「一瞬の風になれ 第二部 -ヨウイ-」 佐藤 多佳子

2012.08.20 Monday

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    一瞬の風になれ 第二部 -ヨウイ-
    2年生になった連と新二。陸上のオフシーズンでひたすら練習に明け暮れる日々を送る。1年の時はバテたりサボったりが多かった連もまじめに練習や合宿に参加し、着実に力をつけていきます。
    とはいえ、新二はベストの走りとそうでない時の差が激しかったり、連はスタミナが足りずバテたり、怪我をしたりと、まだまだ未完成の2人です。

    新二は同じ短距離ランナーで、遅くても地道に練習に励む谷口若菜のことが気になっていた。
    ある時、谷口から「中長距離へ転向を進められているけれど…」と相談を受ける。谷口の可能性を信じて背中を押してやる新二。その後、谷口さんとは良い感じになるのですが、部活の顧問三輪先生(みっちゃん)から「部活内では恋愛禁止」の厳命を受けているため、部長となった自分が禁を破るわけに行かない…と、けっこう悶々としている新ちゃん、いやー、青春ですね(ノ´∀`*)

    谷口さんとはその後、プロサッカー選手になった兄・健一の試合を二人で観に行ったりと、いい雰囲気です。とはいえ、恋愛禁止ですし、厳しい練習もあり、谷口さんはライバル校のエースにあこがれていたりと、まだまだ新二くんの恋は前途多難にみえるのですが…。

    「一瞬の風になれ 第二部 -ヨウイ-」は、シリーズで一番大きい展開がありました。
    尊敬する兄・健一が交通事故で靭帯損傷の大怪我を負い、混乱した健一にひどい言葉を浴びせられてしまいます。新二は自分が事故に遭えばよかったと自分を攻め、練習に行かず連や部員たちの声にも心を閉ざしてしまいます。
    けれど、そこで新二の心を救ったのは谷口さんでした。おっとりとした性格の谷口さんですが、いざとなると積極的な行動に打って出ます。谷口さんや部員たちの支えもあり、ようやく部に復帰する新二。

    いよいよ目標の南関東進出に向けて動き出します。

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    佐藤多佳子作品感想
    「第二音楽室」→
    「しゃべれどもしゃべれども」→
    「一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ-」→
    「一瞬の風になれ 第三部 -ドン-」→



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    「一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ-」 佐藤 多佳子

    2012.08.19 Sunday

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      高校陸上競技部を舞台にした青春小説の名作「一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ-」を読みました。
      数年前に読んで今回再読。やっぱり面白い。

      神谷新ニは、天才といわれる高校サッカー選手・健一を兄にもち、中学までサッカーを続けてきたものの、自分の才能の限界を感じたことと、幼なじみの一ノ瀬連に「ボールがないほうがお前はもっと早い」と言われ、連とともに春日高校の陸上部に入部することに。

      ここで新ニは本人すら気づかないスプリンターとしての才能を見出され、走ることに喜びを感じるようになっていきます。ページが進むたびに、新二がどんどん早くなって、どんどん陸上が面白くなってくるのが伝わってきます。

      天才スプリンターだけど、きまぐれな連は、合同合宿のシゴキについていけず逃亡を図ったり練習をサボったりするので、たまに新二を怒らせたりします。(^^;) でも天才肌の連と努力型の新ニ。この2人が影響しあって、加速していく様子は読んでいてほんと楽しいです。

      400mを専門とする根岸や、冷静沈着な先輩・守谷さん、風水マニアの浦木さん、陸上部顧問のみっちゃんなど、彼らを囲む春高メンバーも個性的。特にみっちゃん(三輪先生)は大泉洋のような風貌で、いつも飄々としているけれど、生徒を押さえつけたり、管理したりせず、選手一人ひとりの特性を見ながら指導を行うかなりの名伯楽。

      駅伝を舞台にした小説「風が強く吹いている」(こちらもすばらしい陸上小説です。)でも、才能を伸ばすのに長けたハイジさんという名コーチがでてきますが、選手の個性を活かすには、軍隊方の指導よりも、個性を伸ばす指導が必要なのかも。

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      佐藤多佳子作品感想
      「第二音楽室」→
      「しゃべれどもしゃべれども」→
      「一瞬の風になれ 第二部 -ヨウイ-」→
      「一瞬の風になれ 第三部 -ドン-」→


