BAR追分シリーズ3『情熱のナポリタン』 伊吹有喜
2017.04.02 Sunday
BAR追分シリーズ、その続編『情熱のナポリタン―BAR追分』。
新宿三丁目にある「ねこみち横丁商店街」その路地の一番奥にあるのが「BAR追分」。昼間は、おいしいごはんを提供する「バール」夜は本格的な「バー」。ふたつの顔をもつBAR追分に集まる、人々の物語。
ねこみち横丁の管理人兼脚本家志望の宇藤くんの脚本完成祝いと称して、追分メンバーが集まっての飲み会。そこで、パンケーキやホットケーキ、お好み焼きなど、「粉もん」論争が繰り広げられる。
それに加わったお客さんの、幼い頃食べた浜松のお好み焼きの味から、祖父の思い出につながっていき…。
食べ物の思い出は、それをつくってくれた人への思い出でもあるんですね。浜松ではお好み焼きにたくあんを入れることもあるのだとか。食って土地土地によって変わるんだなあ。
Bar追分のバーテンダー見習いの純は、人気の元劇団員。けががもとで役者を辞めた彼の元に、劇団の主宰・桜井ギシュウが訪ねてくる。
強引なギシュウは、純を待つ間に宇藤の脚本を読み、けちょんけちょんにしたかと思えば、帰ってきた純に劇団に戻れと言ったり、宇藤くんに劇団の脚本部に来い、と言ってみたり、とにかく強引。
モモちゃんに怒られて退散するも、全く悪びれない。
こういうギシュウさんみたいな人がいると、演劇に関わる人がすべて自己中にみえちゃうんだよね。
観劇好きとしては、演劇の世界は、ただでさえ玉石混淆で閉鎖的なコンテンツだから、あまり誤解して欲しくないかな。ま、演劇に限らず、どの世界にもひどいのいるけどね。
実はこの話のメインは宇藤くんじゃなくて、お客さんの兄弟のお話です。両親の離婚で別々に暮らしていた兄弟が久々にあってお互いの距離を縮めていく、しみじみとしたいい話なんです。
前回、劇団主宰のギシュウに脚本をけなされ、落ち込む宇藤くん。そんなとき、遠藤会長が知り合いの子ども・柊くんをバール追分につれてくる。シングルマザーの母親が入院する間、預かることになったらしい。なりゆきでを柊くん預かることになった宇藤くんとモモちゃん。
最初は人見知りで、ご飯を食べたがらない柊くんも、モモちゃんの工夫した料理(焼きそばパンケーキ、美味しそう!)や宇藤くんが遊んでくれたりしたおかげで、すっかり2人になついてしまいました。
人見知りな柊くんがだんだん心をひらいていく様子がかわいい。やがてお母さんが退院し、柊くんは母親の故郷、新潟に帰ることに。柊くんが「うどうくん」て呼ぶのがかわいい。最後に大好きなメロンパンを勇気をだして宇藤くんに渡すシーンは、作中にでてくる芥川龍之介の「蜜柑」のシーンにかけているんですね。
BAR追分の人々との出会いは、柊くんとお母さんにも最後の東京のいい思い出になったんじゃないかな。
宇藤くんや純くんにやたらとちょっかいを出してくるギシュウさん。宇藤くんの脚本をけなしても、才能は買っていて、しきりと脚本部へ誘ってくるし、あわよくば純もまとめて手元に置きたいらしい。
そんな天才、ギシュウさんもメディアミックスの一大企画に頭を悩ませていた。ギシュウの腹心・空開は、なんとか宇藤を説得しようと画策をはじめ…。
才能と、情熱。天才と凡人。宇藤くんとももちゃんも、ねこみち横丁のみんなに愛されているし、道半ばとはいえそれぞれ料理 や脚本の才能に長けているのだけど、「いつまでもここにはいられない。」っておもっているのね。
彼らがねこみち横丁を卒業するときが、この物語が終わるときなんじゃないかと。そう思わせるところがあって、それは彼ら成長がうれしい反面、切ないことだなあ。
・『彼方の友へ』
・『今はちょっと、ついてないだけ』
・『BAR追分』
・BAR追分シリーズ2『オムライス日和』
・BAR追分シリーズ3『情熱のナポリタン』
・『ミッドナイト・バス』
・『なでし子物語』
・『風待ちのひと』
レビューポータル「MONO-PORTAL」
新宿三丁目にある「ねこみち横丁商店街」その路地の一番奥にあるのが「BAR追分」。昼間は、おいしいごはんを提供する「バール」夜は本格的な「バー」。ふたつの顔をもつBAR追分に集まる、人々の物語。
お好み焼き大戦
