日々の書付 感想録2024-03-10T13:38:49+09:00読書と映画と漫画感想、たまに手芸と家事のブログ。
好きな作家は上橋菜穂子、小野不由美、阿部智里。
漫画は森薫、海野つなみ。お笑いはNON STYLEとプラン9。
映画は洋画、邦画、アジア新旧問わず。舞台鑑賞好き。音楽は和楽器バンド。JUGEM八咫烏シリーズ第二部『望月の烏』(ややネタバレ)阿部智里http://lbn.hizuki.lomo.jp/?eid=9477992024-02-23T22:39:26+09:002024-02-23T13:39:26Z2024-02-23T13:39:26Z八咫烏シリーズ第二部『望月の烏』。時間軸でいうと『追憶の烏』の10数年後、『楽園の烏』の少し前といったところです。
まだ発売されたばかりなので、できるだけネタバレを少なく書いたつもりですが、未読の方はぜひ、『望月の烏』後に御覧ください。
ネタバレ考察も...日月読書感想文|読んでよかった!おすすめです。
まだ発売されたばかりなので、できるだけネタバレを少なく書いたつもりですが、未読の方はぜひ、『望月の烏』後に御覧ください。
ネタバレ考察もいずれ書きたいと思います。
『望月の烏』あらすじ
金鳥代・凪彦の后選び「登殿」が行われることになり、東家、南家、北家、西家から新たな姫が選ばれ桜花宮にやってくる。
しかし、以前の「登殿」とは異なり、政治的な取り決めにより皇后と側室(それに羽母まで)に選ばれる家はあらかじめ決まっていた。
そんな中、美貌の落女(男として朝廷で働く女性)・澄生(すみき)が注目を集め、凪彦もまた、彼女の聡明さに興味を持つようになり…。
金鳥代凪彦(ややネタバレ)
今回、私が一番驚いた人物が凪彦でした。『追憶の烏』で奈月彦が暗殺され、貴族たちによって担ぎ上げられた少年帝。
母親は「あの」あせびの君で、父親は凡庸な捺美彦です。さぞかし母親の影響や博陸候の言いなりの愚者だと思っていたら、存外に彼は聡明な人物でした。
平安時代で例えるなら、破天荒な花山帝ではなく、人間関係のバランスを重視した一条帝のような人物です。
澄生の言葉に耳を傾け、博陸候の政治に対する疑問を抱くようになるのですが、博陸候にかかってはなすすべもありません。
しかし、仮にも最高権力者である彼が現状の問題に目覚めたことは無駄ではなかったのでしょう。
博陸候雪斎の意図
物語は澄生(すみき)が落女として文字通り宮中を引っ掻き回していきます。綺羅絵(山内の浮世絵のようなもの)の版元や絵師に近づいたり、凪彦に博陸候の政治の問題を指摘したり。
・綺羅絵についてはこちら『きらをきそう』
博陸候は彼女を泳がせておくのが得策と考えたようです。その方が敵味方が見極めやすくなるから。
それは『烏は主を選ばない』で、彼の主である奈月彦が行った手法と同じですね。
そして、ここからは私の想像なのですが、もしかしたら雪哉(雪斎)は、自分の「敵」を集めて殺すのではなく、「味方」を集めてもろとも自らも滅びようとしているのではないかと。
自らが誘蛾灯となって害虫を引き寄せ、今までの山内を壊し、新しい山内を紫苑の宮に渡すつもりだとしたら…。
そんな風に思えて仕方がないんです。
あせびと真赭の薄(ややネタバレ)
『烏に単は似合わない』でお后候補として敵対していた、あせびと真赭の薄が登場します。あせびは今や大紫の御前と呼ばれる山内で最も地位の高い女性として、40を超えた今も少女のように美しい。
一方で真赭の薄は年相応に老けてはいるものの、はつらつとして若々しく、新たに2人の息子に恵まれ夫とともに貧民救済の仕事に励んでいます。
真赭の薄の刻んだシワや白髪は、彼女の生き様の勲章のように描かれているにとても感銘を受けました。幸せの定義は人それぞれですが、あせびと真赭の薄、果たしてどちらが幸せなのでしょうね。
あせびは多くを手に入れましたが、最も欲したものは最後まで得られなかったのですから。
八咫烏シリーズ
・『烏に単衣は似合わない』
・『烏は主を選ばない』
・『黄金の烏』
・『空棺の烏』
・『玉依姫』
・『弥栄の烏』
・第二部『楽園の烏』
・第二部『追憶の烏』
・第二部『烏の緑羽』
・『烏百花 蛍の章 八咫烏外伝』
・『烏百花 白百合の章 八咫烏外伝』
・八咫烏シリーズ外伝『さわべりのきじん』
・八咫烏シリーズ外伝『きらをきそう』
・幕間『烏の山』
・幕間『山を下りて』
・コミカライズ『烏に単は似合わない』
・コミカライズ『烏は主を選ばない1』
・コミカライズ『烏は主を選ばない2』
・コミカライズ『烏は主を選ばない3』
・コミカライズ『烏は主を選ばない4』
・『羽の生えた想像力 阿部智里BOOK(電子書籍)』
・『八咫烏シリーズファンブック』
・『追憶の烏』ネタバレトークイベント感想
・八咫烏シリーズ展覧会&トークショー2023
]]>『営繕かるかや怪異譚その参』小野不由美http://lbn.hizuki.lomo.jp/?eid=9477452024-02-09T22:16:00+09:002024-02-10T02:55:00Z2024-02-09T13:16:00Z家にまつわる怪異と、それを修繕して整える『営繕かるかや怪異譚その参』。今回も家にまつわる様々な怪奇が登場します。
