2016.07.26 Tuesday

『若様とロマン』畠中恵

畠中恵さんの若様シリーズ第三段『若様とロマン』今回は若様組にたくさんの縁談が舞い込んできます。

『若様とロマン』あらすじ


明治20年代。戦争の足音が迫る中、実業家・小泉家の当主は、開戦の反対勢力を集めるため、元旗本の巡査たち「若様組」に見合いを強要し、西洋菓子職人の皆川真次郎(ミナ)には渡米を薦める。

世話になっている御当主に逆らえず、しぶしぶ見合いを引き受ける若様組だったが、見合い相手の家から捜査を頼まれたり、見合い相手は入れ替わり、おまけに横恋慕の相手が現れるなど、前途多難。

果たして、彼らの見合いは成功するのか…?

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子ども時代の終わり


小泉家の娘、沙羅と幼なじみの菓子職人の真次郎、若様組の長瀬。この3人は幼なじみであり、真次郎も長瀬も、沙羅に思いを寄せていました。けれども今回、彼らの関係には終止符が打たれます。といっても悲恋、という感じではなく、真次郎も沙羅も自分の道を見つけて旅立っていきます。

本当は、2人が恋を実らせれば一番いいのでしょうが、それはまだ、先の話かもしれません。この中で、一番思い切りがよかったのは、やっぱり沙羅です。男二人は、沙羅の決断に引っ張られる形で進む道を決めねば、と思い立ったのですから。

おっとり強い明治女性


他の若様組のお見合い相手の女性たちも、明治時代のおとなしい女学生かとおもいきや、案外冷静に、若様組をみていたり、沙羅ほどではないにしろ、思い切った行動に出たりします。まあ、それくらいの女性じゃないと、若様組の奥様はつとまらないでしょう。

昔の女性は、結婚相手に、その後の自分の人生を賭けなければならなかったのですから。

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『アイスクリン強し』
『若様組まいる』

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2016.02.18 Thursday

『世界の辺境とハードボイルド室町時代』 高野 秀行 清水 克行

面白い本を見つけました。『世界の辺境とハードボイルド室町時代』。女優の杏さんがラジオでおすすめしていた本。杏さんのセレクト本は、やっぱりはずれがない(^^)。

世界の辺境とハードボイルド室町時代』は、アフリカのソマリランドに詳しいノンフィクション作家と、日本中世史の専門家。何のつながりもないように見えるこの2人が出会い、話すことで、全く新しい世界が見えてきます。

対話形式で書かれているので、難しいテーマでも、さくさく読めます。

世界の辺境とハードボイルド室町時代
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「独裁者は平和がお好き」奇妙なタイトルの理由


世界の辺境とハードボイルド室町時代』タイトルからして、なんじゃこりゃ?と好奇心を刺激されます。でも、中身の目次もタイトルに負けず劣らず、面白い。

けれど、読んでみると実に理にかなってるんですね。この「独裁者は平和がお好き」でも、麻薬栽培に携わる権力者は、支配する農民たちにアヘンを吸わせないし、揉め事を解決したりするそうです。麻薬の生産能力が落ちるから、支配地域では平和がいちばんなのだとか。


作家と学者の、異種交流譚


世界の辺境とハードボイルド室町時代』を読んで、『銃・病原菌・鉄』を読んだ時とおなじ感覚だな、と思いました。

『銃・病原菌・鉄』も、今まで縦割りだった歴史を、横から、人間の食料生産と環境という「地理的な解釈」をくわえて、新しい世界を私たちに見せてくれた本ですが、この『世界の辺境とハードボイルド室町時代』もそうです。

ノンフィクション作家と歴史学者という、まったくの異業種同士が話すことによって、意外な、新しい発見を見せてくれます。、一見、異分野の知識が組み合わさることで、歴史、辺境への理解がより深まるようになっています。

異なる世界への認識と理解


上橋菜穂子さんの著書『明日は、いずこの空の下』によると、「辺境」とは、英語で「フロンティア」の意味があるそうです。そして、「フロンティア」は「異文化と出会う最先端」でもあるわけです。

アジア・アフリカの辺境と、室町時代、現代日本とは環境も行き方も考え方も違う「異世界」と交流し、文書を読み解き、認識することで、自分たちが生きている世界だけがいいわけじゃないと感じることは、私達の周りの問題に対しても解決のヒントにもなるのじゃないでしょうか。

とはいえ、「客になったらやりたい放題にしてよい」ってソマリアのルールはちょっと受け入れるのに時間がかかりそうだな…(;´・ω・)

