2016.03.20 Sunday

『ローマとケルトの息子』ローズマリー・サトクリフ

「精霊の守り人」の作者、上橋菜穂子先生が影響を受けたイギリスの作家、ローズマリー・サトクリフの『ケルトとローマの息子』読了。これは、子どもに読ませるのがもったいないほど、骨太な歴史ファンタジーです。

ローマとケルトの息子 あらすじ


ローマ人でありながら、ケルトの氏族に育てられたベリック。周りからは「赤いたてがみ」(ローマの司令官がつける兜の色から)と差別されるが、鍛錬をつんで立派な戦士となる。しかし、村に不作と病が襲い、ベリックは災厄を連れてきたとして、村から追放されてしまう。ベリックはローマ軍に入るため旅にでるが、よこしまな商人に騙され奴隷に身を落とす。

ブリタニア(イギリス)からローマ、ゲルマニア(ドイツ周辺)、そしてまたブリタニアへ。過酷な運命に翻弄されるベリックのたどり着いた場所は…

ケルトの白馬/ケルトとローマの息子―ケルト歴史ファンタジー (ちくま文庫)
ローズマリー サトクリフ 筑摩書房 売り上げランキング: 377,254



被支配者からの視点


サトクリフの名作『第九軍団のワシ』は、ローマ人の青年マーカスと、元奴隷のエスカの冒険譚で、征服者側のマーカス視点で描かれます。反対に、『ローマとケルトの息子』は、征服されたブリタニアの氏族の少年、ベリックからローマ側をみています。

ローマの支配は、インフラを整備し、現地の暮らしを向上させ、現地人との混血も進んだものの、やはり、支配者と、被支配者の間には、大きな隔たりがあり、

しかし、ベリックは本当はローマ人の血をひいているので、物語はより複雑で、ローマとケルト、どちらにも疎まれ、裏切られたベリックは孤独と疎外感に苛まれます。

様々な人間に裏切られ、手負いの狼のように傷ついたベリックが最後にたどり着くのが、ブリタニアで干拓事業を行うローマ軍人・ユスティニアス。彼もまた、つらい過去を背負った人間で、だからこそ、傷ついたベリックを家族として迎え入れてくれます。


大人が読みたい、骨太な歴史ファンタジー


ベリックが追い込まれていく様子が、とても生々しく描かれています。中でも恐ろしいのは、奴隷となってからの描写で、奴隷の生活はベリックの自由を奪うだけでなく、徐々に奴隷生活が当たり前として、何も感じなくなっていくのです。

そして、その後のガレー船での描写は、本当にひどい。奴隷はまだ、人間だったものが、どんどんと獣のように本能むきだしになっていくんです。

サトクリフはよくもまあ、こんな過酷な物語を、子供向けに書いたものです。しかしこれは、読んでおくべき話だと思います。そして、大人が読んでも十分読み応えのある物語です。

おまけ:食べ物表現


サトクリフは、食べ物の表現が非常に豊か。ブリタニアの丸焼きのイノシシや大鍋のシチュウ、ローマの子ヤギのミルク煮、アーモンドケーキなどの豪華料理。どれも歴史や当時の風俗を反映したごちそうがどれも美味しそう。

サトクリフの食べ物表現は、上橋菜穂子先生の作品の料理表現にも継承されているんだろうな。

第九軍団のワシ (岩波少年文庫 579)
ローズマリ サトクリフ 岩波書店 売り上げランキング: 83,641


サトクリフ作品感想
『ケルトの白馬』→
『第九軍団のワシ』→

レビューポータル「MONO-PORTAL」
JUGEMテーマ:オススメの本

2015.10.06 Tuesday

可愛い墨の妖怪のお話 「墨妖」 添田 健一

西荻窪の古本屋さんでみつけた「墨妖」は、中国・北宋の時代を舞台にした、墨の妖怪のお話です。

古本屋さんで扱っているからといっても、古本ではありません。発行部数はすくないけれど、れっきとした文庫本で、幻想小説専門の出版社・密林社から発行されています。一般の出版社の作品とは、ちょっと趣が異なる感じの物語でした。

墨妖
墨妖
posted with amazlet at 15.08.11
添田 健一 密林社 売り上げランキング: 984,484



「墨妖」あらすじ


北宋時代、最高の詩人と謳われた蘇軾(東坡先生)は、文人としても官吏としても高名だが、ひとつだけ、こまった癖があった。良い墨と出会うと、それがたとえ人の持ち物だとしても、強引な手段で奪い取ろうとすることだ。(といっても、刃傷沙汰を起こすわけではないけれど。)

