漫画『烏に単は似合わない』松崎夏未

2020.07.07 Tuesday

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    阿部智里さんのファンタジーミステリ『烏に単は似合わない』のコミカライズ版が全4巻が完結。
    原作の雰囲気と展開をいかしつつ、独自の表現が素晴らしいまんがでした。

    いままで脳内で想像していた登場人物や、桜花宮の壮麗なお屋敷、宮烏たちの美しい衣装など、実際に絵になることでわかりやすく美しく、そして恐ろしく表現されています。



    『烏に単は似合わない』あらすじ


    人の姿をとる八咫烏の一族が暮らす山内。世継ぎの若君の正室「桜の君」を決める「登殿」には、山内の東西南北を納める大貴族の家から四人の姫君が選ばれる。

    東家の姫・あせびは、姉の代わりに急きょ「登殿」することになり、山内の中央、桜花宮へと向かう。夏殿には南家、秋殿には西家、冬殿には北家と、それぞれの家を背負った姫たちの美しくも雅な戦いの始まりだった。

    山内の事情に疎いあせびは、はじめのうち桜花宮の雅な暮らしに戸惑うものの、他家の姫たちと競いつつ交流を深めていく。やがて政治や家の事情が絡みあい、姫たちの闘争が深まるが、かんじんの若君は現れない。そして桜花宮で恐ろしい出来事が…

    詳しくはこちら→小説『烏に単は似合わない』



    コミカライズ『烏に単は似合わない』の魅力


    松崎夏未さんの表現力、すばらしいですね。もともと阿部智里作品のファンで、以前から八咫烏シリーズの絵をSNSでアップしていたのを阿部智里先生がみて、コミカライズに抜擢されたんだとか。

    作品のファンということで物語の理解度が高く、世界の再現力がとても高い。八咫烏シリーズの大発明システム「羽衣」から八咫烏に変わる描写もすばらしい。

    「羽衣」とは


    「羽衣」は、八咫烏が鳥から人になるとき、意識でつくる仮の衣のようなもので、羽を变化させたような黒の着物姿になります。(ただし、貴族たちは烏の姿になることはないし、やりかたも知らない)

    通常、ファンタジー世界で獣から人になるときは、いったん服の着脱が必要です。

    しかし「羽衣」というシステムがあると、いちいち着替える必要がないので、物語を中断させずに先へすすめることができるし、ビジュアル的にも美しい。ほんとこの「羽衣」を発明した阿部智里さん、天才だわ…

    そして、今回、その「羽衣」のシステムが物語の重要な鍵になっています。

    特に素晴らしいのが後半の描写


    とくに私が好きなのが、後半の描写です。前半は美しく、優雅に競っていた姫たちが一転、感情をむき出しにしていくところが、本当に見事。

    特に白珠のキレっぷりと、藤浪の焦燥の表情が醜くていい。高貴な姫は感情を表に出さないように教育されているのですが、そうした彼女たちが、人目もはばからずに醜い表情をむきだしにする姿が迫力がありました。



    ここからネタバレ


    私は小説を読んでから漫画を読んだのですが、結末を知っているからこそ、あせびの愛らしくも無垢な姿が恐ろしく思えます。漫画でも彼女だけなんですよ。激しい感情の起伏を見せないのは。

    最後、謎解きが終わってあせびの涙するシーン、あの1ページはすごい。
    美しいあせびの泣く姿、彼女の下には、たくさんの八咫烏たちの屍が敷かれている。
    あの絵だけで、あせびという姫のすべてを表していますね…。

    外伝外伝『はるのとこやみ』では、本作にも登場したあせびの母、浮雲の話です。こちらも合わせて読むと、この母娘の行動にはゾッとさせられます…

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    コミカライズでは『烏は主を選ばない』』の主人公・雪哉も登場。この頃はまだ猫をかぶって…いや、初々しい少年のようでしたね。雪哉の話もコミカライズしてほしいです。