ねこみち横丁の管理人兼脚本家志望の宇藤くんの脚本完成祝いと称して、追分メンバーが集まっての飲み会。そこで、パンケーキやホットケーキ、お好み焼きなど、「粉もん」論争が繰り広げられる。
それに加わったお客さんの、幼い頃食べた浜松のお好み焼きの味から、祖父の思い出につながっていき…。
食べ物の思い出は、それをつくってくれた人への思い出でもあるんですね。浜松ではお好み焼きにたくあんを入れることもあるのだとか。食って土地土地によって変わるんだなあ。
秋の親子丼
Bar追分のバーテンダー見習いの純は、人気の元劇団員。けががもとで役者を辞めた彼の元に、劇団の主宰・桜井ギシュウが訪ねてくる。
強引なギシュウは、純を待つ間に宇藤の脚本を読み、けちょんけちょんにしたかと思えば、帰ってきた純に劇団に戻れと言ったり、宇藤くんに劇団の脚本部に来い、と言ってみたり、とにかく強引。
モモちゃんに怒られて退散するも、全く悪びれない。
こういうギシュウさんみたいな人がいると、演劇に関わる人がすべて自己中にみえちゃうんだよね。
観劇好きとしては、演劇の世界は、ただでさえ玉石混淆で閉鎖的なコンテンツだから、あまり誤解して欲しくないかな。ま、演劇に限らず、どの世界にもひどいのいるけどね。
実はこの話のメインは宇藤くんじゃなくて、お客さんの兄弟のお話です。両親の離婚で別々に暮らしていた兄弟が久々にあってお互いの距離を縮めていく、しみじみとしたいい話なんです。
蜜柑のこども
前回、劇団主宰のギシュウに脚本をけなされ、落ち込む宇藤くん。そんなとき、遠藤会長が知り合いの子ども・柊くんをバール追分につれてくる。シングルマザーの母親が入院する間、預かることになったらしい。なりゆきでを柊くん預かることになった宇藤くんとモモちゃん。
最初は人見知りで、ご飯を食べたがらない柊くんも、モモちゃんの工夫した料理(焼きそばパンケーキ、美味しそう!)や宇藤くんが遊んでくれたりしたおかげで、すっかり2人になついてしまいました。
人見知りな柊くんがだんだん心をひらいていく様子がかわいい。やがてお母さんが退院し、柊くんは母親の故郷、新潟に帰ることに。柊くんが「うどうくん」て呼ぶのがかわいい。最後に大好きなメロンパンを勇気をだして宇藤くんに渡すシーンは、作中にでてくる芥川龍之介の「蜜柑」のシーンにかけているんですね。
BAR追分の人々との出会いは、柊くんとお母さんにも最後の東京のいい思い出になったんじゃないかな。
情熱のナポリタン
宇藤くんや純くんにやたらとちょっかいを出してくるギシュウさん。宇藤くんの脚本をけなしても、才能は買っていて、しきりと脚本部へ誘ってくるし、あわよくば純もまとめて手元に置きたいらしい。
そんな天才、ギシュウさんもメディアミックスの一大企画に頭を悩ませていた。ギシュウの腹心・空開は、なんとか宇藤を説得しようと画策をはじめ…。
才能と、情熱。天才と凡人。宇藤くんとももちゃんも、ねこみち横丁のみんなに愛されているし、道半ばとはいえそれぞれ料理 や脚本の才能に長けているのだけど、「いつまでもここにはいられない。」っておもっているのね。
彼らがねこみち横丁を卒業するときが、この物語が終わるときなんじゃないかと。そう思わせるところがあって、それは彼ら成長がうれしい反面、切ないことだなあ。
オムライス日和 BAR追分 (ハルキ文庫)
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伊吹有喜作品 感想
・『彼方の友へ』
・『今はちょっと、ついてないだけ』
・『BAR追分』
・BAR追分シリーズ2『オムライス日和』
・BAR追分シリーズ3『情熱のナポリタン』
・『ミッドナイト・バス』
・『なでし子物語』
・『風待ちのひと』
レビューポータル「MONO-PORTAL」
このシリーズ、私も大好きです。
今回はお客さんの話もありつつ、宇藤君のことも変化がありましたね。宇藤君の渾身の作品、読んでみたいです。でも内容を察するに私もたぶん主人公の女の子は嫌いだろうなと思いましたが^^;
お客さんの話もどれもあたたかくて優しい物語でした。柊君が可愛かったです。「蜜柑」は未読なので読んでみたいです。
ももちゃんと宇藤君がよこみち横丁を卒業するときが終わるとき…。確かにそうですね。その時を見てみたい気もするし、このシリーズをずっと読んでいたい気もします。