『モップの精は旅に出る』近藤 史恵

2017.06.24 Saturday

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    キュートでおしゃれな清掃員・キリコが、清掃先の問題を解決していくモップの精シリーズ「モップの精は旅に出る」今回が最終巻なのだとか。相変わらず、清掃先で起こるできごとをきれいに解いていくキリコちゃんですが、今回キリコちゃん自身にもある問題が降りかかってきます。



    英会話教室での事件


    英会話教室の事務員・翔子は、ある日生徒の中沢から婚姻届を送られる。一度カウンセリングをしただけで身に覚えのない翔子だったが、その後、中沢が殺されてしまう。

    翔子は忘れ物をしたことが縁で、英会話教室の夜間清掃をしていたキリコちゃんと知り合い、婚姻届が入っていたと思われる封筒がゴミ箱に捨ててあったことを知り、真犯人が他にいるのではないかと疑います。

    もう一編は大人のいじめがテーマ。主婦グループに大人気の外国人講師をめぐり、新規会員の女性がいじめを受けているのでは、と心配する翔子に、キリコちゃんは自分も教室に通って調べると言い出し…

    以前、作者の近藤史恵先生が通っていたフランス語の教室の話をツイッターで書かれていたことがあったので、もしかしたらそんなとことから作品のヒントを得られたのかもしれません。(さすがに事件は起こらないでしょうが…)

    モップの精の最後の物語


    物語の最後「ラストケース」は、キリコちゃん自身のお話です。これまで、キリコちゃんの家族は夫の大介くん以外は出てきませんでしたが、キリコちゃんには年の離れた姉がいたこと、そのお姉さんが急な病気で亡くなってしまったことから、物語は始まります。

    キリコちゃんと姉の菜々子さんが仲が良かったのに疎遠になってしまった理由、自分のことを優先してしまう父親など、家族の問題について語られていきます。

    大介くんも気難しい祖母の介護や、母親の死など、キリコちゃんと結婚したことで癒やされていきましたが、キリコちゃんもまた、大介くんが「帰る場所」だったんですね。シリーズの最初は頼りなかった大介くんも、悲しみを抑えようとするキリコちゃんに「君の好きにしていい。」といえる程、たくましくなりました。

    しかし、自分のことを棚に上げ、相手を糾弾する大介の叔母や、自業自得なのに、キリコちゃんに仕返ししようとする菜々子さんの元夫など、自分のために他人を傷つけてもいい、と思っている人が「家族」の中にいるほど、恐ろしいことはありませんね。


    この表紙、なんだかメリー・ポピンズみたいですね。キリコちゃん自身が清掃先で問題を解決して去っていく、メリー・ポピンズみたいな感じだからかな。でも、可愛くて前向きで、最終巻にふさわしい表紙です。
    モップの精は旅に出る
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    モップの精シリーズ


    「モップの精と二匹のアルマジロ」→
    「モップの精は深夜に現れる」→
    「モップの魔女は魔法を知ってる」→
    「天使はモップを持って」→

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