北斎の娘、その一生。『眩 くらら』朝井 まかて
2017.02.19 Sunday
北斎の娘お栄は、北斎の弟子にして女絵師・葛飾応為でもある。彼女の一生を描いた朝井 まかてさんの『眩 くらら』。
お栄を描いた話としては、江戸文化研究家の杉浦日向子さんの『百日紅』が有名ですが、『眩 くらら』は、百日紅のその後、お栄が嫁に行ったところからはじまります。
物語の冒頭、お栄は夫との暮らしに辟易し、外に出たついでに、ふらっと婚家を逃げ出してしまう。そこから北斎のもとに戻り、北斎を助けながら、ひたすら絵の道を極めて行きます。
北斎のもとに出入りしていた浮世絵師、善次郎(渓斎英泉)との絆と、ひとときの情、甥・時太郎の不行状に悩まされ、母を看取り、最愛の盟友・善次郎との別れ、そして北斎を看取り、自らも晩年を迎える…。
善次郎の野辺送りを足を怪我しながらも追いかけて見送る場面が、お栄の思いを反映しているようで、とても好きです。善次郎は男女の仲を超えた、絵の道を目指した盟友でもあったのでしょうから。
やがてお栄は、老年の北斎を看取ったあと、武家へ養子にいった弟の家にやっかいになるのですが、やがてそこもふらっと出ていき、新たに人生を始めていくところで終わります。
最初と最後が同じ行動で、物語が完結しているんですね。
年をとっても新たな世界へ挑戦していく、心の赴くままに。豪胆で繊細、まさに自らの絵のような人生でした。
『眩』には、北斎とお栄の描いた浮世絵や肉筆画がでてきて、その制作の様子が描かれます。まるで、本当に絵が描かれている様子を垣間見ているような、息を呑む制作風景。
お栄や北斎が、いのちをかけて描いたものが、今、現代の私達が見ることができるのって、本当にすごいことだ、と思います。
レビューポータル「MONO-PORTAL」
お栄を描いた話としては、江戸文化研究家の杉浦日向子さんの『百日紅』が有名ですが、『眩 くらら』は、百日紅のその後、お栄が嫁に行ったところからはじまります。
一本の映画をみたような読了感
物語の冒頭、お栄は夫との暮らしに辟易し、外に出たついでに、ふらっと婚家を逃げ出してしまう。そこから北斎のもとに戻り、北斎を助けながら、ひたすら絵の道を極めて行きます。
北斎のもとに出入りしていた浮世絵師、善次郎(渓斎英泉)との絆と、ひとときの情、甥・時太郎の不行状に悩まされ、母を看取り、最愛の盟友・善次郎との別れ、そして北斎を看取り、自らも晩年を迎える…。
善次郎の野辺送りを足を怪我しながらも追いかけて見送る場面が、お栄の思いを反映しているようで、とても好きです。善次郎は男女の仲を超えた、絵の道を目指した盟友でもあったのでしょうから。
やがてお栄は、老年の北斎を看取ったあと、武家へ養子にいった弟の家にやっかいになるのですが、やがてそこもふらっと出ていき、新たに人生を始めていくところで終わります。
最初と最後が同じ行動で、物語が完結しているんですね。
年をとっても新たな世界へ挑戦していく、心の赴くままに。豪胆で繊細、まさに自らの絵のような人生でした。
絵を傍らに読みたい本
『眩』には、北斎とお栄の描いた浮世絵や肉筆画がでてきて、その制作の様子が描かれます。まるで、本当に絵が描かれている様子を垣間見ているような、息を呑む制作風景。
お栄や北斎が、いのちをかけて描いたものが、今、現代の私達が見ることができるのって、本当にすごいことだ、と思います。
レビューポータル「MONO-PORTAL」