大正時代の不良少女たち『くれなゐの紐』 須賀 しのぶ

2016.08.13 Saturday

0
    大正時代の不良少女たちを描いた『くれなゐの紐』読了。須賀しのぶさんの作品は『芙蓉千里』以来だったのですが、彼女の描く少女たちは強くて弱くて、痛くて切ない。

    『くれなゐの紐』あらすじ


    失踪した姉をさがすため、日本最大の歓楽街、浅草六区へやってきた仙太郎は、生き延びるため少女の姿に変装し、スリに身をやつす。

    ある日、姉からの絵葉書に写った浅草十二階の展望台で、1人の男と出会う。操と名乗る「彼」は、実は浅草六区を仕切る少女ギャング団「紅紐団」の団長であり、入団するなら姉の行方を教えるという。

    はからずも、少年でありながら少女ギャング団へ加入することとなった仙太郎。紅紐団には、花売り娘のあや、副団長で売春元締めの倫子など、個性豊かな少女たちがいた…。

    くれなゐの紐
    くれなゐの紐
    posted with amazlet at 16.08.06
    須賀 しのぶ 光文社 売り上げランキング: 98,709


    痛快小説だけじゃない、少女たちの痛み


    不良少女たちが、才覚と度胸で少年ギャング団や、ライバルたちを席捲していく様は実に痛快でした。けれど、それは物語の中盤。さて、ラストにはどんな結末が待っているのか、と読み進めたら、結末は少し意外なものでした。

    世間や大人たち対する復讐、ではあるのですが、そこにはかっこいい少女ギャングの姿はなく、紅紐団しかよりどころもたず、虚しくあがき、居場所を見つけられない少女たちがいました。

    それは、カリスマ的魅力をもつ団長の操も同じで、みんなあがいている。そして、少年である仙太郎は外の目線から彼女たちの痛みを知るのですが、彼女たちに何もしてあげることができないのです。

    こうした少女たちの姿は、今の少女たちにも通じるものがあります。あるいは「少女」とは、普遍的な存在なのかもしれません。




    大正時代、物語に登場した少女ギャング団は東京各地に存在しており、丸ビルのタイピストが、売春斡旋で捕まったりしていたそうです。

    明治 大正 昭和 不良少女伝---莫連女と少女ギャング団
    平山亜佐子 河出書房新社 売り上げランキング: 112,616


    物語の出てきた浅草十二階(凌雲閣)は、明治二十年代に作られた浅草のランドマーク。物語の最後の2行に関わってきます。
    浅草十二階 塔の眺めと〈近代〉のまなざし
    細馬 宏通 青土社 売り上げランキング: 633,776


    須賀しのぶ関連
    芙蓉千里

    JUGEMテーマ:オススメの本



    レビューポータル「MONO-PORTAL」
    コメント
    コメントする
    トラックバック
    この記事のトラックバックURL