シンゴジラから、この世界の片隅にまで『大人の教養として知りたい すごすぎる日本のアニメ』

2018.02.26 Monday

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    もはやアニメは一部のアニメオタクだけのものではなく、社会に影響を与えるコンテンツとなり始めた。日本のオタク四天王(その中のひとりは庵野秀明)と言われる岡田斗司夫が語る大人の教養としてのアニメ論。

    オタク道を極めたものだけが語るアニメ論は深く、そして面白い!

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    こちらはKindle版。

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    大人の教養として知りたい すごすぎる日本のアニメ』では、誰でも知っている有名なアニメを、ストーリーの深層にある心理的、社会的要因などから読み解いていきます。

    ・シン・ゴジラ
    ・君の名は
    ・風の谷のナウシカ
    ・機動戦士ガンダム
    この世界の片隅に

    どの項目も面白く、ストーリーや登場人物のセリフの裏側にそんな意味があったのか、とおどろかされるものばかり。特に印象深かった「シン・ゴジラ」と「この世界の片隅に」について感想を書いてみました。

    シン・ゴジラ


    なぜ実写映画である「シン・ゴジラ」が「アニメ」なのか。それは映る映像すべてが庵野秀明の意図する演出によってコントロールされているから。そこには役者の「演技」は存在せず、登場人物は演出のプランに合わせた「表現」によって迫力のある映像がつくられるから。

    会議シーンが面白いのは登場人物たちの喜怒哀楽が少なく、無表情での演技にリアリティを感じるから、なんだそう。確かに、日本人てそんなに喜怒哀楽はっきりしてないから、映画の激しい演技に引いちゃうことがあるものな…。

    また、ゴジラによって破壊される建物の倒壊ひとつとっても単にCGの演算表現ではなく、そこに庵野秀明の表現が加わっている。だから、見ている方も心地よい。かっこいい映像に仕上がっている。リアルを超えた虚構を作り出しているんですね。

    シン・ゴジラに関しては巷のオタクの方々が細部にまで(むしろ細部にこそ)こだわった様々な見解を発表してくれていて、そういうツイートを読むのが好きでしたが、岡田さんのシン・ゴジラへの熱意は本当にすごい。そして庵野秀明という人物をよく知っているからこその見解が深い。

    岡田斗司夫ゼミ#137「シン・ゴジラ学、入門編! シン・ゴジラを絶対に見るべき5つの理由と、実はこっそりダメな5つの部分」




    原子力へのメタファー(暗喩)


    「シン・ゴジラ」には表層に現れるもの以外に、さまざまな暗喩が存在します。その代表的なものが「震災時の福島第一原発事故」と「原子爆弾」です。

    シン・ゴジラは放射性物質で人間を攻撃する。それに人類がたち向かい勝利する、それは福島第一原発事故で当時の政府ができなかったことへの問いかけであると岡田さんは読み解きます。

    実際、ツイッター上でも「未曾有の危機に立ち向かって乗り越える様に希望を見出した」と被災者の方つぶやきを見かけました。シン・ゴジラは人智を超えた危機を乗り越える救いの物語の面もあるのかもしれません。

    また、矢口の友人赤坂が「(ゴジラ攻撃に)米に核を撃たせろ」と言うシーンは、それにより核を撃ったアメリカと世界の同情を引き出して復興への足がかりにするべきだという意味で、それには広島・長崎の原爆投下後のアメリカの対応など歴史的な背景があるのだと。

    そう考えると、「シン・ゴジラ」というのは、原子力で傷ついた経験を持つ日本人にしか作れないし、理解できないドラマなのかもしれません。

    実際、アメリカの核に対する知識は薄く、「インディージョーンズクリスタル・スカルの王国」では原子爆弾実験場で冷蔵庫の中に避難した主人公インディーが爆発後もピンピンしてるし、ドラマ「ハワイ・ファイブ・オー5」では核弾頭を海に落として「ワイキキは無事だ!イエー!」とか言っているので、アメリカ人にとっては「ちょっと強い武器」くらいの認識なんでしょうね…。

