アバンギャルドとロボット時代劇『戦前日本SF映画創世記: ゴジラは何でできているか』

2019.08.27 Tuesday

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    昭和29年『ゴジラ』という前人未到のSF映画が完成するまで、日本映画はどのようにしてSFの表現を模索してきたか。

    日本映画の黎明期の稚拙なトリック映画から、キングコングに影響を受けた和製映画、はたまたアマチュアの自主制作まで、さまざまなフィルム・資料を調査し、日本のSF映画のルーツに迫るドキュメントです。

    マニアックなテーマではありますが、戦前映画、SF映画が好きな人にはたまらない内容です。



    アバンギャルド映画「狂った一頁」


    日本SF映画の黎明期は、SFの物語が一般的ではなく、撮影テクニックにその後のSF映画に通じる系譜をみています。
    最初に挙げられるのは大正時代に作られた「狂った一頁」という実験映画。

    精神病院を舞台にした幻想世界を、最新の撮影技法を使って作られたものですが、これが怖い。直接脅かす感じではないけれど、モノクロ、能面、狂人たちなど、見ているだけでゾッとします。

    興味がある方はYou Tubeにもありますので見てみてください。夜見ると眠れなくなりますが…

    この映画には多重露光やオーバーラップなど、当時革新的な技術が使われています。若き日の円谷英二(当時は英一)も参加していました。


    なんでもありのSF時代劇


    昭和に入るとようやくSFの概念が定着しつつあり、アメリカの「キングコング」が上映されると日本でも「和製キングコング」など亜流の作品が作られますが、着ぐるみをつかったチープな映画が量産されました。

    当時、映画は花形産業だったため多くの映画プロダクションが乱立。中小の映画会社は予算もなく、チープさを逆手に取ってなかなかおもしろい映画を撮っていました。時代劇にロボットを登場させたり、侍と河童を戦わせたりと、チープなのですが、スチール写真を見るとなかなかおもしろく、ちょっと見てみたいと思うのですが、こうした戦前のB級映画は殆どが現存せず残念。

    紛失やパクリは日常茶飯事。戦前の映画事情


    しかし、こうした戦前映画の調査は大変に難しいのだとか。なぜなら『紛失やパクリは日常茶飯事』だったからです。

    同じ著者の『映画探偵: 失われた戦前日本映画を捜して』を読むと、戦前は映画のフィルムを上映側が勝手に編集したり、パクったり、捨てちゃったりが普通に行われていたのだとか。もちろん、戦争による紛失も多いのですが、そうした事情で正確なストーリーもわからないSF映画が多いのは残念です。

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    そんな中、お金持ちの趣味で撮影したアマチュア映画の方が商業映画より保存がよく、クオリティが高い映画があるのだそう。


    円谷英二がゴジラを創るまで


    円谷英二の師匠・枝正義郎がつくった幻の映画「大仏徘国」は、大仏が起き上がり街を歩くというただそれだけの映画なのですが、スチール写真はインパクトが強く、見てみたくなります。ただこれもフィルムが残っていません。2018年にリメイクされましたが、映像をみると牛久大仏が歩いたらこんな感じではないかと。

    大きな存在が徘徊する、というのは「ゴジラ」と通じるものがある気がします。



    円谷英二は「ハワイ・マレー沖海戦」という戦争映画であまりに精巧な模型を作ってしまったがために、GHQが本物だと信じ込み公職追放なったり苦労したけれど、ちゃくちゃくと特撮技術を磨き「ゴジラ」を作り出しました。

    こうしてみると、SF映画の黎明期は試行錯誤、遅い歩みではありましたが、その遺伝子は少しずつ蓄えられ、やがて「ゴジラ」でカンブリア紀の生物のごとく大爆発をおこした、そんな風に感じました。

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