『 羽の生えた想像力 阿部智里BOOK【文春e-Books】』(電子書籍)

2020.09.14 Monday

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    『烏に単は似合わない』から始まった和製ファンタジー、八咫烏シリーズの作者阿部智里さんのファンブック
    『羽の生えた想像力 阿部智里BOOK』は前橋文学館で開催された企画展に合わせて作成された冊子です。

    新しい時代のファンタジー作家を育んだもの


    この冊子では作家・阿部智里のバックボーンについてインタビュー形式で紹介されています(インタビュアーは萩原朔太郎の孫で前橋文学館艦長の萩原朔美)。

    小さい頃から「作家になる」と思い続け、高校時代すでに『玉依姫』の原型を手掛けていた阿部先生。しかし、そのまま小説を書くことだけに集中せず、部活動にも所属し、さまざまな実体験を積んでいきます。
    小説以外からの体験やインプットを大事にされていたからだそうで。

    生い立ちを拝見すると、阿部先生の生い立ちって『精霊の守り人』の作者・上橋菜穂子先生と少し似ていますね。阿部先生も上橋先生も、友人や家族、先生方といった周囲の方々が、作家になる道を後押ししてくれる環境があり、若い頃から作品を書き続けている。

    そして、上橋菜穂子先生も文化人類学でのフィールドワークや、旅先での実体験を大事にされている作家ですから。



    松本清張賞


    冊子には『烏に単は似合わない』が松本清張賞を受賞した際の審査員のコメントが掲載されていますが、受賞したのにも関わらず、案外けちょんけちょんにけなされています。審査員さんたち、結構容赦ないな…

    まあ確かに、『烏に単は似合わない』は読んでいてよくわからないシーンとかはありましたけれど、物語の展開や世界観は素晴らしいです。

    シリーズを重ねるほどに筆致も冴えていき、『楽園の烏』ではアクションのシーンなどもスピーディーで臨場感がありました。

    ああ、こういう描写も書けるようになったんだなあ、すごいなあと、若い作家の成長が読めるのは、おばちゃん読者の楽しみだったりします。



    新しい時代のファンタジー作家を育んだ土壌


    阿部智里さんが群馬県出身と聞き、正直「群馬も変わったな」と思ったものです。私も阿部智里さんと同じ群馬県出身なのですが、群馬とは昔から勉強、特に文学系に弱い土地です。(あくまで個人の感想ですが)

    過去には萩原朔太郎や田山花袋といった有名作家もおりますが、それも明治・大正の話。
    私が青春時代をすごしたひと昔前の群馬は、そこそこ有名企業や工場が多く、就職に困らなかったので、よほど勉強したいと思う人以外は、高校や専門学校を卒業するとすぐに就職して車を買い、家を建てます。

    なにも好き好んで、群馬で不要不急の文学なぞやる必要はなかったのです。

    けれど、時代は変わり、群馬でも大学の数も、進学率も増え、選択肢が昔より容易になってきました。そんなときに生まれたのが「阿部智里」という作家でした。

    『阿部智里BOOK』や八咫烏シリーズで描かれた山の風景や、阿部先生がインスパイアを受けた場所を知るにつけて、自分の故郷は素晴らしい文化遺産があるのだな、と気づかせてもらいました。昔は「なにもない」と思っていた場所が、こんなにも物語性にあふれているなんて、思いもよらなかった。

    古い伝承を新たな感性で綴っていく阿部智里先生の今後に期待と愛をこめて。
    感想というよりファンレターのような内容になってしまった…。



    八咫烏シリーズ


    『烏に単衣は似合わない』
    『烏は主を選ばない』
    『黄金の烏』
    『空棺の烏』
    『玉依姫』
    『弥栄の烏』
    外伝『すみのさくら』
    外伝『しのぶひと』
    外伝『ふゆきにおもう』
    外伝『まつばちりて』
    外伝『あきのあやぎぬ』
    外伝『ふゆのことら』
    外伝『なつのゆうばえ』
    外伝『はるのとこやみ』
    外伝『ちはやのだんまり』
    外伝集『烏百花 蛍の章 八咫烏外伝』
    コミカライズ『烏に単は似合わない』
    第二部『楽園の烏』
    『 羽の生えた想像力 阿部智里BOOK』

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