    八咫烏シリーズ


    『烏に単衣は似合わない』
    『烏は主を選ばない』
    『黄金の烏』
    『空棺の烏』
    『玉依姫』
    『弥栄の烏』
    外伝『すみのさくら』
    外伝『しのぶひと』
    外伝『ふゆきにおもう』
    外伝『まつばちりて』
    外伝『あきのあやぎぬ』
    外伝『ふゆのことら』
    外伝『なつのゆうばえ』
    外伝『はるのとこやみ』

    ローマ・ブリテン第二作『銀の枝』ローズマリー・サトクリフ

    2020.07.05 Sunday

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      ローマ後期のイギリスを舞台にした『第九軍団のワシ』。その主人公マーカス・アクイラの子孫たちが活躍するのが『銀の枝』の物語です。

      『銀の枝』あらすじ


      ローマ帝国の後期。外科医のジャスティンはローマからブリテンへ派遣される。そこで彼は百人隊長フラビウスと出会い、彼が同じイルカの紋章を持つ親族であることがわかり、親友となる。

      ジャスティンとフラビウスは、当時ブリテンを支配していた皇帝・カロウシウスにも目をかけられていたが、ある日、狩りに行った島で、アレクトス大臣が「海のオオカミ」と呼ばれるブリテンの男との密談を聞いてしまう。

      このことを皇帝に進言するものの、皇帝は受け入れず、反対に北の赴任地へ追いやられてしまう。やがて2人は、その後皇帝がアレクトスに暗殺されたことを知る。

      アレクトスに反旗を翻すため、彼らは行動を開始する。長い苦難の末、家の祭壇の下から軍団の旗印である「ワシ」を発見し、寄せ集めの軍団の旗印とするのだった…。




      史実とフィクションの融合


      サトクリフは、発掘されたローマの遺物から、歴史を絡めた壮大な物語を作りだしてくれます。遺跡に刻まれた「槍の人 エビカトス」という文字から、部族をお追われながらも、部族のために戦う孤高の狩人が描かれました。

      旗印となる「ワシ」も、実際に発掘された場所につながるように、物語のクライマックスで登場します。
      それがもう、本当かっこいい。まるで歴史が、その場で作られていくのを見ているようでした。

      また、敵から追われた2人がそこから仲間を集めて、よせあつめの軍団を形成していき、最後に先祖のマーカスに導かれるように「ワシ」を反撃の旗印していくところも痛快でした。

      逆境から立ち上がり、寄せ集めの軍団をつくる展開は最近読んだ『十二国記』でもありましたが、やはり胸が躍る展開です。

      ただ、エビカトスの名前が史跡にどう残っていったのか、そのあたりも描いてほしかったかな…。

      『第九軍団のワシ』感想→

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      『菓子屋横丁月光荘 文鳥の宿』ほしおさなえ

      2020.06.26 Friday

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        川越を舞台にした菓子屋横丁月光荘シリーズ『文鳥の宿』。ほしおさなえさんの本を読むと、ほっとします。

        特に今年、2020年はコロナ禍のため行きたいところに行けず、会いたい人に会えないつらい時期。

        そんなときに「菓子屋横丁月光荘」をよむと緊張がほぐれて、なんだか自分も守人のように、やさしい人達に囲まれている気がして、こころが温かくなるんです。



        主人公の守人は、両親を早くに亡くし、厳格な祖父と折り合いが悪く孤独を抱えていた青年ですが、月光荘の管理人を任され、川越の人たちと関わることで少しずつ絆が芽生えていく姿が、読んでいて応援したくなります。

        また、守人は「家の声を聞くことができる」不思議な能力も孤独と同様に抱えていたわけですが、月光荘と言葉を交わすうちに、不思議なことだけれど、それを受け入れ、生きていくことでまた新しい縁が生まれた気がします。