高野秀行さんと清水克行さんは、そんな「フロンティア」を、フィールドワークや古文書から発見・発掘して私達にみせてくれる、冒険家のような存在なのかもしれません。

お二人の書いた本も、読んでみたくなりました。

謎の独立国家ソマリランド
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喧嘩両成敗の誕生 (講談社選書メチエ)
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高野秀行さんの奥様って『北里大学獣医学部 犬部!』を書いた片野ゆかさんなんですね。夫婦揃って、良い本書くなあ。

犬部!
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2016.01.31 Sunday

『植民地時代の古本屋たち』 沖田 信悦

興味深い本を見つけました。『植民地時代の古本屋たち―樺太・朝鮮・台湾・満洲・中華民国 空白の庶民史』は現役の古本屋さんが書いた、戦前、日本の植民地だった地域での古本店ネットワークの記録です。

資料としての意味あいが強く、私のような素人が読むものとしては若干難解ではありますが、それでも当時の「外地」で、どんな風に書店が開かれ、何が売れたのか、当時の証言をもとに検証されています。



植民地時代の古本屋


樺太、台湾、朝鮮、中国大陸などで、日本人が進出していった土地には必ず書店や古書店があったらしいです。その土地ごとに売れ筋の本が異なり、朝鮮では教科書や思想、経済本が、台湾では実用書、絵本が喜ばれ、中国大陸では、日本と同じような本が好まれていたのだとか。

台湾や朝鮮では強制的な日本語教育がなされていたので、現地の人にも販売されたのかもしれません。

樺太の南半分は日本の領土で、水産やパルプなどに携わるたくさんの人々が暮らしていたそうです。古書店も各都市に存在したのだとか。

内地(日本国内)の古書店とも独自のネットワークがあったらしく、内地の古書店主がよく植民地へ買い付けに行ったそうで、この本の中にそれらの手記が載せられています。

引き上げの苦労


ソ連の侵攻時には、貴重な本は焚き付け代わりにされ、辞書はタバコの巻紙に、引き上げでは貴重な本を泣く泣く手放すことになった引き上げの苦労が語られます。


失われた町


古本屋巡りをしながら、いまはもう、失われた都市を探訪する。厳密にいえば、都市は今でも存在するのだけど、底はもう、日本人がすんでいた頃とはちがう町、外国にになってしまっているから。

決して、植民地を肯定するつもりはないのだけれど、「失われた地名」というのは、えらく懐古趣味を刺激されるのです。

『ノスタルジック・ホテル物語』は、日本国内はもとより、朝鮮や台湾、上海の日本人経営のホテルの歴史について綴られた1冊。こちらは当時のパンフレットや絵葉書が掲載され、読みやすい内容です。

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おまけ・ビブリア古書堂の事件手帖について


『植民地時代の古本屋たち』の記述から、日本国内の古本屋とも売買ネットワークがあったそうです。当時の植民地出身の芥川賞作家も現れ、植民地時代にはずいぶん本の流通が盛んであったらしい。

古書ミステリ「ビブリア古書堂の事件手帖」。主人公栞子さんの母親・智恵子(えらく頭がきれる)は、ある珍しい本を探すために家族を捨て、旅に出ています。行動や軌跡から、もしかしたら、彼女の探す本は戦前の「外地」が関わっているのでは?と私は考えているのですが…。

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2015.11.02 Monday

「荒神絵巻」 こうの史代 宮部みゆき

宮部みゆきさんの小説「荒神」は、江戸時代、架空の村を舞台にした、時代小説と、ホラー、ファンタジーの要素を合わせ持つ不思議な物語。

もともと『荒神』は新聞に連載されていた小説なので、毎回あらすじに沿ってこうの史代さんによるすてきな挿絵がつけられていました。

しかし、単行本化するにあたり、そうした挿絵は文と切り離されてしまいます。

それは、あまりに残念だということでしょうか。『荒神絵巻』は『荒神』の別冊のようなかたちで、こうの史代さんの絵と『荒神』の抜粋された文章が楽しめます。

江戸時代の和綴じ本のような表紙イラストも凝っています。物語の重要な鍵をにぎる女性・朱音が「荒神絵巻」というタイトルに寄りかかっているイラストは、鏑木清方の「一葉女史の墓」を思い起こさせます。「荒神」の悲しい物語性にもあっていますね。

荒神絵巻
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鏑木清方画集
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「荒神」感想→
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2015.09.30 Wednesday

