2014.07.30 Wednesday

相棒脚本家が描く社会サスペンス『犯罪者 クリミナル』太田愛

相棒脚本家が描く社会サスペンス「犯罪者 クリミナル」を読了。いやー、すごかった。

現代の社会問題をベースに、利権のために一般の人々の命を奪う側と、それを守ろうとする男たちの戦い。乱立するいくつもの事件と社会問題が、読み進めていくうちに一つの線につながっていきます。

「犯罪者 クリミナル」 あらすじ


建設作業員の繁藤修司は、クラブで知り合った女性・亜蓮と待ち合わせをした駅前広場で「偶然」通り魔に襲撃される。警察は死亡した覚せい剤常用者を犯人として捜査を進めるが、刑事の相馬は事件に不信感を抱く。

一方通り魔事件の生き残りである修司は、病院で見知らぬ男から「4月4日まで生き延びてくれ。君が最後の一人なんだ。」と謎の言葉をかけられ…。

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見事なまでの伏線回収


通り魔事件、乳幼児の謎の発病、大手食品メーカーの恐喝事件、政治家の秘書、プロの殺し屋…。

これらがいったい、どうつながっていくのか、最初のうちは、これらのピースがあまりにもかけ離れすぎて、想像もつかなかったのが、読み進めていくうちに、意外な部分でつながっていき、前半最後まで読むと、この多すぎる謎がひとつの事件になっていきます。


社会の闇


乳幼児の顔を腐らせる謎の病気の原因、それはタイタスフーズが政治家との癒着でゴリ押ししたベビーフードサンプルが原因だった。上部からサンプルの処分を言い渡された課長・中迫は、知人である産廃業者・真崎に協力を依頼する。その後、真崎は中迫の知らないうちにメディアへの告発、タイタスフーズへの恐喝を行うようになり…。

実は、真崎には心のうちに大きな悲しみと彼なりの正義があって、それで中迫を裏切り単独犯として動いていきます。

しかし、彼が犯罪者というなら、自分の利益のため事実をもみ消そうとしたフーズの人間や、掃除屋(殺し屋)を雇って事態の収拾を図ろうとする政治家の方がよほど「犯罪者」の資格があると思うのですが。

その他にも産廃問題やテレビ報道の裏側、社会の闇部分が描かれていて、こんな社会に住んでいるんだと実感して恐ろしいです。


行き詰まる頭脳戦


唯一の証人である修司を、政治家の雇った掃除屋から匿うため、相馬は友人、鑓水を頼ります。

この鑓水という男、元テレビマンで多くの人脈をもち、推理力にも長けている人物です。彼が後半探偵役となり、ある計画を実行しようとするのですが、そこには政治家が雇った掃除屋が立ちふさがり、彼らを排除しようとします。その行き詰まる頭脳戦が後半の読みどころです。

またこのプロの掃除屋の滝川という男、ターミネーターのT2000並におっかないんですわ…((((;゜Д゜)))

勧善懲悪ではない


相棒の脚本家さんですから、そこいらの勧善懲悪のようにはいきません。悪は滅びないし、罰せられない。無辜の民の命は救われない。本当の犯罪者は反省なんかしない。

悔しくて切ないけれど、けれどもその中でも、なんとかしてあがいて、状況を変えようとする人たちがいます。

それが小さいながらも希望につながっていくんですね。前に読んだ「幻夏」よりは痛快感があったかな、と思います。

鑓水と相馬、修司が活躍するシリーズ第二弾
「幻夏」

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2014.04.02 Wednesday

相棒の脚本家が描く、切ないミステリ 『幻夏』 太田愛

人気ドラマ「相棒」の脚本家・太田愛さんの本格クライムミステリ『幻夏』を読みました。

読み終わって、なんとも言えない気持ちになりました。ある家族を襲った冤罪事件、それに連鎖するようにどんどんと悪い方向へ転げ落ちていく。そして、その家族を不幸へ陥れたのは、本来、市民を守るべき警察や法曹界の人間たちだったのです…。

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『幻夏』あらすじ


23年前の夏休み。刑事の相馬は小学6年の時、近くに引っ越してきた尚と拓という兄弟と友だちになった。3人でいろいろな冒険をした素晴らしい夏休みだった。しかし、二学期の始業式の日、尚は忽然と姿を消してしまった…。

