『蝶のみちゆき』高浜寛

2020.10.16 Friday

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    幕末・長崎の丸山遊郭を舞台にした『蝶のみちゆき』。設定も人物もストーリーも、なにもかもがすばらしい。
    蝶のごとき花魁の、はかなくも美しい生涯を、美しいタッチと詳細な心理描写で描いています。

    『蝶のみちゆき』あらすじ


    丸山遊郭の太夫・几帳は、美しいが変わり者。太夫は好かない客を降ることもあるのに、几帳は金さえつめば客を選ばない。みなが嫌がる出島での異人の相手も率先してつとめてゆく。

    出島のオランダ人、トーン先生にも贔屓にされ、太夫として栄華を極める几帳。しかし、彼女には秘めた思いがあり、その目的のためなら「張り(気に入らない客を降るプライド)のない」、金ずくの客の相手もしてみせるのだった。



    濃厚な性と死


    遊郭という場所は、客に見せる表は百花繚乱。豪華な食事にきらびやかな装飾、美しく床上手な遊女を相手に、男はこの世の極楽を味わうことでしょう。

    けれどその裏では梅毒による腫瘍(ボク)、見受けもままならない借金、心を通わせた男の浮気など、表側が美しい分、光の当たらない遊女たちの裏側は生き地獄。

    姐女郎の転落や、家族からの軽蔑を受けながらも、それでも几帳は凛として絢爛豪華な地獄を生き続けています。

    ここが一番いいところ…


    物語がすすむにつれて、几帳が隠していた事実が明らかになっていきます。身請けしてくれた夫の病と義理の息子のため、再び遊郭で働く決意をしたこと。家族のために医者であるトーン先生を利用し、傷つけてしまったこと。

    すべての悲しみ、苦しみを抱えて、それでも几帳は太夫として咲き誇る。やがて朽ちていくまで。

    妹女郎の「たま」に「ここが一番いいところ」だと語る几帳の、本当の思いはどこにあるのだろう。

    遊郭の光と闇、雨のしずくで張りついた髪、太夫の絢爛豪華な衣装、几帳の肌の美しさ『蝶のみちゆき』には絵の「質感」が感じられ、いつの間にかその世界に入り込んでしまいます。

    特に、各話の最後に描かれた、闇の中にたよりなく飛ぶ蝶の挿絵が物語を暗示しているようで、切なくて怖くて美しい…。

    交錯する登場人物


    高浜寛さんの作品では、同じキャラクターが登場することが多いのですが、『蝶のみちゆき』の続編的な作品『扇島歳時記』は、几帳の禿で後に妹女郎になる「たま」が主人公。

    ニュクスの角灯』の百年(ももとし)や岩爺も登場します。


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