今回も、弟子の山谷先生の墨を強引に奪いとってしまった。東坡先生の秘書兼、女弟子(侍妾でもある)子霞は、なんとか先生の悪い癖をやめさせようと、いったん墨をあずかるのだが、子霞が墨を持つと、不思議なことに、墨一色のちょうちょや猫の姿が浮かび上がる。変異を察知した彼女は、思わず墨に呼びかけると、そこには12歳ほどの少女が現れた。

子霞はそのかわいい墨の妖怪に「窈」と名をつけ、友となる。

しかし墨は使ってこそのもの。墨が終われば、窈の姿も消えてなくなる。子霞のだした結論は…。


不思議でかわいく、少しせつないお話


主人公の子霞は、東坡先生の女弟子として愛情と薫陶を一身にうけ、家族からも愛されているけれど、過去の悲しい出来事もあり、親しく交わる友人がいませんでした。そんな時に現れたのが、可愛い墨の妖怪である「窈」。

幼い頃に東坡先生の元に来てから家の中で、書や琴に親しむだけだった子霞にとって、ともだちと呼べる存在がいなかったのです。(東坡先生が度々左遷をくらって、引っ越しも多かったし)

子霞は、美しく聡明なのですが、どこか「おさなごころ」を残しているひとなので、少女の姿をした墨妖と、童心に帰ったようにして遊びます。そのシーンがとても可愛らしい。

墨は、使えば減り、やがてなくなってしまうもの。貴重な墨をコレクションする人もいますが、東坡先生も子霞も、「墨は使ってこそ」という考えを持っているので、子霞はあえて、友の命を削り、書として次の世に残すことを選びます。

中国の、墨や書、文人たちの姿がいきいきと描かれていて、とてもおもしろかった「墨妖」。また子霞と東坡先生のシリーズで続編を書いてほしいです。

JUGEMテーマ:オススメの本


レビューポータル「MONO-PORTAL」

2015.09.30 Wednesday

八咫烏シリーズ『烏は主を選ばない』 阿部 智里

2作目にして、人型をとる八咫烏(やたがらす)の世界が広がり、これは「精霊の守り人」「十二国記」と同く、名ファンタジーシリーズになりそうな予感がします。また、「烏は主を選ばない」は、ファンタジーの形を借りたミステリでもあるので、謎解きの面白さもあるのです。

烏は主を選ばない あらすじ


八咫烏がくらす世界「山内」の中の北領、その地方豪族のぼんくら次男、雪哉は、ある事件がきっかけとなり、日嗣の御子の側仕えとして宮中へ出仕するハメになる。

雪哉がつかえることになった若宮・奈月彦は、その美しい容姿とは裏腹に、とてつもなくマイペースで、破天荒。たったひとりの側仕えとして、無茶振りをこなすほか、若宮の妓楼通いにつきあったり、博打のかたに下働きをさせられることに。雪哉は父親と約束した1年の条件で、嫌がりながらも、若宮の近習をつとめることになる。

若宮は、兄君・長束を差し置いて金烏(この世界での最高権力者)に指名されていたため、常に暗殺の危機を抱えていた。誰が味方で、誰が敵か。若宮の暗殺事件をめぐって宮中の権力が交錯する。

烏は主を選ばない 八咫烏シリーズ 2 (文春文庫)

中古価格
¥128から
(2018/6/30 23:46時点)





若宮暗殺を巡る、宮廷ミステリ


前回の「烏に単は似合わない」では、この若宮のお后候補として、4人の姫君が登殿し、若宮を待ち焦がれる間に様々な事件が起こるのですが、若宮はラストまで姿を表しません。

じゃあ、何をしていたかというと、その理由がこの「烏は主を選ばない」で語られます。なにせ、信頼できる味方が護衛の「山内衆」澄尾と雪哉しかいないという状態なので、敵を炙りだしたり、暗殺を阻止したりと忙しかったんですね。

姫たちのもとに通わなかったのも、姫たちに下手に期待を持たせたくなかったのと、暗殺の危険性があるからだったんですね。じゃあちゃんと説明しろよ、と思うのですが、どうもこの若宮、「言葉が圧倒的に少ない」(雪哉談)らしいのです。おそらく賢すぎて、相手も言わなくてもわかるだろ、わからない奴はいいや、と思っているフシがあります。

まあ、そんな手のかかる若宮ですが、雪哉も怒りながらも徐々に仲良くなっていくんですね。時々、若宮が投げてよこす「金柑の砂糖漬け」の描写が、若宮の、雪哉に対する信頼を表現しています。