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    この世界の片隅に、そのすごさの秘密。


    私は当初「この世界の片隅に」のアニメ化に懐疑的でした。原作漫画が完璧なのに、なぜいまさらアニメにするのだろうと。

    しかし、映画を見たらそんな考えは吹き飛びました。号泣もしたし、それよりも「なんだ、これ?」と思ったのです。受けた衝撃の種類がわからない。そんな感じでした。その「なんだかわからないけれど、すごいもの」の正体をうまいこと解説してくれました。
    ほんとうにすごいものを見たら、人はなかなか言葉にできなくなります。

    なるほど、こういうことだったのか。

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    この世界の片隅に

    動きのリアルさ


    「なんだかわからないけれど、すごいもの」の正体のひとつが動きでした。なるほど、たしかにそうかも。ふつうのアニメにくらべて動きが丁寧で、ゆったりとしている。
    これはショートレンジという細かい動きをたくさん加えてつくる技法なのだそうで、これが、わたしたち観客を昭和19〜20年の呉に連れていく装置のひとつとなっているのでしょう。

    すずさんのリアルさ


    他のインタビュー記事でも片渕須直監督がかたっているのが「すずさんを存在させるための徹底したリアルの追求」です。当時の資料を調べ尽くして、原爆が落ちる前の広島の風景を再現し、呉の街を再現してみせました。おそらく、当時の天気なども反映されているのと思います。

    (片渕監督ツイッター「きょうのすずさん」でも当時の天気とすずさんの日常が日記形式で綴られている)

    当時の風景、天気、風俗、日々の出来事(空襲警報とか、訓練とか)が丁寧に描かれていて、映画を見ていくと自分がすずさんと一緒に隣組で「物資が少のうて困る」と頭を抱えている。はっとして現実にもどるけれど、また引き込まれて、すずさんと一緒にいる。そんな気持ちになるんです。

    教養としてのアニメとは


    ストーリー上に現れる表現は実はほんの一部であって、すぐれた監督ほど、その深層に意図を含んでいて、何気ないシーンでそれを表していたります。そこには「虚構」だけではなく、現実の問題や歴史がベースにあったりする。

    表層に現れるわかりやすいドラマ部分だけではなく、監督たちの演出の意図を読み解き、その意味を調べ、考えることが「教養」となるのかもしれません。

    まあ、オタクは言われなくても(言われた以上に)細部を調べてしまうものですが。

    JUGEMテーマ:アニメなんでも



    『眠る盃』向田 邦子

    2018.02.20 Tuesday

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      相変わらずはまっっている向田邦子。『眠る盃』は向田邦子さんの各種雑誌に寄稿されたエッセイ集なのですが、すごいんですよこれが。

      その雑誌が多種多様。名エッセイ『父の詫び状』を発表した『銀座百点』から文春などの文学雑誌から、『anan」、『ジュノン』などの若い女性向けの雑誌、『マダム』から『わたしの赤ちゃん』まで。あらゆるジャンルの傾向にあわせたテーマで書かれているのもすごいけれど、それでいて向田さんらしさが文章からにじみ出ていている。

      そういえば今の作家さんて文芸雑誌以外でエッセイを書くのをあまりみたことがないような。(私が知らないだけかな?)こうして出されるさまざまなお題に対して、肩肘張らず、すうっと入り込める文章を書けるなんて、やはりこの人はすごい。

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      眠る盃


      タイトルにもなった名エッセイ。「眠る盃」とは向田邦子さんが滝廉太郎の「荒城の月」の歌詞「めぐる盃 」を「眠る盃」と勘違いをしていたこと、「自分はよく勘違いをして覚えている」と続くのだけど、面白おかしいのかと思いきや、このあとの文章が実に美しいのです。

      「眠る盃」から連想された話は、昭和の向田家の酒宴の思い出につながり、春の夜、酔客が帰ったあと眠りこけた父親と世話をする母親、父の膳には酒の残った盃が置かれている。まるで詩のように美しい。
      「酒と水とは違う。ゆったりと重くけだるく揺れることを、このとき覚えた」

      以来、日本酒を飲むたびこの一文を思い出しています。


      ツルチック


      アマゾンに旅した際、現地の飲み物で思い出した「ツルチック」なる飲み物。向田さんが幼い頃父親がどこからか手に入れてきたらしい。家族に聞いてもわからず幻の飲み物のようだったが、雑誌に掲載された途端、多くの人から「知っている」との連絡が来た。