        雛の家


        前作浮草の灯で関わることになった「二軒家」の整理を手伝うことになった守人は、大事にしまわれた雛人形をみつける。

        二軒家の整理が終わるまで月光荘で雛人形を飾ることになったが、なぜか三人官女の一体だけが見当たらない。家主の和田さんに確認しても、雛人形の存在自体知らないという。
        しかしある日、「二軒家」の三人官女を返しに来たという女性が月光荘に訪ねてきて…

        子どもの死亡率が高かった昔、ひな祭りは女の子の成長を願うものでした。和田さんのお母様の、亡くなった娘への思いと、その思いを託された女性。二人の女性をまもってきた雛人形。
        読んでいて涙があふれました。


        オカイコサマ


        大学時代の友人・田辺の誘いで川越の隣、川島町を訪れた守人。近代和風建築の遠山記念館を訪れた時、家から「モリアキ」と声をかけられる。最初は人違いだと思っていたが、田辺の祖父母の家を訪ねた時、また声がした。

        紹介された田辺の祖母は不思議なひとで、彼女もまた家の声を聞くことができる人だった。そして、「モリアキ」と守人とのつながりも…

        蚕のいる家


        関東近郊の農家の2階は、かつて蚕を飼育していました。私の親戚も養蚕をやっていたので、蚕が桑の葉を食べる雨のような音の描写を懐かしく読みました。

        田辺くんのおばあさまのやさしく、どこか浮世離れした雰囲気がかわいらしい。おばあさまとの出会いによって、秘密を抱えていた守人の心が軽くなって、なおかつ先祖とのつながりもわかったのは、読んでいるこちらもうれしくなりましたね。

        出会いはみんな縁になり、僕たちはつながりの中で生きている。


        文鳥の宿


        守人は大学院を終えた後の進路を考えるようになる。そんなとき、懇意にしている古書店「浮草」のスタッフから、元料亭だった旅館のリーフレットづくりの手伝いを頼まれることに。

        守人が浮草のスタッフとべんてんちゃん、宿のオーナー美里さんと話し合い、いろいろな企画やアイデアを実現していくようすが、ワクワクします。こちらも参加している気分になれる。

        将来のことについて、まだ悩みはつきない守人ですが、せっかくできた川越での縁を活かす仕事についてほしいなと思います。

        実際に川越では古民家を利用した宿やゲストハウスが増えていて、宿泊だけではなく、地域やお客さんとの絆を大事にしています。また、川越の夜の風景は昼間と違ってしずかできれいなので興味のある方は行ってみてはいかがでっしょう。

        観光だけで帰るのはもったいない!川越は「夜」も面白いのです
        日帰り観光の川越で、あえて宿泊する3つのメリット

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        菓子屋横丁月光荘シリーズ


        『菓子屋横丁月光荘 歌う家』
        『菓子屋横丁月光荘 浮草の灯』

        レビューポータル「MONO-PORTAL」

        ハッカ油+布マスクで清涼感

        2020.06.21 Sunday

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          布マスクを少しでも涼しくしたい


          毎年、夏になるとミントの香りのハッカ油利用法として、おしぼりや素焼きのストーンをご紹介してきました。
          しかし今年はコロナ禍の影響で、布マスクにもハッカ油を利用できないか試してみました。

          今はたくさんの冷感布マスクが販売されているので、どれが涼しくて使いやすいか、いろいろ購入して使用感を試しています。

          冷感マスクの使用感


          最近購入した絹マスク。ちょっとお高めですが、ワイヤー入りで形がしっかりしているし、厚みの割にはけっこう涼しくて愛用しています。

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          ハッカ油、布マスク、ジップロック


          ハッカ油は清涼感と冷感を感じることができるのですが、マスクに直接スプレーしてしまうと匂いがきつすぎるし、吹きかけた部分が肌につくとヒリヒリして、何度も痛い目をみてきました。

          なにかいい方法はないだろうか…と思った時、洗った布マスクの保存用に使っていたジップロックの中にハッカ油をスプレーしたところ、これがちょうどいい!

