトルにも「ああ、なるほど。」と思ってしまうのです。翻訳者によって表現が全く違うので、読み比べてみると面白いです。

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    こうした翻訳者のワザを意識しつつ、翻訳本を読めば、物語がより深く楽しめるかもしれませんね。

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