[舞台感想]演劇集団キャラメルボックス 無伴奏ソナタ2018 東京公演

2018.05.18 Friday

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    4年ぶりの再再演となった演劇集団キャラメルボックスの「無伴奏ソナタ」。キャラメルボックスにとっても、そして私たち観客にとっても大事な演目です。

    内容も知っているのに、やっぱりラストは号泣。舞台は難しくてわからないと思っている人にも見てもらいたい舞台です。

    無伴奏ソナタあらすじ


    近未来のアメリカ。そこでは人間の適性を判断するシステムによって人生が決まる。クリスチャンは赤ん坊の頃受けたテストで音楽の天才性を認められ「メイカー」となる。

    2歳で親と別れたクリスチャンは世間との接触を禁じられ、森に住み自然を教師に音楽を作り続けていた。
    ある時、一人の男が彼に音楽を手渡した。バッハという男の音楽を。その日から彼の運命は大きく動いていく…。

    音楽の天才クリスチャンが音楽を禁じられてしまう悲劇と、彼を取り巻く人々の人間模様が描かれます。

    2014年無伴奏ソナタ公演映像。

    こちらはDVD。

     



    原作はSF小説


    原作はアメリカのSF作家オースン・スコット・カード。敬虔なクリスチャンでもある彼の小説は、キリスト教の試練や赦しの思想が描かれているため、SFが苦手な方にも読みやすいと思います。

    無伴奏ソナタ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF カ 1-26)

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    前回公演との相違点


    あくまで私個人の感想です。前回2014年のクリスチャンはまだあどけなさが残る少年のような印象でした。無邪気に音楽をつくり、それ以外には残酷なほど興味をもたないような。だけど今回のクリスチャンは、少年のような無邪気さを持ちつつも、もうすこし成長した青年のような印象を持ちました。

    禁じられているバッハの音楽に苦悩する姿や、禁を破ってからやがて訪れる罰を静かに受け入れる寛容さは、成熟した人間味を感じさせました。これは、主演の多田直人さんがさまざまな舞台に出演し培ってきた経験が上乗せされた結果なのかもしれません(あくまで感想です)

    少しネタバレになりますが、ラスト近くのあの声、かすかな声なのに、私のいた後ろの客席にも声が届くんです。本当にすごいわ…。


    大好きなことを禁じられたら


    法を破ったことで政府の人間(ウォッチャー)に音楽を取り上げられたクリスチャン。別の仕事についても、どんな罰を与えられても、どうしても音楽から離れることができなかった。
    それはきっと、音楽は彼の一部だったから。

    架空の話、舞台の話…と考えずに、もし自分が好きなことを禁じられたら、あるいは自分の好きなアーティストが音楽を禁じられたら…そう考えるとこの残酷さが身近に感じられるのではないでしょうか。

    政府の人間がクリスチャンに罰を与えるたび「法はあなたがたを幸せにするものです。」と繰り返すのが恐ろしかった。アフタートークで「初演のときよりも、さまざまな法律が決められ私達の生活を縛っている」というお話をされていましたが、果たしてほかから与えられた秩序が、個人の幸せをすべて管理できるのか…考えさせられました。
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