2012.12.30 Sunday

北京・上海・台湾、非日常が混ざり合う旅小説 「のろのろ歩け」 中島京子

中島京子さんの「のろのろ歩け」は北京・上海・台湾を舞台に、そこへ旅する女性たちの体験を綴ったロードノベルのような感じです。「感じ」と書いたのは、旅だけじゃなと思ったから。中島京子さんの小説は、日常と、ちょっと不可思議な非日常が織り合わさって、独特の雰囲気を醸し出しているのですが、今回は中国の都市や台湾といった異国が「不可思議」の部分にあたるのでしょう。

実際、中島さんの描かれた中国や台湾は、魅力的でエネルギーにあふれています。北京の高層ビルと庶民的な家が混沌とする道を自転車で走り、上海では1930年台の老上海の面影を街角でみつけ、台湾では何故か懐かしく感じる風景の中、列車で旅するなど、日本では味わえない雰囲気がこれらの都市にあるのでしょう。

北京の春の白い服


1999年、夏美は新しいファッション誌を立ち上げるために、北京を訪れたものの、「北京には春がない」と春服を否定する現地スタッフたちとの交渉は難しく、問題だらけ…。仕事小説なのですが、北京の街の描写がいきいきとしていて読んでいると新しいことが起こりそうな、わくわくした予感が感じられます。


時間の向こうの一週間


少しミステリタッチのお話。夫の赴任に伴い、上海に暮らすことになった亜矢子は、忙しい夫の変わりに、現地スタッフの女性と家探しをすることになる。しかし、現れたのはイーミンと名乗る男性。彼とともに、1930年台の老上海の香りが残る上海の街を探索する。濃密な時間を共有する2人だけれど、イーミンにはある秘密があって…。

亜矢子の現実と夢と空想が交錯しあって、老上海(オールド・上海)の街角に迷い込んだようなお話でした。
この話、「恋する惑星」の撮影監督クリストファー・ドイルが映像を撮ったら、すごくかっこよくてエキゾチックな作品になるだろうな…。そんな想像が膨らむお話でした。


天燈幸福


母親を亡くした美雨は、母の思い出の地・台湾で、母と関わりのあった3人のおじさんを尋ねる旅にでる。美雨はこの3人のおじさんの中に母のかつての恋人がいたのではないかと推測して、訪ねていくのですが、2人のおじさんには否定されてしまいます。

いよいよ3人めとの約束に向かう時、電車の中でおせっかいやきの青年、トニーと出会い、あちこち観光に連れ回されてしまいます。約束の時間に大幅におくれてしまうけれど、美雨はしだいに台湾のゆっくりした時間に馴染んでいきます。ようやく3人めのおじさんに会えると思ったらそこには初老の女性がいて、母との思い出を話してくれます。
おせっかいなほどやさしい台湾の人たち、流暢な日本語を話す老人たち、台湾は、日本人にどこか懐かしく、ノスタルジックを感じさせます。

タイトルの「のろのろ歩け」は中国語で慢慢走(マンマンゾウ)、「のんびり行こう」の意味。ものすごい勢いで街の開発が行われていた北京でも、現地の人たちは変化に対応しつつ、のんびり生きているのかもしれません。

のろのろ歩け
のろのろ歩け
posted with amazlet at 12.12.22
中島 京子 文藝春秋 売り上げランキング: 196,484


「かたづの!」→
「小さいおうち」→
「エルニーニョ」→
「女中譚」→
「冠・婚・葬・祭」→
「花桃実桃」→
「FUTON」→
JUGEMテーマ:読書感想文

レビューポータル「MONO-PORTAL」

2012.07.25 Wednesday

「アルジャーノンに花束を」 ダニエル・キイス

ダニエル・キイスの名作「アルジャーノンに花束を」を読みました。

32歳になっても幼児の知能しかないチャーリイ・ゴードン。そんな彼にあるとき大学の教授たちが、頭をよくする手術をしてくれるという。
物語はチャーリーが書いた経過報告という形で綴られていきます。手術前の報告書は句読点もなく、ひらがなや誤字だらけの文章でしたが、時間がたつにつれ、どんどんチャーリーの文章がうまくなっていき、最終的には学者レベルまで到達します。けれど、手術によって知能を手に入れたチャーリイを待っていたのは、今まで友人だと思っていた人々が自分を笑っていた事実、頭が良くなればなるほど、チャーリイは孤独に陥っていきます。