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      「第二音楽室―School and Music」 佐藤 多佳子

      2012.07.19 Thursday

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        第二音楽室―School and Music」は、音楽と学校をテーマにした短編小説集。舞台も年代も違う、4つの音楽にまつわるストーリー。

        音楽に関する知識はなくても、音の表現や、子供たちの学校生活の描写が楽しくて物語に惹きこまれてい行きます。こうして改めてリコーダーの話などを読むと、学校で習う音楽ってちょっと独特な感じがしますね。

        第二音楽室
        鼓笛隊試験に落ちた小5の6人組はリコーダー担当。ある日リーダー格のルーちゃんが、使われていない屋上の第二音楽室を練習用に借りてきた。そこから第二音楽室が6人だけの秘密基地になった。時々練習をしたり、ふざけあったり、内緒でお菓子やカフェオレを持ち込んだり。
        学校の中の最高の秘密基地。ほこりっぽい古い教室にピアノ。こんな秘密基地があったら最高だろうね。(^^)

        デュエット
        音楽の先生の提案で、好きな男女ペアでデュエットをすることになった中学生の騒動。誰と誰がカップルになるか、告白したり、されたりのドキドキ感が伝わってくる。

        FOUR
        卒業式のイベントとして、リコーダーアンサンブルを組むことになった4人の中学生。大人っぽいアルトの千秋、子供っぽいけれど気になる中原、ノッポのバス担当中澤、ソプラノ担当の私。
        1年を通じて練習を重ね、徐々に4人の音が調和していく様子と、女の子たちの恋愛模様が描かれていて、ドキドキしながら読みました。それにしても中澤くん、気が利かないというか、女子2人の恋愛をその気はなくても水を指してしまうタイミングの悪さったら…(^^;)

        リコーダーにパートごとの種類があることを、この本を読むまで知りませんでした。音楽の授業でなおざりに習っただけのリコーダーがこんなに奥が深いなんて。
        4人が奏でるハーモニーの表現がとても美しかった。他のパートの音が、常に自分の中に存在して寄り添っているって、ハーモニーとして、すごく幸せことだと思います。それだけ、4人の音が融け合っている。そんなハーモニーが、本の中から聞こえてきそう。

        裸樹
        中学2年の時に受けたいじめがもとで学校にいけなくなってしまった「ウチ」。
        しんどい時に児童公園で聞いたアコースティックギターのメロディーと、助けてくれた女性のことが深く胸に刻まれた。その時聞いた「らじゅ」の曲はその時からウチの心の支えになる。
        高校生になってはからひたすら周りに気をつかって、バンドでも自分の意見を言えずにいる「ウチ」の前に、あの曲を弾いていた女性が現れ…。


        一瞬の風になれ」を読んだ時も感じたのですが、佐藤多佳子さんは、等身大の子供たちの目線や話言葉の表現がほんとうにうまい。この4編も時代背景も主人公たちの年齢もさまざまで、そのたびに話し言葉も微妙に違う。
        ただ、「裸樹」の主人公の話し言葉で構成されているせいか、一人称の「ウチ」が連呼されて読んでいてちょっとうざかった。(^^;)まあ、それはオバちゃんの目線で読んでいるせいかもしれませんが…。


        第二音楽室―School and Music
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        佐藤多佳子作品感想
        「一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ-」→
        「一瞬の風になれ 第二部 -ヨウイ-」→
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        JUGEMテーマ:読書感想文

        「月魚」 三浦 しをん

        2012.06.09 Saturday

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          三浦しをん初期の名作(と、私は思っている)「月魚

          過去にトラウマを抱えた幼なじみ青年ふたりの愛と葛藤を、古本屋業という独特の世界を舞台に描いています。

          本屋大賞を受賞した「舟を編む」や読書エッセイ「三四郎はそれから門を出た」を読んだ時も感じましたが、三浦しをんさんは、本当に本とその周りの世界を愛しているんだなあ。

          古本屋と普通の書店は、同じ本を扱っていてもその形態が決定的に違う。
          書店の本はすべて同じ価値だけど、古本は持ち主の思い入れや希少性などによって値段が変わる。それは、本屋というより、骨董店の業態に近いです。

