2017.02.20 Monday

『映画探偵: 失われた戦前日本映画を捜して』 高槻 真樹

映画探偵: 失われた戦前日本映画を捜して』読了。今は失われた戦前の映画を探す「探偵」たちを通して、映画黎明期から戦前までの映画の歴史と、幻の映画を追い求める人々の姿を追ったドキュメンタリー本です。


幻の戦前映画を探して


戦前、キネマ旬報などで名作と讃えられた作品は、いまではほとんど失われてしまい、見ることができません。それはどうも戦争の影響だけではなく、フィルムの性質(燃えやすい)、ずさんな上映体制など、複合的な理由によるものだそうです。

映画探偵: 失われた戦前日本映画を捜して
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現代では考えられない、戦前映画のトンデモな上映スタイル


・上映が終わったフィルムを、その場で裁断、販売することもあった。
・同じ脚本で違うタイトルの映画が撮られることがあった。
・上映側が勝手に編集、名前を変えて上映することもあった。

…もう、現代では考えられないですね。(;´・ω・)こうしたことが、映画を探すことを困難にしているのです。

海外で発見される日本映画


しかし、それでも少しずつですが、失われた映画が発見されていきます。名作「忠次旅日記」は父親の遺品の中から、「何が彼女をさうさせたか」は、ロシアで見つかりました。このロシアでの映画の売買に関しても、ソ連崩壊直後だからできた、ドラマチックな話がでてきます。

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戦前の日本映画が海外で発見されるのは、当時日本が植民地化していた台湾、満州、朝鮮、満州や、移民の多いアメリカへ輸出されたり、植民地へ侵攻してきたロシア(ソ連)などに接収された可能性があるからだとか。

確かに、アメリカ人と日系女性の恋を描いた映画「愛と哀しみの旅路 [DVD]」でも劇中で戦前の名オペレッタ「鴛鴦歌合戦」が使われていました。




映画探偵たち


今では幻となった戦前映画を探し出し、修復保存をおこなうフィルムセンターなどの公的機関から、民間で資金を募り収蔵、上映をづづける団体。映画のフィルムコレクターなど、一口に映画探偵といってもさまざまなタイプの探偵たちがいます。
無声映画の解説をおこなっていた活動弁士たちもコレクターだったんだそうで、これは、興行用のフィルムを自前で用意しなければならなかったための苦肉の策だったらしいのですが。

そして興味深かったのが、収集欲が過ぎて狂気的ですらあるコレクターたち。ときには人を騙してでもフィルムを手に入れたり、自分が貴重なフィルムを持っているかのごとく吹聴したり。

こうしたコレクターの闇はどのジャンルにも共通しているようで、前に読んだ古書コレクターの小説『せどり男爵数奇譚 (ちくま文庫)』を思い出しました。

これからもまだまだ、映画探索は続いてゆくのでしょうから、意外な場所で貴重な日本映画が発見されるかもしれません。
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2017.02.19 Sunday

北斎の娘、その一生。『眩 くらら』朝井 まかて

北斎の娘、お栄。北斎の弟子にして、女絵師、葛飾応為。彼女の一生を描いた朝井 まかて「」。

お栄を描いた話としては、江戸文化研究家の杉浦日向子さんの「百日紅」が有名ですが、「」は、百日紅のその後、お栄が嫁に行ったところからはじまります。

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一本の映画をみたような読了感


眩
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JUGEMテーマ:最近読んだ本



物語の冒頭、お栄は夫との暮らしに辟易し、外に出たついでに、ふらっと婚家を逃げ出してしまう。そこから北斎のもとに戻り、北斎を助けながら、ひたすら絵の道を極めて行きます。

北斎のもとに出入りしていた浮世絵師、善次郎(渓斎英泉)との絆とひとときの情、甥・時太郎の不行状に悩まされ、母を看取り、最愛の盟友・善次郎との別れ、そして北斎を看取り、自らも晩年を迎える…。

