2019.03.23 Saturday

『占星術殺人事件』島田 荘司

日本ミステリ界の名作『占星術殺人事件』読了。トリックの斬新さに度肝を抜かれました。この小説にはミステリの定番「読者への挑戦状」が途中で挟まれているのですが、材料が提示されているとはいえ、まったくわかりませんでした。

これが約40年前に書かれた物語だとは感じられません。改訂版ということもありますが、時代を感じさせない、すごいミステリでした。猟奇的殺人ではありますが、極端なグロ表現ではないので純粋にミステリが楽しめます。

物語は、昭和11年に起こった猟奇殺人「占星術殺人事件」を40年後の昭和50年代に、占星術師の御手洗潔とワトソン役の石岡和己が依頼され、この事件の真相を探るというもの。

雪に残った謎の足跡、密室殺人、6人の乙女たちのバラバラ死体、占星術になぞらえた殺人計画など、ゾクゾクする謎が一体どのように説かれるのか、犯人は誰なのか…「読者への挑戦状」によると物語の中であらかじめ提示された
人物の中にいるらしいのですが、謎を解いている時にはほとんどが死んじゃっているし、正直お手上げでした。



しかし、殺人のトリック、それもバラバラ死体のからくりがわかった時の驚きといったら…!不可能と思われる事柄も、ほんの少し、ピンをはずすだけでこんなにも簡単に形が整うとは…。このどんでん返しは「十角館の殺人」の犯人を知った時以来の衝撃でした。


昭和という時代


謎解きのワクワクと、トリックの衝撃が素晴らしかったのですが、読んでいて切なかったのは犯人の心情です。
ミステリで犯人に同情することは多々あるのですが、この「やりきれない感じ」は昭和ならではじゃないかなと思うんです。

犯人が身の上について少しだけ書かれた文の中にも、その裏にある悲痛な経験がすけて見えます。

平成の世の中ならばまだ、悲惨な環境から逃げ出すこともできたでしょうが、家の因習や家族制度の力が強かった昭和では、そこから逃げ出すのが今よりもずっと難しいかった。だからあんな事件がおこってしまったのかもしれません…。

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