前作「烏に単は似合わない」感想→

烏に単は似合わない? 八咫烏シリーズ 1 (文春文庫)

中古価格
¥1から
(2018/6/30 23:47時点)



いよいよ八咫烏シリーズ外伝『烏百花 蛍の章』の発売が決まりました。これまでの短編に加えて書き下ろしも。

烏百花 蛍の章 八咫烏外伝

新品価格
¥1,512から
(2018/5/2 01:00時点)




八咫烏シリーズ


『烏に単衣は似合わない』
『烏は主を選ばない』
『黄金の烏』
『空棺の烏』
『玉依姫』
『弥栄の烏』
外伝『すみのさくら』
外伝『しのぶひと』
外伝『ふゆきにおもう』
外伝『まつばちりて』
外伝『あきのあやぎぬ』

レビューポータル「MONO-PORTAL」
JUGEMテーマ:オススメの本


2015.08.10 Monday

しゃばけシリーズ 「なりたい」 畠中恵

しゃばけシリーズ「なりたい」は、若だんなの将来、「なりたいもの」の話を軸に、いろんなあやかしたちが「なりたい」ことに巻き込まれていくお話です。

なりたい
なりたい
posted with amazlet at 15.08.02
畠中 恵 新潮社 売り上げランキング: 147


妖になりたい


病のため、普通の人のような働き方はできないと考えた若だんなは、妖たちと協力して新しい薬を考えます。

その薬には蜜蝋が必要で、長崎屋と取引のある名主の甚兵衛さんに頼んだものの、甚兵衛さんから蜜蝋取引の条件として「妖になりたい」と言われ、一方では羽をなくし、坊主となった黒羽坊の友人赤山坊は、黒羽坊をもとにもどせと若だんなにせまり…

人になりたい


出入りの日限の親分から、親友の修行先の親方が殺人事件に巻き込まれたときき、調査を開始する若だんな。

ところが殺されたはずの菓子職人、勇次は生きており、おまけに出自は元道祖神だという。元のように菓子職人として暮らしたいと頼まれる若だんなが、殺人(未遂)事件の謎を解きます。


猫になりたい


猫又のおしろから、元人間の猫又・春一を紹介される若だんな。春一は猫又になりながらも、傾きかけた弟と店を守る思いが強く、猫又になった。

ちょうど、縁のあった戸塚の猫又・虎と藤沢の猫又、熊一が猫又の頭を決めるため、若だんなの元へ。裁定人として春一が選ばれ、無事勤めれば猫又たちと取引することができる。
けれど、そこへ、長崎屋の大福帳が盗まれる事件が起き…。


親になりたい


長崎屋の奉公人・おようが見合いをすることになるが、相手のもらい子・三太が急に暴れ出してしまう。

どうやらその子は妖らしく、若だんなは縁談をまとめるべく三太のもとの居場所を探そうとする。ところが、三太には別の父親をなのる人物があらわれ…。


りっぱになりたい


長崎屋とも取引あった古川屋の若だんな万之助が亡くなり、通夜に参列した若だんなだったが、幽霊となった万之助からある頼み事をされる。

一方、通夜の騒ぎで万之助の妹が行方しれずになり、身代金の請求が。若だんなは、野辺送りまでに万之助の願いと、妹の救出、どちらも解決しなければならなくなり…。


実は、最後に、若だんなのなりたいものがきまるのですが、それは外伝「えどさがし」の話に繋がっているのです。

大妖の血を継いでいるとはいえ、若だんなは普通の、それもめっぽう体の弱い人間なので、いつかはあやかしたちとも別れなければならない。どうやら、それは、避けられないようです…。


えどさがし (新潮文庫)
畠中 恵 新潮社 (2014-11-28)売り上げランキング: 4,133



しゃばけシリーズ感想


「しゃばけ」感想→
「ぬしさまへ」感想→
「おまけのこ」感想→
「うそうそ」感想→
「いっちばん」感想→
しゃばけ絵本「みぃつけた」感想→
「ころころろ」感想→
「ゆんでめて」感想→
「やなりいなり」感想→
「ひなこまち」感想→
「たぶんねこ」感想→
「すえずえ」感想→
外伝「えどさがし」感想→
「しゃばけ読本」→
2007しゃばけドラマ感想→
2008しゃばけドラマ感想→

JUGEMテーマ:オススメの本

2015.02.10 Tuesday

僕僕先生シリーズ 「仙丹の契り」 仁木 英之

僕僕先生シリーズ、今回は叶藩(チベットを)へ向かう僕僕先生たちですが、今までずっと共に旅をしてきた薄妃と、蒼芽香が旅から外れます。

ずっと一緒に旅をしてきた仲間が去るのは寂しい王弁ですが、僕僕先生とふたりきりの時間が多くなり(もうひとりの仲間、劉欣はほぼ別行動)、先生から新たな医術・経絡(ツボ)を習えるのはまんざらでもないらしく、そんなところを僕僕先生にからかわれています。