      「ツルチック」は「ツルチュク」という朝鮮半島でつくられた飲み物らしいということがわかり、関係者が様々な情報や資料が送られてきた。中には詩人の谷川俊太郎氏もいた。

      というお話なのだけど、驚くのは向田宅に一般の人からたくさんの電話や手紙が送られてきたこと。当時はまだ、個人情報やストーカー規制などがなかったとは言え、絶え間なく電話がかかってくるのは大変だったでしょうねえ…。


      ananに掲載された男性鑑賞法


      向田邦子さんが様々なジャンルの男性を紹介する文章。俳優や脚本家など芸能界の人間はもちろんですが、美術商や馴染みの魚屋まで、登場する男性の職業もさまざま。(実は魚屋さんの人生が一番意外で面白かったりする)
      今だったら絶対企画通らないだろうな…。

      当時のanan読者たちはこんな贅沢な文章が雑誌で読めたのがうらやましい限りです。

      悼む人の仲間入り


      もう40年近くも前に飛行機事故で亡くなられた向田邦子さん。文庫の解説でも名だたる著名人たちがその早すぎる死を何度となく悼んでいます。おそらくファンの方々も何度となくそう思ってきたことでしょう。
      私もまた、その一人に加わりたいと思います。

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      遊牧民のくらしと意外な展開『乙嫁語り10』森 薫

      2018.02.18 Sunday

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        乙嫁語りももう10巻。今回の見どころは「カルルク、修行にでる」と「スミス、トルコに着く」の2本です。
        20歳のアミルと12歳のカルルクの新婚生活と、カルルクの家に居候していたイギリス人スミスを中心に物語はすすみます。

        乙嫁語り10 あらすじ



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        カルルク、修行にでる


        妻アミルの実家、遊牧民ハルガル一族で弓を習うことになったカルルク。もとはといえばハルガル一族がアミルとカルルクの街を襲ったのがきっかけだったのですが、年下のカルルクはアミルを守りたいという思いから、義兄のアゼルに修行をお願いしたんですね。

        いや、カルルクさんこれまでも結構アミルさんを守ってきましたし、アミルさんもカルルクさんのこと好きなんだけどな。それだとカルルクさんのプライドというかメンツが立たないんでしょうね。

        イヌワシを使った狩りや遊牧民の暮らしぶりが森薫さんの緻密な書き込みで描かれます。雪の中での騎馬鷹狩猟の絵は本当にかっこいい。


        ミス、トルコに着く


        乙嫁語り1巻から登場するイギリス人学者のスミス。カルルク家に居候をしていましたが、友人の待つトルコのアンカラへ旅を続けています。

        途中、恋をしたり恋に破れたり、湖では双子の乙嫁に振り回されたり、ペルシャでご厄介になった家の奥様が女の人と結婚したり(姉妹妻)、荷物を奪われたりと、結構いろいろなことありましたがなんとかアンカラへ到着します。

        トルコに着いたスミスですが、イギリスに帰るかと思いきや、また戻ると言い出して友人を呆れさせます。ロシアとトルコの政情が不安定な情勢の中、今しかできない調査をしたいと。

        案内人のアリさんも礼金はずんでくれれば嫌もないようなので、戻るときまった矢先、再会したのはなんと、失恋したと思っていたタラスさん!(゚∀゚)
        うわー、今後の展開どうなるんだろう?元の道を戻ってまたカルルクたちと再会しておわるのかなあ…?

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        森薫作品感想


        「乙嫁語り9」→
        「乙嫁語り8」→
        「乙嫁語り7」→
        「乙嫁語り6」→
        「乙嫁語り5」→
        「乙嫁語り4」→
        「乙嫁語り3」→
        「乙嫁語り2」→
        「乙嫁語り1」→
        森薫さんがつくる「乙嫁語り」レシピ→

        言わずと知れた英国メイド物語
        「エマ(外伝)」→
        エマ以前のメイド物語「シャーリー」→
        「シャーリー2」

        「森薫拾遺集」→


        海野つなみさんの名作『デイジー・ラック』がドラマ化

        2018.02.14 Wednesday

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          ドラマ化された『逃げるは恥だが役に立つ』で一躍有名になった海野つなみ先生。
          しかし、10年来のファンとしては、海野つなみ作品は『逃げ恥』だけじゃない!
          まだまだ面白い漫画がたくさんある!
          と常々主張してきたわけです。

