戦国のプロジェクトX 『家康、江戸を建てる』

2017.01.15 Sunday

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    『家康、江戸を建てる』。タイトルは、「家康」ですが、本当に江戸をつくったのは、直接現場に携わる名も無き職人たちや現場を監督する奉行たち。彼らが困難なプロジェクトに挑む姿はまさに、戦国版のプロジェクトXの趣があります。

    困難や悲劇はあるものの、土地を整え、水を引き、新開地江戸を建てていく過程は、新しい希望に満ちています。まだ海の物とも山の物ともつかない田舎が、やがて世界になだたる都市になっていくとは、家康も想像していなかったでしょう。

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    以下、特に気になった物語について。

    流れを変える


    今の利根川は、東京の東側を流れていますが、実はこれは、人の手によるもの。その利根川東遷事業に関わった伊奈氏三代の奮闘が描かれます。江戸に入府した家康はまず、湿地だった江戸を変えるべく、氾濫を繰り返す利根川の流れを変えるプロジェクトを立ち上げます。

    このプロジェクト、数十年に渡って伊奈氏が代々工事にたずさわってきました。大変な工事だったとはなんとなく知っていましたが、ここまでとは。バトンを受け継ぐ伊奈の男たちがかっこいい。

    余談ですが、畠中恵さんもしゃばけシリーズの中で利根川東遷を描いています。こちらは、坂東太郎(利根川)の化身が工事を行う侍たちを妨害するもの。そこへ河童の総大将・禰禰子が人間に力を貸すことになる物語です。

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    天守を建てる


    これは職人ではなく、二代将軍秀忠が主人公の物語。江戸城天守の着工をを任された秀忠。家康から戦のない時代の天守の意味について問いかけられます。家康はなぜ、戦のない世に、あえて物見の役割を持つ天守を創造しようとしたのか。それも、大阪城や安土城の黒漆天守とは違い、白い漆喰の天守を。

    家康の命題に答えようと、秀忠は必死で、答えを探していくのですが…。

    歴史家の磯田道史先生が「秀忠が嫌いな日本人はいないでしょう。」とコメントされていましたが、家康のように戦国武将としてのカリスマ性はないものの、合理的で実直な秀忠は、現代の日本人の感覚に近いのかも。

    家康が建てた江戸という街を、秀忠が発展させていく。為政者も職人も、そうやって次の世代にバトンが渡されていく。それは昔も今も、変わらないのかもしれません。

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    今も昔も、プロジェクトに携わる職人たちは、困難に遭遇すればするほど、燃えるようです。それは、現代の名も無き職人たちたちにも受け継がれています。


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    コメント
    跳んでるマダムことmisachiです。
    TBありがとうございます。
    【本が好き!】からいらしてくださったんですね(*´∀`*)
    今後ともよろしくお願いしま〜す。
    misachiさん、ご訪問、ありがとうございます。misachiさんのサイトも面白そうな本があって参考にさせていただきます。これからも、よろしくお願いいたします。
    • by 日月
    • 2017/02/25 1:47 AM
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