しかし、前回知り合った医師・ドルマが吐藩の王子だったことで、吐藩の内乱に巻き込まれていきます。おまけに、白塗りの異形の祈祷師デラクというものも現れ、僕僕一行に立ちはだかります。その裏ではある人物が糸をひいているようなのですが…。

王弁の力


僕僕先生からは無能と脳天気さをからかわれ、元暗殺者・劉欣からは、苦労知らずを疎まれる王弁ですが、実は、王弁、こうみえてすごいんです。

もっとすごいのが周囲にいるから気が付かないだけで、ドルマのピンチには機転をきかせたり、時には僕僕先生が驚くほどの包容力を発揮したりします。ま、普段は正直すぎて周りに迷惑をかけたりするんですけどね。

仙丹の契りと新たな道


内乱に揺れる吐藩では、ドルマの父であるテムジン王が病に伏していた。王を助けるためには仙丹と言われる特別な薬を調合しなければならず、それには僕僕先生と王弁が「契る」必要があるという。

心の準備ができていないと拒む王弁でしたが、どうやらふたりの「契り」とは、私達の(王弁も)考えるものとはちょっと違うようで…。

それでも、2人のこころが重なりあい、もっと深いところでつながったようでした。
しかし、ここでもいろいろと邪魔が入り、二人の旅はいよいよ長安へ。そこで僕僕一行を待ち構えているのでしょうか…。


仙丹の契り 僕僕先生
仙丹の契り 僕僕先生
posted with amazlet at 15.02.08
仁木 英之 新潮社 売り上げランキング: 226,051


僕僕先生シリーズ
「僕僕先生」→
「薄妃の恋」→
「胡蝶の失くし物」→
「さびしい女神」→
「先生の隠し事」→
「鋼の魂」→

JUGEMテーマ:ファンタジー小説

レビューポータル「MONO-PORTAL」

2015.01.07 Wednesday

しゃばけシリーズ外伝 「えどさがし」 畠中 恵

しゃばけシリーズ外伝「えどさがし (新潮文庫)」読了。通常のしゃばけシリーズと異なり、今回、若だんなはあまり出てきません。

おなじみの仁吉や佐助、妖が見える僧・寛朝さまや、若だんなに知恵とお菓子を拝借しに来る、親分とそのおかみさんの話など、しゃばけの登場人物たちが主人公になり、身に迫る難題を(若だんな抜きで)解決していきます。

えどさがし (新潮文庫)
畠中 恵 新潮社 (2014-11-28)売り上げランキング: 1,349


五百年の判じ絵


これはまだ、犬神の佐助が若だんなと出会う前のお話。あてもない旅を続ける佐吉の前に、人に化けた狐・朝太が現れる。

茶店の判じ絵(絵文字)の謎を解いていくうち、どうやらそれが佐助の500年前の約束に関わることだとわかる。けれどそこへまたお稲という狐が現れ、珍道中が始まることに…。判じ絵の謎が解かれていくうち、佐助は500年前の約束事を思い出していきます。

太郎君、東へ


若だんなたちと関わりのある河童の親分・禰々子は、このところ利根川の化身・坂東太郎が荒れているのに頭を悩ませていた。

原因を探ると、人間たちが利根川の流れを勝手に変えようとしているらしい。様子を探るべく普請場へ向かった禰々子は、普請を行う侍・小日向に出会う。小日向をにくからず思うようになった禰々子は、坂東太郎に人間と真っ向勝負をするように諭すのだが…。

江戸初期、実際に行われた利根川東遷事業に案を取り、人間の都合で自然を変えられる側のドタバタを描いています。それにしても禰々子さん強い。

直木賞作家、門井慶喜さんの「家康、江戸を建てる」でも、利根川東遷事業について書かれています。
家康、江戸を建てる
家康、江戸を建てる
posted with amazlet at 18.02.21
門井慶喜
祥伝社
売り上げランキング: 3,791



たちまちづき


妖退治で有名な僧・寛朝の元には、人々からの怪異に関する相談事が後を絶たない。あるとき、口入れ屋の女房お千が亭主についた「おなご妖」を払って欲しいとやってくるが、寛朝といえでも「おなご妖」など聞いたことがない。よくよく聞くと、亭主が弱腰なのを、妖のせいだと思い込んでいるようで…。