          真志喜と瀬名垣は、幼い日に瀬名垣の過信から、大切なものを失ったため、近づくことも、離れることもできないでいる。

          真志喜と瀬名垣の微妙な関係が好きです。瀬名垣の真志喜への思いは恋愛の情だけれど、真志喜はどうなのかな。

          同性ものはこれくらいの、じれったくて、匂わせる感じがいい。

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          古本屋の市や目録についてはグレゴリ青山さんの「ブンブン堂のグレちゃん」に詳しく描かれています。

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          三浦しをん作品感想


          「まほろ駅前狂騒曲」→
          「まほろ駅前番外地」→
          「まほろ駅前多田便利軒」→
          「舟を編む」→
          「風が強く吹いている」→
          「きみはポラリス」→
          「木暮荘物語」→
          「星間商事株式会社社史編纂室」→
          「三四郎はそれから門を出た」→

          JUGEMテーマ:古本・図書館

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          「風が強く吹いている」 三浦 しをん

          2012.05.12 Saturday

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            たった10人で箱根駅伝目指す弱小陸上部の物語。「風が強く吹いている
            もう楽しすぎて、感想まとめるのが大変でした。読みどころが多すぎます。

            「風が強く吹いている」あらすじ


            高校陸上部で不祥事を起こしたカケルは、お金のないところを大学の先輩ハイジに誘われ、ボロアパート竹青荘に住むことになる。しかし、実は竹青荘は寛政大学陸上部の寮だった。ハイジは自ら才能を見出した他のメンバーたちと共に、「この10人で箱根駅伝を目指す」と宣言。

            リーダー・ハイジの指導のもと、アフリカ留学生ムサ、ニコチャン先輩、ユキ、神童、キング、ジョージ・ジョータ(双子)、王子たちとともに箱根駅伝を目指す…。

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            ・詩的で美しい、走る世界の描写


            特に好きなのは、ユキの走るシーン。普段より加速がつく下りの走路、そのスピードの果てにユキは「走のいつも観ている風景」を体感します。それは美しく心地いいけれど、人間には危うすぎる世界。

            そんな世界の住人であるカケルをユキは「おまえが目指している世界は美しいけれどさびしくて静かだ。生きた人間には、ふさわしくないほどに」とカケルの身を案じます。

            ・竹青荘(アオタケ)での男子寮生活


            詩的で美しい走る世界の描写とは対照的に、竹青荘(通称:アオタケ)での描写は日常的。
            ボロい木造アパートでは、家鳴りがひどいし、大雨が降ると雨漏りしてあちこちに器をおくハメになる。厳しい練習が終わると宴会して、時に意見の食い違いからケンカしたり。時には恋バナで盛り上がったり(以外な人がモテてたり)。

            みんなすごく楽しそうなんですよ。まさに同じ釜の(ハイジがつくった)飯を食い、走ることで気持ちがつながっていくんですね。

            ・カケルとハイジの師弟関係


            走ること以外に無頓着で不器用なカケルはハイジの指導と信頼関係により、スピードや記録以外の答えを探していく。また、ハイジはカケルの走りに自らの探す走りの可能性を見つけ、引き出していきます。お互いがお互いを必要とし、影響し合う様子は時に聖職者ような清廉さすら感じました。

            それにしても、いくら走る事以外無頓着とはいえ、自分の恋心まで気が付かないなんて、どんだけピュアなんだよカケル…Σ\( ̄ー ̄;)

            ・登場人物がみんな違って、みんないい(^^)


            走り方も性格も、まったく違う10人。そっくりの双子、ジョージとジョータもこの駅伝でお互いの道が異なることを感じ、ニコチャンは忘れかけていた陸上への情熱を思い出す。みんな見える景色も駅伝への思いも違う。

            でも、同じなのは、ハイジが目指すものをみんなで叶えようとしていること。どんなに辛くても彼らは走ることをやめない。それは駅伝が「10人が走って初めて完結する」から。

            アオタケ住人のなかでは神童くんが一番好きです。
            風邪で高熱がでて、辛い中でもみんなの精神状態を察して、リラックスさせるように気を配ることができる人。
            何気ない会話なんだけど、彼が話しかけると、みんなの気持ちがほぐれていくの。ムサさんとの友情もいいな。

