2018.05.12 Saturday

『烏百花 蛍の章 八咫烏外伝』阿部 智里

八咫烏シリーズの短編集『烏百花 蛍の章 八咫烏外伝』これまで電子書籍のみの発売であった短編が、新たに書下ろし2話を含む外伝集として発表されました。

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電子書籍で発売された4話は以下の通り。

『すみのさくら』


浜木綿の小さい頃のお話。南家の姫として両親の愛情を一心に受け、何不自由なく育った浜木綿。ある日両親の失脚から宮烏の身分を剥奪され、寺に預けられることに。最初は境遇を受け入れられず脱走したり復讐を考える浜木綿だったが、失意の中すごすうち、ある日上皇につれられ若君が寺にやってくる。

若宮との出会いで浜木綿のかたくなな心も次第にほどけていき…

外伝『すみのさくら』


『しのぶひと』


若宮の正室・浜木綿の侍女となった真赭の薄。あるとき真赭の薄と雪哉の間に縁談がもちあがる。突然の話に驚き憤る真赭の薄だったが、その縁談を若宮夫婦に勧めたのが澄尾だと知り憤る。しかし、その縁談の裏には澄尾のある思惑があって…

外伝『しのぶひと』

『ふゆきにおもう』


北領・垂氷郷の郷長の下の息子2人が行方知れずになった。母親の梓は必死で探すものの見つからない。そんな時・息子雪哉とその生母・冬木の噂を耳にした梓は、北本家の姫・冬木のことを思い出す。

梓は昔、北家の姫・冬木の侍女だった。冬木は病弱ゆえ、意地のわるいところがあったが、梓のように気に入ったものや、小さく無垢なものにはやさしかった。そして、俯瞰的に物事を見る目と、明晰な頭脳を持っていた。

外伝『ふゆきにおもう』

『まつばちりて』


八咫烏の世界「山内」でも下層の「谷合」、そこの娼家で生まれた「まつ」は女郎になる運命の少女だったが、金烏の正妃・大紫の御前に見出され「落女」となるよう教育を受ける。「落女」とは女の戸籍を捨て、男の名で務める官吏のことだった。

やがてまつは松韻と名を変え落女として出仕する。しかし、朝廷には彼女に対抗する蔵人・忍熊がいた。対立しつつも、お互いの才覚を認め合うふたりだったが、忍熊からの驚くべき申し入れにより、松韻の運命は大きく変わっていくことに…。
外伝『まつばちりて』

『わらうひと』あらすじ


「弥栄の烏」直後のお話。猿との決戦後、真赭の薄(ますほのすすき)のもとに澄尾が訪ねてくる。澄尾から正式に愛の告白を受けた真穂の薄はそれを断るものの、澄尾から返ってきたのは意外な答えで…。

ありゃ?真赭の薄は澄尾のこと好きじゃなかったのか。正直なところ、私はこの二人の話は「しのぶひと」まででよかったと思う。二人の関係性を匂わせる程度にしておいた方が今後の展開に期待がもてたし、すべてを語ってしまっては興ざめという気も。(「まつばちりて」ではあれほど描写を削ったのに)

ただ、言いたいことを言い合える澄尾と真赭の薄は、色恋は抜きにしてもいいコンビになってきていて読んでいて楽しい。

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その他、『空棺の烏』に登場した雪哉の仲間・千早と結の兄妹喧嘩についても。こちらも女子が強いです。また、結が歌う外界から伝わった『外唄』という文化が存在することがわかります。百年前の曲ということは、もしかしたらこれなんじゃないかと。

『ゴンドラの唄』は『命短し恋せよ乙女』と歌われる大正時代の流行歌。今でも時々引用されています。

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『ゆきやのせみ』あらすじ


『黄金の烏』直後のお話。忠誠を誓いはしたものの、相変わらず若宮に振り回されている雪哉。雪哉は地方への視察の際、またフラフラとお忍びで出かけ、戻らない若宮を探しにいくと、ようやくみつけた若宮(と澄尾)は何故か牢の中だった…。

八咫烏シリーズ外伝 ゆきやのせみ【文春e-Books】




書き下ろし2編は精彩を欠くが、ほかの4編は上質


う〜ん、正直書下ろしの2話は、他の4話に比べてクオリティが低い気がします。なんだか締切に追われてやっつけで書いたようで。

短編は短い文字数の中で「新しい設定」「登場人物の紹介」「物語の起承転結」を入れ込まなければならないから長編より技量が求められるとおもうのだけど、これまで本編の八咫烏シリーズの冴えが、書き下ろしではみられない。

『わらうひと』は真赭の薄と澄尾のキャラクターに助けられた部分が大きいし『ゆきやのせみ』なんてタイトルそのまんま、とくにおもしろいことが起こるわけでもない、新しい世界観が描かれるわけでもない。

正直、前に発表された短編のような展開を期待していたため、肩透かしをくらいました。「これはあくまで箸休めのコメディです」と前置きがあればよかったかも。話の並びを変えるとかしないと、『ゆきやのせみ』をラストにもってくるのはキツイな…

それなら『烏に単衣は似合わない』のあせびや大紫の御前など、個性的なキャラクターを掘り下げた話などでもよかったのでは…と思うのですが。阿部智里さんは短編は今後に期待することにしましょう。


そう考えると、小野不由美さんの短編の冴えは凄まじい。短い文章に世界がぎゅうっとつまっていて長編をよんでいるくらいの満足感があったもの。

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八咫烏シリーズ


『烏に単衣は似合わない』
『烏は主を選ばない』
『黄金の烏』
『空棺の烏』
『玉依姫』
『弥栄の烏』
外伝『あきのあやぎぬ』

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