日本人にとっての「上海」とは。 『魔都上海 日本知識人の「近代」体験』 劉 建輝

魔都上海 日本知識人の「近代」体験』は、幕末から昭和まで「魔都」と呼ばれた蠱惑の都市・上海に日本人がどのように関わってきたかが書かれています。

時代の変遷によって、求められる姿を変えてきた上海。なぜ、こんなにも多くの人が「上海」を目指したのか。その魅力に迫ります。

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幕末から明治にかけての上海


幕末、高杉晋作が上海に渡った話は有名ですが、幕末日本人における上海は、一番近い「西洋」であり、そこから西洋、またはアジアの情勢や情報、最新文化を吸収する役割を持っていたそうです。

当時の上海は、西洋列強が「租界」という名の外国人居留地が設けられ、今も残る外灘(バンド)や、西洋の建物が立ち並んだ、中国の中の西洋だったのです。

明治に入ると、直接西洋に日本人を送ることができるようになり、日本を離れて一旗上げようとする野心家たちか集まりはじめます。


文豪と上海


大正にはいって、上海や、その郊外の杭州の湖水風景を売りに、そのころ発足したばかりの旅行会社から、ツアーが組まれるようになります。JTBができたのもこの頃で、宿泊施設が整備され、観光事業が始まりました。

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その上海旅行の呼びかけに、いち早く飛びついたのが文豪たちでした。谷崎潤一郎は大正時代に2回、上海を訪れ、杭州地方の湖水を楽しみ、上海内山書店の店主・内山完造の紹介により、郭沫若ら中国文化人との交流を楽しみます。谷崎はどちらかと言うと、都市の魅力より、人との交流を楽しんだようです。

逆に、芥川龍之介は、どうも魔都と相性が悪かったらしく、すぐに北京の方にいってしまったのだとか。

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「魔都」上海に魅せられる日本人


やがて、立身出世を願う者たちから、怪しい「魔都」の魅力にとりつかれた者たちが上海へ集まるようになります。

上海に集まるのは、どうも、日本で食い詰め、にっちもさっちもいかなくなった連中や、ヨーロッパへの中継として上陸したものの、金の工面ができずにずるずると長期滞在するものたちです。

特に、金子光晴は「どくろ杯」の中で、上海の独特の匂いについて語っています。旅をするとまず感じるのは、風景でも音でもなく、まず匂いと、体にまとわりつく空気だと思うのですが、そんな「体感」でしか感じられない雰囲気を、金子光晴は見事に描いてくれています。

上海に魅せられた文豪たちによって、私たちは今はなき「魔都」の雰囲気を追体験することができるのです。

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魔都上海関連
「上海セピアモダン―メガロポリスの原画」→
「上海航路の時代―大正・昭和初期の長崎と上海」
上海租界時代の復刻ポストカード→
「そんへえ・おおへえ―上海生活三十五年」→
「グ印亜細亜商会」→

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2015.07.23 Thursday

まんまことシリーズ『まったなし』畠中 恵

今回、NHKでドラマ化もされた「まんまこと」主演の麻之助役の福士誠司さんはじめ、イケメン俳優さんが清十郎や吉五郎を演じてらして、眼福です。そして、まんまことシリーズ5巻め「まったなし」も発売。

今回は、麻之助の親友、八木清十郎の結婚話を中心に、麻之助の初恋の人で、清十郎の義母であるお由有の過去絡みの事件もおき、麻ノ介が友の縁談をどのようにまとめていくかが物語の軸になってきます。

清十郎の縁談が決まると、先代の後添いのお由有さんは再婚し、家をでることが決まっている。

友の結婚は、お由有さんとの別れも伴うわけで、麻之助としては、ちょっと寂しいことでしょうね。

読んでいるこちらからすると、何とか2人が初恋を叶えて、一緒になってくれないかと思うのですが…。

今回は、麻之助の年上の親友である高利貸しの丸三と、その妾のお虎さんも活躍します。高利貸しとして悪名高い丸三も、年下の友達に嫌われたくないと、一生懸命、友のために働く姿がいじらしいというか。

お虎さんも初登場ですが、丸三といいコンビで、すっかり麻之助たちの世話を焼いています。

さて、今後、お由有さんの過去の因縁がどうかかかわってくるか、麻之助がこんどこそお由有さんを守れるかが話の筋になってきそうです。楽しみ。

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ドラマ「まんまこと麻之助裁定帳」


NHKでドラマ化された「まんまこと」シリーズ。シリーズ「ときぐすり」の前半部分までがドラマ化されています。福祉政治さんのひょうひょうとした麻之助、桐山漣さんのイケメン清十郎、趙ο造気鵑涼砲蕕靴さ噺渭困離肇螢が痛快でかっこいい。えなりくんが番頭役でいい味をだしています。