            [映画] 風が強く吹いている→

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            「神去なあなあ夜話」→
            「月魚」→
            「舟を編む」→
            「きみはポラリス」→
            「木暮荘物語」→
            「星間商事株式会社社史編纂室」→
            「神去なあなあ日常」→
            「まほろ駅前番外地」→
            「まほろ駅前多田便利軒」→
            「三四郎はそれから門を出た」→


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            何度も読み返したくなる恋愛小説 『きみはポラリス』 三浦 しをん

            2012.04.30 Monday

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              三浦しをんさんの恋愛短編小説「きみはポラリス」を読みました。

              しをんさんの恋愛小説には、恋愛の美辞麗句や、女が求める恋愛のファンタジーはない。
              「切なさ」ともどこか違う。

              けれど、読むとどうしても「つかまれて」しまう。
              人間の感情の奥深くにある「思い」が、じわじわと染みてくる感じ。

              これは、何度も読み返したくなる恋愛小説。
              深く深く潜っていけば、もっとたくさんのものがみえてきそうな気がする。

              私が好きなのは「骨片」。おそらく今よりもっと昔の時代設定。
              当時としては珍しく、大学で文学を専攻していた女性が、愛する恩師の死に際してその骨の欠片を手に入れる。
              あるとき、彼女の祖母が亡くなり、その骨壷に先生の欠片を忍ばせた。
              秘めた恋を胸に埋め、それをまっとうさせるために彼女は生きていく。
              やがて死を迎えた時、その狭く暗い空間で先生と同じ場所で眠りにつくときを夢みて。

              「骨片」は田辺聖子さんが小説で引用した西条八十の詩「恋の棺」を思い出させます。
              人知れず埋めた思いというのは、なんでこうも官能的なのだろう。
              直接的な描写は何一つないのに…。

              きみはポラリス (新潮文庫)
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              三浦しをん作品感想


              「むかしのはなし」→
              「月魚」→
              「舟を編む」→
              「風が強く吹いている」→
              「木暮荘物語」→
              「星間商事株式会社社史編纂室」→
              「神去なあなあ日常」→
              「まほろ駅前番外地」→
              「まほろ駅前多田便利軒」→
              「三四郎はそれから門を出た」→

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              「ヒア・カムズ・ザ・サン」 有川 浩

              2012.02.28 Tuesday

              0
                面白かった!有川浩の「ヒア・カムズ・ザ・サン」は、演劇集団キャラメルボックスとのクロスオーバーから生まれた小説で、演劇と小説、それそれが生み出す物語がみてみたい、というある役者のつぶやきから生まれました。
                真也は30歳。出版社で編集の仕事をしている。
                彼は幼い頃から、品物や場所に残された、人間の記憶が見えた。
                強い記憶は鮮やかに。何年経っても、鮮やかに。
                ある日、真也は会社の同僚のカオルとともに成田空港へ行く。
                カオルの父が、アメリカから20年ぶりに帰国したのだ。
                父は、ハリウッドで映画の仕事をしていると言う。
                しかし、真也の目には、全く違う景色が見えた……。

                このたった7行のあらすじから有川浩が書き上げたのは、家族の愛と憎しみと再生の物語でした。

                ヒア・カムズ・ザ・サン
                小説雑誌「ポラリス」編集部で働く真也は「人の記憶が見える」能力で作家の気持ちに寄り添う編集者として好評だが、本人はその実力ではない能力に悩み、同僚のカオルの仕事ぶりに一目おいている。
                カオルの父はヒットしたアメリカ映画の日本人脚本家「HAL」で、20年ぶりに帰国するという。雑誌でHALの特集を組むことになったため、しぶしぶ父親との対面を果たすカオルと付き添いの真也。
                しかし、別の記者が手に入れた「HAL」の写真はまったくの別人だった…。
                脚本家「HAL」の正体についてはちょっとミステリのような展開でした。

                ヒア・カムズ・ザ・サンParallel
                こちらの世界の真也は、カオルとつきあい初めて3年、そろそろ結婚がみえてくる時期。真也はカオルから死んだと聞かされた父親が生きていて、アメリカから帰国するため、一緒に出迎えに行って欲しいと頼まれる。
                急な仕事の都合で、真也ひとりが父親を出迎えることになったが、そこへ現れた父親は、調子がよく、甘ったれで嘘ばかりついているような大人だった。
                けれど、そんなダメ人間な父親がカオルに会いに来たのにはある理由があって…

