『幻綺行 中村春吉秘境探検記 完全版』横田順彌

2020.08.25 Tuesday

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    明治後期。多くの日本人が、これまでの鎖国の反動のように、世界へ進出しました。目的は商業、開拓、外交とさまざまでしたが、その中でも特徴的だったが「冒険家」です。

    当時は宇宙や深海に行くのと同じく、海外の、それも未開の土地へ行くことはそれだけで「冒険」だったのです。

    主人公の中村春吉は実在の人物で、「自転車世界無銭旅行」を成し遂げた冒険家です。義にあついバンカラな気質と大胆な行動で、ジャングルや砂漠で起こる不可思議な現象に立ち向かいます。



    『幻綺行』 あらすじ


    中村春吉はシンガポールに向かう途中、スマトラ(現在のインドネシア)で、自殺しようとした娼婦・志保を成り行きで身請けすることになる。しかし身請けの金は友人のもの。

    さしあたって現金が必要となった春吉は、現地の職員・石峰君とともに山田長政の秘宝探しにジャングル探検に向かうことに。

    しかしそこには、遊郭からの刺客と人間を操る食中樹が…。

    スマトラからチベットでの悪徳坊主たちとの対決、アラブの砂漠では砂の魔神と対決し、ロシアではバラバラ殺人に出くわすなど、中村春吉の行くところ、艱難辛苦があちらからやってきます。

    旅の仲間に加わった志保さんと石峰くんが春吉の破天荒な行動を助け、3人で窮地を乗り切っていきます。

    志保さんの身の上ですが、どうやら、騙されて女衒に売られ、スマトラまで流れ着いたようです。明治時代、海外における日本人の移住先駆者は娼婦でした。彼女たちは売られたり騙されたりして、異国で身を売らなければならなかったようです。

    横田順彌さんは『義侠娼婦・風船お玉』でも、アメリカで娼婦になった日本人女性冒険を描いています。

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    日本版インディ・ジョーンズ


    純粋な冒険譚かとおもいきや、春吉たちが遭遇するのは、巨大な食虫植物や、なんとUFOまで!ジャンルを見ると「探検SF」とあるので、国や都市名は実在でも、そこでおこる出来事はフィクションとして書かれています。

    荒唐無稽に思えるものの、快男児中村春吉がいくところ、前人未到の土地では、なにがあっても不思議ではないように思われます。明治時代の探検には、今の宇宙旅行くらいの衝撃があったでしょうから。

    例えるなら日本版インディ・ジョーンズというところでしょうが、中村春吉のほうがもっと豪快でいきあたりばったりで、でもなぜか応援したくなってしまうキャラクターなんです。

    BGMには太田螢一の人外大魔境を


    ところで、『幻綺行 中村春吉秘境探検記』を読みすすめるうちに私の頭の中ではある音楽が流れ始めました。
    それは、太田螢一の「人外大魔境」という1984年に発表されたアルバムです。

    「人外大魔境」は、もともと太田螢一さんが小栗虫太郎の冒険小説「人外魔境」にインスパイアされて作ったそうなので、未開の土地の冒険の雰囲気にぴったり。

    しかし「魔海サルガッソウ」「西安の子供市場」などは、タイトルも曲調もおどろおどろしいので、トラウマになりそうな曲が多いですが…。

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