          「逃げ恥」だけじゃもったいない。海野つなみ作品の魅力
          原作「デイジー・ラック」

          そして今回、海野つなみ作品『デイジー・ラック』がNHKでドラマ化されると聞き、ようやく時代が海野つなみに追いついたと。いやー、長かった。『デイジー・ラック』は一度、連載打ち切りにになるなど苦労された作品。

          ようやく単行本になった時のうれしさは忘れられません。

          『デイジー・ラック』あらすじ


          楓、薫、ミチル、えみの4人は幼なじみ。えみの結婚式をきっかけに「ひなぎく会」という名前をつけて月に一度集まっている。楓はパン職人、薫はエステ営業、ミチルはカバン職人、えみは専業主婦。30歳を迎える彼女たちは、仕事や恋愛、家庭などさまざまな悩みを抱えている。

          それでも日々、ときめきを探しながら生きていく4人の女性たちの日常が丁寧に(時にコメディタッチに)描かれます。

          ドラマ化のおかげで新装版が発売されました!

          新装版 デイジー・ラック(1) (KC KISS)
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          新装版 デイジー・ラック(2) (KC KISS)
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          さて、気になるキャストはというと、楓を佐々木希さん、薫を夏菜さん、ミチルを中川翔子さん、えみを徳永えりさんが演じるそうです。って、え?
          しょこたんがミチル?ってことは年下の男子に求愛されるよ?
          しょこたんの相手役・貴大役には磯村勇斗さん。うおー!しょこたんが仮面ライダーに求愛される!ちょ、みたいっ…!

          その他のキャストも発表になりました。
          ・楓(佐々木希)の相手役…鈴木伸之さん(おー!さわやかなイケメン!)
          ・薫(夏菜)の相手役…桐山漣さん(役の俺様っぽいとこがぴったり!)
          ・えみ(徳永えり)の相手役…長谷川朝晴(安定の夫!ハセはこういう役うまいんだよなあ)

          海野つなみさん原作『デイジー・ラック』制作開始!

          可能であれば、ミチル(しょこたん)のカバン職人の大先輩・双子の鶴吉亀吉老人も登場させてほしい…。

          時代が海野つなみに追いついた


          『逃げるは恥だが役に立つ』で描かれた結婚生活についてのアイデアは、実は『デイジー・ラック』で初めて描かれました。しかし、連載当時はまだそうした考えは受け入れられなかったのかもしれません。

          『デイジー・ラック』で専業主婦のえみちゃんが夫に語るセリフです。
          結婚してからずっと「ふたり」を単位に生活を考えてきたんだけど、夫婦だってひとりはひとりって気がついた。
          ひとり暮らしでもどうせ家事はやんなきゃならないし、ついでにもう一人分くらいやってもいいかなって。そう思ったら、なんだか気持ちが楽になって。



          ここへきてようやく、時代が海野つなみに追いついた気がします。
          海野つなみさんのすごいところは、他の漫画では脇役も敵役にも深い人間性を持たせていることなんです。普通の少女漫画では敵役も、意地悪なだけじゃない弱さややさしさも描かれるんです。

          海野つなみ作品の価値に(ようやく)気がついた人たちは、次はぜひとも『回転銀河』を映像化してほしい。
          高校生たちの恋愛オムニバス。さまざまな愛が描かれているのです。胸キュンあり、切なさありです。

          回転銀河

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          JUGEMテーマ:少女漫画全般



          八咫烏シリーズ外伝『ふゆきにおもう』(ネタバレ)

          2018.02.07 Wednesday

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            八咫烏シリーズ外伝『ふゆきにおもう』。『烏は主を選ばない』の主人公・雪哉の出生にまつわる物語です。

            『烏は主を選ばない』から八咫烏シリーズの重要な役割を担ってきた雪哉。一見、明るく飄々としているけれど、俯瞰的に物事をみる目と、明晰な頭脳を持つ少年で、若君からの信頼も厚い。

            そんな彼の能力は、実は2人の母親から受け継いだものでした。

            『ふゆきにおもう』あらすじ


            北領・垂氷郷の郷長の下の息子2人が行方知れずになった。母親の梓は必死で探すものの見つからない。そんな時・息子雪哉とその母親・冬木の噂を耳にした梓は、北本家の姫・冬木のことを思い出す。

