ミステリーランドシリーズ『ラインの虜囚』田中芳樹

2020.09.01 Tuesday

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    夏になると読みたくなるミステリーランドシリーズ。今回は『銀河英雄伝説』の作者、田中芳樹先生の『ラインの虜囚』です。ナポレオン没後のフランスを舞台に、ひとりの少女と、彼女を助ける3人のおじさんたちの冒険譚。

    歴史の中に、冒険と活劇、そして謎解きが加わり、子どものようにワクワクしながら読みました

    装丁デザインも挿絵もかっこいいので、できたら単行本で読んでみてください。


    『ラインの虜囚』あらすじ


    コリンヌ・ド・ブリクールは、フランス人の父とカナダ先住民の母を持つ少女。父親が亡くなり、絶縁中の祖父・ブリクール伯爵に会うためフランスへやってきた。

    しかし、伯爵はコリンヌを認めず、「50日のうちにライン河のほとりに建つ双角獣(ツヴァイホルン)の塔に幽閉されている人物が、死んだはずのナポレオンかをしらべよ。」と、いう難題をつきつけられる。

    コリンヌは旅の仲間を探すためパリの街にでかけ、借金取りに追われるアレクサンドル・デュマという天才(自称)作家、紳士的だが得体のしれないラフィット、飲んだくれの剣士・モントラシェをみつける。

    かくて少女と3人の男たちはラインを目指すが、ならず者「暁の4人組」たちの追撃を受ける。はたして無事、塔にたどり着けるのか、そして塔の住人の正体は…?

    史実かと思えるほどの物語


    歴史に造詣のふかい田中芳樹先生なので、登場人物についても史実になぞらえて詳細に描かれています。
    (私は『銀河英雄伝説』も歴史小説だと思っている)

    後に『仮面の男』や『三銃士』など傑作を生み出すデュマですが、モントラシェやラフィットは、まさに彼らをモデルにして『三銃士』が書かれたかも…と、物語が史実に思えるほど、登場人物たちが歴史の中に生きているのです。

    また、ナポレオン亡き後の社会情勢が「ナポレオンが生きている」という都市伝説を作り出す要因として書かれていて、もしかして『ラインの虜囚』は本当にあった話では…?と疑うほどでした。

    少女を守る、かっこいい大人たち


    剣の達人モントラシェ、海賊で銃使いのラフィット、劇作家で後に文豪となるアレクサンドル・デュマ。
    それぞれ飲んだくれだったり、女性に弱かったりと、だらしないところが多いのですが、実にかっこいいんです。

    敵とハンカチをくわえあい、近距離で敵と決闘するラフィット、双角獣(ツヴァイホルン)で敵と壮絶な剣技をひろうするモントラシェ、口だけと思いきや、実はあんがい強いデュマ。

    そんなクセのある大人たちに守られるコリンヌもまた、並の少女ではありません。勇気と聡明さと、やさしさをあわせもつコリンヌは、もし「ナポレオンが生きていたらどうする」と聞かれ
    「(父親が見れなかった)パリを見せてあげたい」
    と答えます。

    また、ある理由から偽名を使っているモントラシェにも
    「正体が何者でも、あの人はわたしにとってモントラシェ、それ以外の誰でもない」
    と、仲間を信じる姿勢が言葉に現れていて、とてもかっこいい。

    そんなコリンヌの真っ直ぐな気持ちは、おっさんたちの父性と騎士道精神を刺激し、
    「なんとかあの娘の望みをかなえて無事にカナダへ返してやりたい」
    と思うようになります。

    最後には『アルスラーン戦記』のアルスラーンと、ダリューンやナルサスのような信頼関係ができあがっていて、この4人の旅が、ずっと終わらなければいいのに、とさえ思いました。
    でも、すべてを終わらせた4人の別れのシーンもその時のセリフもまた、かっこいいのですが。

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    ミステリーランドシリーズ


    『虹果て村の秘密』有栖川有栖
    『魔女の死んだ家』篠田 真由美
    『くらのかみ』小野不由美
    『透明人間の納屋』島田荘司
    『銃とチョコレート』乙一
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