物語の後半、チャーリイと同じ手術を受けたネズミのアルジャーノンが不可解な行動を起こすようになり、そしてチャーリイも少しずつ獲得した知能が後退してゆく事実に向き合うことに…。

文庫版の冒頭、ダニエル・キイスはこう書いています。
「この本を読んださまざまな人々が、自分自身にチャーリイ・ゴードンを見出す」
と。
実は私も読みながら、チャーリイと自分に共通する部分を感じました。両親は私を愛してはくれましたが、ほんとうは男の子を望まれていました。周りに合わせることが苦手で、いじめられたこともあります。
そうした状況を打破するには、子供心に勉強をして周りを見返せれば、なめられなくなり、両親も期待をかけてくれるのではないかと。確かに知識はある程度蓄えることができましたが、不安は常につきまといます。

チャーリイは、せっかく獲得した知識が消えて行くのを、ただ観ているしかない。もしそんな状態に自分や家族がおかれたら、どうなってしまうのだろう…と考えずにはいられませんでした。

チャーリイはきっと、頭の良くなった半年くらいの間に、他の人が一生かかってもできない体験をしたことをは確かです。物語の終わり、その後のチャーリイの人生が幸せに満ちたものになるようにと、願っています。


アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)
ダニエル キイス 早川書房 売り上げランキング: 809


JUGEMテーマ:小説全般


2012.06.27 Wednesday

「番犬は庭を守る」 岩井 俊二

数々の印象的な映像世界をつくりあげる岩井俊二監督。映画脚本の他に小説やエッセイなども手がけています。
岩井監督の小説「番犬は庭を守る」は椎名誠のSFや映画「スワロウテイル」のような、世紀末的な世界の架空の国が舞台。架空の国とはいえ、今の日本の最悪の未来を暗示しているようですが…。

その国では、メルトダウンを起こした原発が打ち捨てられ、土地も人間も汚染され、生殖能力も著しく低下していいます。その中で生殖能力を持つ人間は「種馬」と呼ばれ、その精子は高値で取引され富を得ることができる。さらに金持ちはブタに自分の内蔵DNAを育てさせ、ファッション感覚で内蔵移植を行うという、生命力による格差社会が生じています。

主人公のウマソーは、生殖器が発達しない「小便小僧」。警備会社に職を得たウマソーは、市長の家に配属される。そこで市長の娘と出会い、奔放な市長の娘に流されるように関係を持つが、自分が「小便小僧」であることを告白できないでいる…。

このあたりから、ウマソーがどんどん落ちていきます。市長の娘との関係がバレて放射能汚染が進む施設に配属になり、侵入する少年たちを威嚇したら逆にリンチを受け、憤りを発散するために通り魔として種馬たちを襲う。

描写もグロく、汚い場面もあるし、ある意味救いようのない話なのだけど、なんでか、ぐいぐい惹きつけられる。
そんな話でした。

女の私には今ひとつ理解できないですが、男にとっての生殖器官は、ただ、行為にのみ使用するものではなく、彼らにとって「それ」は、プライドのや存在を強調するものではないかと。だから、この世界では、生殖能力が富と権力に直結しているため、ウマソーのような人間は、プライドすら持てず、ひたすら虐げられるしかない。

運命と状況に抗いながらも落ちていくウマソー。でも最後は少し救われたのかな。

「ウマソー」という名は、「未来少年コナン」でジムシーが飼っていたブタの名前を思い出させます。そこから名前をつけたんだろうか、だとしたら皮肉というか…。
ブタに自分のDNAを育てさせるというのは、攻殻機動隊S.A.C.シリーズでも出てきたテーマですが、現代でもハツカネズミに人間のDNAを移植させる実験は成功しているらしいので、未来には実現しそうな出来事です。
ただ、こんな未来はいやだけれど。

番犬は庭を守る
番犬は庭を守る
posted with amazlet at 12.06.23
岩井 俊二 幻冬舎 売り上げランキング: 129773


映画エッセイ?「トラッシュバスケット・シアター」→

JUGEMテーマ:映画監督

2012.04.05 Thursday

『老妓抄』 岡本かの子

年々にわが悲しみは深くして いよよ華やぐ命なりけり
作中に書かれたこの歌が好きで、折々に読み返す、岡本かの子さんの「老妓抄」。

岡本かの子さんといえば、岡本太郎さんの母上で、まずその破天荒で壮絶な人生が浮かびます。芸術の神にすべてを捧げ、童女のまま大人になってしまったかの子さん。

その純粋さゆえに夫以外の男性を愛し、家に同居させ、精力的に歌を詠み、小説を書き…。
(ドラマ「TAROの塔」で寺島しのぶさんが演じた岡本かの子がすばらしかった。)