            梓は昔、冬木に仕えていた侍女だった。冬木は病弱ゆえ、意地のわるいところがあったが、梓のように気に入ったものや、小さく無垢なものにはやさしかった。そして、俯瞰的に物事を見る目と、明晰な頭脳を持っていた。

            ある時2人の前に垂氷郷の嫡男・雪正が現れた。健康的で誠実な雪正に惹かれた冬木をおもい、梓は雪正と冬木の縁談を申し出る。しかし、雪正が思っていたのは梓の方で…



            2人の母


            『烏は主を選ばない』では、雪哉の母は侍女だった梓と夫雪正へのあてつけとして、無理やりに雪哉を産み落として死んでいった、と語られました。

            けれども、そこには冬木の計算があったのです。ただ純粋に自分の子を生みたい。その思いと梓への信頼。自分が死んだあと梓が雪哉を守ってくれるだろうと。だから2人を恨む芝居を打って雪哉を産み落としたのでした。

            このふゆきの計算高さと、自分の評価より目的を優先する行動力、それが雪哉に受け継がれたのでしょうね。

            『しのぶひと』で雪哉が結婚相手の条件としてあげた「自分に何かあった時頼れる実家があり、夫婦間に恋愛感情を持ち込まないこと」という表現も若宮の影響もありますが、やはり冬木の遺伝なのでは。

            そしてもう一人の母、梓からは思いやりと思いやりを受け継いだ気がします。
            この母がのおかげで、雪哉は垂氷郷でなんとかやっていけたのだし、『黄金の烏』でも相手への思いやりについて教えられています。(その時は暴走しましたが…)



            いよいよ八咫烏シリーズ外伝『烏百花 蛍の章』の発売が決まりました。これまでの短編に加えて書き下ろしも。



            八咫烏シリーズ


            『烏に単衣は似合わない』
            『烏は主を選ばない』
            『黄金の烏』
            『空棺の烏』
            『玉依姫』
            『弥栄の烏』
            外伝『すみのさくら』
            外伝『しのぶひと』
            外伝『ふゆきにおもう』
            外伝『まつばちりて』
            外伝『あきのあやぎぬ』
            外伝『ふゆのことら』
            外伝『なつのゆうばえ』
            外伝『はるのとこやみ』
            外伝『ちはやのだんまり』
            外伝集『烏百花 蛍の章 八咫烏外伝』
            コミカライズ『烏に単は似合わない』

            八咫烏シリーズ外伝『すみのさくら』

            2018.02.03 Saturday

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              八咫烏シリーズ外伝。第一巻『烏に単衣は似合わない』の系列物語。南家の姫・浜木綿の子供時代のお話です。

              『すみのさくら』あらすじ


              浜木綿は南家の姫でありながら、両親が政権争いに敗れて殺されたため山烏として育った過去があり、その際に若宮とも面識があった…というのが『烏に単衣は似合わない』で語られた過去で、では実際にどんな事情があったのか、浜木綿はどんな風に変わっていったのかが描かれます。

              南家当主の姫として何不自由なく育てられた浜木綿でしたが、ある日突然その身分を剥奪され、山寺で暮らすことになる。混乱の中、おじの融が両親を殺したとの噂を聞き、ひとり復讐に向かうのだがあえなく失敗。
              失意の中すごすうち、ある日上皇につれられ若君が寺にやってきて…

              後に浜木綿は自分が生き残ったのは周囲の人達の情があったからこそだと知ります。なるほど確かにこの人の芯の強さは一度地獄をみたからでしょう。

              だからこそ、若君も伴侶として選んだんだろうな。



              いよいよ八咫烏シリーズ外伝『烏百花 蛍の章』の発売が決まりました。これまでの短編に加えて書き下ろしも。



              八咫烏シリーズ


              『烏に単衣は似合わない』
              『烏は主を選ばない』
              『黄金の烏』
              『空棺の烏』
              『玉依姫』
              『弥栄の烏』
              外伝『すみのさくら』
              外伝『しのぶひと』
              外伝『ふゆきにおもう』
              外伝『まつばちりて』
              外伝『あきのあやぎぬ』
              外伝『ふゆのことら』
              外伝『なつのゆうばえ』
              外伝『はるのとこやみ』
              外伝『ちはやのだんまり』
              外伝集『烏百花 蛍の章 八咫烏外伝』
              コミカライズ『烏に単は似合わない』