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JUGEMテーマ:オススメの本


「ときぐすり」→
「こいしり」→
「こいわすれ」→
「まんまこと」→

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2015.06.10 Wednesday

ショート・ショート時代小説 「ならぬ堪忍」 山本周五郎

山本周五郎の「ならぬ堪忍」読了。もともとBS11の本紹介番組「すずらん本屋堂」のショート・ショートSHOWという企画で紹介された短篇集です。

時代小説でショート・ショートって、珍しいなと思い読んでみると、ああ、なるほど、こういうことになるのかと納得。短い文章の中に武士の生き様が描かれています。

その他にも、情よりも武士としての建前をとるもの、人のために自分を犠牲にするものなど、様々な武士の生き様が描かれています。


「ならぬ堪忍」あらすじ


とある藩。大六という少年が、重助という相手との諍いから、決闘にまで発展する。決闘を決意した大六に、叔父の又十郎は、「侍の命は君主に捧げたもので、私事で捨てるものではない。」と諭すのだが、大六は聞き入れない。

そこで又十郎は、大六に、内密だが、近々戦があると打ち明ける…。

時勢に流されない、山本周五郎の思い


「ならぬ堪忍」は昭和20年に書かれました。私情に流されず、主君のために命をささげるのを良しとする戦意啓発の物語ですが、一方で「命を粗末にせず、大事の時まで生き抜け」とも書かれています。

おそらく戦時中の人が読むと「主のために命を捧げる」が主で、現代人が読むと「命を粗末にしない」という点に重点が置かれるのではないでしょうか。

他の小説も、戦時中に書かれたにしては、無闇やたらに命を捨てさせる戦意高揚というより、武士道を通じて、どう生きるかを説いた物語が多く、制約の中でも山本周五郎の反骨の心意気が感じられます。


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こちらも番組で紹介されたショート・ショートを集めた「極短小説
「SHORTEST STORIES」を、「極短小説」と訳したのは洒落がきいていますね。

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2015.05.31 Sunday

幕末、武士の娘の物語。「諫早菖蒲日記」 野呂邦暢

古書店を舞台にした小説「森崎書店の日々」。この本が縁となり、野呂さんの本を知ることになりました。
読書三昧の青春を綴った随筆「小さき町にて」から「諫早菖蒲日記」へ。本の縁が続いていきました。

諌早菖蒲日記」は幕末、九州諫早藩の砲術指南役の娘、志津の視点から語られる物語です。

幕末、藩の砲術指南役とくれば、「八重の桜」の八重さんのように、幕末の動乱に活躍する話かと思っていましたが、まったくそんなことはなく「諫早菖蒲日記」では、彼女の周りの日常が綴られているだけで、さしたる大事件は起こりません。

けれども、読み始めると夢中になってしまいました。

戊辰戦争のような、国を巻き込む大事件はありませんが、その当時、諫早で起こった大小の事件が綴られていきます。本明川の氾濫、主筋に当たる佐賀藩からの圧政、志津の家とライバル関係にある砲術家の台頭…。

淡い恋心、新しい矢絣の着物が欲しくて駄々をこねたり、母親に内緒で河岸を観に行ったりと、ちょっとおてんばな様子や、大砲の影響で耳の遠い父親の耳がわりとして、来客の対応をするうちに、世情にもたけていくようすなど、志津の姿がいきいきと描かれます。

考えてみれば、日本中の武士のだれもが、幕末の世情に関わって戦や暗躍をしていたわけではないんですよね。

大きな出来事はおきないけれど、なんだかとても愛おしい物語でした。


諫早菖蒲日記
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そういえば、「武士の家計簿」も幕末だけど、大きな事件が起こるわけではなかったっけ。

武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)
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JUGEMテーマ:オススメの本


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2015.05.19 Tuesday

勧善懲悪のない、大魔神。「荒神」 宮部 みゆき

宮部みゆきさんの「荒神」読了。いや、すさまじい話でした…。時代物、ホラー、ミステリ、ヒューマンドラマが、相反することなく見事に交わり、壮大な物語が織り上げられた感じです。例えるなら、勧善懲悪のない「大魔神」かな。

荒神
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荒神 あらすじ


享保の頃、東北のある地方。小平良山の麓の仁谷村で、村民が襲われ、生き残ったものも隣の永津野藩へ逃げ込むという事件が起きる。永津野は香山の主筋にあたるが、香山の民を狩り、非道を行っていた。そんな永津野へ村民が逃げるのは、どれほどの理由があったのか。

香山藩の若君暗殺の疑いをかけられ、城下を追われた元小姓・直弥は、原因究明のため、小平良山へ向かう。

一方、永津野藩で鬼と恐れられる曽谷弾正の妹・朱音は、養蚕振興のため、国境の名賀村へ移り住んでいた。兄と違い、心優しい朱音は、ある時、怪我をした子供を拾う。実はその子供は、隣の香山藩の子供・蓑吉だった…。

