蓮丈那智フィールドファイルIV 『邪馬台』北森鴻

2019.09.11 Wednesday

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    民俗学ミステリ・蓮丈那智フィールドファイル初にして最後の長編『邪馬台』読了。異端の民俗学者・蓮丈那智が邪馬台国の謎に挑むと同時に、謎の文書「阿久仁村遺聞」にまつわる滅びた村の秘密に迫ります。

    あとがきには作者・北森鴻氏の急死により途絶えた物語を、氏のパートナーだった作家の浅野里紗子氏があとを引き継ぎ完成させたとありました。

    未完の、それも結末が残されていない作品を引き継ぐのは並大抵の覚悟ではなかったでしょう。
    しかしこうして物語を世に出してくれた作者と関係者の方々には感謝しかありません。

    今回、私が興味深かったのは「阿久仁村遺聞」よりも那智先生による邪馬台国の推理です。確かに、このように考えれば邪馬台国の位置についても説明がついてしまうのです。



    邪馬台国とは何か


    邪馬台国に関しては古くは江戸時代からその「場所はどこか」について論じられてきましたが、那智先生は「そんなものは考古学者にでもまかせておけ」と言い放ち、独自のアプローチを試みます。

    それは「邪馬台国はどこか」ではなく「邪馬台国とは何か」、そんな国家であったかというものです。那智先生の推理によると、古代の国家は当時最強のテクノロジーである「鉄」の製造が密接に関わっているのだとか。

    「鉄」は武器として持てば強大な軍事力となり、農具に使えば農業技術が向上することで食べること以外の余力、「酒」を作り出すこともできる。

    邪馬台国とは、「鉄」と「酒」がキーワードとなるのではないか。
    そこに、助手の三國くんが提唱する「滅びの民俗学」説を加えると…。もちろん、実証されない推理ではあるのですが、歴史外の視点から邪馬台国を捉えるとこんな風にも考えられのか、と改めて那智先生の思考力に驚かされました。

    奇しくも有名な『銃・病原菌・鉄』でも、古代、鉄がもたらす生産性の向上と、その余力で国家が形成されると書かれていました。

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