              JUGEMテーマ:電子書籍

              八咫烏シリーズ外伝『しのぶひと』(ネタバレ)

              2018.01.31 Wednesday

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                人型をとる八咫烏の世界を描いた阿部智里先生の『八咫烏シリーズ』。2018年現在、第一シリーズが完結。さらに次のシリーズが予定されています。

                不思議な八咫烏の世界の描写と、先が読めないミステリ仕立てのファンタジーが魅力の、このシリーズは現在6巻まで刊行されていますが、それとは別に外伝として短編がいくつか出ています。ただし、今現在は電子書籍のみなので、電子書籍を扱うネットショップ等での購入、スマホやPCでの閲覧に限られます。
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                『しのぶひと』あらすじ


                若宮・奈月彦を守るため、地方豪族の次男坊・雪哉は王の護衛「山内衆」の養成学校、勁草院へ入学する。

                物語は雪哉が勁草院にいた第4シリーズ『空棺の烏』の頃のお話。
                端午の祭祀にみごとな弓射を披露した雪哉。若君の正妃・浜木綿の君に仕える女官・真赭の薄(ますほのすすき)は、そんな雪哉の成長を微笑ましく見つめていた。

                しかし、出家している身(実際に尼になるわけではない)とはいえ、かつては若宮のお后候補となるほどの美貌の真赭の薄は、祭祀の際に貴族たちから見初められて縁談が舞い込んできた。彼女の行く末を案じた若宮と浜木綿の君は、ある人物の助言から彼女の縁談の相手に雪哉を指名したのだが…。



                ここからネタバレ感想


                『玉依姫』に至る前のつかの間の平和な日々に、こんなことが起こっていたんですね。実は雪哉と真穂の薄の縁談を助言したのは若君の側近・澄尾でした。
                そのことが後に真赭の薄にバレてこっぴどく嫌われるのですが…。澄尾、不器用だなあ…。

                このあたりのストーリーが『弥栄の烏』へつながっていくわけですね。

                そして澄尾の気持ちを唯一察したのが真赭の薄の弟、明留だったとは。おぼっちゃんと思っていたけれど、なかなかどうして、人の気持ちを察することのできる子なのだな。

                結局、この縁談は真赭の薄が嫌がりお流れになりましたが、雪哉の妻に求める条件が「政治的な選択で裏切るかもしれない、夫婦間の恋愛感情は必要ない。」など、まるでどこかの主みたいな言い草なんですね。

                まあ、彼なりに相手を思っての言葉ではあるのですが、この主従似たもの同士だわ…。

                いよいよ八咫烏シリーズ外伝『烏百花 蛍の章』の発売が決まりました。これまでの短編に加えて書き下ろしも。


                おまけ


                八咫烏シリーズを読むと、阿部智里先生は本当に『十二国記』がほんとに好きなんだろうなあ、と感じます。若君たちが住む中央の山は十二国記の王たちが住む凌雲山に似ているし、今回出てきた端午の祭事で陶器の鹿を撃つ弓射は十二国記『丕緒の鳥』の鳥に見立てた陶製の的を射る儀式・大射を思わせます。

                同じモチーフを使っていても、アウトプットでは全く異なる話になるのがが面白いところですね。

                丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 5 (新潮文庫)

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                八咫烏シリーズ


                『烏に単衣は似合わない』
                『烏は主を選ばない』
                『黄金の烏』
                『空棺の烏』
                『玉依姫』
                『弥栄の烏』
                外伝『すみのさくら』
                外伝『ふゆきにおもう』
                外伝『まつばちりて』
                外伝『あきのあやぎぬ』
                外伝『ふゆのことら』




                JUGEMテーマ:最近読んだ本

                大河ファンタジー「精霊の守り人シリーズ」感想と次の大河ファンタジー予想

                2018.01.28 Sunday

                0
                  2年にも渡って放送された大河ファンタジー「精霊の守り人」がいよいよ完結。
                  見れてよかった、そして物語の多様性について感じ入った、というのが率直な感想です。

                  原作ファンとしては最初はどうなることかと


                  まったく新しい「大河ファンタジー」というジャンルを確立し、それを放送することで、原作ファンとしては最初はどうなることかと思ったものです。なにせ、NHKの番組紹介でもMCの人たちでさえ、ドラマに疑心暗鬼な感じでしたから。(個人的にあのMCは一生許しませんww)