それから23年後。相馬の友人、私立探偵の鑓水のもとに、23年前に失踪した息子・尚を探して欲しいという風変わりな依頼が尚の母親から舞い込む。

時を同じくして、警察関係者の孫娘の誘拐事件が発生。その現場には「//=|」というなぞの記号が残されていた。その記号は、23年前、尚が失踪した河原の石に刻まれたのと同じものだった。

時間も状況も異なる3つの事件は、やがて意外な方向から結びつき始め、鑓水たちは、そのはじまりが尚の父親の冤罪事件だったことを突き止めるのだが…

なんとも魅力的で、悲しいストーリー


すべてを奪われた人間の、悲しく切ない復讐劇


大きな力によって、肉親を奪われた犯人が、明晰な頭脳で事件関係者の孫(小生意気なガキ)を誘拐し、身代金を要求する、といった痛快なストーリーは、岡嶋二人の名作ミステリ「99%の誘拐」を彷彿とさせます。

こちらもおすすめ、誘拐ミステリ
『99%の誘拐』。30年以上前パソコン黎明期に起きた誘拐事件をベースに、過去の事件との関連が描かれていきます。

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しかし、読み進めていくと痛快どころか、どうにもならない過酷な状況に陥った人々の悲哀をこれでもか、と見せつけられます。正義は勝たず、警察は沈黙し、力のないものは抗うことができない。


冤罪の恐怖


自白を強要されても、立件してしまえば殆どの場合罪が覆されない現実、犯人を落とすためには証拠を握りつぶし、家族までも追い込む警察、激務に追われ、充分な調査を行わない検察や裁判官…。

恐ろしかったのは、彼らはたとえ冤罪であろうとも、組織を守るためには多少の犠牲はつきものと感じ、自分の仕事でたくさんの人を犠牲にしていることに、あまりにも頓着していないことでした。
本来市民を守るべき警察、法曹界に一度「犯人」と認識されてしまったら…
そんな恐怖を感じずにはいられませんでした。

こうした警察、法曹界の人間たちに「相棒」の右京さんだったらきっとこう言うでしょうね。「恥を知りなさい!」と…


おまけ:鑓水のキャスティング


本を読む時はよく、登場人物を頭の中でキャスティングするのですが、探偵・鑓水の「派手な柄シャツが似合う」って描写に、もう、この人以外のキャスティングが思いつきませんでした…

「幻夏」映像化の際はぜひ、及川光博さんにお願いしたいものです。

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鑓水と相馬、修司が活躍するシリーズ第一弾『犯罪者 クリミナル』
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2014.02.06 Thursday

『ビブリア古書堂の事件手帖5 栞子さんと繋がりの時』 三上 延

ビブリア古書堂の事件手帖 (5)~栞子さんと繋がりの時』を読みました。

北鎌倉のビブリア古書堂で、本に関わる謎を解く才能をもつ店主・栞子さんと、彼女を愛する店員の大輔。
栞子さんには、本を求めて失踪した母親がいますが、恐ろしく頭のきれる母親は、栞子さんと大輔を引き離し、自分のパートナーとして連れ去ろうとしています。

前回、大輔は栞子さんに告白したのですが、返事は保留。悶々としながらも素直に返事を待つ大輔。実は栞子さんは、返事をする前に、母親に会う決心をします。
しかし、母親の仲介役の人物から、会う条件として、ある謎を解くように指示を受け…。


『ビブリア古書堂の事件手帖5 栞子さんと繋がりの時』の物語構成


プロローグ 『愛のゆくえ』リチャード・プローティガン
第一話 『彷書月刊』
第二話 『ブラック・ジャック』
第三話 『われに五月を』
エピローグ 『愛のゆくえ』リチャード・プローティガン


目次に書かれているのは、これらの項目だけですが、読んでいくと「断章」という短編がはさまれています。これがちょっとした謎解きの「しかけ」につながっていきます。

プロローグとエピローグ


プロローグを読んでいて、ちょっとひっかかりを感じました。栞子と大輔のことを書いているようで、実は…。
そのプロローグのひっかかりが、エピローグで明かされる仕掛けになっています。

