八咫烏シリーズ外伝『なつのゆうばえ』阿部 智里

2019.07.19 Friday

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    八咫烏シリーズ外伝『なつのゆうばえ』読了。八咫烏の帝「金鳥代」の皇后である「大紫の御前」の物語です。
    この外伝が始まってからせひとも「大紫の御前」の物語がよみたいと思っていました。

    なぜなら、八咫烏シリーズの「大紫の御前」といえば、主人公の若君と敵対するラスボス的な女性だから。そんな敵役の彼女を、別の角度から見たらどんな物語が潜んでいるのだろうか…と思っていたのです。

    この外伝シリーズは、本編では描かれなかった登場人物のバックボーンや、心情、山内の生活や風俗を細やかに描いてくれるため、外伝を読んでからまた本編を読むことで、物語をより深く感じることができるんです。

    「なつのゆうばえ」あらすじ


    小さい頃から「南本家の姫」として、誇りと振る舞いを叩き込まれてきた夕蜩(ゆうぜみ)は、やがて「金鳥代」となる若宮に嫁ぎ、皇后となることを運命づけられていた。しかし、夫となる若宮は愚鈍で彼女を嫌い、唯一彼女を愛してくれた両親もなくしてしまう。

    生きる意味さえ失いかけた中で、彼女が見つけたのは…


    彼女の行動原理は意外なところにあったのですね。誰も信用ができない、だれも愛せない世界で、彼女が手に入れた行動原理ははたから見ると歪んでみえるかもしれませんが、それこそがたったひとつ、彼女に残された「自由」だったのでしょう。

    そんな複雑な人間模様と対をなすように、夏の庭、ゆうばえの描写がとても美しくて、匂いまでも感じられるようでした。

    「愚鈍な皇帝に賢い皇后」という構図に、ロシアのエカテリーナ2世を思い出しました。ダンナがアホだと権力と別の愛人くらいしか頼るものないものなあ…




    『烏百花 蛍の章 八咫烏外伝』は、電子書籍版の短編と書き下ろし2編を加えた外伝集


    八咫烏シリーズ


    『烏に単衣は似合わない』
    『烏は主を選ばない』
    『黄金の烏』
    『空棺の烏』
    『玉依姫』
    『弥栄の烏』
    外伝『すみのさくら』
    外伝『しのぶひと』
    外伝『ふゆきにおもう』
    外伝『まつばちりて』
    外伝『あきのあやぎぬ』
    外伝『ふゆのことら』
    外伝『なつのゆうばえ』
    外伝『はるのとこやみ』
    外伝『ちはやのだんまり』
    外伝集『烏百花 蛍の章 八咫烏外伝』
    コミカライズ『烏に単は似合わない』
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