善次郎の野辺送りを、足を怪我しながら追いかけて見送る場面が、お栄の思いを移していて。とても好きです。善次郎は男女の仲を超えた、絵の道を目指した盟友でもあったのでしょうから。

やがて、老年の北斎を看取ったあとは養子にいった武家の弟の家にやっかいになるのですが、やがてそこもふらっと出ていき、新たに人生を始めていくところで終わります。最初と最後が同じ行動で、物語が完結しているんですね。

年をとっても新たな世界へ挑戦していく、心の赴くままに。豪胆で繊細、まさに自らの絵のような人生でした。

絵を傍らに読みたい本


『眩』には、北斎とお栄の描いた浮世絵や肉筆画がでてきて、その制作の様子が描かれます。まるで、本当に絵が描かれている様子を垣間見ているような、息を呑む制作風景。お栄や北斎が、いのちをかけて描いたものが、今、現代の私達が見ることができるのって、本当にすごいことだ、と思います。

北斎娘・応為栄女集
北斎娘・応為栄女集
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2017.01.15 Sunday

戦国のプロジェクトX 『家康、江戸を建てる』

『家康、江戸を建てる』。タイトルは、「家康」ですが、本当に江戸をつくったのは、直接現場に携わる名も無き職人たちや現場を監督する奉行たち。彼らが困難なプロジェクトに挑む姿はまさに、戦国版のプロジェクトXの趣があります。

困難や悲劇はあるものの、土地を整え、水を引き、新開地江戸を建てていく過程は、新しい希望に満ちています。まだ海の物とも山の物ともつかない田舎が、やがて世界になだたる都市になっていくとは、家康も想像していなかったでしょう。

家康、江戸を建てる
家康、江戸を建てる
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以下、特に気になった物語について。

流れを変える


今の利根川は、東京の東側を流れていますが、実はこれは、人の手によるもの。その利根川東遷事業に関わった伊奈氏三代の奮闘が描かれます。江戸に入府した家康はまず、湿地だった江戸を変えるべく、氾濫を繰り返す利根川の流れを変えるプロジェクトを立ち上げます。

このプロジェクト、数十年に渡って、伊奈氏が代々工事にたずさわってきました。大変な工事だったとはなんとなく知っていましたが、ここまでとは。バトンを受け継ぐ伊奈の男たちがかっこいい。

余談ですが、畠中恵さんもしゃばけシリーズの中で利根川東遷を描いています。こちらは、坂東太郎(利根川)の化身が工事を行う侍たちを妨害するもの。そこへ河童の総大将・禰禰子が人間に力を貸すことになる物語です。

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天守を建てる


これは職人ではなく、二代将軍秀忠が主人公の物語。江戸城天守の着工をを任された秀忠。家康から戦のない時代の天守の意味について問いかけられます。家康はなぜ、戦のない世に、あえて物見の役割を持つ天守を創造しようとしたのか。それも、大阪城や安土城の黒漆天守とは違い、白い漆喰の天守を。

家康の命題に答えようと、秀忠は必死で、答えを探していくのですが…。

歴史家の磯田道史先生が「秀忠が嫌いな日本人はいないでしょう。」とコメントされていましたが、家康のように戦国武将としてのカリスマ性はないものの、合理的で実直な秀忠は、現代の日本人の感覚に近いのかも。

家康が建てた江戸という街を、秀忠が発展させていく。為政者も職人も、そうやって次の世代にバトンが渡されていく。それは昔も今も、変わらないのかもしれません。

家康、江戸を建てる
家康、江戸を建てる
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今も昔も、プロジェクトに携わる職人たちは、困難に遭遇すればするほど、燃えるようです。それは、現代の名も無き職人たちたちにも受け継がれています。


