2017.07.11 Tuesday

『横浜駅SF』柞刈湯葉

横浜駅って、なんかずっと工事してない?』というのが、首都圏住民の共通認識だったりします。実は、駅が作られて以来ずっと、工事を続けているのだとか。

そんな横浜駅の状況を逆手に取って、自己増殖する駅と、それに抗う人というSFに仕上げた『横浜駅SF』読んだとたん、やられた〜と思いました。身近な事象の意味をずらすことで、まったく異なる世界が作られていくのです。
それがもう、絶妙で。こんな感覚、椎名誠の「武装島田倉庫」作品以来だわ。

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『横浜駅SF』あらすじ


「冬の戦争」終結後、統治システム、統合知性体となった横浜駅は構造遺伝界と呼ばれる自己増殖を繰り返し、ついには横浜駅が本州をほとんど覆いつくした。人々は横浜駅の「エキナカ」に暮らし、横浜駅からはじかれた人間はエキナカを追放され、わずかな土地で細々と暮らしてきた。

本州以外ではJR北海道とJR九州が、様々な技術を独自に開発し横浜駅に抵抗を続けている。

そんな駅外のコミュニティ・九十九段下で生まれ育ったヒロトは、追放者から「18きっぷ」を渡され、エキナカへの冒険にでかける。ほんの物見遊山のはずが、駅員につかまり、JR北海道の工作員と出会ったことで、彼と横浜駅の運命は大きく動いていく…。


横浜駅SFの世界


雰囲気は『武装島田倉庫』『アド・バード』どの椎名誠SF作品に雰囲気が似ています。椎名作品もそうなのですが、普段見慣れた施設や機械の用途をずらして、まったく違う意味を持たせることで、独特の世界が現れるのです。
(作者自身も『アド・バード』影響があると、あとがきで語っていました。)

『横浜駅SF』では、我々が日常目にする駅のSuicaは人間に埋め込まれ、自動改札は不審者を排除する武器を持った自立式AIとして描かれます。

そして、「駅」はもはや交通機関としての用をなさず、「構造遺伝界」と呼ばれるシステムで自己増殖し、もはや人間がの意図を無視し雑草並みの増殖力で本州を覆いつくし、意味をなさない通路やエスカレーターが日々増殖していくのです。

反横浜駅勢力の人々が使う通信手段TCP-IPの画面は、昔懐かしいパソコン通信時代のようで、ちょっと懐かしいww

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こんなこと、現実に起こるはずが…と思いますが、実は、現実でも徐々に増殖していそうな駅があります。上野駅はホームが何層にも重なっている部分があって、見ようによってはSFチックな風景となっています。
上野駅ホーム


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