TAROの塔 マーケットプレイスDVDセット 全2巻 第1話〜第4話[最終]セット [レンタル落ち]

中古価格
¥7,777から
(2018/11/12 22:19時点)




そんな破天荒な人生を送ったかの子さんの書く文章は、意外にも派手な装飾を施すのではなく、一言一句、吟味されたことばで物語の世界を構築しているように感じました。これが岡本かの子のいう「芸術」なのかもしれない。

代表作「老妓抄」は、年を経た芸姑が、若い男性の、ひたすらに何かに打ち込む情熱(パッション)を見たいがために、彼の生活のめんどうをみてやります。

そこへ奔放な老妓の養女が関わり、奇妙な関係性がだらだらと続けられます。次第に若い男は情熱を失い、時々は老妓の元を去るのだけれど、関係を完全に絶ち切ってしまうこともできない。

岡本かの子の小説は、読むたびに深くなる気がします。また、自分が年を取って読み返すと、また違った景色がみえてきます。

若い方と話したり、青春映画をみた後は、なんだかワクワクしますもの。それは、自分が成し得なかったこと、見れなかった夢を勝手に託し、彼らの見せてくれる新しい世界を楽しみたいのかもしれない。

老妓の年に近づきつつある今の私が読み返してみると、老妓の気持ちが少しわかる気がします。

老妓抄 (新潮文庫)
老妓抄 (新潮文庫)
posted with amazlet at 12.03.26
岡本 かの子 新潮社 売り上げランキング: 82295


瀬戸内寂聴さんが瀬戸内晴美時代に書いた、岡本かの子の物語「かのこ繚乱」。制作当時、岡本太郎さんをはじめ、まだ当事者が生きていたので、寂聴さんはかのこさんの「恋人」にも取材を行っています。

「かの子繚乱」→

かの子撩乱 (講談社文庫)

中古価格
¥7から
(2018/11/12 22:20時点)




JUGEMテーマ:小説/詩

JUGEMテーマ:小説全般

レビューポータル「MONO-PORTAL」

2010.08.07 Saturday

「金魚生活」 楊 逸

前から読みたかった中国出身の芥川賞作家・楊逸さんの作品です。「金魚生活」は中国の一般女性の恋と家族関係を異国でのカルチャーギャップを交えながら書かれています。

「金魚生活」 あらすじ


主人公の玉玲はレストランで働いている。仕事は金魚の世話。中国では金魚は「ジンユ」、「金余」と発音が同じで、縁起のものとして扱われている。

夫を亡くしたさみしさから不眠症に陥った玉玲を救ったのは店から(死にそうだということで)譲り受けた金魚・黒宝と、不器用で武骨なむかしなじみの周彬の存在だった。周彬の愛情にとまどいながらも彼と同棲することになる玉玲。
やがて玉玲は日本に住む娘・珊々の出産の手伝いで日本へ。言葉も通じず、物価の高い日本の生活にとまどう日々を送る。

そんなとき、娘から「日本で再婚して、日本に住まないか」と提案される。周彬のことを娘に話せないまま、日本人と見合いをすることに。やぼったい同棲相手との生活と金魚の世話と、日本で再婚して娘や孫の近くで暮らす生活。その二つで思い悩む玉玲は…。


なかなか知ることのできない、中国の普通の人々の生活や、心情、そして日本と違う習慣の違いなどが描かれていて興味深かったです。「生の魚(刺身)をたべさせられる」のは、日本ではおもてなし、お祝いですが中国の人にとってはお腹をこわす料理として認識されているんですね…

生活習慣の違いはあったけれど、女性をとりまく恋や打算、悩みなどは、日本も中国もあまり違いはありませんでした。

金魚生活

中古価格
¥7から
(2018/9/28 21:42時点)