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2016.08.13 Saturday

大正時代の不良少女たち『くれなゐの紐』 須賀 しのぶ

大正時代の不良少女たちを描いた『くれなゐの紐』読了。須賀しのぶさんの作品は『芙蓉千里』以来だったのですが、彼女の描く少女たちは強くて弱くて、痛くて切ない。

『くれなゐの紐』あらすじ


失踪した姉をさがすため、日本最大の歓楽街、浅草六区へやってきた仙太郎は、生き延びるため少女の姿に変装し、スリに身をやつす。

ある日、姉からの絵葉書に写った浅草十二階の展望台で、1人の男と出会う。操と名乗る「彼」は、実は浅草六区を仕切る少女ギャング団「紅紐団」の団長であり、入団するなら姉の行方を教えるという。

はからずも、少年でありながら少女ギャング団へ加入することとなった仙太郎。紅紐団には、花売り娘のあや、副団長で売春元締めの倫子など、個性豊かな少女たちがいた…。

くれなゐの紐
くれなゐの紐
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痛快小説だけじゃない、少女たちの痛み


不良少女たちが、才覚と度胸で少年ギャング団や、ライバルたちを席捲していく様は実に痛快でした。けれど、それは物語の中盤。さて、ラストにはどんな結末が待っているのか、と読み進めたら、結末は少し意外なものでした。

世間や大人たち対する復讐、ではあるのですが、そこにはかっこいい少女ギャングの姿はなく、紅紐団しかよりどころもたず、虚しくあがき、居場所を見つけられない少女たちがいました。

それは、カリスマ的魅力をもつ団長の操も同じで、みんなあがいている。そして、少年である仙太郎は外の目線から彼女たちの痛みを知るのですが、彼女たちに何もしてあげることができないのです。

こうした少女たちの姿は、今の少女たちにも通じるものがあります。あるいは「少女」とは、普遍的な存在なのかもしれません。




大正時代、物語に登場した少女ギャング団は東京各地に存在しており、丸ビルのタイピストが、売春斡旋で捕まったりしていたそうです。

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物語の出てきた浅草十二階(凌雲閣)は、明治二十年代に作られた浅草のランドマーク。物語の最後の2行に関わってきます。
浅草十二階 塔の眺めと〈近代〉のまなざし
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須賀しのぶ関連
芙蓉千里

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2016.07.26 Tuesday

『若様とロマン』畠中恵

畠中恵さんの若様シリーズ第三段『若様とロマン』今回は若様組にたくさんの縁談が舞い込んできます。

『若様とロマン』あらすじ


明治20年代。戦争の足音が迫る中、実業家・小泉家の当主は、開戦の反対勢力を集めるため、元旗本の巡査たち「若様組」に見合いを強要し、西洋菓子職人の皆川真次郎(ミナ)には渡米を薦める。

世話になっている御当主に逆らえず、しぶしぶ見合いを引き受ける若様組だったが、見合い相手の家から捜査を頼まれたり、見合い相手は入れ替わり、おまけに横恋慕の相手が現れるなど、前途多難。

果たして、彼らの見合いは成功するのか…?

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子ども時代の終わり


小泉家の娘、沙羅と幼なじみの菓子職人の真次郎、若様組の長瀬。この3人は幼なじみであり、真次郎も長瀬も、沙羅に思いを寄せていました。けれども今回、彼らの関係には終止符が打たれます。といっても悲恋、という感じではなく、真次郎も沙羅も自分の道を見つけて旅立っていきます。

本当は、2人が恋を実らせれば一番いいのでしょうが、それはまだ、先の話かもしれません。この中で、一番思い切りがよかったのは、やっぱり沙羅です。男二人は、沙羅の決断に引っ張られる形で進む道を決めねば、と思い立ったのですから。

おっとり強い明治女性


他の若様組のお見合い相手の女性たちも、明治時代のおとなしい女学生かとおもいきや、案外冷静に、若様組をみていたり、沙羅ほどではないにしろ、思い切った行動に出たりします。まあ、それくらいの女性じゃないと、若様組の奥様はつとまらないでしょう。