その後、大滝屋が夜道で襲われ、その後大滝屋でも奉公先の騒動が発生し、女房お千の責任問題にまで発展するが、それを解決したのは、意外な人物で…。


親分のおかみさん


時々長崎屋の離れに現れては、お菓子と若だんなの知恵を拝借していく日限の親分。その女房・おさきは病がちで夫に面倒をかけるのを申し訳なく思っていた。

あるとき、自分の長屋の中に赤ん坊が捨てられ、同時に亭主が買っておいた昼ごはんまでが消えていた。長屋の住人に相談すると「捨て子を引き取るふりをした強盗事件」があることを知らされる。けれど、強盗に使われたのは女の子だという。果たして捨てられた赤子の正体は…。

話には出てきていた親分のおかみさん。こんな方だったんですね。拾い子をしたことで彼女自身も強くなっていったようでした。推理は親分よりも上手のようです。

えどさがし


明治20年代。「京橋」と名を変えた仁吉は、「江戸の頃をおぼえているか 一」という新聞の投書の出処を調べに新聞社へ。

そこでピストル殺人事件に遭遇し、事件に巻き込まれることに。警官に化けた妖かし・秋村から、投書の情報を調べるかわりに事件を調べてほしいと頼まれ、仁吉は明治の世でも面倒事に巻き込まれます。

果たして投書の主は若だんな(の生まれ変わり)なのか、ピストル事件の真相は…

時は明治に移り、若だんなはそこにおらず、妖かしたちだけが明治の世に残されています。仁吉たちは店を守り、姿を変えて若だんなの生まれ変わりを探しているのです。

こうした形で若だんなのいないのその後を知らされるのは、なんとも切ないのですが、「しゃばけ」では神様によって一度運命が変えられたこと(ゆんでめて)があるので、あくまでスピンオフの世界として考えておこうと思います。

しゃばけ本編では、若だんなと妖かしたちがずっとずっと一緒にいると、信じていますので。

「えどさがし」には畠中先生の「アイスクリン強し」に登場する洋菓子屋「風琴屋」のものらしき洋菓子がでてきます。いつか若様組や真次郎が仁吉たちに会うお話も読んでみたい。

アイスクリン強し (講談社文庫)
畠中 恵 講談社 (2011-12-15)売り上げランキング: 95,759


しゃばけシリーズ感想


「しゃばけ」感想→
「ぬしさまへ」感想→
「おまけのこ」感想→
「うそうそ」感想→
「いっちばん」感想→
しゃばけ絵本「みぃつけた」感想→
「ころころろ」感想→
「ゆんでめて」感想→
「やなりいなり」感想→
「ひなこまち」感想→
「たぶんねこ」感想→
「すえずえ」感想→
「なりたい」→

「しゃばけ読本」→
2007しゃばけドラマ感想→
2008しゃばけドラマ感想→
レビューポータル「MONO-PORTAL」
JUGEMテーマ:オススメの本

2014.08.12 Tuesday

しゃばけシリーズ 「すえずえ」 畠中恵

しゃばけシリーズ第14弾「すえずえ」を読みました。本の帯に「若だんなのお嫁さん決定!」の文字があり、こりゃ、図書館の順番待ちしてる場合じゃないと、この本だけは買ってきて読んでみました。

今回のテーマは「未来、将来」でしょうか。若だんな、友人の栄吉、佐助と仁吉兄や、そして妖怪たち。このままの暮らしがずっと続くと思われてきましたが、みな少しずつ、先のことを考える時期にきているようです。

すえずえ しゃばけシリーズ13 (新潮文庫)

中古価格
¥2から
(2018/9/4 17:55時点)




栄吉の来年


若だんなの親友、菓子職人の栄吉に縁談がもちあがります。けれど、栄吉は自分から若だんなに話そうとません。そんな友が心配になった若だんなは、妖たちとともに、栄吉の見合い相手・おせつのことを調べると、おせつには他に好きな男がいるらしいとわかり、またその男は借金持ちで、その借金取りが栄吉のところにもやってきてしまい…。

栄吉は若だんなの親友だけれど、病弱でいつも寝付いている若だんなよりも、時の流れがはやいようです。友がどんどん先にいってしまうことに、若だんなはちょっと寂しいんですね。

寛朝の明日


妖怪退治で有名な僧・寛朝は、突然現れた天狗の黒羽坊から僧ごろしの妖退治をたのまれることに。小田原へ向かう寛朝を心配した若だんなは、獏の場久と猫又のおしろ、それに何匹かの鳴家を共につけます。

