『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ

2019.07.02 Tuesday

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    本屋大賞を受賞した瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』読了。この話は多様性が叫ばれる今だからこそ、受け入れられたのではないかと思う。「普通」や「幸せ」は、ひとりひとり違うものだから。

    あたらしい家族のかたち


    何人もの親の間を、バトンを渡されるようにして育てられた優子。でも、それはちっとも不幸なことじゃなかったし、彼女にとってはそれが「普通」のことだった。

    昔であれば「普通じゃない=かわいそう=不幸」という単純な図式で片付けられそうな、優子の家庭事情。(実際一部の人からはそう思われている。)

    産みの母を幼い頃に亡くし、父親とふたりだった家族に継母の梨花さんが加わり、その後実の父は海外に。その後は梨花さんの再婚相手・泉ヶ原さんを経て、現在は3人目の父・森宮さんと暮らしている。

    これまでの(今も)日本の家族は「血がつながった親子が、同じ家に暮らす」ことが理想とされてきました。それが「普通」で、そこからはみ出たものは「不幸」で「かわいそう」という認識が無意識レベルですりこまれているほどに。

    でも「家族」って、「幸せ」って、大切な相手と一緒にいて楽しいのが一番大事なんじゃないかな。それを、優子とその親たちは体現して見せてくれているような気がします。



    最後の父親、森宮さん


    優子の最後の父親になった森宮さん。友達ともめていた優子に「元気がでるから」と、ひたすら餃子をつくったり、優子にピアノプレゼントしようとして断られると落ち込んでみたり。

    やがて優子が結婚相手を連れてくると「あの風来坊」といって父親らしく(?)邪険にするし。

    森宮さんが思う父親像は、残念ながらちょっとずれている。
    けれどそこがいいんだよなあ。こんな父親と暮らしてみたいと思うもの。

    しかし、血のつながらない(しかも成長した)子どもを引き取ることに戸惑いはなかったのか。森宮さんのこんな言葉が、答えなのかもしれません。
    自分の明日と自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日がやってくるんだって。親になるって、未来が二倍以上になることだよって。(中略)未来が倍になるなら絶対にしたいだろう。


    この言葉のすごいところは、子供の明日を、自分の所有物と考えてないことだと思うんです。

    親は時に自分の挫折や期待を子どもに背負わせ、自分の人生の意趣返しをすることがありますが、森宮さんや梨花さん(泉ヶ原さんや実の父親も)は優子が「自分以外の未来」を見せてくれるのを、むしろワクワクして見守っている。それが、この親たちのすごいところだなあって思うんですよ。

    おまけ


    私の森宮さんのイメージは、俳優の高橋一生さんです。映像化されたら高橋一生さんに演じていただきたい…。

    瀬尾まいこ作品感想


    「おしまいのデート」
    「ありがとう、さようなら」
    「見えない誰かと」
    「天国はまだ遠く」
    「優しい音楽」
    「強運の持ち主」
    「図書館の神様」
    「幸福な食卓」
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