昔の女性は、結婚相手に、その後の自分の人生を賭けなければならなかったのですから。

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『アイスクリン強し』
『若様組まいる』

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2016.02.18 Thursday

『世界の辺境とハードボイルド室町時代』 高野 秀行 清水 克行

面白い本を見つけました。『世界の辺境とハードボイルド室町時代』。女優の杏さんがラジオでおすすめしていた本。杏さんのセレクト本は、やっぱりはずれがない(^^)。

世界の辺境とハードボイルド室町時代』は、アフリカのソマリランドに詳しいノンフィクション作家と、日本中世史の専門家。何のつながりもないように見えるこの2人が出会い、話すことで、全く新しい世界が見えてきます。

対話形式で書かれているので、難しいテーマでも、さくさく読めます。

世界の辺境とハードボイルド室町時代
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「独裁者は平和がお好き」奇妙なタイトルの理由


世界の辺境とハードボイルド室町時代』タイトルからして、なんじゃこりゃ?と好奇心を刺激されます。でも、中身の目次もタイトルに負けず劣らず、面白い。

けれど、読んでみると実に理にかなってるんですね。この「独裁者は平和がお好き」でも、麻薬栽培に携わる権力者は、支配する農民たちにアヘンを吸わせないし、揉め事を解決したりするそうです。麻薬の生産能力が落ちるから、支配地域では平和がいちばんなのだとか。


作家と学者の、異種交流譚


世界の辺境とハードボイルド室町時代』を読んで、『銃・病原菌・鉄』を読んだ時とおなじ感覚だな、と思いました。

『銃・病原菌・鉄』も、今まで縦割りだった歴史を、横から、人間の食料生産と環境という「地理的な解釈」をくわえて、新しい世界を私たちに見せてくれた本ですが、この『世界の辺境とハードボイルド室町時代』もそうです。

ノンフィクション作家と歴史学者という、まったくの異業種同士が話すことによって、意外な、新しい発見を見せてくれます。、一見、異分野の知識が組み合わさることで、歴史、辺境への理解がより深まるようになっています。

異なる世界への認識と理解


上橋菜穂子さんの著書『明日は、いずこの空の下』によると、「辺境」とは、英語で「フロンティア」の意味があるそうです。そして、「フロンティア」は「異文化と出会う最先端」でもあるわけです。

アジア・アフリカの辺境と、室町時代、現代日本とは環境も行き方も考え方も違う「異世界」と交流し、文書を読み解き、認識することで、自分たちが生きている世界だけがいいわけじゃないと感じることは、私達の周りの問題に対しても解決のヒントにもなるのじゃないでしょうか。

とはいえ、「客になったらやりたい放題にしてよい」ってソマリアのルールはちょっと受け入れるのに時間がかかりそうだな…(;´・ω・)

高野秀行さんと清水克行さんは、そんな「フロンティア」を、フィールドワークや古文書から発見・発掘して私達にみせてくれる、冒険家のような存在なのかもしれません。

お二人の書いた本も、読んでみたくなりました。

謎の独立国家ソマリランド
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喧嘩両成敗の誕生 (講談社選書メチエ)
清水 克行 講談社 売り上げランキング: 10,228



高野秀行さんの奥様って『北里大学獣医学部 犬部!』を書いた片野ゆかさんなんですね。夫婦揃って、良い本書くなあ。

犬部!
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2016.01.31 Sunday

『植民地時代の古本屋たち』 沖田 信悦

興味深い本を見つけました。『植民地時代の古本屋たち―樺太・朝鮮・台湾・満洲・中華民国 空白の庶民史』は現役の古本屋さんが書いた、戦前、日本の植民地だった地域での古本店ネットワークの記録です。

資料としての意味あいが強く、私のような素人が読むものとしては若干難解ではありますが、それでも当時の「外地」で、どんな風に書店が開かれ、何が売れたのか、当時の証言をもとに検証されています。



植民地時代の古本屋


樺太、台湾、朝鮮、中国大陸などで、日本人が進出していった土地には必ず書店や古書店があったらしいです。その土地ごとに売れ筋の本が異なり、朝鮮では教科書や思想、経済本が、台湾では実用書、絵本が喜ばれ、中国大陸では、日本と同じような本が好まれていたのだとか。