今回の『ビブリア古書堂の事件手帖』は、本の謎解きも面白いのですが、こうした本のなかの「しかけ」でも楽しませてくれます。


母と恋、娘の恋


今回は、栞子さんと大輔以外に、栞子さんの両親の恋も、物語にはさまれてきます。

知識へ欲求のまま、家族を捨てることになる母に、父親は、待つことを選びます。

栞子さんは、いつか自分も母と同じ道を辿るのではないか、という不安を大輔にぶつけますが、大輔から返ってきた答えは、意外でなものでした。

それは古書という深い世界の、外側にいる大輔ならではの素直な答えだったから、栞子さんの心も打ったのでしょうね。この答えが、すごくシンプルでいいんです。


ビブリア古書堂の事件手帖 (5) ~栞子さんと繋がりの時~ (メディアワークス文庫)
三上延 KADOKAWA/アスキー・メディアワークス (2014-01-24)売り上げランキング: 9

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「ビブリア古書堂の事件手帖〜栞子さんと奇妙な客人たち」
「ビブリア古書堂の事件手帖2〜栞子さんと謎めく日常〜」
「ビブリア古書堂の事件手帖3〜栞子さんと消えない絆〜」
「ビブリア古書堂の事件手帖4〜栞子さん2つの顔」
「ビブリア古書堂の事件手帖6 栞子さんと巡るさだめ」
ビブリア古書堂シリーズで紹介された本が一冊に「栞子さんの本棚」
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2013.10.16 Wednesday

「バイバイ、ブラックバード」 伊坂 幸太郎

久々に伊坂幸太郎作品を読みました。「バイバイ、ブラックバード」は、主人公の星野一彦が、トラブルに巻き込まれて「あのバス」という謎のバスにのせられることになり、星野は「あのバス」に乗る前に、愛する5人の女達に別れを告げに行けるように頼み込み、かくして毒舌で粗暴な大女、繭美が監視役として、奇妙な旅が始まります。


星野は、カッコイイわけじゃないのに、愛嬌があって、お人好しで女にモテるんですが、私はこういう男が大嫌いで、五股をしてるって時点で正直ドン引きなのですが、繭美が毒舌で一彦を貶めている構図があるから、安心して(?)読み進めることができました。

繭美が、私のような読者の気持ちを代弁してくれるんですね。

繭美に言わせると、星野の恋愛は子どものサッカーと同じで、計画性もなくただ目の前のボール(女性)が現れると夢中になって追ってしまうから、結果的に五股という状況になってしまったのだとか。

普通に描くと、愛憎と死がドロドロになりそうな設定なのですが、警察の追跡捜査に車を奪われた話や、デパートにロープで侵入してバーゲンに備える女など、伊坂さんらしいユニークなエピソードが満載で楽しかったです。

5人の女達に別れを告げ、そのたびにいろいろな事件に巻き込まれたりするのですが、その旅も終わり、いよいよ「あのバス」に乗ることになり、星野と繭美の奇妙なバディ旅も終わりを告げることになるのですが…。

ラストの数行が、ものすごくかっこいい。このラストのために、物語が存在するといってもいいかもしれない。

このお話のベースは、太宰治の未完の小説「グッド・バイ」をモチーフに書かれた小説だそうです。


映像化するなら、星野は定番の濱田岳、繭美はマツコ・デラックス、不思議ちゃんの如月ユミは剛力彩芽がいいな。

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グッド・バイ」は山崎まさよし、水川あさみで映像化されてます。山崎まさよしのヘタレっぷりが面白かったなあ。

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伊坂作品感想
重力ピエロ
陽気なギャングが地球を回す

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2013.07.16 Tuesday

「名もなき毒」 宮部 みゆき

宮部みゆきさんの現代ミステリ「誰か Somebody」は以前読んでいたのですが、ドラマ化されるにあたり、続編である「名もなき毒」も読んでみました。

いやー、これは…(;´・ω・)

面白い、面白いんですよ。実際ページをめくる手が止まらず、読み始めて1日で一気に読んでしまったくらいです。
けれど、後半くらいから、人の持つ「毒」の効力がじわじわと読んでいる方を締め付けてくるんです。

杉村三郎は出版社につとめる平凡なサラリーマンだったが、妻・菜穂子が今多コンツェルンの総裁の娘であったため、グループ広報誌を作る広報室に入ることを条件に結婚を許された。前作「誰か Somebody」では義父の運転手の遺族の娘たちと関わることで、図らずも事件に巻きこまれることになりました。