念と呪い
「念」とは、常に心から離れない、強い思い入れのことを言います。そんな人の念は家や家具に影響を与え、時に呪いとして人を襲います。...日月読書感想文|読んでよかった!おすすめです。営繕かるかや怪異譚その参』。今回も家にまつわる様々な怪奇が登場します。
念と呪い
「念」とは、常に心から離れない、強い思い入れのことを言います。そんな人の念は家や家具に影響を与え、時に呪いとして人を襲います。
呪いといえば怖いのですが、元をたどると人の強い思い入れが怪奇の原因になることが多いんですね。やはり結局、人が一番恐ろしいということでしょう。
私がもっとも怖かったのが『火焔』です。昔は五体満足であれば嫁に行けたため、時折こうした異常な人が妻や母親となって子や嫁を苦しめることがあります。
死んだ後も人を攻める姑の執着と、それを受け入れ、抗えない嫁の関係がただただ恐ろしかった…。
受け継がれる呪い
『誰が袖』では、家に受け継がれる呪いが描かれています。「末代までも祟る」は昔の芝居でよくあるセリフですが、家系や先祖とのつながりの薄い現代人から見ると、「受け継がれる祟り」に理不尽さを感じます。
この家の祟りは「妻が嫡男を妊娠すると死亡する」でしたが、「祟り」といっても発動条件があるんですね。
小野不由美さんの小説『過ぎる十七の春』を思い出しました。こちらもまた、祟りには発動条件があります。でもたいていは昔の家制度が原因なんですよね。
家を維持するために人を犠牲にした結果、恨みが家(または家具)に残り、それがまた人に祟るのは悲しいことです。
家や人、時に祟りにも寄り添う尾端さんの言葉からも人の念の悲しさが伝わります。恨みが強いと視野が狭まって捨てるなんて考えられない。(中略)剥がれて初めて、捨てたほうが楽なんだと気づく
小野不由美ホラー作品
・くらのかみ
・営繕かるかや怪異譚
・営繕かるかや怪異譚 その弐
・過ぎる十七の春
]]>『菓子屋横丁月光荘 光の糸』ほしおさなえhttp://lbn.hizuki.lomo.jp/?eid=9477822024-01-23T14:01:05+09:002024-01-23T05:01:05Z2024-01-23T05:01:05Z『菓子屋横丁月光荘』シリーズもこれで最後。とても名残惜しいですが、孤独だった守人が人や家の縁に恵まれて幸せになってゆく様子は、読者としても嬉しく思いました。
『菓子屋横丁月光荘 光の糸』あらすじ
月光荘のオーナー、島田さんと、恩師である木谷先生ととも...日月読書感想文|ファンタジー菓子屋横丁月光荘』シリーズもこれで最後。とても名残惜しいですが、孤独だった守人が人や家の縁に恵まれて幸せになってゆく様子は、読者としても嬉しく思いました。
『菓子屋横丁月光荘 光の糸』あらすじ
月光荘のオーナー、島田さんと、恩師である木谷先生とともに古民家の蕎麦屋を訪れる守人。そこで聞こえた家の声は機を織る「とんとん からー」という音と「マスミ」という人の名前だった。
その家は昔「広瀬斜子(ひろせななこ)」という織物を作っていたが詳しいことはわからず、織物自体も現在では失われていた。
しかし、川越の人々の縁が繋がり、家と関わりのある人物が見つかった。もうすぐ壊されてしまう家のために守人は彼女と家を会わせようと計画する。
やがて世の中はコロナ禍へ。月光荘のイベントが中止されたため守人は周囲のすすめで小説を書くことに。それは、家の声を聴くことができる守人が体験したことや、人々との交流から編み出された物語だった。
人が紡ぐ歴史
偉人や有名な歴史的事件とは違い、昔の、ふつうの人々の暮らしや思いは忘れ去られてしまいます。例えば物語に出てきた「広瀬斜子(ひろせななこ)」という織物も現代ではほとんど残っていないそうです。
守人と大学の後輩である豊島さんは「これまで生きてきた人それぞれの物語」を文章にしたいと考えるようになります。
年配の方やその土地の歴史に詳しい人に話を聞くのって意外な発見があって面白かった事、私も経験があります。そんな儚い人の物語を守人はこれからも紡いでいくのでしょう。
最初は何も持たずに川越にやってきた孤独な守人が、徐々に周囲の人との絆を結び、孤独ではなくなっていく。そんな彼の物語もまた愛おしいものでした。
菓子屋横丁月光荘シリーズ
・『菓子屋横丁月光荘 歌う家』
・『菓子屋横丁月光荘 浮草の灯』
・『菓子屋横丁月光荘 文鳥の宿』
・『菓子屋横丁月光荘 丸窓』
・『菓子屋横丁月光荘 金色姫』
]]>乙女の本棚『待つ』太宰治+今井キラhttp://lbn.hizuki.lomo.jp/?eid=9477982023-11-14T21:19:24+09:002023-11-14T12:19:24Z2023-11-14T12:19:24Z文豪と現代のイラストレーターがコラボした「乙女の本棚シリーズ」。今回は太宰治の『待つ』を読んでみました。
美麗で儚げな少女が「待つ」のは一体誰なのでしょう…?
『待つ』あらすじ
毎日、駅のベンチに佇んで「誰か」を待つ少女。彼女自身、待ち人が誰かわか...日月読書感想文|読んでよかった!おすすめです。
美麗で儚げな少女が「待つ」のは一体誰なのでしょう…?
