「名もなき毒」 宮部 みゆき

2013.07.16 Tuesday

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    宮部みゆきさんの現代ミステリ「誰か Somebody」は以前読んでいたのですが、ドラマ化されるにあたり、続編である「名もなき毒」も読んでみました。

    いやー、これは…(;´・ω・)

    面白い、面白いんですよ。実際ページをめくる手が止まらず、読み始めて1日で一気に読んでしまったくらいです。
    けれど、後半くらいから、人の持つ「毒」の効力がじわじわと読んでいる方を締め付けてくるんです。

    杉村三郎は出版社につとめる平凡なサラリーマンだったが、妻・菜穂子が今多コンツェルンの総裁の娘であったため、グループ広報誌を作る広報室に入ることを条件に結婚を許された。前作「誰か Somebody」では義父の運転手の遺族の娘たちと関わることで、図らずも事件に巻きこまれることになりました。

    広報室でアルバイトで雇った原田いずみという女性の勤務態度がひどく、解雇したことで逆恨みをかい、嫌がらせを受けるようになってしまう。三郎は原田いずみの経歴を調べていくうち、元刑事で探偵の北見という男に出会う。北見を通じて、毒物混入事件で祖父を失った女子高生と出会ったことで、またしても深く事件に関わることに…

    毒物混入事件と、自己中な人物からの嫌がらせ、一見関連のない出来事が意外なところでつながっていきます。

    物理的に人を殺せる「毒」と、人の心を蝕んで追い込んでいく「名もなき毒」。その対比が描かれているのですが、私は「名もなき毒」の方が嫌です。

    「毒」であれば注意して避ける事もできそうだけれど、人の悪意はいったん向けられると際限なく相手を追い詰めていくから。原田いずみほどひどくはありませんが、私も毒のある人とつきあいがあったときは、神経が磨り減り、ストレスを抱えたことがあります。

    そういう時は、変な三郎さんのように仏心をださず、逃げて逃げて逃げまくるのが一番です。
    毒の人が他の獲物をみつけるまで。

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    誰か Somebody 感想→

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    本邦初の古書ミステリ。「せどり男爵数奇譚」 梶山 季之

    2013.06.09 Sunday

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      ビブリア古書堂の事件手帖」に登場した古書の世界を描いた日本最初の小説「せどり男爵数奇譚 (ちくま文庫)」を読みました。

      「せどり男爵数奇譚」あらすじ


      ある作家が、若いころに出会った不思議な壮年の紳士に再会。「せどり男爵」と呼ばれるその紳士と親しくなった作家は、彼の生業であり、愛の対象でもある古書の世界で、本の虫に取り憑かれてしまった人々の世界を覗き見ることなります。

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      古書に恋い焦がれる古書マニア


      せどり男爵は頭のきれる、飄々とした紳士ですが、古書を手に入れるためであれば、時には詐欺、恐喝まがいのことも厭わない人物、愛する古書を幼い日に手に入れた美術全集に付けられた口紅の跡から、生身の女よりも古書や浮世絵へエロスをつのらせるという一風変わった人物です。

      「せどり男爵数奇譚」の舞台は70年代から戦前から戦後すぐの時代の話が多く、永井荷風の「ふらんす物語」の蔵書印に隠された暗号、終戦直後、ユダヤ商人との古書のかけひきなど、古書にまつわる謎や事件がたくさんでてきます。

      そして、この本に出てくる古書につかれた人々の所業は、とにかく常軌を逸しているのです。特に、最後の装丁家の話はエログロの極みといった作品で、ちょっと引く…(^^;)

      本のためなら盗みも働く、自分たちの悪事を棚に上げて相手を告訴、果ては貴重な本を自分以外の人間に所有させないため、買い取った途端、燃やしてしまうなど、ビブリオクレプト(盗書狂)たちは、古書自体を性愛の対象として愛憎を注ぎ込んでいきます。この本は「古書とエロス」を描いたという意味でも興味深い作品です。