広報室でアルバイトで雇った原田いずみという女性の勤務態度がひどく、解雇したことで逆恨みをかい、嫌がらせを受けるようになってしまう。三郎は原田いずみの経歴を調べていくうち、元刑事で探偵の北見という男に出会う。北見を通じて、毒物混入事件で祖父を失った女子高生と出会ったことで、またしても深く事件に関わることに…

毒物混入事件と、自己中な人物からの嫌がらせ、一見関連のない出来事が意外なところでつながっていきます。

物理的に人を殺せる「毒」と、人の心を蝕んで追い込んでいく「名もなき毒」。その対比が描かれているのですが、私は「名もなき毒」の方が嫌です。

「毒」であれば注意して避ける事もできそうだけれど、人の悪意はいったん向けられると際限なく相手を追い詰めていくから。原田いずみほどひどくはありませんが、私も毒のある人とつきあいがあったときは、神経が磨り減り、ストレスを抱えたことがあります。

そういう時は、変な三郎さんのように仏心をださず、逃げて逃げて逃げまくるのが一番です。
毒の人が他の獲物をみつけるまで。

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誰か Somebody 感想→

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2013.06.09 Sunday

本邦初の古書ミステリ。「せどり男爵数奇譚」 梶山 季之

ビブリア古書堂の事件手帖」に登場した古書の世界を描いた日本最初の小説「せどり男爵数奇譚 (ちくま文庫)」を読みました。

「せどり男爵数奇譚」あらすじ


ある作家が、若いころに出会った不思議な壮年の紳士に再会。「せどり男爵」と呼ばれるその紳士と親しくなった作家は、彼の生業であり、愛の対象でもある古書の世界で、本の虫に取り憑かれてしまった人々の世界を覗き見ることなります。

せどり男爵数奇譚 (ちくま文庫)
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古書に恋い焦がれる古書マニア


せどり男爵は頭のきれる、飄々とした紳士ですが、古書を手に入れるためであれば、時には詐欺、恐喝まがいのことも厭わない人物、愛する古書を幼い日に手に入れた美術全集に付けられた口紅の跡から、生身の女よりも古書や浮世絵へエロスをつのらせるという一風変わった人物です。

「せどり男爵数奇譚」の舞台は70年代から戦前から戦後すぐの時代の話が多く、永井荷風の「ふらんす物語」の蔵書印に隠された暗号、終戦直後、ユダヤ商人との古書のかけひきなど、古書にまつわる謎や事件がたくさんでてきます。

そして、この本に出てくる古書につかれた人々の所業は、とにかく常軌を逸しているのです。特に、最後の装丁家の話はエログロの極みといった作品で、ちょっと引く…(^^;)

本のためなら盗みも働く、自分たちの悪事を棚に上げて相手を告訴、果ては貴重な本を自分以外の人間に所有させないため、買い取った途端、燃やしてしまうなど、ビブリオクレプト(盗書狂)たちは、古書自体を性愛の対象として愛憎を注ぎ込んでいきます。この本は「古書とエロス」を描いたという意味でも興味深い作品です。


ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)
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「ビブリア古書堂シリーズ」に登場した古書を集めた「栞子さんの本棚」。せどり男爵数奇譚も抜粋で掲載されています。その冒頭があまりにおもしろかったので、本編を読みたくなりました。本が読みたくなる本です。

栞子さんの本棚  ビブリア古書堂セレクトブック (角川文庫)
夏目 漱石 アンナ・カヴァン 小山 清 梶山 季之 坂口 三千代 アーシュラ・K・ル・グイン F・W・クロフツ 宮沢 賢治 ロバート・F・ヤング 国枝 史郎 太宰 治 フォークナー 角川書店 (2013-05-25)売り上げランキング: 1,378


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2013.03.24 Sunday

音楽描写としてはすばらしい 「さよならドビュッシー」

「このミステリーがすごい!」に選ばれて、橋本愛さん主演で映画化された「さよならドビュッシー (宝島社文庫)」を読んでみました。

う〜〜〜む、ミステリーというよりは、ピアノに魅入られた女の子とピアノ講師との絆、苦難と再生の物語といった感じですね。そちらはそちらでかなり面白いのですが、残念ながら、前半を読んだだけでミステリの展開や犯人は予想がついてしましました。(しかも、ほぼ当たっていた)