          ジップロック内にハッカ油をスプレーしてから布マスクをいれると、ちょうどいい感じでミントの香りが布マスクにつきます。

          ハッカ油+布マスクで清涼感

          これなら、肌がヒリヒリにならず、香りもきつすぎないのでちょうどよい清涼感が味わえます。

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          ちょっと風変わりなガレージセール「三護さんのガレージセール」

          2020.06.14 Sunday

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            家の近所にも、こんなガレージセールをやっている家があるといいな。

            「三護さんのガレージセール」あらすじ


            在宅ワークで人としゃべる機会がない三護さん。だったらしゃべる機会をつくってしまおう、と自宅のガレージでガレージセールを開きます。しかし、普通のガレージセールと違うのは三護さんはなんと、ガレージセールをするためにガレージのある家を借りてしまったのです。

            三護さんは在宅の仕事で普通よりも収入が多く、そのためついつい衝動買いをしてしまい、イヤホンなんて色違いでいくつももっていたり、持っているのを忘れて、同じものを買い直してしまいます。

            そんないらない物の処分と、「人と話すこと」を目的としているので、値段は格安でてきとう。

            すると、そんな風変わりなガレージセールに、これまた風変りなお客さんが集まるようになり…。




            風変わりなガレージセールと、風変わりなお客さんたち


            類は友を呼ぶ、というのでしょうか、三護さんのガレージセールには一風変わったお客さんが集まります。
            本を読みすぎて、家族から注意されるほどの読書家の主婦・宮崎さん。ドラマ「シャークロックホームズ」マニアが講じて友だちになった高校生の舞原さん。

            そして時にはお客さんではない人も、やってきます。近所の武藤さんは三護さんを気に入り、ソフトボールや焼き芋会に誘ったり、ガレージセールにものを買わずに置いていったりするおじさん。

            そんな風変わりな人たちとのコミュニケーションは、当初の予定とはだいぶ違ってきたけれど、地域のひとたちと仲良くなったり、常連さんとガレージでなぜかおでんを食べたりと、三護さんのガレージセール・ライフはなかなかに充実してきています。

            1巻だけで終わるのがもったいない。もっと読みたい漫画でした。


            作者は『書店員 波山個間子』シリーズの黒谷和也さん。本に関しても造詣が深く、作中にもよく小説やエッセイの話がでてくるので、本好きにもうれしいお話です。

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            「みえるとかみえないとか」ヨシタケシンスケ

            2020.06.09 Tuesday

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              みえるとかみえないとか」は、「目の見えない人は世界をどう見ているのか」目が見えないとはどういうことなのか、見えるひととどう違うのか。

              そして、自分と違う人たちとどう関わっていくのかを、わかりやすく、かつユニークに紹介しています。

              ヨシタケシンスケさんは伊藤亜紗さんの「目の見えない人は世界をどう見ているのか」を読んで、この絵本を描いたそうです。

              ヨシタケさんにかかると、見えても見えなくても、大人でも子どもでも、違った世界はこんなにも面白くできるんですね。



              残念がられる「普通の人」


              この絵本の主人公は宇宙飛行士。調査でいろいろな星に行きます。ある時、目が3つある、自分の後ろが見える人たちの星に行くと、その星の人々から「うしろが見えないなんて、かわいそう」「ふべんだね」と言われます。

              ここで価値観の逆転がおこります。私たちが目の見えない人に対しての感想を、こんどは「普通の人」が言われることに。
              宇宙飛行士の少年は、それまで行ったいろいろな星のことを思い出します。
              足が長い人、体がやわらかい人、そういう場所では「自分のふつう」が不便になってしまうんです。