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      「ビブリア古書堂シリーズ」に登場した古書を集めた「栞子さんの本棚」。せどり男爵数奇譚も抜粋で掲載されています。その冒頭があまりにおもしろかったので、本編を読みたくなりました。本が読みたくなる本です。

      栞子さんの本棚  ビブリア古書堂セレクトブック (角川文庫)
      夏目 漱石 アンナ・カヴァン 小山 清 梶山 季之 坂口 三千代 アーシュラ・K・ル・グイン F・W・クロフツ 宮沢 賢治 ロバート・F・ヤング 国枝 史郎 太宰 治 フォークナー 角川書店 (2013-05-25)売り上げランキング: 1,378


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      音楽描写としてはすばらしい 「さよならドビュッシー」

      2013.03.24 Sunday

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        「このミステリーがすごい!」に選ばれて、橋本愛さん主演で映画化された「さよならドビュッシー (宝島社文庫)」を読んでみました。

        う〜〜〜む、ミステリーというよりは、ピアノに魅入られた女の子とピアノ講師との絆、苦難と再生の物語といった感じですね。そちらはそちらでかなり面白いのですが、残念ながら、前半を読んだだけでミステリの展開や犯人は予想がついてしましました。(しかも、ほぼ当たっていた)

        謎解きよりも、ピアノの音の表現、主人公が度重なる不幸や障害を乗り越えながら、ピアニストの講師とともに、ピアノを極めようとする姿が印象的でした。実際そちらの方にページ数も割かれていましたし。

        主人公の講師となるピアニスト・岬さんの弾くピアノのシーンは、まったく音楽知識がない私でさえ、音が聞こえてくるような感覚が味わえました。主人公が弾くドビュッシーも。ただ、時々変ロ長調とか、専門用語が出てくるので、そういう音楽知識があったらもっと楽しめていたかもしれないと思うと、ちょっと残念。

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        ジョーカー・ゲームシリーズ 『パラダイス・ロスト』 柳 広司

        2012.12.10 Monday

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          旧日本陸軍のスパイ組織・D機関の活躍を描いた『ジョーカー・ゲーム』シリーズ第三弾『パラダイス・ロスト』。スパイたちの繰り広げる頭脳戦は、読むたびに痛快で、ハラハラドキドキさせられます。

          誤算


          フランスへ潜入したD機関メンバー「島野」は、不測の事故で一時的な記憶喪失にかかり、自分の名前も任務も思い出せないまま、レジスタンスたちと行動を共にすることになる。彼らの隠れ家に身を隠すものの、そこにはドイツ兵たちが迫ってきて…。

          しかしさすがはD機関メンバー。相次ぐ誤算が生じた危機に「島野」は冷静に対処していきます。高い能力をもち、特殊な訓練を受けた彼らは、たとえどんな誤算が生じようとも、決して任務をわすれることはないのですね。

          失楽園


          シンガポールのラッフルズ・ホテルが舞台のミステリ仕立てのお話。シンガポール駐在のアメリカ武官キャンベルは、混血の美しい娘・ジュリアと恋に落ちる。しかし彼女にはイギリス人商人・ブラントの殺人容疑がかかってしまう。恋人の無実を証明するため、キャンベルは調査をはじめ、イギリス人将校がこの件に関わっているとつきとめるのだが…。

          「死は隠しておけない」ため、殺人を避けるD機関がどのように殺人事件に関わったのかといえば、ヒーローを自負するアメリカ人をたくみに扇動して動かしていき、必要な情報を本人に知られないままに取得していきます。


          追跡


          D機関設立者にして「魔王」と呼ばれるスパイ・マスター、結城中佐の過去はいかなるものだったのか。イギリス人記者プライスはその謎に迫り、ようやく結城中佐の少年時代を知る人物を探し当てる。「晃」と呼ばれたその少年は幼い頃から頭脳明晰で、人とは違う思考の持ち主だった。さすがはスパイマスター、子供の頃から優秀だったのね(*´∀`*)

          けれどスパイにとって正体を暴かれることは致命的なので、結城中佐の過去が簡単に暴かれてしまっていいんだろうか?と思っていたら、そこには幾重にも張り巡らされたトラップがあったのです。謎を暴いていると思っていたほうが、知らずに罠にかかっていたのですね。