                  それが、圧倒的な映像とアクション、徹底的にこだわった異世界の風俗によって、徐々になじんできたように思います。林先生の「精霊の守り人徹底解剖」などの解説番組なども功を奏したのではないかと思います。これを機に林先生にはテレビでもっと上橋作品を紹介していただきたい。

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                  一連の大きな流れとして


                  ドラマを見てよかったなあと思ったのは、物語が一連の大きな流れとしてつくられていたことです。

                  原作は一つの物語から世界が広がっていき、ドラマは原作が広げた世界観をまとめ、また一つに集約していく感じなんですね。これは、シリーズが完結しているからこそ。

                  特に最終章のカンバル編は原作と大分異なるのですが、思い切って変えたことで次の物語の伏線としてうまく生きたと思います。




                  物語の多様性の面白さ


                  ドラマ化に際して思ったのが「物語の多様性の面白さ」でした。原作「精霊の守り人」から、マンガ、攻殻機動隊の神山健治監督によるアニメ、そして大河ファンタジー。

                  どれひとつとして、同じものはありません。アニメもドラマもそれぞれの表現を極めています。その違い、多様性がすばらしい。人の想像力はこんなにも異なって面白いのだと。

                  芥川龍之介の『藪の中』という小説は、一つの事件につき登場人物たちそれぞれがまったく異なった証言をする物語ですが、こうしたふうに同じ題材でも関わる人が異なれば、全く異なるモノができあがるのは当たり前じゃなかろうかと。

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                  それが実現できたのは、アニメもドラマも原作への深い敬愛があったればこそ。それがないとただの「改悪」でしかありませんから。


                  マンガでは狩人のジンを主人公にしたスピンオフ作品も。

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                  次の大河ファンタジー予想


                  さて、『精霊の守り人』は終わってしましたが、これで終わりではありません。大河ファンタジーという新しいジャンルはこれからも続いていくと思うので、次にどんな物語が映像化されるのか。

                  『精霊の守り人』とともにNHKでアニメ化された上橋先生原作の『獣の奏者』、小野不由美先生の『十二国記』、古代日本をベースにした『空色勾玉』、新進気鋭のファンタジー『八咫烏シリーズ』など。
                  日本には海外にも負けない優れたファンタジー作品が多数存在しますので、これからどんな作品が映像化されるのか楽しみです。

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                  配役ごっこが現実のものに


                  10年前に雑誌ダ・ヴィンチ誌上で「精霊の守り人配役予想」を行ったことがありました。その時は上橋先生もファンも、ごっこ遊びの延長のように楽しんでいました。

                  私自身、小野不由美さんの『十二国記シリーズ』が好きで、よくキャステングを考えたものですが、大河ファンタジーの確立により「ごっこ遊び」が現実のものになるなんて、本当に感慨深い…。

                  ダ・ヴィンチ 2007年 01月号 [雑誌]
                  メディアファクトリー



                  JUGEMテーマ:ファンタジー



                  旅のまとめに無印良品のマチ付きクリアケースが便利

                  2018.01.25 Thursday

                  0
                    旅行に行くとついついもらってしまうのが紙モノ。チラシやパンフレット、観光施設の入場券や食事をしたレストランの箸袋、メニュー表など、どれも見返すと旅の思い出が蘇ります。

                    しかし、そうした紙モノはなかなか整理が難しい。今まではクリアファイルやビニールのクリアポケットに入れていたのですが、紙の厚みでパンパンになるしまって整理しづらいのです。

                    マチ付きクリアケース


                    なんか、見やすくて取り出しやすくて、量の多いパンフレットなどの紙モノをうまく整理できる収納グッズはないものか…と探していたら、偶然通りかかった無印良品にありました!