台湾や朝鮮では強制的な日本語教育がなされていたので、現地の人にも販売されたのかもしれません。

樺太の南半分は日本の領土で、水産やパルプなどに携わるたくさんの人々が暮らしていたそうです。古書店も各都市に存在したのだとか。

内地(日本国内)の古書店とも独自のネットワークがあったらしく、内地の古書店主がよく植民地へ買い付けに行ったそうで、この本の中にそれらの手記が載せられています。

引き上げの苦労


ソ連の侵攻時には、貴重な本は焚き付け代わりにされ、辞書はタバコの巻紙に、引き上げでは貴重な本を泣く泣く手放すことになった引き上げの苦労が語られます。


失われた町


古本屋巡りをしながら、いまはもう、失われた都市を探訪する。厳密にいえば、都市は今でも存在するのだけど、底はもう、日本人がすんでいた頃とはちがう町、外国にになってしまっているから。

決して、植民地を肯定するつもりはないのだけれど、「失われた地名」というのは、えらく懐古趣味を刺激されるのです。

『ノスタルジック・ホテル物語』は、日本国内はもとより、朝鮮や台湾、上海の日本人経営のホテルの歴史について綴られた1冊。こちらは当時のパンフレットや絵葉書が掲載され、読みやすい内容です。

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おまけ・ビブリア古書堂の事件手帖について


『植民地時代の古本屋たち』の記述から、日本国内の古本屋とも売買ネットワークがあったそうです。当時の植民地出身の芥川賞作家も現れ、植民地時代にはずいぶん本の流通が盛んであったらしい。

古書ミステリ「ビブリア古書堂の事件手帖」。主人公栞子さんの母親・智恵子(えらく頭がきれる)は、ある珍しい本を探すために家族を捨て、旅に出ています。行動や軌跡から、もしかしたら、彼女の探す本は戦前の「外地」が関わっているのでは?と私は考えているのですが…。

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2015.11.02 Monday

「荒神絵巻」 こうの史代 宮部みゆき

宮部みゆきさんの小説「荒神」は、江戸時代、架空の村を舞台にした、時代小説と、ホラー、ファンタジーの要素を合わせ持つ不思議な物語。

もともと『荒神』は新聞に連載されていた小説なので、毎回あらすじに沿ってこうの史代さんによるすてきな挿絵がつけられていました。

しかし、単行本化するにあたり、そうした挿絵は文と切り離されてしまいます。

それは、あまりに残念だということでしょうか。『荒神絵巻』は『荒神』の別冊のようなかたちで、こうの史代さんの絵と『荒神』の抜粋された文章が楽しめます。

江戸時代の和綴じ本のような表紙イラストも凝っています。物語の重要な鍵をにぎる女性・朱音が「荒神絵巻」というタイトルに寄りかかっているイラストは、鏑木清方の「一葉女史の墓」を思い起こさせます。「荒神」の悲しい物語性にもあっていますね。

荒神絵巻
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鏑木清方画集
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「荒神」感想→
荒神
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2015.09.30 Wednesday

日本人にとっての「上海」とは。 『魔都上海 日本知識人の「近代」体験』 劉 建輝

魔都上海 日本知識人の「近代」体験』は、幕末から昭和まで「魔都」と呼ばれた蠱惑の都市・上海に日本人がどのように関わってきたかが書かれています。

時代の変遷によって、求められる姿を変えてきた上海。なぜ、こんなにも多くの人が「上海」を目指したのか。その魅力に迫ります。

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幕末から明治にかけての上海


幕末、高杉晋作が上海に渡った話は有名ですが、幕末日本人における上海は、一番近い「西洋」であり、そこから西洋、またはアジアの情勢や情報、最新文化を吸収する役割を持っていたそうです。

