八咫烏シリーズ外伝『まつばちりて』阿部智里

2018.04.11 Wednesday

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    人に变化する力をもつ八咫烏の世界を描いた、八咫烏シリーズ外伝『まつばちりて』読了。本編『烏は主を選ばない』の登場人物・松韻の物語です。

    ※八咫烏シリーズ外伝は、2018年現在、電子書籍のみの販売です。
    自分にあった電子書籍えらびのコツ




    烏は主を選ばない

    『まつばちりて』あらすじ


    八咫烏の世界「山内」でも下層の「谷合」、そこの娼家で生まれた「まつ」は女郎になる運命を背負った少女だった。しかし、金烏の正妃・大紫の御前に見出され朝廷で働く「落女」となるよう教育を受ける。「落女」とは女の戸籍を捨て、男の名で務める官吏のことだった。

    やがてまつは松韻と名を変え、大紫の御前に使える落女として出仕する。しかし、朝廷には彼女に対抗する蔵人・忍熊がいた。ことあるごとに対立しつつも、お互いの才覚を認め合うふたりだったが、ある時忍熊からの「松韻を還俗させ、わが妻にしたい」と驚くべき申し入れにより、松韻の運命は大きく変わっていくことに…。

    声に出さない、大人の恋愛


    これまでの外伝は若者たちの片思いや友情、あるいは家族の物語であったのですが、これは大人の濃厚な愛の物語です。

    松韻は大紫の御前派、忍熊は敵対する派閥。愛の言葉など交わしたことがない、決して交わらない松韻と忍熊の愛はだからこそ濃密で美しくもあり、そして悲しくもあります。

    相手の書く文字の美しさ、力強さに惹かれたり、対立をしつつも一定の安定感を保っている関係は、声に出してしまっては成立しないのかもしれない。松韻が窮地に陥った時、忍熊がとった行動はほかの誰にもわからなかったけれど、松韻にだけは伝わっていた。だからこそ松韻も、その愛に応えたのでしょう。

    大人の悲恋は美しく、悲しかったのですが、欲を言えばもっと朝廷でのエピソードや、2人の関係をもっと書いておいてほしかったかな。短編だから仕方がないのだけど、後半ちょっと性急過ぎる気も…。

    文字や和歌で心を交わすのは、平安貴族も同じですね。「超訳百人一首 うた恋い。」の清少納言と藤原行成を思い出しました。
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    この物語では、女を捨てて男として出仕する「落女」という設定が興味深いです。中国宮廷の宦官と似ているようだけれど、あれは「男の機能」を捨てるだけなので、またちょっと違うかな。
    女が男の仕事をする、というのはよしながふみさんの「大奥」シリーズに近いのかもしれません。

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    いよいよ八咫烏シリーズ外伝『烏百花 蛍の章』の発売が決まりました。これまでの短編に加えて書き下ろしも。




    八咫烏シリーズ


    『烏に単衣は似合わない』
    『烏は主を選ばない』
    『黄金の烏』
    『空棺の烏』
    『玉依姫』
    『弥栄の烏』
    外伝『すみのさくら』
    外伝『しのぶひと』
    外伝『ふゆきにおもう』
    外伝『まつばちりて』
    外伝『あきのあやぎぬ』
    外伝『ふゆのことら』

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