謎解きよりも、ピアノの音の表現、主人公が度重なる不幸や障害を乗り越えながら、ピアニストの講師とともに、ピアノを極めようとする姿が印象的でした。実際そちらの方にページ数も割かれていましたし。

主人公の講師となるピアニスト・岬さんの弾くピアノのシーンは、まったく音楽知識がない私でさえ、音が聞こえてくるような感覚が味わえました。主人公が弾くドビュッシーも。ただ、時々変ロ長調とか、専門用語が出てくるので、そういう音楽知識があったらもっと楽しめていたかもしれないと思うと、ちょっと残念。

さよならドビュッシー (宝島社文庫)
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2012.12.10 Monday

ジョーカー・ゲームシリーズ 『パラダイス・ロスト』 柳 広司

旧日本陸軍のスパイ組織・D機関の活躍を描いた『ジョーカー・ゲーム』シリーズ第三弾『パラダイス・ロスト』。スパイたちの繰り広げる頭脳戦は、読むたびに痛快で、ハラハラドキドキさせられます。

誤算


フランスへ潜入したD機関メンバー「島野」は、不測の事故で一時的な記憶喪失にかかり、自分の名前も任務も思い出せないまま、レジスタンスたちと行動を共にすることになる。彼らの隠れ家に身を隠すものの、そこにはドイツ兵たちが迫ってきて…。

しかしさすがはD機関メンバー。相次ぐ誤算が生じた危機に「島野」は冷静に対処していきます。高い能力をもち、特殊な訓練を受けた彼らは、たとえどんな誤算が生じようとも、決して任務をわすれることはないのですね。

失楽園


シンガポールのラッフルズ・ホテルが舞台のミステリ仕立てのお話。シンガポール駐在のアメリカ武官キャンベルは、混血の美しい娘・ジュリアと恋に落ちる。しかし彼女にはイギリス人商人・ブラントの殺人容疑がかかってしまう。恋人の無実を証明するため、キャンベルは調査をはじめ、イギリス人将校がこの件に関わっているとつきとめるのだが…。

「死は隠しておけない」ため、殺人を避けるD機関がどのように殺人事件に関わったのかといえば、ヒーローを自負するアメリカ人をたくみに扇動して動かしていき、必要な情報を本人に知られないままに取得していきます。


追跡


D機関設立者にして「魔王」と呼ばれるスパイ・マスター、結城中佐の過去はいかなるものだったのか。イギリス人記者プライスはその謎に迫り、ようやく結城中佐の少年時代を知る人物を探し当てる。「晃」と呼ばれたその少年は幼い頃から頭脳明晰で、人とは違う思考の持ち主だった。さすがはスパイマスター、子供の頃から優秀だったのね(*´∀`*)

けれどスパイにとって正体を暴かれることは致命的なので、結城中佐の過去が簡単に暴かれてしまっていいんだろうか?と思っていたら、そこには幾重にも張り巡らされたトラップがあったのです。謎を暴いていると思っていたほうが、知らずに罠にかかっていたのですね。


暗号名ケルベロス 前編/後編


太平洋を航海する「朱鷺丸」船上で発生した殺人事件。D機関メンバー「内海」はイギリス諜報部員で暗号の専門家マクラウドを二重スパイとして徴用するため、マクラウドに近づくものの、あと一歩のところで毒殺されてしまう。一方船には乗船したドイツ人を尋問するためイギリス海軍が乗り込んでくる。

不測の事態の中「内海」はマクラウド殺しの犯人とおもわれるコード「ケルベロス」に相当する人物を、「どんな犠牲を払っても探しだす」ことを決意する。

ある意味密室である船の上での殺人事件。D機関メンバーである「内海」にとって、犯人探しはそれほど難しいことではありません。意外な犯人と動機には驚かされましたけどね…。


パラダイス・ロスト
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今回はスパイ活動より、派生した殺人事件のミステリ仕立てが多い印象をうけました。
『パラダイス・ロスト』以後、日本は真珠湾攻撃を行い、太平洋戦争に突入するわけですが、開戦後のD機関はどうなっていくのでしょう。