『待つ』あらすじ
毎日、駅のベンチに佇んで「誰か」を待つ少女。彼女自身、待ち人が誰かわからない。もし、その相手が現れた時、自分がどうなってしまうのだろう、そんな期待と恐怖を胸に描きながら待ちわびているのだった。
戦争の影が迫る中、少女はなにかしなければと思う一方で、空想の相手を待ち続ける日々を送っている。
太宰治の乙女小説
もしかしたら、太宰治の中には乙女がいるんじゃないでしょうか。少女の心の機微の表現がすごい。
「見知らぬ誰かを待つ」というなんとも不思議な物語ですが、少女の頃というのは、こうした妄想というか、衝動みたいな思いを誰しもが持っていると思うのです。
言葉にできないような、そんな繊細で微妙な少女の心を、的確な言葉を当てて文章化されている。
そしてそれを、男である太宰治が描ききっているのがすごいことだと思います。
太宰治は他にも『葉桜と魔笛』や『女生徒』など、乙女の心情を細やかに描いています。太宰自体の生き様は決して褒められたものではなし、正直嫌いなのですが、残した作品は悔しいけれどやっぱり素晴らしい。
]]>八咫烏シリーズ『烏は主を選ばない』アニメ化への感想と考察http://lbn.hizuki.lomo.jp/?eid=9477972023-10-25T18:41:00+09:002023-10-25T13:18:44Z2023-10-25T09:41:00Z2023年10月24日、驚きのニュースが入ってきました。和製ファンタジー小説・八咫烏シリーズの『烏は主を選ばない』が2024年4月にアニメ化されるとのこと。
これまでずっと、私達ファンが夢見てきた八咫烏シリーズのアニメ化です。これまでの公開情報と自分なりの考察をま...日月読書感想文|その他
これまでずっと、私達ファンが夢見てきた八咫烏シリーズのアニメ化です。これまでの公開情報と自分なりの考察をまとめてみました。
2023年10月時点での情報
・NHKで2024年4月から放送予定
・第一作『烏に単衣は似合わない』 ではなく、二作目の『烏は主を選ばない』がアニメ化
・アニメの特設サイトには雪哉らしき烏衣姿の少年と、糸の切れた長琴らしき琴のイラスト
・阿部智里先生のコラムによると、コミカライズとはまた別の新しい設定になるらしい
物語の考察:なぜ「単」ではなく「主」なのか
それはやはり『烏に単衣は似合わない』 が単独の物語だからでしょう。
アニメ化するのであれば、後の『黄金の烏』 や『空棺の烏』に繋げやすい『烏は主を選ばない』が選ばれたのだと思います。
また、「単」と「主」は、女性側と男性側、ふたつの視点で描かれた対になる物語ですから、「主」を主体にして「単」のピソードを挿入したほうが初見の方にわかりやすいのだと思います。
だからといって「単」の話がカットされるということは無いと私は思います。女性たちが出てきたほうが華がありますし、ヒロイン(?)のあせびちゃんが作中で奏でる「長琴」がイラストで登場していますから、きっと「単」の4人の姫もでてくるのでしょう。
「単」と「主」のリミックスはアニメ関係者の腕の見せ所といったところでしょう。
アニメ化への期待と不安
阿部智里先生のエッセイ「作家の羽休み」によるとこのように書かれています。
「映像的なアプローチは現場に任せて欲しい」とのことでしたので、文化・風俗の設定なども新たにお任せする形となりました。
ということは、設定を活かすも殺すも制作次第ということです。読者はイラストレーター名司生(なつき)さんの美しい装画や、松崎先生の詳細で原作を最大限に生かしたコミカライズに親しんできました。
なので、こういってはなんですが、新参者に山内の世界が描ききれるのか、という正直一抹の不安が拭えません。
要は、アニメ制作側がどれだけ原作への理解度とリスペクトにかかってくるでしょうね…。
それでも、アニメだからこそできる表現には期待しています。個人的には羽衣から烏への変化や滑空シーン、あせびちゃんの演奏シーンなど、どう描かれるのかが楽しみです。
ファンタジーとNHK
NHKはこれまで数々のファンタジーアニメを手掛けてきました。
・『十二国記』(2002年)
・『彩雲国物語』(2005年)
・『精霊の守り人』(2006年)
・『獣の奏者エリン』(2009年)
これだけファンタジーアニメの制作を手掛けてきた実績があるので、民法のアニメよりは信用がおけそうです。
それに、シリーズを通じてアニメ化するならやはりNHKが最適だと思います。民法だとワンクールで終了なんてこともザラですから。
アニメ化の最初のうちは『精霊の守り人』「バルサはこんなにおっ◯いがデカくない!」「タンダはあんなにイケメンじゃない!」など賛否両論がありました。
『十二国記』のオリジナルキャラもうるさくて物語の雰囲気を壊していたし、細かい設定はほとんど小野主上が手掛けていて、「制作側仕事しろよ…」と思ったものですが、それでも全体を通してみるといい作品になっています。
『烏は主を選ばない』も、長く愛されるアニメになりますように…。
八咫烏シリーズ
・『烏に単は似合わない』
・『烏は主を選ばない』
・『黄金の烏』
・『空棺の烏』
・『玉依姫』
・『弥栄の烏』
・第二部『楽園の烏』
・第二部『追憶の烏』
・第二部『烏の緑羽』
・『烏百花 蛍の章 八咫烏外伝』
・『烏百花 白百合の章 八咫烏外伝』
・八咫烏シリーズ外伝『さわべりのきじん』
・八咫烏シリーズ外伝『きらをきそう』
・幕間『烏の山』
・幕間『山を下りて』
・コミカライズ『烏に単は似合わない』
・コミカライズ『烏は主を選ばない1』
・コミカライズ『烏は主を選ばない2』
・コミカライズ『烏は主を選ばない3』
・コミカライズ『烏は主を選ばない4』
・『羽の生えた想像力 阿部智里BOOK(電子書籍)』
・『八咫烏シリーズファンブック』
・『追憶の烏』ネタバレトークイベント感想
・八咫烏シリーズ展覧会&トークショー2023]]>『女の子がいる場所は』やまじえびねhttp://lbn.hizuki.lomo.jp/?eid=9477952023-10-05T12:21:00+09:002023-10-05T03:36:08Z2023-10-05T03:21:00Z女性の生きづらさを世界の少女たちの視点から描いた『女の子がいる場所は』。とても切なくて、とても考えさせられる漫画でした。女性だけでなく、男性にも読んでほしい物語です。
『女の子がいる場所は』あらすじ
サウジアラビアのサルマ
サルマは父親にもう一人の妻...日月マンガ・漫画感想女の子がいる場所は』。とても切なくて、とても考えさせられる漫画でした。女性だけでなく、男性にも読んでほしい物語です。
『女の子がいる場所は』あらすじ
