2016.10.06 Thursday

『青い絵具の匂い - 松本竣介と私』 中野 淳

私の大好きな画家、松本竣介。代表作「立てる像」を観てからはや数十年。折りに触れ松本竣介の絵を見に行っていました。

松本竣介について知っているのは、戦後すぐに早逝されたこと、耳に障害があったこと、戦中の厳しい時代に制作を続けたこと、雑誌に「生きている画家」という戦争絵画批判を行って、特高(戦前、戦中の特別警察。強引な検挙、拷問を行うことで有名)に目をつけられていた、ということだけです。

実際の松本竣介はどんな人間で、どんな生活をして、どんな風に絵を描いていたのか。生前の松本竣介と交流のあった画家・中野淳氏が松本竣介との思い出を書き綴ったのが『青い絵具の匂い - 松本竣介と私 (中公文庫)』です。

青い絵具の匂い - 松本竣介と私 (中公文庫)
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神奈川県立近代美術館に収蔵されている松本竣介・立てる像
松本竣介・立てる像

生きていた画家


中野氏から観た松本竣介は、耳が聞こえないとはいえ、口唇術と筆談で内容がわかれば会話がなりたっていたのだそうです。そして、その会話は知識豊富でとてもたのしかったのだとか。

また、たいへんな子煩悩であったり、林芙美子が近所に住んでいた関係で挿絵を描いていたり、戦後の一時期に通信教育の仕事をしていたりと、今まで知らなかった松本竣介の一面を知ることができました。

画家たちの戦中


青い絵具の匂い - 松本竣介と私 (中公文庫)』には、松本竣介との交流の他、興味深い記述がありました。

戦時中、描きたい絵を描くことができない画家たちは戦争を鼓舞する戦争絵画を描いたことは知っていましたが、画家も国の管理下の団体に置かれ、そこから絵の具が配給されるシステムになっていたそうです。
戦争中は何もかもが、国家の統制のもとに管理されていたのだと思うと、恐ろしい世界ですね。

そんな中でも、松本竣介たちは描くことをやめず、下地や描き方に独自の研究を重ね、苦しい時代でも自らの表現を磨いていきました。もし、この人が天寿を全うしていたらどんな絵が描かれていたのだろうか、と考えずにはいられません。

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