2018.02.26 Monday

シンゴジラから、この世界の片隅にまで『大人の教養として知りたい すごすぎる日本のアニメ』

もはやアニメは一部のアニメオタクだけのものではなく、社会に影響を与えるコンテンツとなり始めた。日本のオタク四天王(その中のひとりは庵野秀明)と言われる岡田斗司夫が語る大人の教養としてのアニメ論。

オタク道を極めたものだけが語るアニメ論は深く、そして面白い!

大人の教養として知りたい すごすぎる日本のアニメ
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大人の教養として知りたい すごすぎる日本のアニメ』では、誰でも知っている有名なアニメを、ストーリーの深層にある心理的、社会的要因などから読み解いていきます。

・シン・ゴジラ
・君の名は
・風の谷のナウシカ
・機動戦士ガンダム
この世界の片隅に

どの項目も面白く、ストーリーや登場人物のセリフの裏側にそんな意味があったのか、とおどろかされるものばかり。特に印象深かった「シン・ゴジラ」と「この世界の片隅に」について感想を書いてみました。

シン・ゴジラ


なぜ実写映画である「シン・ゴジラ」が「アニメ」なのか。それは映る映像すべてが庵野秀明の意図する演出によってコントロールされているから。そこには役者の「演技」は存在せず、登場人物は演出のプランに合わせた「表現」によって迫力のある映像がつくられるから。

会議シーンが面白いのは登場人物たちの喜怒哀楽が少なく、無表情での演技にリアリティを感じるから、なんだそう。確かに、日本人てそんなに喜怒哀楽はっきりしてないから、映画の激しい演技に引いちゃうことがあるものな…。

また、ゴジラによって破壊される建物の倒壊ひとつとっても単にCGの演算表現ではなく、そこに庵野秀明の表現が加わっている。だから、見ている方も心地よい。かっこいい映像に仕上がっている。リアルを超えた虚構を作り出しているんですね。

シン・ゴジラに関しては巷のオタクの方々が細部にまで(むしろ細部にこそ)こだわった様々な見解を発表してくれていて、そういうツイートを読むのが好きでしたが、岡田さんのシン・ゴジラへの熱意は本当にすごい。そして庵野秀明という人物をよく知っているからこその見解が深い。

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原子力へのメタファー(暗喩)


「シン・ゴジラ」には表層に現れるもの以外に、さまざまな暗喩が存在します。その代表的なものが「震災時の福島第一原発事故」と「原子爆弾」です。

シン・ゴジラは放射性物質で人間を攻撃する。それに人類がたち向かい勝利する、それは福島第一原発事故で当時の政府ができなかったことへの問いかけであると岡田さんは読み解きます。

実際、ツイッター上でも「未曾有の危機に立ち向かって乗り越える様に希望を見出した」と被災者の方つぶやきを見かけました。シン・ゴジラは人智を超えた危機を乗り越える救いの物語の面もあるのかもしれません。

また、矢口の友人赤坂が「(ゴジラ攻撃に)米に核を撃たせろ」と言うシーンは、それにより核を撃ったアメリカと世界の同情を引き出して復興への足がかりにするべきだという意味で、それには広島・長崎の原爆投下後のアメリカの対応など歴史的な背景があるのだと。

そう考えると、「シン・ゴジラ」というのは、原子力で傷ついた経験を持つ日本人にしか作れないし、理解できないドラマなのかもしれません。

実際、アメリカの核に対する知識は薄く、「インディージョーンズクリスタル・スカルの王国」では原子爆弾実験場で冷蔵庫の中に避難した主人公インディーが爆発後もピンピンしてるし、ドラマ「ハワイ・ファイブ・オー5」では核弾頭を海に落として「ワイキキは無事だ!イエー!」とか言っているので、アメリカ人にとっては「ちょっと強い武器」くらいの認識なんでしょうね…。

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ハワイ・ファイブ・オーシーズン5最終話



この世界の片隅に、そのすごさの秘密。


私は当初「この世界の片隅に」のアニメ化に懐疑的でした。原作漫画が完璧なのに、なぜいまさらアニメにするのだろうと。

しかし、映画を見たらそんな考えは吹き飛びました。号泣もしたし、それよりも「なんだ、これ?」と思ったのです。受けた衝撃の種類がわからない。そんな感じでした。その「なんだかわからないけれど、すごいもの」の正体をうまいこと解説してくれました。
ほんとうにすごいものを見たら、人はなかなか言葉にできなくなります。

なるほど、こういうことだったのか。

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この世界の片隅に

動きのリアルさ


「なんだかわからないけれど、すごいもの」の正体のひとつが動きでした。なるほど、たしかにそうかも。ふつうのアニメにくらべて動きが丁寧で、ゆったりとしている。
これはショートレンジという細かい動きをたくさん加えてつくる技法なのだそうで、これが、わたしたち観客を昭和19〜20年の呉に連れていく装置のひとつとなっているのでしょう。

すずさんのリアルさ


他のインタビュー記事でも片渕須直監督がかたっているのが「すずさんを存在させるための徹底したリアルの追求」です。当時の資料を調べ尽くして、原爆が落ちる前の広島の風景を再現し、呉の街を再現してみせました。おそらく、当時の天気なども反映されているのと思います。

(片渕監督ツイッター「きょうのすずさん」でも当時の天気とすずさんの日常が日記形式で綴られている)

当時の風景、天気、風俗、日々の出来事(空襲警報とか、訓練とか)が丁寧に描かれていて、映画を見ていくと自分がすずさんと一緒に隣組で「物資が少のうて困る」と頭を抱えている。はっとして現実にもどるけれど、また引き込まれて、すずさんと一緒にいる。そんな気持ちになるんです。

教養としてのアニメとは


ストーリー上に現れる表現は実はほんの一部であって、すぐれた監督ほど、その深層に意図を含んでいて、何気ないシーンでそれを表していたります。そこには「虚構」だけではなく、現実の問題や歴史がベースにあったりする。

表層に現れるわかりやすいドラマ部分だけではなく、監督たちの演出の意図を読み解き、その意味を調べ、考えることが「教養」となるのかもしれません。

まあ、オタクは言われなくても(言われた以上に)細部を調べてしまうものですが。

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