サウジアラビアのサルマ
サルマは父親にもう一人の妻がいることを知る。第一夫人のアミーラは子供ができないため、第二夫人であるママとの結婚を望んだ。離婚歴があるため再婚が難しいママはそれを幸福だという。
でもサルマはこう思った。「わたしたちは結婚をしないと生きていけないの?」と。
モロッコのハビーバ
おばあちゃんの知り合いのシャマおばさんがやってくる。おばさんはハビーバを見た途端「女の子がメガネなんて男に嫌われる」と否定する。そのくせ頭の悪い兄には男だというだけで褒めちぎる。おばさんが滞在する間、不快に思うハビーバだったが、実はシャマおばさんにはある秘密があって…。
インドのカンティ
カンティは母の再婚相手の義父が家庭教師のアーシャに売春を強要していることを知り憤るが、義父からは生意気だと折檻され、母からも「元の貧乏ぐらしに戻るからパパに逆らっちゃだめ」と言われる。
自分の無力さに打ちひしがれるカンティだったが…。
日本のまりえ
まりえは両親が離婚し、母と祖母と暮らしている。祖母はまりえに「女の子は勉強なんてしたら(男に好かれないから)苦労する」という。パパはママが自分より仕事ができることに嫉妬を抑えられない。
離婚したことで、家族は安定したけれど、やっぱり少し友達の家族がうらやましい。
アフガニスタンの少女たち
タリバンが去って学校が再開し、はじめて自分のノートと鉛筆をもらった日、彼女たちは将来を夢見る。しかし今、再びタリバンが彼の地を襲う。彼女たちはどうしているだろうか。
女の子の不自由さ
私達が思うのは 毎日生きている中での女の不便さです。
いまある世界で女はなんてつらくて非力か
これは昭和初期に生きた女性が主人公の漫画『陽の末裔』のセリフです。戦前よりもましになったとはいえ、女性が女性であることを肯定されることはまだまだ少ない気がします。
そして漫画の少女たちも、日常生活の中で不自由さを感じています。
「女の子なんだから 男に楯突いてはだめ」
「女の子なんだから 可愛く、バカでいなきゃだめ」
それでも賢明な彼女たちは周囲からの言葉が「どこかおかしい」と感じはじめています。まだ、それを解決する術をしらない彼女たちですが、そのために必要なものが「知ること、学ぶこと」だと気づくのです。
とても小さな希望の光ですが、どうかこれからの彼女たちの行先を照らしてくれますように。
男だったらよかった
両親は私を愛情をもって育ててくれました。
ただ、同時にこう言われて育ちました。「お前が男だったらよかった」と。
女が二人続いたため男を望まれていたこと、それをつい、娘に聞かせるほど当初は「がっかり」していたこと。
そのため私は子供の頃こう感じていました。女の子である自分は悪いのだろうかと。
また、男の子の好む特撮や漫画を読み、男の子のように振る舞いました。そうすれば両親が喜んでくれると信じて。
なぜ、女の子が女の子でいるだけで、なぜこんなにも辛いのでしょうか。それはなにも、男性優位社会のムスリム社会やインドカーストの世界だけではなく、日本でも日常的に身近にあるものなのです。
そして、女の子を否定するのは、一番身近な女性である母や祖母だったりするのです。シャマおばさんやまりえのおばあさんのように、自分が「女の子なんだから」と否定されてきたことを、次の世代にも強要するのが当たり前と思ってしまっているのでしょう。
賛否両論の意見
以前、ひめゆり部隊をモチーフにした漫画『COCOON』の感想を書いたところ「大変だったのは女だけじゃない!」と否定的なご意見をいただきました。『女の子がいる場所は』の感想でも肯定と否定、さまざまな意見がありました。
確かに男の子にだって性的搾取はあるし、女以上に大変なこともあります。社会進出に興味のない女性もいるでしょう。
ただ、さまざまな考え方がある中で私が思うのは、女の子が自らの意志で学び、考え、改善していく意欲だけは否定しないで欲しい。それだけです。
]]>ババーン!『ねこいる!』たなかひかるhttp://lbn.hizuki.lomo.jp/?eid=9477932023-10-03T17:44:01+09:002023-10-03T08:44:01Z2023-10-03T08:44:01Zねこがババーン!と出てくる!たったこれだけ。でも最高に面白い絵本でした。
猫が好きな人、絵本が好きな人、そして、お笑いが好きな人におすすめの絵本です。
なんだかお笑いのフリップ芸みたいだなと思ったら、作者のたなかひかるさんは現役のお笑い芸人でした。
...日月読書感想文|絵本・童話
猫が好きな人、絵本が好きな人、そして、お笑いが好きな人におすすめの絵本です。
なんだかお笑いのフリップ芸みたいだなと思ったら、作者のたなかひかるさんは現役のお笑い芸人でした。
この絵本、フリップ芸としても面白いし、読み聞かせで「ババーン!」って叫んだら子どもたちが喜びそう。
パンの中やリコーダーの中、跳び箱の中など、意外なところに「ねこいる?」と問いかけると、次のページに「ババーン!ねこいる!」と猫が飛び出してきます。
ページをめくるごとに猫たちの登場はエスカレートしていき、犬はでてくるし、文字の中にも「ババーン!」と登場します。
何度読んでも、オチがわかっていても、ねこが突然「ババーン!」と登場するのが楽しくて、ワクワクしながら読んでいます。
こちらもおすすめ。猫が主役の絵本です。
・『ねこはるすばん』
]]>『斜め屋敷の犯罪』島田 荘司http://lbn.hizuki.lomo.jp/?eid=9477892023-09-09T22:41:00+09:002023-09-15T12:55:52Z2023-09-09T13:41:00Z島田荘司さんの名作ミステリ『斜め屋敷の犯罪』。資産家の老人が酔狂建てたわざと斜めに傾いている「斜め屋敷」。そこでで起こる殺人事件を描いたミステリです。
舞台が1982年のため、携帯電話もありませんし、動機やトリックなども時代背景が感じられますが、それでも...日月読書感想文|ミステリ・ホラー
舞台が1982年のため、携帯電話もありませんし、動機やトリックなども時代背景が感じられますが、それでも幾重にも仕掛けられたトリックにページを捲る手が止まりませんでした。
『斜め屋敷の犯罪』あらすじ
北海道は宗谷岬の外れに建つ「流氷館」は、別名「斜め屋敷」と呼ばれている。その名の通り、東西に傾いているこの屋敷は、ハマー・ディーゼルの会長である浜本幸三郎が道楽で建てたもので、ときおり親しい人々を招待している。
1983年の暮も押し迫った時期、館に招かれた客が死体となって発見される。窓の外から見えた怪しい人物、踊る人形の謎、第二の殺人…。果たして、犯人は?密室トリックの謎は?