              のりもののようなもの


              みえるとかみえないとか、そうした特徴やみためは「のりもののようなもの」とヨシタケさんは書いています。

              自分とちがうと「よくわからないから」「ちょっと きんちょうしちゃう」けれど、おたがいの工夫や失敗を教えあったら、きっといろいろな発見があるかもしれない。

              個人的にすきだったのは、三つ目の星の人はテストを受ける時に後ろが見えないよう、目をいっこしか使っちゃいけないルールです。足が長い人、短い人、大人やこども、いろんな「へー!」という発見で面白がれるといいですね。

              ここ数年、盲目の漫談家・濱田祐太郎さんがR-1ぐらんぷりに優勝するなど、これまであった意識の壁みたいなものが少しずつ取り払われている気がします。

              ちがうところを おたがいに おもしろがれば いいんだね。


              濱田祐太郎さんのネタはほんとに面白い。彼のつかみは「迷ったら笑っといてくださいね」

              大爆笑の最強ネタ大連発SP 2018/9/15放送

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              「デザートはあなた」森瑤子

              2020.06.04 Thursday

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                朝日新聞社の運営する本のサイト「好書好日(こうしょこうじつ)」のツイッター企画で「小説の中の食べ物」を募集していたとき、真っ先に思いついたのが森瑤子さんの「デザートはあなた」でした。


                「デザートはあなた」あらすじ


                大西俊介はテレビ制作会社につとめ、親の残したコンドミニアムに住むリッチマン。おまけにインターナショナル・スクール出身らしい。趣味は釣りとバイクとそして料理。それも男の手料理といった豪快なものではなく、イタリアンに中華、厳選された素材と手間を掛けた料理は本格的。

                それを気の合った美女に食事をふるまい、「デザートはあなた」と言って口説くのだ。

                口説く相手は小説家、女優、写真家にアーティスト、医者など、キャリアをもち自立した女性ばかり。しかし、いい雰囲気まで行くものの、なぜか毎回「デザート」にはありつけないのだった…。




                都会の大人の恋愛


                時代はバブル期、お金持ちでテレビ制作会社勤務で料理ができてハンサム、女性側も美人で一流の仕事人ばかり。今読んだらファンタジーかと思うくらいの設定ですね。

                それが森瑤子さんの筆にかかると、絵空事のような料理と恋愛が軽すぎず、かといって深刻になりすぎない大人の恋愛として成立しているんですね。嫌味がなく、物語にすらっと入れる。まあ、あまりにもドラマのような展開なので(実際ドラマ化された)現実味はまったくありませんが、いい意味でファンタジーとして料理と恋愛を味わえます。

                出てくる料理がどれも美味しそうでしたが、手が込んでいるため、なかなか再現ができませんでした。「スモークサーモンのオムレツ」を再現しようとしたのですが、スモークサーモン自体珍しかったので、鮭で代用した覚えが…

                恋愛だけじゃない。大人の責任とメセナ


                「デザートはあなた」の、もうひとつのテーマが「メセナ」(企業が行う文化支援)。
                この小説で初めて「メセナ」という言葉を知りました。
                大西俊介が仕事で出会い、惚れ込んだ彫刻家。彼はスペインのサグラダ・ファミリアの建設に参加しているが、資金不足のため苦労している。

                そんな彼を助けようと、俊介はメセナを企画し、働きかけるものの計画はなかなかうまく行かない…。
                「デザートはあなた」はおしゃれな料理と恋愛の話だけではなくて、骨太な社会問題が描かれているのです。

                おそらく、池井戸潤さんあたりが書いたら恋愛が全くない、熱血な企業メセナ小説ができるだろうな。それはそれで読んでみたい…

                企業メセナの理論と実践 なぜ企業はアートを支援するのか (文化とまちづくり叢書)

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                「デザートはあなた」のドラマ


                大西俊介を岩城滉一、恋人の奈々子を毬谷友子、夏木マリ、かたせ梨乃など、豪華キャストでドラマ化されていました。俊介の親友三四郎を忌野清志郎がやってて「一つの像をなんども作ったり壊したりしている」彫刻家の役が印象的でした。