獏の場久は夢の中を渡ることができるので、旅の様子を逐一若だんなに知らせることができます。途中で猫又たちの「猫じゃ猫じゃおどり」に遭遇したり、旅先でおいしいものを楽しんだり、けっこう楽しい旅だったのですが、目的地につくと、そこには別の天狗たちが待ち構えており…。

以前の箱根旅行「うそうそ」の時のように、また天狗たちが騒動を起こすのですが、若だんなが夢を通じて指示を与え、なんとか八方丸くおさまります。夢の中から指示を送るって、ミステリの安楽椅子探偵のようですね。

おたえの、とこしえ


上方へでかけた夫・藤兵衛の留守に、赤酢屋という大坂商人が、藤兵衛が商いに失敗し、その「かた」として長崎屋をよこせと言ってきます。留守を守る母・おたえと上方の父を心配した若だんなは、自ら上方へ様子を見に行くことに。

おたえさんは妖の娘であるせいか、おっとりとしていて、店のことよりも若だんなの健康を心配したりします。

やがて、赤酢屋が示した期限の日、おたえさんは若だんなから意外な方法ですばやく情報をもらい、赤酢屋と対決するのですが…。

おたえさんのおっとりとした対応が、ちょと人とずれていて可愛らしいです。
物語に出てきた上方と江戸を結ぶ情報網は、当時実際に使われていたようで、私達が思うよりも江戸ってけっこうな情報社会なんですね。


仁吉と佐助の千年


前回の上方での活躍が周囲に広がり、若だんなにたくさんのお見合いが持ち込まれます。今までは病弱のため周囲がとどめていたのですが、ここへきて強引な仲人や、見合い相手までもが若だんなのもとへ押しかけてきて…。

一方、仁吉と佐助は、若だんなの祖母である大妖・おぎんの指示でそれぞれ出かけてゆき、そこで若だんなが結婚後の身の振り方について諭されるのですが…。

ここへきて、いよいよ、若だんなのお嫁さんが決定します!(*´∀`*)いやびっくり。
じゃあ、仁吉や佐助、妖たちはどうなるのかというと…。まあ、すぐにどうこうってことにはなりません。
その展開がまた、しゃばけシリーズらしいです。


妖達の来月


若だんなが長屋の大家を任されることになり、長屋とともに建てた一軒家を、妖たちに貸すことにします。
獏の噺家・場久と、猫又おしろ、それに貧乏神の金次が住人となり、他の妖怪たちも泊まれるよう、若だんなは火鉢などの生活雑貨を買い与え、いよいよ引っ越しという日、なんと妖怪の家に泥棒が。

若だんなからもらった大事な火鉢を盗まれた金次は、祟り神らしく(?)周りを凍りつかせる勢いのため、焦ったあやかしたちは犯人探しを行うのですが…。

人の世からずれた妖たちの生活、どうなっていくんでしょう。

しゃばけ読本 (新潮文庫)

中古価格
¥1から
(2018/9/4 17:56時点)




しゃばけシリーズ


「しゃばけ」感想→
「ぬしさまへ」感想→
「おまけのこ」感想→
「うそうそ」感想→
「いっちばん」感想→
しゃばけ絵本「みぃつけた」感想→
「ころころろ」感想→
「ゆんでめて」感想→
「やなりいなり」感想→
「ひなこまち」感想→
「たぶんねこ」感想→
「なりたい」感想→
外伝「えどさがし」感想→

「しゃばけ読本」→
2007しゃばけドラマ感想→
2008しゃばけドラマ感想→

レビューポータル「MONO-PORTAL」

2014.01.19 Sunday

しゃばけシリーズ『たぶんねこ』 畠中 恵

しゃばけシリーズ「たぶんねこ」を読みました。大店・長崎屋の若だんな、一太郎は、妖かしの血を引くものの、体がめっぽう弱い。

そんな若だんながふた月の間、寝つかなかった。この僥倖を逃さぬよう、若だんなを守る2人の兄や(妖怪)は若だんなに、半年の間、おとなしくしているよう約束をさせるのですが、妖怪も人間も、時には神様の使いまでもが若だんなに相談事を持ち込んでしまい…。

たぶんねこ
たぶんねこ
posted with amazlet at 14.01.17
畠中 恵 新潮社 売り上げランキング: 17,080


安定して面白いのだけど…


今回は、しゃばシリーズらしいお話でした。よくいえば安定して面白いのだけど、変化が少ないのがちょっと残念かな。「ゆんでめて」のような奇抜な展開ではなく、若だんなが相談事を持ちかけられ、それを妖怪たちと解決していくいつものパターンと、兄やたちが事件に巻き込まれて、若だんなと離れてしまう展開などは面白いんです。

