『菓子屋横丁月光荘 歌う家』ほしおさなえ

2018.12.08 Saturday

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    愛読していた『活版印刷三日月堂』が終了して寂しくおもっていたら、ほしおさなえ先生の川越シリーズ新刊『菓子屋横丁月光荘』が刊行されました。

    タイトルにある「菓子屋横丁」とは、埼玉県川越市で駄菓子や土産物を売る店が軒を連ねている、人気観光スポットです。




    『菓子屋横丁月光荘』あらすじ


    大学院生の遠野守人は幼い頃から古い家の『声』を聞いたことができた。あるとき、担当の木谷教授から「川越の古い家の管理人をやらないか」と声をかけられる。

    通学時間や、今の家の立ち退き問題から守人は管理人を引き受け、川越の家に住むことになったが、その家からはかすかに誰かが歌うような声が聞こえた。

    しばらくして守人は近所の人たちから、かつて月光荘と呼ばれたその家に住んでいた人たちの話を聞いた。そこにはいくつかの家族が住んでいて、さまざまな思い出が家に染み込んでいた。

    そんな思い出に呼応するように家はまた歌い出し、守人もまたその声に呼応するように今まで抑えていた感情を吐きだすのだった…。

    家の声、家の記憶


    守人が聞く家「声」は、家自身の声もあるのですが、月光荘はそこに住んでいた人々の「思い」を記憶していて、どうやらそれを伝えたたがっているようなんです。

    なぜ、守人には家の声が聞こえるのか。

    今の守人は両親を亡くし、住んでいた家からも離され、厳格で傲慢な祖父に育てられました。そんな祖父も亡くなり、よるべのない身の上です。

    そんな彼だから、家の「声」を聞き、寄り添うことができたのかもしれません。

    特に最初の「歌う家」のお話は物語の最後に歌の謎が明かされるのですが、その描写が詩のようで美しいです。読んでいてぽおっと心が暖かくなる文章です。

    月光荘の謎がとけた後も、守人は管理人として川越の古い家にまつわる出来事に関わるようになり、別の家にはまた違った形の家の思いが残っていて、それを聞くことになります。

    これから守人はどんな家の声を聴くことになるのか、そこにはどんな物語があるのか…




    菓子屋横丁月光荘シリーズ


    『菓子屋横丁月光荘 浮草の灯』
    『菓子屋横丁月光荘 文鳥の宿』

    活版印刷三日月堂シリーズ


    『活版印刷三日月堂 星たちの栞』
    『活版印刷三日月堂 庭のアルバム』
    『活版印刷三日月堂 海からの手紙』
    『活版印刷三日月堂 雲の日記帳』
    『活版印刷三日月堂』の舞台を訪ねて

    レビューポータル「MONO-PORTAL」
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