                ドラマオリジナルの池畑慎之介の回も好きだったな。
                コロナ渦の再放送ブームで、このドラマも見せてくれないかな…。

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                出産と手術と大沼田会「逃げるは恥だが役に立つ11」海野 つなみ

                2020.06.02 Tuesday

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                  平匡・みくり夫婦の妊娠にまつわるドタバタと、百合ちゃんのガン発覚。おまけに平匡さんの会社も人間関係の問題が山積み…。

                  報連相で妊娠中のトラブル回避


                  産休にはいって症状も落ち着いたみくりさん。平匡さんとともに名前や育休生活についてのミーティングを重ねます。しかし、まだまだ体調のすぐれないみくりさんと、仕事と家事にストレスを抱える平匡さんはささいなことで言い争いをしてしまう。

                  まさか平匡さん、流行りの不倫に走ってしまうの…??と思っていたらそんなことにはなりません。(よかった…)平匡・みくりカップルは、これまでのトラブルも家庭生活をビジネス的に捉えて運用してきたので、こうしたすれ違いにも解決策を提案して実践していくんですね。

                  家庭生活は精神論、根性論ではなく、これからはシステムとして冷静にマネジメントすることが必要なのかもしれません。

                  下心と一般常識


                  一方、こじらせ女子雨山さんは平匡さんを諦められず、かといって不倫をするほど勇気もなく、うっかり親切にした同僚北見さん(この人もこじらせている…)から強引なアプローチを受け、断ると逆ギレされ、またしても平匡さんに頼ろうと…。

                  平匡さんは単純に「女性と普通に話せるスキル」として喜んでいるだけで、雨山さんの恋心にまったく気づきません。雨山さんの恋愛相談を知ったみくりさんは、なんと出産の最中に雨山さんの相談に答えることに。

                  みくりさんは心理学を学んでいたので、アドバイスが(平匡さんより)的確ww

                  「好意のない人への親切は一般常識で、好かれたい相手にする親切は下心」
                  「好きな人にしか親切にしていないと、相手の親切を勘違いする」

                  ほんと、そういう人いますよね…



                  「カテゴリー」にとらわれる私たち


                  平匡さんが育休中の会社では、セクハラ、振られた腹いせのパワハラが横行。みかねた沼田さんが「大沼田会」を開催することに。

                  いったい「大沼田会」とは…?別名コミュニケーション道場。日頃言えない本音や文句はOK、けれど人格否定は罰金。これでみんながどんな風に思って発言をしてきたのかが明確になります。


                  私たちは感情や関係性、さまざまなことに「カテゴリー」をつけたがります。「男」「女」「親」「子」たいていそうしたカテゴリーの後にはたいてい「だから」という語句が続き、相手を区別したり、マウントを取るために使われます。

                  けれど、そのカテゴリーに当てはまらない人もいる。沼田さんはゲイですし、百合ちゃんの友人・伊吹さんはレズビアンで同姓の恋人と里親制度を適用して子どもと関わろうとします。

                  無事、手術が成功した百合ちゃんは、伊吹さん同性カップルとの関わりや大沼田会の経験から、そんな「カテゴリー」をはずして風見さんと向き合うことにします。一度別れた関係の再構築はなかなか難しいですが、それでも思い込みをはずした先には、恋人でも友人でもない、新しい、でも快適な関係になると思うのです。


                  どんな性でも


                  細かい部分なのですが、私が感動したのは赤ちゃんの性別が最後まで明かされなかったことです。

                  生まれる前はへその緒を挟んでいてわからなかったので、男でも女でもしっくりくる名前を、そして将来、子どもの性が変わっても対応できるようにと。この時点で、平匡さんもみくりさんも、子どもの性の選択を柔軟に考えているんですよ。

