国芳の弟子たち『おもちゃ絵芳藤』谷津 矢車

2017.08.20 Sunday

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    幕末から明治にかけて、激動の時代を生きた絵師たちの物語。『おもちゃ絵芳藤』は、歌川国芳の弟子・歌川芳藤の視点で国芳の4人絵師たちの生き様を描いた物語。

    『おもちゃ絵芳藤』あらすじ


    歌川国芳が死に、弟子の芳藤は師匠の葬式を出すため国芳の娘たちや兄弟子たちを訪ねる。喪主をつとめるよう声をかけるが。色好い返事はもらえない。
    しかたなく戻ると、そこには三味線をかき鳴らして大騒ぎする弟弟子たちがいた。

    繊細で臆病な月岡芳年、豪放磊落な落合芳幾(幾次郎)、圧倒的な個性で一時代をつくった河鍋狂斎(暁斎)、彼らと協力しなんとか師匠の葬式を出しせたものの、追善絵の代表を一門から選ぶにあたり、芳藤は狂斎から「あんたの絵には華がない」と言われてしまう。

    国芳の死を契機にして、時代は幕末の混乱から明治へと移り、芳藤ら絵師たちは苦境にたたされることになり…

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    絵師の生きざま


    芳藤の得意は「おもちゃ絵」という、双六など子供が使う玩具に使われる絵を得意とする絵師。国芳一門でも目立たない存在です。

    世の中が明治に変わっても、相変わらずおもちゃ絵と、国芳塾を守ることを生業としている芳藤。その姿はかたくなで、弟弟子たちが仕事を世話しても、頑として譲らない。

    読んでいて最初は、芳藤のあまりに平凡さ、時代にのれない頑固さを歯がゆくおもっていました。
    お互い憎からず思っていた国芳の娘さんとの縁談も、亡き妻や師匠に遠慮して身を引いてしまうし。

    けれど読み終わってみると、絵師という矜持を不器用なりに最後まで貫きとおしたその姿は、すごいもんだな、と感じずにはいられませんでした。どんな道でも、たとえ人から嗤われようとも最後まで貫き通す。
    芳藤が国芳から受け継いだのは、技でも画塾でもなく、「絵師としての生きざま」だったのかもしれません。

    でなければ暁斎が一世一代の仕事「枯木寒鴉図」を描くときに見届けてほしいとは思わなかったでしょう。

    ひらひら 国芳一門浮世譚』にも芳藤が登場します。こちらは眼鏡男子として描かれています。

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    幕末から明治期にかけて活躍した絵師・河鍋暁斎。幼いころ国芳一門に所属し、その後、狩野派絵師として活躍しましたが、一部の絵には国芳の影響がみられるのだとか。おそらく国芳のもとを離れても付き合いはあったのかもしれません。

    だから、『おもちゃ絵芳藤』で国芳一門と河鍋暁斎が絡んでいるのをみて、暁斎ファンとしてはうれしかったです。

    歌川国芳も若いころ、葛飾北斎のところに出入りしていたと杉浦日名子さんの「百日紅」にもかかれているので、案外、他流の絵師たちの交流は多かったのかもしれません。

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    おなじく、絵師の生きざまを描いた「眩」。こちらは葛飾北斎の娘・お栄(葛飾応為)の生涯を描いた物語です。

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    レビューポータル「MONO-PORTAL」

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    国芳一門を描いた漫画『ひらひら 国芳一門浮世譚』


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