負け組たちの敗者復活。『今はちょっと、ついてないだけ』伊吹 有喜

2017.01.22 Sunday

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    伊吹有喜さんの負け組たちへの眼差しが、冷静でありながら、とてもあたたかい『今はちょっと、ついてないだけ』。

    「人生は何度だってやり直せるさ」なんて、ドラマや映画にありそうなセリフですが、実際はそう簡単なものじゃない。けれど、この本をよむと、一歩踏み出さずに後悔するより、少しでも前へ進みたくなる。小さな希望が感じられます。だから大好きなんですよ、伊吹有喜さんの本。

    『今はちょっと、ついてないだけ』あらすじ


    立花浩樹は、若い頃ネイチャリングフォトグラファーとして騒がれた写真家だったが、プロデューサーの保証人になったせいで、莫大な借金を背負い、その返済のため故郷に戻る。借金は返し終えたものの、カメラを持つこともなく、ただ流されるように日々を送っていた。

    ある日、母の友人・宮川静枝から、自分の写真を撮ってくれと頼まれるが…。

    今はちょっと、ついてないだけ
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    JUGEMテーマ:最近読んだ本



    負け組からの敗者復活


    退職においやられたテレビマン宮川、技術はあるのに接客が苦手で伸び悩む美容部員、瀬戸、崖っぷち芸人の会田など、世の中からみたら「負け組」と呼ばれる人々と立花が関わることで彼らの敗者復活がはじまります。

    この、負け組たちの描き方が一筋縄ではなく、宮川なんて読んでいて最初は失礼なことばっかり言う、調子の良い奴だと思っていたら、意外にも母親思いの一面があったり、立花も過去の自分を嫌うあまり、頑なすぎるところがあったり、嫌な部分も、そうでない部分も同じように描かれているのに、読んでいて共感します。

    そうなんだよね、人って誰かにやさしくても、他の人には嫌がられたり、いろんな面をもっているのだもの。

    こんな働き方があってもいい


    物語の中、立花は自分が住むシェアハウスで、転がり込んできた宮川と写真の仕事を始めます。ただ、それだけじゃ食べられないから、バイトをしつつ、細々と続けるのですが、途中からシェアハウスの住人・瀬戸にメイクを依頼したりすることで、付加価値がついて、そこから仕事の幅が広がっていくんです。

    いろんなものを失ってしまったけれど、それでも若い頃のように「夢をかなえる」いうより、やりたいことをやっていく、それで食えなかったら、他で補填する。
    一つの仕事をずっと続けるのも大事ですが、たとえそこからはみ出してしまっても、いくらでもやりようはある。

    要は、自分が納得するかどうかなんですね。

    作中で、婚活の写真を立花に撮ってもらった女性が、相手に裏切られ、滞在先のホテルで現地の男性を買うことになるの話があります。

    最初は、そんな関係は虚しいだけだからやめたほうがよいのに、と、思ったのですが、最後まで読んだら「自分が納得してればいいのかもしれない。」と、思うようになりました。個人的には賛成できないけど。

    伊吹有喜作品 感想


    『彼方の友へ』
    『今はちょっと、ついてないだけ』
    『BAR追分』
    BAR追分シリーズ2『オムライス日和』
    BAR追分シリーズ3『情熱のナポリタン』
    『ミッドナイト・バス』
    『なでし子物語』
    『風待ちのひと』

    レビューポータル「MONO-PORTAL」
    コメント
    日月さん、こんにちは!

    >要は、自分が納得するかどうかなんですね。
    そうなんですよね。
    だからこそ、リゾラバ?女性の章は、多くの人が、えーーって眉をしかめるのを作家さんも重々承知の上、彼女が自分で納得してるのなら、って事で、ああいう風にしたのかもしれませんね。

    そうそう、先日の精霊の〜2シーズン目の1話、最初の15分気がつかずにいて、録画が切れちゃって!!
    再放送土曜日ので見ます!
    • by latifa
    • 2017/01/23 5:25 PM
    こんばんは。
    見事な敗者復活でしたね。
    最初の話を読んでいたら主人公を始めみんなパッとしてなくて^^;これからどうなるんだろうと思いましたが、最後は中年の星たちが輝いているように見えました。
    新たに始めることは歳を重ねるごとに勇気がいると思いますが、それでもみんな楽しそうで羨ましかったです。
    本当に、気持ち一つなんですよね。

    海外へ行った女性に関しては私も同意見ですが^^;
    • by 苗坊
    • 2017/01/23 8:02 PM
    latifaさん

    なんだか、中年のリスタート、ワクワクしますね。ある意味、失うものが無いので、若者より大胆になれるのかもしれません。

    精霊の守り人、前シーズンよりパワーアップしています。今後の展開が楽しみです。
    • by 日月
    • 2017/01/24 11:59 PM
    苗坊さん

    若い時は、目指すゴールが決まっていて、そこへ行くために努力しますが、中年になると、いろいろなことが見えてくるので、また若い時と違ったゴールになるのかもしれません。

    少しずつでも、自分の納得の行く仕事ができるのはいいですね。
    • by 日月
    • 2017/01/25 1:10 AM
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    伊吹さんの本は、これが初めてでしたが、とても読みやすく、面白かったです。
    • ポコアポコヤ
    • 2017/01/23 5:25 PM
    今はちょっと、ついてないだけ著者:伊吹 有喜光文社(2016-03-17)販売元:Amazon.co.jp オススメ! かつて、世界の秘境を旅するテレビ番組で一躍脚光を浴びた、「ネイチャリング・フォト ...
    • 苗坊の徒然日記
    • 2017/01/23 8:00 PM
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