警察の手に負えないこの難解な事件を解決すべく『占星術殺人事件』で謎を暴いた御手洗潔がやってくる。
ネタバレ無しの感想
物語は1983年。まだ携帯電話もインターネットもない時代です。密室殺人ではありますが、刑事たちも行き来しているため「嵐の山荘(閉じ込められた状態)」ではありません。
それでも犯人がわからないため、招待客や家族たちは館を離れることができません。じわじわと追い詰められる恐怖と、不思議な作りの館での殺人事件は不謹慎ながらもワクワクします。
館に招待された人々も曲者揃い(愛人を伴ってくる社長とか)で、みんな怪しい。
そして、壮大にしてユニークなトリック!これは御手洗潔のような変人(いい意味で)しか解けないでしょうね。
『斜め屋敷の犯罪』は、『占星術殺人事件』と同じく、昭和50年代が舞台のため、時代ならでは(戦争)の背景感じられます。
この時代はまだ、戦争を戦った人が生きていたためこうした設定になったのでしょう。
島田荘司作品感想
・占星術殺人事件
・透明人間の納屋
建築士が実際に「斜め屋敷」を設計してみた本はこちら
・犯行現場の作り方]]>『あんまりすてきだったから』くどうれいん みやざきひろかずhttp://lbn.hizuki.lomo.jp/?eid=9477902023-09-07T21:55:25+09:002023-09-07T12:55:25Z2023-09-07T12:55:25Zこの絵本があんまりすてきだったから、思わず買ってしまいました。
「すてき」と思うものを持つ人や、推し活をしている人に読んでほしい絵本です。
『あんまりすてきだったから』あらすじ
歌手のうたごえがあんまりすてきだったから、こんちゃんはお手紙をかきました...日月読書感想文|絵本・童話
「すてき」と思うものを持つ人や、推し活をしている人に読んでほしい絵本です。
『あんまりすてきだったから』あらすじ
歌手のうたごえがあんまりすてきだったから、こんちゃんはお手紙をかきました。
こんちゃんが歌手の歌を「すてき」という気持ちは、手紙を届ける郵便屋さんやお魚やお月さまにも伝わっていきます。
「すてき」な気持ちは、やがてみんなにも伝わっていき…。
かわいいオノマトペ
作中にはかわいいオノマトペがたくさん使われていて、絵だけでなく、音も楽しい絵本です。
「てってこてこ」「たぴちゅん」「ざざん ぞぞん」など、思わず声に出してよみたくなる、面白い言葉がたくさん。これは、お子さんに読み聞かせをするのも楽しいと思います。
すてきなあとがき
とてもすてきな物語の終わりに、作者のくどうれいんさんが書いたあとがきもすてきなので、ぜひ読んでみてください。
すきだと思ったらお手紙を書く。それはとってもすてきなことです。
おへんじがもらえなかったとしてもきっとその言葉は、その先のあなたに届きます。
くどうれいんさんも、この絵本のイラストを担当されたみやざきひろかずさんのファンだったそうです。
「すてき」だと思う気持ちを持ち続けていること。
それを伝え続けることは、自分をとても幸せにするし、もしかしたら、相手に届くことだってあるのです。
私も、和楽器バンドのボーカル、鈴華ゆう子さんが好きで、お手紙を書いたことがあります。鈴華ゆう子さんはいつもファンクラブなどで「みんな手紙読んでいるよ!」と伝えてくれています。
これだけでもう、嬉しいんですよね。
返事がなくても、きっと「すてき」という気持ちは、伝わることがあるし、それは自分の糧になるんです。みんながそれぞれの「すてき」をたくさん伝たら、きっと世界はすてきなものになると思うのです。
]]>『映画を追え フィルムコレクター歴訪の旅 』山根 貞男http://lbn.hizuki.lomo.jp/?eid=9477862023-09-05T19:10:14+09:002023-09-05T10:10:14Z2023-09-05T10:10:14Z戦前の映画の殆どが行方不明です。そうした貴重なフィルムを探すコレクターたちを追った『映画を追え フィルムコレクター歴訪の旅 』
以前読んだ『映画探偵: 失われた戦前日本映画を捜して』は、失われた戦前映画のフィルムを探しだすドキュメンタリーでしたが、この...日月読書感想文|時代小説・歴史
以前読んだ『映画探偵: 失われた戦前日本映画を捜して』は、失われた戦前映画のフィルムを探しだすドキュメンタリーでしたが、この本ではコレクターたちがいかにして映画を入手するが描かれます。
戦前のフィルム事情
戦前の映画フィルムのうち、9割が失われている理由として、以下の理由があげられます。
・可燃性で燃えやすい
・映画館側が勝手にフィルムを売る
・上書きされて使われたり、勝手に編集される
それでも近年、貴重な日本映画の発掘が続いています。戦前の映画会社では、上映用の35mmフィルムのほか、家庭用に9.5mmフィルムが販売されていたため、そうしたルートでの新発見もあるのだとか。
そして、フィルムの発掘に一役買っているのがフィルムを収集するコレクターたちでした。
コレクターには2種類のタイプがあります。コレクションの公開を許す人と、秘匿する人。、作者は「公開型」のコレクターたちを訪ねては、コレクションの経緯や所有フィルムについてインタビューを試みています。
その中には、長らく行方不明だった小津安二郎の映画『突貫小僧』のフィルム所有している人もいたそうです。
生駒山の伝説のコレクター