荒神 (新潮文庫)
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勧善懲悪のない、「大魔神」のような物語


村を襲った化け物のは「何」なのか、若君の暗殺、間者の暗躍…。香山、永津野、両側の視点から交互に描かれていき、物語の後半、個々に展開していた物語が一気に交わり、最後まで息もつかせぬ展開になっていきました。


「荒神」を「大魔神」みたいだな、と思ったのは、圧政に耐え忍んでいた人々が「人外」の力を頼む。結果、荒ぶる神は、敵も味方もなく暴れて手が付けられなくなり、美しい娘の、清い心によって怒りを鎮める。「荒神」も、大筋だけだと「大魔神」と似ているのですが、そこは宮部みゆきさんですから、いろいろな人の思い、いいものも悪いものも、全てを含めた、深い深い物語になっています。

孤宿の人」を読んだ時も思ったけれど、ちかごろの宮部みゆきさんの時代物は、こういっちゃなんだが情け容赦がない。

ちなみに、大魔神はこちら。おっかないんですよ…。

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人の業


「荒神」は、敵対する香山と永津野、両方の住民の視点から描き、そこへ蓑吉という香山側の少年が、敵側の永津野に投げ込まれることで、双方の言い分や立場が見え始めます。

お互いに憎みあってはいるけれど、どちらの村人も、思いやりのある人々なんです。それが差別や偏見、圧政によって歪んでしまう。強大な力の前には、協力しあってことにあたればいいのに、そんな理想論は起こらず、曽谷弾正に至っては、己の野望のために怪物までをも利用しようとする。

そんな、圧倒的な力の中でも、屈することなく、小さな勇気と、知恵を絞りながら抵抗する人々もいます。
恐ろしく強大な絶望のあとには、残された希望はほんの一握り。それでも、それでも、前を向いていくしかない。

切なく、悲しい話でした。


朝日新聞連載中に描かれた、こうの史代さんの挿絵が本になった「荒神絵巻」こういうのは嬉しいですねえ。
連載中の挿絵って、本になってもみたいですもの。
荒神絵巻→
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2015.04.15 Wednesday

「ケルトの白馬」 ローズマリー・サトクリフ

2015年本屋大賞を受賞した、上橋菜穂子さんにも影響を与えた、イギリスの作家ローズマリー・サトクリフ「第九軍団のワシ」を読んで以来、ローズマリー・サトクリフの描く物語の世界に惹かれています。

「ケルトの白馬」は、「第九軍団のワシ」から200年くらい前のお話。イギリスに残る「アフィントンの白馬」の遺跡をモチーフに、その地に住むケルト人、イケニ族の若者・ルブリンが丘陵に「アフィントンの白馬」を描くまでのエピソードが描かれます。

私はもともと、ケルトの紋様のデザインが好きでしたので、そうした紋様をつくった人々の話にも興味がありました。紀元前のイギリスでそれらの紋様は、どのように生まれ、かたちづくられていったのか。

ローズマリー・サトクリフは、実在する出土品や遺跡から、それらを作り、使った人々の物語を紡ぎだすのが本当にうまいんですよ。まるで、歴史そのものを垣間見ているような気持ちになれます。

「第九軍団のワシ」ほど、長くないので、さくっと読めます。

「ケルトの白馬」あらすじ


族長の息子、ルブリンは、幼いころから自然や動物が、作り出すかたちに興味をもち、独特の感性で描き残すことを好んだ。また彼は親友のダラとともに、商人から伝え聞いた北の大地と、先祖の冒険をなぞらえて、いつかの冒険に出ることを夢みていた。

しかし、ダラが妹の夫として族長の継承者となり、一族もまた、南からの部族によって壊滅的被害を受ける。奴隷となったルブリンは、敵の族長にかけあい、丘に巨大な馬の姿を描くことで、一族を開放しようと試みる…。

ケルトの氏族


ルブリンが属するイケニ族は、馬の放牧を行う種族で、馬の女神をまつり、一族の長の継承者は女性。世継ぎの姫と結婚したものが族長となる、女性の血統が重視されています。他にも、吟遊詩人や賢者(ドルイド)なども登場し、まるで、ファンタジーの登場人物のようです。


ケルトの白馬
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ケルト紋様の幾何学: 自然のリズムを描く (アルケミスト双書)
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私がはじめてケルト人を知ったのは、このマンガでした。

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ローズマリー・サトクリフ作品
『第九軍団のワシ』→
『ローマとケルトの息子』→

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