                  赤ちゃんの名前の亜江(あこう)は、「森山」「津崎」をつなぐ川の意味。すてきですね。

                  平匡さんのご両親もふたりを尊重して、自分たちのやり方を決して押し付けないんですよ。このあたりは、さすが平匡さんを育てたご両親だなあと思いました。孫が生まれるとなれば、自分たちのやり方を押しつけてくる老親はこの世にゴマンといますから。

                  私ごとですが、友人は男の子を生んだ時、義父母に「ようやく跡取りができた。前は女の子で残念」と言われたそうです。家名を残すほどのご家庭でもないなのに、です。私自身も「男じゃなかった。残念」と言われて育ったので、いつも自分が足りないものだと感じていました。

                  でも「逃げ恥」のおかげで救われた気がします。どんな生き方でも、人に迷惑をかけず、礼儀としての親切をこころがけて生きればいいし、人によって「普通」なんて違うのだから。


                  ドラマ版の最後でも、新垣結衣さん演じるみくりさんはこんな風に言っています。
                  「どんな道を選んだとしても、わたしたちは大丈夫」

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                  古本と旅と謎解きと「愛についてのデッサン―佐古啓介の旅 」野呂邦暢

                  2020.05.31 Sunday

                  0
                    書店を舞台にした小説が好きです。ましてや好きな作家の作品ならなおさら。
                    野呂邦暢さんの「愛についてのデッサン―佐古啓介の旅」は、古書店の若き店主・佐古啓介が、本に込められた人の思いを読み解いてゆくストーリー。40年以上前の作品なのにまったく色褪せない、何度も読み返したくなる本です。

                    啓介は本と人の縁をつなぐうちに、自分の父がなぜ故郷を捨てたのか、そのわけを知りたいと思い、父の故郷・長崎へ向かいます。

                    旅と古書と謎解き


                    旅と古書と謎解きと書くと、旅をしながら本の謎を解く、個性的な探偵小説を思い浮かべるでしょうが、この本にはそんな派手な展開はありません。

                    そういうものはラノベにおまかせして、「愛についてのデッサン」ではもっと大人の、本に秘められた人間の深い感情を味わいましょう。

                    佐古啓介は父親の古書店を継いだ若き店主で、よく友人や知人の依頼で本を探すために旅に出ます。それはただ本を探すだけではなく、本にまつわる事情にも触れることになります。

                    本を探すだけが古本屋の仕事じゃない。人間っていつも失ったなにかを探しながら生きているような気がする。


                    昨日まで啓介と普通に本の話をしていたのに、その翌日に自殺を図った老人、才能が枯渇したのにそれを認められず虚勢をはる小説家志望の友人、詩に愛と、絶望をこめた詩人たち。

                    そこにはさまざまな人の、さまざまな思いが本に込められています。



                    美しくて深い


                    一冊の本にはその持ち主の思いが反映されていますが、謎解きが終わってもすべてが明かされるわけではなく、啓介も探偵というより、本に秘められた人の感情を静観しているように思われます。

                    女性が体に悪いのにおいしいと煙草の感想を漏らしたとき、彼女が道ならぬ恋をしているのではないかと思い、同じく道ならぬ恋をして彼女を生んだ母親の人生が重なる。

                    美しく、詩的な文章なのに、読んだとき思わずゾッとするほど深いんです。

                    ほかにも、会ったときは元気だったけれど、本を読み終えた後に自殺を図った老人や、才能が枯渇するがそれを認められず虚勢をはる友人など、さまざまな感情が描かれてます。それが滑稽であったり、切なくもあり、読んだ後の余韻がまた深いというか…。


                    古書店の詳細な描写


                    古書店の目録による通信販売や、万引の話、地方で郷土史を仕入れると東京で高く売れたり、新刊書の古本を指して「白っぽいもの」と言ったり古書店ならではのエピソードも詳細に語られています。

                    実際に調べもしたのでしょうが、野呂邦暢さんは著書「小さな町にて」で、旅先で書店や古書店をめぐると書いていますし、またかつて大森にあった有名な古書店・山王書房へも通っていたので古本屋事情には詳しかったのかもしれません。

