『アンマーとぼくら』有川浩

2017.08.08 Tuesday

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    有川浩さんのアンマーとぼくら読了。

    沖縄を舞台に描かれる、家族の物語。リョウは休みをとって沖縄のおかあさんと3日間過ごすことになった。おかあさんと家族の思い出の場所をいくつもをめぐるうち、北海道から沖縄に来たばかりの小学生の頃の自分と出会う。

    リョウの父はカメラマンで、まるで子供のような人だった。実の母が亡くなり、一年もしないうちに晴子さんと結婚するため、むりやり移住されられてから、リョウと「おかあさん」、そして父親の沖縄暮らしが始まったのだ。

    家族の思い出の場所をめぐるうち、リョウは沖縄も晴子さんも嫌いだったころのことを思い出す。その頃のぼくといまのぼくは、過去の後悔をとりもどすことができるのか。

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    ごめんなさい、有川先生


    この物語は、主人公の父親を許せるかに否にかかっているのだと思います。そして私は許すことができませんでした。いい物語を書いてくださったのに、有川先生に申し訳ないです。

    すごく素敵な物語なんです。沖縄の日常風景や、聖地の御嶽(ウタキ)、竜に見える海の波、大切な家族の思い出の場所をめぐる旅の、楽しさの中にある切なさと悲しみ。「お母さん」と「おかあさん」の大きな愛、主人公との絆、今思い出しても涙がでます。

    ただ、私はどうしても、あの父親を受け入れることができませんでした。

    リョウが母親を亡くしてまだ1年たらずなのに、沖縄に移住するぞ!、晴子さん(おかあさん)と結婚するぞ!晴子さんをお母さんと呼べ!(実の)お母さんのことは忘れろ!というのは無茶苦茶すぎる。子供にとって、住む場所が変わるだけでもストレスなのに。

    お父さんサイドから見れば、リョウのことを思ってはいて、理にかなった答えなのかもしれないけれど、リョウ気持ちを一切考慮せずに説明せず、子供のようにわがままを通す。

    読んでいて私は、怒りや悲しみで、まるで腹に石をのまされたように気持ちがが重くなり、しばらく立ち直れませんでした。

    物語は自分を映す鏡


    きっとお父さんは、自分とリョウの気持ちが違うなんて想像がつかなかったんでしょうね。特に私は、HSP気質なので、あんな風に父親に振り回されたら、一生父親を許せないと思う。そしてなぜ、お母さんも、おかあさんも、あんな父親をとことん愛しぬくのか、どうしても理解できませんでした。

    それは私が、父親とおなじく、自分の気持ちが一番大事で、わがままで、傷つきやすい子供だからなのかもしれません。
    私は、いじめにあったりして、人に嫌われるのが怖くて、わがままを極力我慢して常に気をまわしながら生きているのに、なんでこの人は、なんでもかんでも好き勝手をして許されるのか。

    そんな羨ましさとも、憎さともつかない思いが渦巻いてしまい、うまく読むことができなかった。それは、きっと、私の器の小ささ、心の狭さ、ものの見方の偏りによるものでしょう。

    登場人物の言動に自分の感情を映すことで、普段意識できない自分の思考や考え方をとらえることができるし、別の登場人物に寄り添えば、また違った感情を発見する。もしかしたら、物語というのは、鏡のようなのかもしれません。

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    コメント
    こんばんは。
    カキコありがとうございました。
    私もこの父親はどう頑張ってもダメでしたね^^;
    自分が正しい、良いと思うことはみんな良いと思うはずだ!みたいな感じが本当にダメでした。
    結局そういう性格のせいで命を落としたような気もしますし…。
    物語は素晴らしかったです。
    沖縄を旅行している気分も味わえました^^
    • by 苗坊
    • 2017/08/09 10:31 PM
    苗坊さん

    この物語自体はすばらしいのに、どうしても父親が足を引っ張ってしまいますね。

    そして、お母さんとおかあさんがなぜあんなに父親に惚れたのかがわかりません。

    定番のスポットだけじゃなくて、地元の人の外食店とか、マイナーな観光地なのがよかったです。
    なんだか、沖縄に住んでいる気分が味わえますね。
    • by 日月
    • 2017/08/09 11:27 PM
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