D機関シリーズ
「ジョーカー・ゲーム」→
「ダブル・ジョーカー」→
「ラスト・ワルツ」→

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2012.11.07 Wednesday

「ビブリア古書堂の事件手帖3 〜栞子さんと消えない絆〜」 三上 延

北鎌倉にあるビブリア古書堂。優れた洞察力で本に関する謎を解く店主・栞子さんと、彼女を支える店員・五浦大輔の周りで起こる古本にまつわるミステリ(と少しの恋愛模様)を描いた「ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)」はシリーズ第三弾。10年前に失踪した栞子さんの母親のことが少しずつ語られていきます。

第一話 ロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』(集英社文庫)


今回は古書会館でのセリの様子が描かれています。古書店は買取のほかに、本をセリにだしたり、入札・買取を行います。入札金額の設定も古書業者にとって経験と実力が必要なのだそうです。

とことがそのセリ市で出品した覚えのない本が残り、そのかわりビブリア古書堂と因縁のあるヒトリ書房が落札した絶版本『たんぽぽ娘』が消えていた。栞子さんの母親を恨むヒトリ書房に、ビブリア古書堂が犯人だと疑われたため、栞子さんと大輔は真犯人を探し出すことに…。

『たんぽぽ娘』は梶尾真治のSF「クロノス・ジョウンターの伝説」にも登場してました。興味があって読みたいと思っていたのですが、絶版なんですね、残念。

第二話 『たぬきとイヌとワニがでてくる、絵本みたいなもの』


第一巻「論理学入門」が縁で知り合った坂口夫妻の妻・しのぶから、タイトルのわからない、絵本のような本を探して欲しいと依頼を受けるが、タイトルも出版社もわからない。しのぶの実家にあるかもしれないが、両親とそりが合わないしのぶは、栞子さんと大輔を伴って実家に戻るが…。絵本を探すうちにきつい物言いの母親としのぶはケンカ別れをしてしまう。しのぶさんが『たぬきとイヌとワニがでてくる、絵本みたいなもの』と表現した絵本が、実は結構有名なキャラクターに関係していたのには驚きました。やがてお互いの心の中を吐き出し、しのぶさんと両親は和解するのですが、それは栞子さんと母親の関係と対比しているようで、ちょっと切ないですね。


第三話 宮沢賢治『春と修羅』(関根書店)


本にまつわる事件に関わったことで栞子さんの「古書探偵」の評判が噂になりはじめます。そんな折、栞子さんの母の同級生・玉岡聡子から盗まれた本を取り戻して欲しいとの依頼がきます。『春と修羅』に関するトリックも秀逸でした。まさかそんな価値があったなんて。これだから古本にまつわるミステリは面白いんですね。
また、古書を遺した聡子の父親は、栞子さんの母親の才能を買っており、家にあった母親の絵は聡子の父親が描いたものだとわかります。この絵は今後キーワードになってきそうですね。

プロローグ・エピローグ『王様のみみはロバのみみ』(ポプラ社)


栞子さんの妹、文香は口が軽く、そのせいで過去、栞子が事件に巻き込まれたため、今では思ったことをパソコンに打ち込むことで、おしゃべりを抑えているらしい。日記のようなその文章は姉妹の日常や、ビブリア古書堂の仕事についても触れられています。文香ちゃん、影で大輔のことを「侍従」って。(;´・ω・)。
実はこの「日記」には秘密があるのですがそれが『王様のみみはロバのみみ』のタイトルとリンクしているんですね。

ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)
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3巻まででいろいろな謎が出てきました
・なぜ、栞子さんの母親は失踪したのか
・なぜ、「クラクラ日記」を栞子さんに遺したのか
・栞子さんの母親の謎の出自や写真嫌いというのも何か関連しているのではないか
・栞子さんの母親を描いた絵の中の、あじさいの意味は?