貴重なフィルムを所蔵している生駒山麓に住む伝説のコレクター・安倍氏については『映画探偵: 失われた戦前日本映画を捜して』でも取り上げていましたが、本書ではより深く、安倍氏とそのコレクションに迫っています。
まだ世にでていない貴重な戦前のフィルムを多数所持していると語る安倍氏。
作者は90年代から2000年代初頭にかけて、安倍氏の家を訪問し、フィルムの貸出を希望するものの、のらりくらりとはぐらかされてしまいます。2005年に安倍氏が亡くなり、家財を調査したところ、話に出てきた貴重なフィルムは見つからなかったとか。
果たして彼は稀代の大嘘憑きだったのか、それともどこか他の場所にフィルムが眠っているのか、現在も謎に包まれています。
ロシアに残るフィルム
実は、ロシアには多くの日本映画が残っています。戦前、満州に住む日本人向けに映画が輸出され、その後侵攻してきたソ連によってフィルムは押収、長く鉄のカーテンに遮られてきました。
ソ連崩壊後、ようやくフィルムの調査が進み、さまざまな映画フィルムが発見されたそうです。
もしかしたら、あなたの家にも発見を待つフィルムが残っているかもしれませんね。
]]>『うちのちいさな女中さん4』長田佳奈http://lbn.hizuki.lomo.jp/?eid=9477882023-08-30T18:28:35+09:002023-08-30T09:28:35Z2023-08-30T09:28:35Z昭和初期、翻訳家の令子さんと14歳の真面目な女中・ハナちゃんの日常を描いた『うちのちいさな女中さん』。
蚊取り線香を焚いたり、海水浴に行ったりと、戦前の夏の過ごし方は現代の私たちとそんなに変わりません。むしろ、今のようにネットもテレビもないからこそ、毎...日月マンガ・漫画感想うちのちいさな女中さん』。
蚊取り線香を焚いたり、海水浴に行ったりと、戦前の夏の過ごし方は現代の私たちとそんなに変わりません。むしろ、今のようにネットもテレビもないからこそ、毎日が充実しているように思えます。
ラジオ講座
令子さんは義姉から「女中にも教養をつけさるべき」と説き伏せられ、ハナちゃんになにか学ばせようとするものの、仕事一筋のハナちゃんからは断られてします。
それなら…と、家にあったラジオで講座を提案します。これなら仕事が終わった後に聞くだけだからと。当時のラジオでは女性たちが家事の合間に学べるように、教養番組もあったそうです。
そして、ハナちゃんが始めたのはなんと、水泳講座!果たして、ラジオで水泳が上達するの…?
昭和初期の海水浴
令子さんに憧れる女学生の萬里は、懸賞であたった券で令子さんを海水浴に誘うものの、「ハナちゃんも一緒に」と言われてしまいます。
「(ハナちゃんに)水泳を教えれば、おねえさまに良いところを見せられる…!」と考えた萬里ちゃんと、ハナちゃんに熱心に教えるものの、なかなか上達することができません。それでも生真面目にがんばるハナちゃんが可愛らしいです。
当時はパラソル型の屋根がついた海水浴専用列車が運行され、今より特別なレジャーだったようです。
日本の観光3 : 昭和初期観光パンフレットに見る
ハナちゃんの読み書き
ハナちゃんは小さい頃から働いていて、ろくに学校にも行けませんでしたが、読み書きがきちんとできるのを令子さんは不思議に思います。実は、そのきっかけが令子さんが以前に書いた童話集でした。
本を読みたい一心で女中仲間のフヨさんに習っていたのです。ハナちゃんが令子のお家に来るきっかけとなったのもこの童話でした。
しかし、令子さんは今は童話を書いていないようです。ご主人が亡くなったことがきっかけなのでしょうか。
そして、いつか、ハナちゃんが童話集を持っていることが令子さんに伝わることがあるのでしょうか…。
・『うちのちいさな女中さん1』
・『うちのちいさな女中さん2』
・『うちのちいさな女中さん3』 ]]>『 早番にまわしとけ 書店員の覚醒』キタハラhttp://lbn.hizuki.lomo.jp/?eid=9477382023-08-28T18:00:30+09:002023-08-28T09:00:30Z2023-08-28T09:00:30Z『早番にまわしとけ 書店員の覚醒』は『遅番にやらせとけ 書店員の逆襲』に次ぐ書店小説です。
「遅番」が男子が中心でしたが、「早番」は女子を主人公とした物語で、書店のリアルな業務とともに書店員の恋愛模様や成長が描かれます。
閉店危機の書店、ミス連発で怒...日月読書感想文|読んでよかった!おすすめです。遅番にやらせとけ 書店員の逆襲』に次ぐ書店小説です。
「遅番」が男子が中心でしたが、「早番」は女子を主人公とした物語で、書店のリアルな業務とともに書店員の恋愛模様や成長が描かれます。
閉店危機の書店、ミス連発で怒られる日々、個性豊かでめんどくさい書店員たち。うまく行かないことのほうが多い物語なのですが、読み終わるとなぜか、幸せな読了感を感じました。
『 早番にまわしとけ 書店員の覚醒』あらすじ
由佳子は「さかえブックス」の店長だが、もともと系列会社のアパレル業務担当。書店員の経験がないため、今日もアルバイトの幸田凜に怒られる。書店の長老・森さんも飄々としていて助けてくれない。友人の光太郎とは仲がいいものの、10年近くも片思いで進展なし。
そんな崖っぷち書店の店長が、売上を上げて本社に戻るため、あの手この手のアイデアを練るものの、ついに書店は閉店の危機に。
おまけに天敵の幸田凜が光太郎のことを好きになってしまうし、由佳子は別の男性から告白され…、どうなる書店、どうする恋愛!