楊逸作品感想
「おいしい中国―「酸甜苦辣」の大陸」→

表紙の写真は蜷川実花さん。鮮やかな色合いです。

2010.07.10 Saturday

「星間商事株式会社社史編纂室」 三浦 しをん

社史編纂室という部署は実在するのだろうか。閑職の代表格としてドラマや小説などではたびたび登場するものの、その存在はもはや都市伝説の域に片足をつっこんでいる。そんな「謎」の社史編纂室を舞台にした「星間商事株式会社社史編纂室」。 キーワードは「社史編纂室」「会社の過去の不正を暴く」「腐女子」。一見、脈略のないこれらの要素が、どうやってつながっていくかというと… 主人公の幸代は「腐女子」で、同級生3人で同人活動を続けている。社編は同人活動に最適な閑職のため自ら志願してきた。他のメンバーも失敗や左遷で部署を異動になった人ばかり。ある日、会社でイベント用にコピーをしていたBL小説を課長に見られてしまう。その日から社史編纂の裏の目的である会社が過去に行った不正を暴く作業に巻き込まれることになる。 星間商事は過去、東南アジアの小国・サリメニでの受注工事に関して、伏せておきたい事実があった。 次々と明かされる過去。謎の原稿用紙… はたして幸代は過去の真相に迫れるのか? 同時に間近に迫ったイベントの原稿は間に合うのか? こんな風に書くとサスペンスっぽいですが、どっちかといえば恋愛小説です。そして腐女子の結構リアルな日常をうまいこと描ききったのはすごい。ちょっと特殊に見られがちの腐女子ですが、将来への不安と同人活動のはざまで悩んだり、結婚を期に同人を辞める友人へ寂しさをつのらせたりするのは、普通の女子と変わらないんですよね。 物語の途中に主人公が書いたBL小説や、他の人が書いた文章が掲載されているのも面白かった。(ちょっとウエイト多すぎだけれど)
星間商事株式会社社史編纂室
三浦 しをん 筑摩書房 売り上げランキング: 116783

三浦しをん作品感想

「月魚」→「舟を編む」→「風が強く吹いている」→「きみはポラリス」→「木暮荘物語」→「星間商事株式会社社史編纂室」→「神去なあなあ日常」→「まほろ駅前番外地」→「まほろ駅前多田便利軒」→「まほろ駅前狂騒曲」→「三四郎はそれから門を出た」→
JUGEMテーマ:気になる書籍

2010.07.06 Tuesday

「まほろ駅前番外地」 三浦 しをん

東京郊外・まほろ市で便利屋業を営む多田と、同級生で居候の行天。
生きるのに不器用なおっさんふたりと、彼らをとりまく人々の
現代風駅前人情小説「まほろ駅前多田便利軒」の続編、「まほろ駅前番外地」。
前作に登場した人物たちのサイドストーリーを中心に今回も多田と行天がちょっと普通ではない依頼のお話も。

「星良一の優雅な日常」


ヤクザの星くんは普段は冷徹で計算高いのに、実は健康オタクで、天然の彼女と破天荒の行天(あと母親)にはペースを狂わされがちっていうとこが、なんか可愛らしかった。
人間て一筋縄じゃなくて、いろいろな面をもっているものなんですね。

「思い出の銀幕」


多田が依頼でよく見舞いに行く曽根田のばあちゃんの若いころのロマンス。今じゃ半ボケのばあちゃんにも若いころはいろいろあったようです。ただこの話、当時の映画を貼り合わせたようで、ホントにロマンスの相手がいたかもちょっと疑わしい気もしますが、きっと真相はばあちゃんにしかわからないのでしょうね。


「岡夫人は観察する」


バスの運行が間引きされていると信じて、多田便利軒に一日中バスの運行を見張らせる岡氏とその夫人のほっこりした日常。老夫婦の退屈な生活に多田と行天が関わることで起こるちょっとした変化。がんこな夫になやまされつつも、多田と行天が起こす変化を楽しむ夫人。
こんな老後も楽しいだろうな。と思わせる。