                作中の「親を諦める」って言葉が印象的でした。親も人間だから、時に子供の心を不用意に傷つけてしまうこともあるんですよ。そういう時は子供側がある程度「諦める」ことをしないと子供は自分を守れないんだよなあ。
                でも、カオルは口では憎しみを吐いても、心のどこかでだらしない父親を信じたい、って気持ちがあるんですよね。

                どちらの父親「HAL」も、カオルに対して深い愛情を持ってはいるのですが、表現の仕方が自分本位で、なかなかカオルに伝わらない。物語の中では真也と「特殊能力」で親子の気持ちをつなぐことができたけれど、親子関係はこじれてしまうと難しいよなあ。


                演劇集団キャラメルボックスの舞台版「ヒア・カムズ・ザ・サン」も、再演されたらぜひ観に行きたい!

                ヒア・カムズ・ザ・サン
                有川 浩 新潮社 売り上げランキング: 5306


                有川浩さんの劇団を舞台とした小説。こちらも実際の劇団とのクロスオーバー企画もあったそうです。
                シアター!
                シアター!2

                演劇集団キャラメルボックス舞台感想
                トリツカレ男
                クロノス・ジョウンターの伝説/南十字星駅で

                有川作品感想


                空飛ぶ広報室
                明日の子供たち
                旅猫リポート
                ほっと文庫 「ゆず、香る」

                クジラの彼
                ラブコメ今昔
                阪急電車
                海の底
                空の中
                レインツリーの国
                三匹のおっさんふたたび
                三匹のおっさん

                キケン
                フリーター、家を買う。
                植物図鑑
                県庁おもてなし課

                JUGEMテーマ:恋愛小説

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                「携帯を盗み読む女」 さとう さくら

                2012.02.11 Saturday

                0
                  気になるフリーター作家・さとうさくらさんの「携帯を盗み読む女 (宝島社文庫)」読了。
                  それにしても、そのまんまのタイトルですね…。(^^;)

                  「携帯を盗み読む女」 あらすじ


                  フリーターの封は、元彼の浮気がきっかけで、人の携帯を盗んではメールの内容を見るのを楽しみとしている。自分をかわいく見せることと、携帯の盗み見みることが封の楽しみで、仕事など他のことはいいかげん。契約社員の花屋でも、テキトーにさぼったり、店長の携帯を時々覗いてみたりする。

                  あるとき盗みすぎた携帯のバイブ音に苦情が来たため、封は隣の古い洋館の庭へ捨てに行くことにした。そこで封は布をぐるぐる巻きに着ているサンダル履きの自称「神様」に出会う。願いを叶えてくれるという「神様(かなりのイケメン)」に、封は「彼氏になってほしい」というと、「神様」はあっさりと封の家にころがりこみ、一風変わった同居生活が始まった…。


                  痛々しくも、愛おしい


                  「神様」の行動がいまいちわからなかったなあ。封の盗んだ携帯を返したとおもったら、ふらりといなくなって他のおばさんのヒモになったり、封の盗みをネタに大金を請求してみたり…。結局この人なにがしたかったんだろう?でも、もしかしたら「神様」自身も自分でも何をしたらいいか、わかってなかったのかもな。

                  封は、世間と自分とのズレを、人の携帯をみることで満たそうとして、
                  「神様」は「神様」を名乗ることで、世間と自分とのズレを隠そうとしたのかもしれない。

                  封も「神様」やぐうぜん友だちになったオカマのグリコちゃん(イケメンなのに口調はブリブリ)たちの出会いや、困難を乗り越えようとすることで、最後はちょっと前向きになったかな。あまり好きではなかったけれど、ちゃんと本気をだしていろんなことに向きあうようになった封は、かっこよかった。

                  さとうさくらさんの描く小説の登場人物たちは、どこにでもいそうだけれど、クセが強い。みんな、自分と世間とのズレをなんとかしようと、暴走したり、キレたり、突拍子も無い行動に出たりします。
                  その様子はリアルで読んでいて痛々しいのだけれど、目が離せなくなるんです。

                  携帯を盗み読む女 (宝島社文庫)
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                  「FUTON」 中島 京子

                  2011.09.13 Tuesday

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                    中島京子さんのデビュー作「FUTON」は田山花袋の「蒲団」をベースに、「蒲団」の主人公の妻の視点から描かれる物語と、現代のアメリカ、日本の人たちが交錯するちょっと不思議なお話です。