崖っぷち店長と崖っぷち書店
由佳子は最初、本社に戻ることだけを考え、書店の仕事にもあまり熱心ではありません。経験豊富なアルバイトに怒られたり、ミスをしたりと仕事も憂鬱なことばかり。
だけど、書店の仕事や書店員たちの情熱に触れて、由佳子自身も少しずつ成長していきます。
しかし慣れてきても、世の中そううまくいきません。転売ヤーをやり込めて、本当に漫画がほしい子どもたちに売ろうとおもったら、子どもの図書カードの残高が20円!いいカッコをしたのに、またアルバイトの幸田に怒られてしまう。
このエピソード、大好きです。
他にも、数十年間立ち読みして、一冊も本を買わないおじいちゃんとか、本の予約を取りに来ない客とか、書店の問題やトラブルもリアルに描かれています。予約した本をそのまま取りに来ないと書店は売り時を逃してしまうんですね。
私も予約する時は気をつけようと思います。
現在、リアルの書店はネットに押されているのが現状ですが、書店の役割って本を売るだけでは無いんですよね。
・前作『遅番にやらせとけ』
]]>『目の見えない白鳥さんとアートを見に行く』川内有緒http://lbn.hizuki.lomo.jp/?eid=9477852023-08-15T18:38:00+09:002023-08-15T09:48:31Z2023-08-15T09:38:00Z最近、視覚障害者の方々の活躍がめざましいですね。ピアニストの辻井伸行さんやピン芸人の濱田祐太郎さん、そして、この本の主人公、白鳥さんは全盲の美術愛好家でありアーティストです。
白鳥さんが「見る」のは、視覚障害者向けの接触可能な彫刻などではなく、現代ア...日月読書感想文|読んでよかった!おすすめです。
白鳥さんが「見る」のは、視覚障害者向けの接触可能な彫刻などではなく、現代アート。同行者の説明からアートを想像し、たのしんでいるのです。
もしかしたら、目の見えない白鳥さんの鑑賞法そのものがアートなのかもしれません。だって伝え聞いた内容から、彼の頭の中では、元の作品とはちがうアートが生まれているのですから。そして、この鑑賞法は見えている人にも影響を及ぼします。
目の見えない白鳥さんのアート鑑賞法
『目の見えない白鳥さんとアートを見に行く』では、白鳥さんのアートの楽しみ方を通じ、見える人たちのアートの見方も変えていきます。
最初は「正確に伝えよう」と意識するものの、白鳥さんが求めるのはそこではないんです。
説明する人ごとに解釈がちがう、その「わからなさ」を楽しんでいるのです。まさに「目からウロコ」の解釈でした。そして、絵を説明する「見える人」も、実は絵をちゃんとみていなかったことに気が付きます。
(作者はこれを「解像度が上がる」と表現しています。)たしかに、言葉でアウトプットするためには詳細に観察しなければならないですしね。
中には湖と草原を勘違いしていた、というエピソードも出てきて、自分たちがいかに絵を見ていなかったかを気付かされたのだとか。
白鳥さんがもたらした新しい感覚
私は今まで、アートとは「作者や解説者の示す意図を理解しなければならない」という昭和の美術教育を引きずっていました。
でも、白鳥さんの鑑賞法はとても自由。ああそうか、アートってこうやって楽しんでいいんだ。読んでいてスッと肩の力が抜けるような気がしました。
もちろん、正確な解釈も大事だけれど「私はこう見える」って考えてもいいんですね。これからは白鳥さんの「アートを見る目」を携えて、自由にアートを見に行きたいな。
展覧会を読む
この本の中には、実際に白鳥さんたちが訪れた美術館とその作品が紹介されています。そのせいか、読者も展覧会で絵を見ているような感覚を覚えるのです。
知らなかったアーティストや美術館、イベントを知るきっかけにもなりました。まさに展覧会で絵を「読んで」いる感じです。
興味深かったのは、10人前後のグループで仏像を見に行った時、メンバーの感想を繋いでいくと実は「正解(この場合は由来)」にたどり着いてしまったことです。
集合知ともいうこの感覚、実はこうした鑑賞法では時々起こるんですって。一人でもくもくとアートをみるだけではたどり着けない境地ですね。
いつか、経験してみたいです。
・目の見えない人は世界をどう見ているのか
・「みえるとかみえないとか」
]]>『マダムたちのルームシェア2』seko kosekohttp://lbn.hizuki.lomo.jp/?eid=9477812023-08-14T22:29:00+09:002023-08-15T06:43:28Z2023-08-14T13:29:00Z沙苗さん、栞さん、晴子さん、3人のマダムたちの暮らしを描いた『マダムたちのルームシェア2』今日もマダムたちは日常を全力で楽しんでいます。
・マダムたちのルームシェア
毎日を楽しくする工夫
夏祭りでは全力で買い食いやくじ引きを楽しみ、誕生日は全力でお...日月マンガ・漫画感想マダムたちのルームシェア2』今日もマダムたちは日常を全力で楽しんでいます。
・マダムたちのルームシェア
毎日を楽しくする工夫
夏祭りでは全力で買い食いやくじ引きを楽しみ、誕生日は全力でお祝い。ハロウィンでも仮装とお菓子を楽しみます。