当時の上海は、西洋列強が「租界」という名の外国人居留地が設けられ、今も残る外灘(バンド)や、西洋の建物が立ち並んだ、中国の中の西洋だったのです。

明治に入ると、直接西洋に日本人を送ることができるようになり、日本を離れて一旗上げようとする野心家たちか集まりはじめます。


文豪と上海


大正にはいって、上海や、その郊外の杭州の湖水風景を売りに、そのころ発足したばかりの旅行会社から、ツアーが組まれるようになります。JTBができたのもこの頃で、宿泊施設が整備され、観光事業が始まりました。

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その上海旅行の呼びかけに、いち早く飛びついたのが文豪たちでした。谷崎潤一郎は大正時代に2回、上海を訪れ、杭州地方の湖水を楽しみ、上海内山書店の店主・内山完造の紹介により、郭沫若ら中国文化人との交流を楽しみます。谷崎はどちらかと言うと、都市の魅力より、人との交流を楽しんだようです。

逆に、芥川龍之介は、どうも魔都と相性が悪かったらしく、すぐに北京の方にいってしまったのだとか。

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「魔都」上海に魅せられる日本人


やがて、立身出世を願う者たちから、怪しい「魔都」の魅力にとりつかれた者たちが上海へ集まるようになります。

上海に集まるのは、どうも、日本で食い詰め、にっちもさっちもいかなくなった連中や、ヨーロッパへの中継として上陸したものの、金の工面ができずにずるずると長期滞在するものたちです。

特に、金子光晴は「どくろ杯」の中で、上海の独特の匂いについて語っています。旅をするとまず感じるのは、風景でも音でもなく、まず匂いと、体にまとわりつく空気だと思うのですが、そんな「体感」でしか感じられない雰囲気を、金子光晴は見事に描いてくれています。

上海に魅せられた文豪たちによって、私たちは今はなき「魔都」の雰囲気を追体験することができるのです。

どくろ杯 (中公文庫)
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魔都上海関連
「上海セピアモダン―メガロポリスの原画」→
「上海航路の時代―大正・昭和初期の長崎と上海」
上海租界時代の復刻ポストカード→
「そんへえ・おおへえ―上海生活三十五年」→
「グ印亜細亜商会」→

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2015.07.23 Thursday

まんまことシリーズ『まったなし』畠中 恵

今回、NHKでドラマ化もされた「まんまこと」主演の麻之助役の福士誠司さんはじめ、イケメン俳優さんが清十郎や吉五郎を演じてらして、眼福です。そして、まんまことシリーズ5巻め「まったなし」も発売。

今回は、麻之助の親友、八木清十郎の結婚話を中心に、麻之助の初恋の人で、清十郎の義母であるお由有の過去絡みの事件もおき、麻ノ介が友の縁談をどのようにまとめていくかが物語の軸になってきます。

清十郎の縁談が決まると、先代の後添いのお由有さんは再婚し、家をでることが決まっている。

友の結婚は、お由有さんとの別れも伴うわけで、麻之助としては、ちょっと寂しいことでしょうね。

読んでいるこちらからすると、何とか2人が初恋を叶えて、一緒になってくれないかと思うのですが…。

今回は、麻之助の年上の親友である高利貸しの丸三と、その妾のお虎さんも活躍します。高利貸しとして悪名高い丸三も、年下の友達に嫌われたくないと、一生懸命、友のために働く姿がいじらしいというか。

お虎さんも初登場ですが、丸三といいコンビで、すっかり麻之助たちの世話を焼いています。

さて、今後、お由有さんの過去の因縁がどうかかかわってくるか、麻之助がこんどこそお由有さんを守れるかが話の筋になってきそうです。楽しみ。

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ドラマ「まんまこと麻之助裁定帳」


NHKでドラマ化された「まんまこと」シリーズ。シリーズ「ときぐすり」の前半部分までがドラマ化されています。福祉政治さんのひょうひょうとした麻之助、桐山漣さんのイケメン清十郎、趙ο造気鵑涼砲蕕靴さ噺渭困離肇螢が痛快でかっこいい。えなりくんが番頭役でいい味をだしています。




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