                    「FUTON」あらすじ


                    田山花袋の「蒲団」を研究する日本文学教授・デイブは、美しい日系の学生・エミに恋をする。2人の中は順調だったが、奔放なエミは他にも日本人のボーイフレンドを作っており、やがてエミは日本人のボーイフレンドを追って音信不通に。デイブは日本で開催される学会にかこつけて、エミを探しに、彼女の祖父がすむ「鶉町(うずらまち)」を訪れる。

                    一方、90歳になるエミの曽祖父・ウメキチは、画家だという若い女性、イズミから昔の話を聞かせてほしいといわれ、戦時中に愛した女・ツタ子のとの思い出を語り始める…。


                    妻の視点から観た小説、「蒲団の打ち直し」


                    いくつもの話が独立しながら、時に交錯していき、不可思議で心地良い、中島さん独特の世界観を紡ぎだしていきます。この不思議で切ない物語の構成は、デビュー作からつくられていたんですね。

                    アメリカ人の日本文学研究家デイブとエミ、ウメキチとイズミ、そして「蒲団の打ち直し」の主人公と妻。
                    一見、なんのつながりもない出来事が、悲しみや愚かさを纏いながらも、最後にはすとん、とあるべきところへおさまっていくのが心地良かったです。

                    この、「FUTON」の世界観の軸をささえるのが、デイブが妻側からの視点で描いた小説「蒲団の打ち直し」。
                    作中作として登場するのですが、これが面白いんです!( ̄▽ ̄)

                    私は田山花袋の小説「蒲団」を読んだことは無いのですが、この妻視点の「蒲団」は、奔放な女弟子に翻弄される夫を、あきれつつも支える妻の姿が描かれています。夫や女弟子から旧式だと、やや見下されている女性ですが、ヘタレな夫をささえながら彼女なりに精一杯、生活を送っている姿は、明治女性の強さや、しなやかさを感じました。本家の「蒲団」と比較してよんでみたくなります。

                    今まで読んだ中島作品の中でも、かなり面白い作品でした。

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                    しかし、田山花袋の「蒲団」て、結局のところ女弟子が彼氏とやったかどうかについて、みんなで思い悩む話なんだよね。現代じゃ考えられん貞操感だよなあ。

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                    「薔薇の雨」 田辺 聖子

                    2011.06.09 Thursday

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                      田辺聖子さんの短編を読むと、清涼な飲み物を飲んだ時のような爽やかさが残ります。
                      薔薇の雨」は、女ざかりを過ぎようとしている女性たちの愛と葛藤の物語。
                      結構ドロドロとした内容なのに、全然そんな風に感じない。

                      男の可愛げ、女の可愛げ


                      男の人の「可愛げ」を感じられる女性たちだからかもしれません。
                      家の面倒なことを押し付けたり、浮気を繰り返すどうしょうもない男もでてくるのですが、彼女たちは男たちの「可愛げ」というか、魅力みたいなものを見つけるのがうまいんです。それが、他の人にはわからない自分だけの発見であったりすると、なんだか秘密めいてワクワクする。

                      そんなささやかな秘密をもつ彼女たちにもまた「可愛げ」があるのです。

                      また、中には浮気性の夫と気難しい姑に「まあ、ええか」と感情を押さえて仕えてきて、ある日突然、「うわー!」と叫び出して吹っ切れてしまった中年女性の物語「良妻の害について」も痛快でした。ずっと本音を押さえてきたからその反動がすごい。

                      今まで言わなかった本音をバンバン言い、夫の浮気相手の手切れ金を値切りあうシーンなんかは、こっちも読んでいてすーっとしました。(^^)好き勝手してきた旦那サンも、タジタジでした。まあ、ある日突然離婚を切り出されるよりはいいと思わなきゃね。

                      食事とおしゃべり


                      田辺作品の短編にはよく男女が食事をしながらおしゃべりをするシーンがでてくるのですが、ちょっと気の利いたお店で交わされる会話と食事は、いわゆる男女間の営みよりも秘密めいてエロティックなのだけれど、どこか涼やかな感じもします。

                      女が本当に人生で欲しいものは、おいしい食べ物と、可愛げのある男との粋な会話なんじゃないかな。なかなか女と本気で「会話」ができる男性って貴重ですもの。

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