きっとこれらの謎が、栞子さんと母親が再会する鍵になりそうな気がします。

「ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち」
「ビブリア古書堂の事件手帖2 〜栞子さんと謎めく日常〜」
「ビブリア古書堂の事件手帖4 〜栞子さんと二つの顔〜」
「ビブリア古書堂の事件手帖5〜栞子さんと繋がりの時〜」

古本屋を舞台にした小説・漫画
「月魚」(三浦しをん)
「ブンブン堂のグレちゃん」(グレゴリ青山)
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2012.11.05 Monday

「ビブリア古書堂の事件手帖2 〜栞子さんと謎めく日常〜」 三上 延

北鎌倉の古書店「ビブリア古書堂」の店主・栞子さんは、膨大な本の知識と洞察力で本にまつわる事件を解決する力を持つ女性です。ただし、極度の人見知りで、本の知識以外の会話がおぼつかない。そんな彼女を支えるのが、とあるきっかけでビブリア古書堂で働くことになった主人公・五浦大輔。大輔はトラウマから本が読めない体質のため、栞子さんから聞く本の話が好きで、彼女自身のことも想っているけれど、「本の虫」である栞子さんには、いまいち伝わっていないようで…。

今回「ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)〜」では、栞子さんの過去が少し明らかになります。栞子さんには10年前に出奔した母親がいて、彼女もまた栞子さんと同様に本にまつわる洞察力で事件を解決していたらしい、ということがわかってきます。
栞子さんは出奔した母親に複雑な思いを抱いているらしく、2作目から登場するプロローグとエピローグに登場する本が、今後の物語の流れに関連していくようです。

ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)
三上 延 アスキー・メディアワークス (2011-10-25)売り上げランキング: 584




第一話 アントニイ・バージェス『時計仕掛けのオレンジ』(ハヤカワNV文庫)


ビブリア古書堂の常連の女子高生・小菅奈緒が、妹の書いた『時計仕掛けのオレンジ』の読書感想文について相談を持ちかけます。過激な暴力シーンを肯定するような妹の感想文を読んだ栞子さんは、妹が「ほんとうの意味で小説を読んでいない」と結論づけます。この話では子供時代の栞子さんの描写がありますが、本のためなら遠い距離の本屋さんにも自転車を漕いでは通っていたとは…。さすが栞子さん。

『時計仕掛けのオレンジ』は映画の印象が圧倒的ですが、映画の原作って、実は結末が異なるってこともあるらしいのです。「太陽がいっぱい」の原作も結末が真逆だったりしますから

第二話 福田定一『名言随筆 サラリーマン』(六月社)


大輔は元カノ・晶穂から、父親の遺した本の査定を頼まれる。中には数十万の値のつく本もあるらしいが、栞子さんには珍しく、査定に迷いがでているようだったけれど、なんとか査定を終え、晶穂が引き取る価値のない本を新古書店(ブック○フみたいな店)に持ち込むようアドバイスするものの、実はその中にこそ「価値ある本」が潜んでいて…。

元カノが出てきたことで、栞子さんと大輔の関係がかき乱されたり、進展したりするかなと思いきや、まったくそんなことはなく…( ´Д`)=3 ただ呼び名が「五浦さん」から「大輔さん」に変わったけれど、それは進展て感じじゃないしなあ。

第三話 足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房)


ビブリア古書堂に漫画の査定を持ち込んだ客が、査定を待たずに消えてしまう。栞子さんは途中まで書かれた住所や本の状態から、客の居場所を推理します。実は一連の行動はその客が数十年前に彼女の母親が行った推理を再現し、栞子さんの能力を試すためのテストでした。栞子さんはここで足塚不二雄(藤子不二雄)の初期作『UTOPIA 最後の世界大戦』を巡り、彼女の母親の起こした事を知るのですが…。

プロローグ・エピローグ 坂口三千代『クラクラ日記』(文藝春秋)


『クラクラ日記』は坂口安吾の奥さんが書いたエッセイ集で、失踪した栞子さんの母親が彼女に残していったもの。
栞子さんの母親は、かなりキワドい取引も平気でやってのける人だったらしく、それが栞子さんの心のトゲとして刺さっているらしい。『クラクラ日記』にまつわる栞子さんの秘密を解いた大輔は、その勢いでデートを申し込むものの、栞子さんの「行きたいところ」はやっぱり古書店…。これじゃデートじゃなくて買取なのでは…(;´・ω・)

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「ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち」
「ビブリア古書堂の事件手帖3〜栞子さんと消えない絆〜」
「ビブリア古書堂の事件手帖4 〜栞子さんと二つの顔〜」
「ビブリア古書堂の事件手帖5〜栞子さんと繋がりの時〜」
ビブリア古書堂シリーズで紹介された本が一冊に「栞子さんの本棚」

古本屋を舞台にした小説・漫画


「月魚」(三浦しをん)
「ブンブン堂のグレちゃん」(グレゴリ青山)


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