しかし、さすがマダムたち。イベントがなくても毎日を楽しく過ごせるよう工夫をこらします。晴子さんと沙苗さんの気分が優れない時、栞さんが何かできないかと、手作りのおみくじを思いつきます。
それもいい事しか書いてないおみくじです。それをみた2人はちょっと元気になり、自分たちでもおみくじを書き足します。
マダムたちは、楽しいイベントも、そうでない日も楽しく過ごせるメソッドをお持ちなんですね。別の漫画『メンタル強め美女白川さん3』でも、元気のない時に見るための「安心カード」を作っていました。
落ち込んでいたり、元気がなかったりする時はポジティブな言葉を摂取するのって、案外効くんですね。私もいいことしか出ないおみくじ、作ってみようかな。
描き下ろし 沙苗さんと栞さん親子のルームシェア
1巻で少しだけ語られたルームシェアのはじまりについてのお話。ある日沙苗さんのマンションに、栞さんと娘がやってきます。
当時沙苗さんにはパートナーがいたらしいのですが、なにか理由があり広いマンションに一人暮らし。栞さんは離婚を決意し、住むところが決まるまでおいてほしいと頼みます。
それから3人の共同生活が始まるのですが、今は飄々としているマダムたちも、若い頃は悩みや葛藤、悲しみを抱えています。娘の星奈ちゃんのために、全力でサンタを演出する2人の様子も微笑しいです。
おそらく80〜90年代のお話なのですが、当時のファッションがとてもおしゃれで見ていて飽きません。
・マダムたちのルームシェア
]]>『山の郵便配達』彭 見明http://lbn.hizuki.lomo.jp/?eid=9477842023-07-27T22:19:00+09:002023-07-28T13:24:41Z2023-07-27T13:19:00Z古き良き美しい風景と欲望の都会。少し前の中国を舞台に、そこに生きる人々の暮らしを描いた短編集『山の郵便配達』。
日本の小説とは異なる設定や描写がおもしろく、読み始めると面白くて物語の中に入りこんでしまいました。
山の郵便配達
映画の方を先に見たの...日月読書感想文|小説全般山の郵便配達』。
日本の小説とは異なる設定や描写がおもしろく、読み始めると面白くて物語の中に入りこんでしまいました。
山の郵便配達
映画の方を先に見たので、原作との違いが楽しめてよかったです。映画では息子を語り部にしていましたが、小説では父親視点で物語が綴られていきます。
山間部を歩いて郵便物を届ける配達夫は、ほとんど家に帰らない生活なので、最初は父と息子の関係はぎこちなくはじまります。父親は配達する際の心構えとノウハウを息子に伝えながら、自らの人生をかえりみます。
映画と同じく、年老いた父親が川で息子に背負われて思わず涙するシーンは、映画と同じく小説でも涙してしまいました。
沢国
湖のほとりで漁業を生業とする家の娘と兄嫁が小さな舟で魚をとる話。物語自体にはさしたる展開はないのですが、娘は少女らしい感傷で、時々腹を立てたり、気まぐれに湖への道順を変えてみたりします。
兄嫁のような結った髪より、自分の三つ編み気に入っている少女。そんな思春期の短い時間と湖の美しい風景が重なって、少し切ない気持ちになる話でした。
南を避ける
老田は成長した次女が南の都会へ行ってしまうのを恐れ、文革時代の仲間たちを訪ねて相談をする。彼らは老田より成功していたが、親身になって相談に乗ってくれた。
助言のおかげで次女は落ち着き、真面目な彼氏ができたのもつかの間、書き置きを残して都会へ行ってしまう。
80年代からはじまった中国の改革開放によって都会へ行ってしまう若者たちと、残された年寄りをテーマにした話。都会へ行った若い女性の急激な「変化」は、これまでの中国にはなかった価値観なのでしょうね。
過ぎし日は語らず
文化大革命時代、私塾の教師と生徒、その息子との交流の話。当時の田舎ではまだ、公立の学校に通わせる余裕はなかったため、資産家の家を学校として使っていたそうです。
先生の小さな息子との友情と別れ、先生がくれた不思議な箱、主人公が当時を振り返る形で書かれているため、ノスタルジックで不思議な読了感がありました。
愛情
堅物の男性が心臓病の女性と形式的な結婚をする話。彼女は興奮できないため、結婚後も清いままの関係が続きます。しかし、男が事故で怪我をした時、「妻」から意外な提案をされ…。
果たして彼女は本当に病気だったのか、それとも男性との生活で変化していったのか。真相はわからないものの、都会で刹那的な関係を結ぶ男女が多いからこそ、こうした純愛は尊いのでしょう。
振り返って見れば
知人のいないと都会で働く男は、懐かしさから昔の彼女に声をかけてしまう。しかし彼女の姿は変わっていた。派手な服装に宝石。男の上司は彼女を「鶏(娼婦)」だといい、関係を断つように言い渡す。
彼もまた、彼女を蔑んでいたが、仕事をやめて落ちぶれる男に手をたったひとり差し伸べたのは彼女だった。
中国はメンツの国ですから、男がいかにおちぶれたとはいえ、蔑むべき職業の女からの施しはプライドに関わることなのでしょう。
男性の弱さと、女性のしたたかさが対象的に描かれています。
・映画『山の郵便配達』
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