                    山王書房店主・関口良雄さんの随筆「昔日の客」。野呂邦暢さんとのエピソードが描かれています。


                    JUGEMテーマ:オススメの本


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                    ペルシャの姉妹妻ふたたび『乙嫁語り12』森薫

                    2020.05.27 Wednesday

                    0
                      スミスは写真を携えて、これまで来た道を戻っていく。今度はガイドのアリさんのほかに、友人がつけた護衛のニニコロフスキと再会したタラスさんとともに。

                      まずはペルシャ。7巻で登場した姉妹妻、アニスとシーリーンの暮らす屋敷を訪ねます。ペルシャでは女性客は女主人の館に招かれます。アニスとシーリーンはタラスの話に興味津々。
                      スミスは記録を残すために女性たちを写真に撮りたいと申し出るけれど、さすがに主人に断られる。(そりゃそうだ…)タラスさんが機転を利かせ、アニスとシーリーンを説得して屋敷内の撮影をすることに。



                      姉妹妻その後


                      相変わらずラブラブな姉妹妻さんたちですが、少し関係性が変化してきた感じです。

                      今ままではアニスの方がシーリーンを慕っていて、シーリーンはそれに対し、ちょっとツンデレな感じだったのですが、実ははアニスは意外に天然でマイペース。そんなところをシーリーンが姉のように世話を焼く姿が微笑ましい。

                      ふたりはお風呂屋さんでも大勢の友達に囲まれ、アニスはこれまでの幸せだけど寂しかった心の空白を埋めることができたようです。それを見ていた召使いのマーフが涙ぐむ。アニスってけっこう愛されキャラなんだよね。本人まるきり気づいていませんが。



                      風習の違い


                      中央アジアでは当たり前の「馬に乗る」「顔を出して生活する(髪は隠す)」生活もペルシアでは珍しく、不思議なこととして捉えられます。土地が違うと風俗も考え方もことなることが現れていて興味深いです。

                      ペルシアの女性たちは家族以外に顔を見られるのが嫌だと感じるし、スミスの国の自由な結婚制度にも「親が決めた相手でないと家族とうまくいかないのでは」と考えます。

                      私たちからみたら、親が決めた結婚なんて窮屈で閉鎖的だと感じますが、アニスやシーリーンたちには「こちら」がおかしいんですね。

                      サウジアラビアの女の子とルームシェアをするマンガ「サトコとナダ」でも、そうした風習や考え方のギャップがでてきますが、どちらが正解ということは無いんでしょうね。

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                      閑暇


                      それぞれの乙嫁たち、退屈な時間の過ごし方を描いています。アミルさんはひとりでおるすばん、アラル海の双子のたちは旦那たちとだらだら。本当は台所仕事があるのにサボっているのも相変わらず…

                      パリヤさんは約束がふいになり、アミルさんに会いに行くけれど留守らしい。落ち込んでしまうパリヤさん。まあそこが不器用でかわいいんですけどね。


                      カルルクさんの姉夫婦、セイレケさんユスフさんのなんというか…ラブラブなお話。途中、末っ子のロステムくんが邪魔に入ってしまうのですが。

                      中央アジアはイスラム教なので女性たちはコーランの教えに従って髪を隠しています。髪は、家族の前でしか見せないため、女性たちは夫のために髪を整えます。

                      手紙


                      今回はじめてスミスの家族が描かれます。19世紀なかばなので「エマ」や「シャーリー」より時代が古く、広がりのあるスカートにレースの襟と、今までと異なるファッションなんですね。それにしてもスミスのご家庭は随分と上流階級のようですが、本当にタラスさんを連れて行って大丈夫なのだろうか…

                      乙嫁語り


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                      森薫さんがつくる「乙嫁語り」レシピ→
                      「乙嫁語り」の森薫さんが中央アジア料理を漫画で紹介。主催はなんと外務省!
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