ただ、そろそろ、若だんなの周りにも変化がほしいかなと。親友の栄吉や義兄の松之助も若だんなの元を離れてしまい、新しい生活を営んでいきますが、若だんなの周りには変わらず妖かしたちがいます。

それはそれで、ほっこりする風景ではあるのですが、若だんなの自身の恋があってもいいのじゃないかと。あやかしたちのことをわかって、それでもお嫁にきてくれるお嬢さんがいるといいのですが…。


しゃばけシリーズ感想


「しゃばけ」感想→
「ぬしさまへ」感想→
「おまけのこ」感想→
「うそうそ」感想→
「いっちばん」感想→
しゃばけ絵本「みぃつけた」感想→
「ころころろ」感想→
「ゆんでめて」感想→
「やなりいなり」感想→
「ひなこまち」感想→
「すえずえ」感想→
外伝「えどさがし」感想→

「しゃばけ読本」→
2007しゃばけドラマ感想→
2008しゃばけドラマ感想→

JUGEMテーマ:オススメの本

レビューポータル「MONO-PORTAL」

2013.09.04 Wednesday

僕僕先生シリーズ外伝 「童子の輪舞曲」

僕僕先生シリーズの外伝「童子の輪舞曲」今までのシリーズに出てきた登場人物のエピソードや、本編で語られなかった冒険など、外伝的な話が掲載されています。中にはちょっと不思議な話もあり、それがどうも今後の王弁と僕僕先生の関係につながっていくらしいのですが…。

・避雨雙六


雨の無聊をなぐさめるため、僕僕先生が不思議なすごろくをだしてきた。自分の願いにあわせてオーダーメイドにつくられるすごろくで、王弁の道順だけが異様に長くなってしまって…。
すごろくの中で動く人形と自分がシンクロしているので、穴に落ちると、本体にもダメージが。もちろん、王弁くんは穴に落ちるのはお約束(^^)


・雷のお届けもの


旅の途中、僕僕先生一行と知り合った雷王の息子と人間の子どもとの友情物語。雷の国から水の中の竜の国におつかいに行く途中でトラブルに巻き込まれ…。


・競漕曲


舟で旅をする僕僕先生一行は、とある港に停泊するものの、そこは一度入ると二度と出港できない港でした。そこから抜け出すには王の息子たちと舟の競争で勝つこと。僕僕先生は王弁と劉欣に舟勝負を挑むように命じるが、勝負は一度だけ、負けると港から永遠に出ることはできない…。
まだ、劉欣が王弁の脳天気さにイライラしている頃ですね。このあと、大分仲良くなっていくのですが…。


・第狸奴の殖


僕僕先生のペットの妖怪・第狸奴は、庵に化けて、雨露をしのいでくれる大切な旅の仲間。そんな第狸奴に恋の季節が訪れた。雌雄をもたない第狸奴の交尾を成就させろと無茶振りをされた王弁は…。


・鏡の欠片


僕僕先生の知人で、この外伝の案内役・那那(ナナ)と這這(シャシャ)の主人である仙人・司馬承禎が不思議な鏡の中に囚われてします。那那と這這は主人を戻すため、街の子供達と協力して鏡のカケラを探すことに…。
童子の姿の那那と這這ですが、実は二千年くらい生きている不思議なそんざい。小鳥がなくように言葉をかわすところが可愛らしい。


・福毛


この「福毛」だけが、なんとも不思議なお話でした。舞台はなぜか現代の日本。

王弁や僕僕先生、シリーズの登場人物らしき人々が出てくるのですが、まったく異なる話かとおもいきや、これからの物語、王弁が仙骨を手にすることができるかどうかに関わってきそうな雰囲気でもあり…。


童子の輪舞曲 僕僕先生
仁木 英之 新潮社 売り上げランキング: 33,482


僕僕先生シリーズ
「僕僕先生」→
「薄妃の恋」→
「胡蝶の失くし物」→
「さびしい女神」→
「先生の隠し事」→
「鋼の魂」→

JUGEMテーマ:ファンタジー小説

レビューポータル「MONO-PORTAL」

2012.12.19 Wednesday

しゃばけシリーズ 「ひなこまち」 畠中恵

しゃばけシリーズ第11弾「ひなこまち」を読みました。

ろくでなしの船箪笥


若だんなの使うこたつの脚に「助けてください」と書かれた木札が紛れていた。助けてあげたいと思うものの、助ける相手の素性もわからない。ただ木札には「5月10までに」と期限が区切られていたので、それがなにかの手がかりとらしい。