そのほか、行天の過去に関することや、多田の恋愛(?)ちょっと気になる健康野菜販売団体など、気になる要素もちりばめられているので、ぜひ続編を書いてほしいです。


まほろ駅前番外地
まほろ駅前番外地
posted with amazlet at 10.06.27
三浦 しをん 文藝春秋 売り上げランキング: 10052


まほろ駅前多田便利軒
三浦 しをん 文藝春秋 売り上げランキング: 155318


三浦しをん作品感想


「月魚」→
「舟を編む」→
「風が強く吹いている」→
「きみはポラリス」→
「木暮荘物語」→
「星間商事株式会社社史編纂室」→
「神去なあなあ日常」→

「まほろ駅前多田便利軒」→
「まほろ駅前狂騒曲」→
「三四郎はそれから門を出た」→
JUGEMテーマ:小説全般

2010.05.22 Saturday

「笑いの果てまでつれてって」 西田俊也

売れない漫才師がひょんなことから、北海道で漫才をするために北の果てを目指す、お笑いロードノベル「笑いの果てまでつれてって

売れない漫才師、ミナミは稚内で介護士をしている昔の仲間マリから「正月に老人ホームで漫才をしてほしい」と依頼を受け、元バイト仲間の京子を連れて元の相方をさがすことに。

売れない漫才師、ミナミ、元相方でゲイのサカイ。ミナミの父でもとテキヤのハツオ、なりゆきで彼らと行動をともにすることになった京子。
仲間だった漫才師のお笑いグランプリ出場を観るためにテレビ局に潜入、途中車を盗んだり盗まれたり、実家が火事になったりと旅の途中でさまざまなトラブルに見舞われながら、4人は北を目指す。
それぞれが北へ向かう、「本当の理由」を抱えながら…

小説よりも映画向きの話という感じ。
映像ではなんとかなりそうだけれど、小説だと、説明不足で消化しきれない箇所にモヤモヤする。主軸となる「売れない漫才師が北を目指す途中のバタバタ劇」は面白いんですが、最初から登場している旅の仲間、京子が変なところで途中退場したり、いきなりミナミの婚約者がでてきたり、話がまとまらない部分が多かったのが残念。最後の方でいろいろ詰め込みすぎな気もする。

漫才師という職業の光と闇、人を笑わすことの難しさ、仕事のない漫才師の悲哀などが伝わってきたので、お笑いファンとしては彼らの裏側がちょっと垣間見れた気がしてよかった。
この本を読むと、テレビにでている芸人さんたちが厳しい戦いを勝ち抜いてきた人たちなのだと感じます。
だからと言ってミナミとサカイが負け組とも言い難いんですが。
ラストの漫才は、彼らの旅の集大成ともいえる作品で、これはぜひ、実際に映像で観てみたくなりました。

笑いの果てまでつれてって
西田俊也 徳間書店 売り上げランキング: 793249

2010.03.06 Saturday

『まほろ駅前多田便利軒』 三浦 しをん

まほろ駅前多田便利軒」、このタイトルを見た時は「ノスタルジックな駅前人情話」を想像したのですが、中身はだいぶ違いました。東京の周辺都市で便利屋を営むバツイチのおっさんたちと、その周りの人々の物語です。

『まほろ駅前多田便利軒』あらすじ


東京西南に位置する「まほろ市」で便利屋を営む多田は、ある日高校の同級生、行天に再会する。行天は昔から変わった男で、高校時代ひとことしか口を開かなかった。しかし再び会った行天は変人ぷりはかわらないものの、激しく饒舌になり、あれよあれよという間に多田の便利屋事務所件住居に居候することになる。

傍若無人でマイペースな行天は、自らトラブルに首をつっこんでしまい、さまざまな事件にまきこまれることに…

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

中古価格
¥1から
(2018/9/26 21:05時点)




現代風の人情バディ小説


最初のうちはおっさん2人のうだうだとした暮らしぶりや、行天さんの傍若無人ぶりに多少引き気味だったのですが、読み進めるうちにどんどん面白くなってきました。

多田と友達と聞かれたらそうではないし、なんとなくお互いに一緒にいる関係。行天は破天荒で自分をも顧みずに渦中へ飛び込んでいく。それを多田が追いかける。それで結果的には依頼人やその周りの人々のトラブルが解消されていきます。

そんな彼らの周りには、チンピラ、まほろの裏社会を仕切っている青年・星、自称コロンビア人の娼婦ルルなどひと癖ある連中が集まってきます。彼らがまた個性的で面白い。最初敵対していた星くんでさえ、なんだかふたりを気に入っ、あやういながらも友好関係が成立しているし。(^^)


また、多田も行天もつらい過去を背負っています。そんな深い傷をもつふたりが事件やかかわった人たちを通じて過去の傷に向き合おうとするところが「幸福は再生する」というこの物語のテーマなのかもしれません。
最初、タイトルを見て「人情話」だと思ったのは、あながちはずれではなかったようです。

