がんとは何なのか。『がん消滅の罠 完全寛解の謎』岩木 一麻

2018.06.21 Thursday

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    このミステリーがすごい!大賞を受賞した『がん消滅の罠 完全寛解の謎』読了。がんや先進医療についても学べるので勉強になります。

    がん消滅の罠 あらすじ


    日本がんセンターの医師・夏目は、担当した末期がんの患者が次々と寛解(がんが消える)するという通常ではありえない現象に遭遇する。一方、がん患者が寛解によりが巨額の保険金支払いが行われたことに夏目の友人で保険会社課長の森川は、部下の水嶋とともに調査を始め、夏目のもとへ。

    夏目は森川、友人で研究医の羽島とともに完全寛解の謎を調査するのだが…。

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    がんを知る


    一体「がん」とはなんなのか、将来、自分やほかの身内ががんになったらどうしたらいいのか。本を通じてそうした現代のがん治療についての知識も知ることができました。「がん」とは細胞がコピーされるときに生じる「バグ」ので、常に体内で発生するものの、通常は免疫細胞ががん細胞を攻撃することで健康でいられるけれど、がん細胞が
    増殖することで「がん」になっていくんですね。

    自分の細胞から発生したものだから、なかなか攻撃が難しく抗がん剤治療は重い副作用を生じることもあります。
    また、現代のがん治療はがんを完全除去できない場合の「がんとともに生きる」という治療方針があるのだとか。

    日本人の2人に1人ががんになる時代、がんについて知れたという意味でも興味深い本でした。

    細胞擬人化まんが「はたらく細胞」でもがん細胞と免疫細胞との攻防が描かれます。

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    救済と復讐


    ただ、ストーリーとしては納得がいかない面も多々ありました。いくら遺伝子レベルの治療が進んでいるとはいえ、がん細胞を自由自在にコントロールできるとは到底思えない。それができるのは「神」だけではないのか…。

    そう思った時、ああ、だからキリスト教なのかと。犯人はもしかしたら「神」になりたかったのかもしれない。愛するものを奪われたことで一方では貧しきものに「救済」を与える神、もう一方で戒律を守らないものに「試練」を与える神として。

    しかし、人間は神にはなれない。この結末のあと犯人がどうなっていくのか、おそらく自滅するのではないかと私は考えます。

    面白いけど納得がいかない(ここからネタバレ)


    「がん寛解」というアイデアはすごく面白いけど、犯人たちの動機にいまひとつ共感できなかったなあ。家族を失ったことで「壊れて」しまったのかもしれないけれど。

    最後の落とし方は面白かったけど、意外な顛末というわけでもない。もうひとりの犯人が、どうしてあそこまで尽くすのか、理由を説明されてもバックボーンが描かれていないので「ああそうなんだ」と、納得はするけど驚きはなかったなあ。

    羽島と犯人の娘との関係も、あれだけの説明では納得がいかないし…。


    「このミステリーがすごい!」で賞とったけど、動悸がまったく納得いかないのはこれもそうだな…。

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    私は「館シリーズ」のように一見、荒唐無稽な設定でもプロットも動機も納得できて「驚かせてくれる」話のほうが好きだな…。

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