一方で若だんなは友の七之助から、助けを求められます。本家の隠居が形見にと七之助に遺した船箪笥の引き出しがあかないため、中に高級品が入っていると勘ぐった親戚筋から横槍がはいり、一旦は親戚の江戸支店預かりとなりましたが、そこでは次々と怪異が…。若だんなはひとつ困りごとが持ち込まれるたびに、それを解決すれば木札の主にたどりつけるのではと考えます。

ひなこまち
ひなこまち
posted with amazlet at 12.12.19
畠中 恵 新潮社 売り上げランキング: 14906


ばくのふだ


近所の商家で落語寄席ができ、若だんなは兄やたちにたのんで連れてってもらうことに。ところが噺の途中で噺家が武家に切りつけられる騒ぎがおきる。実は噺家の場久は悪夢を食べる獏で、食べた悪夢をネタにして話したために狙われたらしい。場久に泣きつかれた若だんなは、悪夢の主を探すため、妖たちに協力してもらいます。

夢を食べる獏が、実際の悪夢をネタにするのですから、そりやあ怖いでしょうね(;´・ω・)

ひなこまち


江戸の器量よしで番付をつくり、優勝者の顔を手本にした雛人形を大名家に納、モデルの娘は大名にお目通りがかなうという、玉の輿のチャンスに、娘たちや親たちが騒ぎ出し、江戸の町では雛小町の噂で持ちきり。当然、見目をよくするきれいな古着市場も賑わうけれど、そこにはなにやら犯罪の匂いが…。

今回は若だんなが臥せっているので、仁吉と屏風のぞきが相棒となって活躍します。布団から動けなくてもさすが若だんな、仁吉たちのヒントだけで、悪人たちのアジトをつきとめます。

さくらがり


顔見知りの僧侶・寛朝さまがいるお寺に花見にきた若だんなと妖怪たち。そこへ関東の河童の大親分、禰々子が訪れ、以前、仲間を助けたお礼にと、河童の秘薬をもってくる。河童の薬なので惚れ薬や痛みが五倍になる傷薬など、一風変わったものばかり。それを聞きつけたとある武士が、妻の気持ちを確かめたいと、惚れ薬を譲って欲しいといってきて…。

以前「ゆんでめて」の中でも花見をしたのですが、それは神様の手違いでなかったことになっているので、若だんなは覚えていないのですが、妖かしたちはちょっと事情をわかっているようです。
今後、選ばなかった道が現世にどう関わってくるのでしょうか。

ゆんでめて (新潮文庫)
畠中 恵
新潮社 (2012-11-28)
売り上げランキング: 24,825



河童の秘薬


禰々子からもらった河童の薬は、結局「困難が伴うが幸せになれる薬」をお武家に事情を話して渡すことになったのですが、そこでまた若だんなは奇妙な出来事に巻き込まれます。お武家の妻・雪柳が訪ねてきたり、迷子があわられたり、どうも町中が落ち着かない。どうやら夢の中にいることがわかり、獏の力で佐助を逃し、ことの成り行きを見守ることになったのですが…

雪柳と子どもの危機に「ここで逃げたら男じゃないもの」と、逃げ出さず助けようとする若だんな、またひとまわり成長しましたね。(*´∀`*) 人を幸せにするだけじゃなく、若だんなにも幸せになってほしい。それには妖たちをうけいれてくれる奥さんが必要なのですが…。

ひなこまち
ひなこまち
posted with amazlet at 12.12.19
畠中 恵 新潮社 売り上げランキング: 14906



JUGEMテーマ:本の紹介


レビューポータル「MONO-PORTAL」


Calendar

S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< November 2018 >>

オススメ

Archive

Selected Entry

Comment

  • 読者という希少種を、作家と出版社が奪いあう…というSFが読みたい
    日月
  • 読者という希少種を、作家と出版社が奪いあう…というSFが読みたい
    あひる
  • ゴッホを支えた日本人『たゆたえども沈まず』原田マハ
    日月
  • ゴッホを支えた日本人『たゆたえども沈まず』原田マハ
    latifa
  • バリューブックスで古本買取。送料無料で簡単。
    日月
  • バリューブックスで古本買取。送料無料で簡単。
    latifa
  • 「無伴奏ソナタ」 オースン・スコット・カード
    kazuou
  • いよいよ完結『ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~』三上 延
    latifa
  • [映画]箱入り息子の恋
    苗坊
  • BAR追分シリーズ『オムライス日和』 伊吹有喜
    日月

Link

Profile

Search

Other

Powered

無料ブログ作成サービス JUGEM