漫画『烏に単は似合わない』松崎夏未

2020.07.07 Tuesday

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    阿部智里さんのファンタジーミステリ『烏に単は似合わない』のコミカライズ版が全4巻が完結。
    原作の雰囲気と展開をいかしつつ、独自の表現が素晴らしいまんがでした。

    いままで脳内で想像していた登場人物や、桜花宮の壮麗なお屋敷、宮烏たちの美しい衣装など、実際に絵になることでわかりやすく美しく、そして恐ろしく表現されています。



    『烏に単は似合わない』あらすじ


    人の姿をとる八咫烏の一族が暮らす山内。世継ぎの若君の正室「桜の君」を決める「登殿」には、山内の東西南北を納める大貴族の家から四人の姫君が選ばれる。

    東家の姫・あせびは、姉の代わりに急きょ「登殿」することになり、山内の中央、桜花宮へと向かう。夏殿には南家、秋殿には西家、冬殿には北家と、それぞれの家を背負った姫たちの美しくも雅な戦いの始まりだった。

    山内の事情に疎いあせびは、はじめのうち桜花宮の雅な暮らしに戸惑うものの、他家の姫たちと競いつつ交流を深めていく。やがて政治や家の事情が絡みあい、姫たちの闘争が深まるが、かんじんの若君は現れない。そして桜花宮で恐ろしい出来事が…

    詳しくはこちら→小説『烏に単は似合わない』



    コミカライズ『烏に単は似合わない』の魅力


    松崎夏未さんの表現力、すばらしいですね。もともと阿部智里作品のファンで、以前から八咫烏シリーズの絵をSNSでアップしていたのを阿部智里先生がみて、コミカライズに抜擢されたんだとか。

    作品のファンということで物語の理解度が高く、世界の再現力がとても高い。八咫烏シリーズの大発明システム「羽衣」から八咫烏に変わる描写もすばらしい。

    「羽衣」とは


    「羽衣」は、八咫烏が鳥から人になるとき、意識でつくる仮の衣のようなもので、羽を变化させたような黒の着物姿になります。(ただし、貴族たちは烏の姿になることはないし、やりかたも知らない)

    通常、ファンタジー世界で獣から人になるときは裸になってしまうので、いったん服の着脱が必要です。

    しかし「羽衣」というシステムがあると、いちいち着替える必要がないので、物語を中断させずに先へすすめることができるし、ビジュアル的にも美しい。ほんとこの「羽衣」を発明した阿部智里さん、天才だわ…

    そして、今回、その「羽衣」のシステムが物語の重要な鍵になっています。

    特に素晴らしいのが後半の描写


    とくに私が好きなのが、後半の描写です。前半は美しく、優雅に競っていた姫たちが一転、感情をむき出しにしていくところが、本当に見事。

    特に白珠のキレっぷりと、藤浪の焦燥の表情が醜くていい。高貴な姫は感情を表に出さないように教育されているのですが、そうした彼女たちが、人目もはばからずに醜い表情をむきだしにする姿が迫力がありました。



    ここからネタバレ


    私は小説を読んでから漫画を読んだのですが、結末を知っているからこそ、あせびの愛らしくも無垢な姿が恐ろしく思えます。漫画でも彼女だけなんですよ。激しい感情の起伏を見せないのは。

    最後、謎解きが終わってあせびの涙するシーン、あの1ページはすごい。
    美しいあせびの泣く姿、彼女の下には、たくさんの八咫烏たちの屍が敷かれている。
    あの絵だけで、あせびという姫のすべてを表していますね…。

    外伝外伝『はるのとこやみ』では、本作にも登場したあせびの母、浮雲の話です。こちらも合わせて読むと、この母娘の行動にはゾッとさせられます…

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    コミカライズでは『烏は主を選ばない』』の主人公・雪哉も登場。この頃はまだ猫をかぶって…いや、初々しい少年のようでしたね。雪哉の話もコミカライズしてほしいです。



    八咫烏シリーズ


    『烏に単衣は似合わない』
    『烏は主を選ばない』
    『黄金の烏』
    『空棺の烏』
    『玉依姫』
    『弥栄の烏』
    外伝『すみのさくら』
    外伝『しのぶひと』
    外伝『ふゆきにおもう』
    外伝『まつばちりて』
    外伝『あきのあやぎぬ』
    外伝『ふゆのことら』
    外伝『なつのゆうばえ』
    外伝『はるのとこやみ』
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