2011年4月、映画公開予定だそうです。松田龍平の行天が観たい!(>_<)

まほろ駅前多田便利軒 スペシャル・プライス [DVD]

中古価格
¥988から
(2018/9/26 21:06時点)




三浦しをん作品感想


「むかしのはなし」→
「まほろ駅前番外地」→
「まほろ駅前狂騒曲」→
「月魚」→
「舟を編む」→
「風が強く吹いている」→
「きみはポラリス」→
「木暮荘物語」→
「星間商事株式会社社史編纂室」→
「神去なあなあ日常」→
「三四郎はそれから門を出た」→

JUGEMテーマ:気になる書籍


レビューポータル「MONO-PORTAL」

2010.01.11 Monday

ママの副業、スナイパー。『ママの狙撃銃』 荻原 浩

『ママの狙撃銃』あらすじ


東京郊外の一戸建てに住む・曜子はガーデニングが趣味で2児の母の、どこにでもいそうな普通の主婦。彼女が普通の主婦と違うのは、アメリカ人の祖父譲りの射撃の腕前から過去にスナイパーをしていたこと。

娘のいじめ問題や、夫の転職問題で頭を悩ませるものの、平凡で幸せな生活を送っていた曜子にある日、「K」という男から電話がかかってくる。Kはアメリカ時代、祖父と仕事をしていたエージェントで、25年ぶりに仕事の依頼をしたいという…

ママの狙撃銃 新装版 (双葉文庫)

中古価格
¥1から
(2018/10/4 17:45時点)




主婦の知恵とスナイパー


最初「ママの狙撃銃」というタイトルを見たとき「シリアル・ママ」のように子供を傷つけた連中に仕返しする話かと思ったのですが、娘のいじめ相手との対決は一部分だけで、ほとんどが曜子さんがスナイパーになった生い立ちや、家族の事情、「仕事」を引き受けるまでの過程がメインでした。

「仕事」のときに分解した銃を食材に紛れ込ませてもちあるいたり、ぬか床に報酬を隠したりする主婦の知恵が生かされているのがおもしろかった。一見意外な組み合わせだけど、読んでいうくうちに主婦スナイパーってなんだか「ありえそう」って思ってしまいました。

母親が自分の子供を守るために他人を傷つけるのは「スタバトマーテル」と似ていますが、私はこっちのお母さんの方が好きです。だって娘をいじめたヤツにショットガンを突きつけちゃうんだもの。いじめ相手がまたむかつくガキだったので、ここの場面、ものすごく痛快でした。

私もいじめ体験があるので、いじめたやつらは痛い目見た方がいいし、なんだったら地獄に堕ちろ、といまでも思ってます。

ちょいな人々

中古価格
¥1から
(2018/10/4 17:48時点)




荻原さんは「いじめ電話相談室」でもいじめ問題をとりあげてますが、いじめられる方は毅然として立ち向かわないと、いじめる方はどんどんエスカレートしてゆきますからね。

その後、曜子さんはスナイパーとしての本能と、借金を背負った家計のためにもう一度「仕事」を受けるか悩むのですが…ラストのオチはちょっと切ない。

家計のためにパートタイムでスナイパーを続けるっていうブラックなオチでもよかったんじゃないかと思う。

「ちょいな人々」→


Calendar

S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< November 2018 >>

オススメ

Archive

Selected Entry

Comment

  • 読者という希少種を、作家と出版社が奪いあう…というSFが読みたい
    日月
  • 読者という希少種を、作家と出版社が奪いあう…というSFが読みたい
    あひる
  • ゴッホを支えた日本人『たゆたえども沈まず』原田マハ
    日月
  • ゴッホを支えた日本人『たゆたえども沈まず』原田マハ
    latifa
  • バリューブックスで古本買取。送料無料で簡単。
    日月
  • バリューブックスで古本買取。送料無料で簡単。
    latifa
  • 「無伴奏ソナタ」 オースン・スコット・カード
    kazuou
  • いよいよ完結『ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~』三上 延
    latifa
  • [映画]箱入り息子の恋
    苗坊
  • BAR追分シリーズ『オムライス日和』 伊吹有喜
    日月

Link

Profile

Search

Other

Powered

無料ブログ作成サービス JUGEM