                    それがこの
                    ポリプロピレンマチ付きクリアケース/A4サイズ・マチ幅約20mm

                    旅行ごとにチラシやパンフレットを入れておきます。こうしておくと取り出しやすいし、透明なので中身が確認できる。特に整理の手間もいらないのがありがたいです。
                    ラベルに年月と旅行先を書いて貼っておけばひと目でわかるので非常に便利。
                    無印マチ付きクリアケースにラベルを貼り分類


                    ポリプロピレンマチ付きクリアケース/A4サイズ・マチ幅約20mm





                    旅行の思い出の整理の他、映画や演劇のちらし、本やマンガのオビなど、まとめてとっておきたい紙モノの整理にも大活躍。一個80円という安さなので、まとめ買いをしておいておけば日常の書類整理に役立ちます。

                    ただ、ちょっとケース自体が薄いので耐久性はどうかな〜?と。それでも単価がやすいので壊れても買い替えしやすいです。

                    ポリプロピレンファイルボックス1/2


                    紙モノを整理したマチ付きクリアケースを収納するのは、ポリプロピレンファイルボックスー1/2/がこれまた便利。

                    通常のファイルボックスの半分の高さなので、いちいちファイルボックスから抜き差しせずに内容がわかるので書類が見つけやすい!

                    ファイルボックスの半分の高さなので値段も安い!まとめ買いしやすい!おすすめです!

                    1/2サイズのファイルボックスでマチ付きクリアケースを収納

                    ポリプロピレンファイルボックス・スタンダードタイプ・ホワイトグレー・1/2/約幅10×奥行32×高さ12cm





                    かみの工作所 旅の標本カード

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                    時間ができたら旅の資料をスクラップブッキングしてみたい。しかし、センスが足りず、いつも失敗するのでこういう講座できちんと学んでからつくりたい…。

                    【無料資料請求】スクラップブッキング認定講師資格取得講座

                    『向田邦子と昭和の東京』川本 三郎

                    2018.01.24 Wednesday

                    0
                      向田作品の根底にあるものはなにか。それを彼女が育った昭和という時代と、東京という文化圏にある。作者の川本氏はそう解説します。

                      昭和ことばに、懐かしい時代をうつす


                      向田作品には印象的なちょっと古い言い回しの言葉がよくでてきます。「べそをかく」「たち」「ご不浄」など。
                      私がすきなのは「こしらえる」(「作る」の古い言い回し)です。

                      「つくる」よりも手間がかかっている気がして。実際、昭和の台所仕事は今よりもずっとたいへんだったので、弁当ひとつとっても「こしらえる」方がしっくりきます。

                      向田作品の昭和ことばは、直接的な言い回しの現代のことばとちがい、やわらかくつつんでくれる。
                      昭和のことばは、向田作品の重要な役割を果たしていました。人に言えない家族の秘密を絶妙なことばでつつむように。

                      向田邦子と昭和の東京 (新潮新書)
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                      食と家族


                      昭和の時代は、漬物をつけたり、梅干しをつくったりと、台所仕事にも年中行事がありました。私も昭和生まれの人間なので、家族で保存食を「こしらえる」思い出を持っています。
                      向田作品には食事はもちろん、それをこしらえるところもよく描かれていました。

                      嫁に行った娘は、婚家にあわせておむすびの形をかえたり、母親の手伝いで白菜をつけたり、今では懐かしい情景です。

                      最近ではそんな季節感を見直す動きもあり、こうした季節の本をよく見かけます。
                      わくわくほっこり 二十四節気を楽しむ図鑑
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                      家族思いの父親


                      向田作品にたびたび登場する父親。苦労して支店長までのぼりつめた、いわゆる昭和の仕事人間ですが、向田エッセイによると「怒りっぽくてすぐどなり、家に会社の人間をよく招いては、家族に負担をかけていた。」とあり、

                      てっきり自己中心的な昭和の父親だと思っていたら、実は子ども思いで教養高く、やさしい父親だったのだとか。向田さんのエッセイでは父親が亡くなる前にテレビでプロレスを見ていた。とありましたが、本当は娘の脚本の番組をみていたそうです。

                      他にも、娘の受験が夢にまででてくるほど心配していたり、なかなか可愛いところがあるお父さんだったようです。
                      そんな父親の影響からか、向田作品では父親の不倫がよくでてくるけれど、家族はそれをどこか容認していることが多い。

                      今のドラマなら噴飯ものでしょうけれど、向田さんは長女で、父親の苦労を身近でみてきたからか「仕事で戦う父親が安らげる場所」が家族以外に求めることに寛容だったのです。

                      新装版 父の詫び状 (文春文庫)
                      向田 邦子 文藝春秋 売り上げランキング: 7,510

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