          暗号名ケルベロス 前編/後編


          太平洋を航海する「朱鷺丸」船上で発生した殺人事件。D機関メンバー「内海」はイギリス諜報部員で暗号の専門家マクラウドを二重スパイとして徴用するため、マクラウドに近づくものの、あと一歩のところで毒殺されてしまう。一方船には乗船したドイツ人を尋問するためイギリス海軍が乗り込んでくる。

          不測の事態の中「内海」はマクラウド殺しの犯人とおもわれるコード「ケルベロス」に相当する人物を、「どんな犠牲を払っても探しだす」ことを決意する。

          ある意味密室である船の上での殺人事件。D機関メンバーである「内海」にとって、犯人探しはそれほど難しいことではありません。意外な犯人と動機には驚かされましたけどね…。


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          今回はスパイ活動より、派生した殺人事件のミステリ仕立てが多い印象をうけました。
          『パラダイス・ロスト』以後、日本は真珠湾攻撃を行い、太平洋戦争に突入するわけですが、開戦後のD機関はどうなっていくのでしょう。

          D機関シリーズ
          「ジョーカー・ゲーム」→
          「ダブル・ジョーカー」→
          「ラスト・ワルツ」→

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          「ビブリア古書堂の事件手帖3 〜栞子さんと消えない絆〜」 三上 延

          2012.11.07 Wednesday

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            北鎌倉にあるビブリア古書堂。優れた洞察力で本に関する謎を解く店主・栞子さんと、彼女を支える店員・五浦大輔の周りで起こる古本にまつわるミステリ(と少しの恋愛模様)を描いた「ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)」はシリーズ第三弾。10年前に失踪した栞子さんの母親のことが少しずつ語られていきます。

            第一話 ロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』(集英社文庫)


            今回は古書会館でのセリの様子が描かれています。古書店は買取のほかに、本をセリにだしたり、入札・買取を行います。入札金額の設定も古書業者にとって経験と実力が必要なのだそうです。

            とことがそのセリ市で出品した覚えのない本が残り、そのかわりビブリア古書堂と因縁のあるヒトリ書房が落札した絶版本『たんぽぽ娘』が消えていた。栞子さんの母親を恨むヒトリ書房に、ビブリア古書堂が犯人だと疑われたため、栞子さんと大輔は真犯人を探し出すことに…。

            『たんぽぽ娘』は梶尾真治のSF「クロノス・ジョウンターの伝説」にも登場してました。興味があって読みたいと思っていたのですが、絶版なんですね、残念。

            第二話 『たぬきとイヌとワニがでてくる、絵本みたいなもの』


            第一巻「論理学入門」が縁で知り合った坂口夫妻の妻・しのぶから、タイトルのわからない、絵本のような本を探して欲しいと依頼を受けるが、タイトルも出版社もわからない。しのぶの実家にあるかもしれないが、両親とそりが合わないしのぶは、栞子さんと大輔を伴って実家に戻るが…。絵本を探すうちにきつい物言いの母親としのぶはケンカ別れをしてしまう。しのぶさんが『たぬきとイヌとワニがでてくる、絵本みたいなもの』と表現した絵本が、実は結構有名なキャラクターに関係していたのには驚きました。やがてお互いの心の中を吐き出し、しのぶさんと両親は和解するのですが、それは栞子さんと母親の関係と対比しているようで、ちょっと切ないですね。


            第三話 宮沢賢治『春と修羅』(関根書店)


            本にまつわる事件に関わったことで栞子さんの「古書探偵」の評判が噂になりはじめます。そんな折、栞子さんの母の同級生・玉岡聡子から盗まれた本を取り戻して欲しいとの依頼がきます。『春と修羅』に関するトリックも秀逸でした。まさかそんな価値があったなんて。これだから古本にまつわるミステリは面白いんですね。
            また、古書を遺した聡子の父親は、栞子さんの母親の才能を買っており、家にあった母親の絵は聡子の父親が描いたものだとわかります。この絵は今後キーワードになってきそうですね。

            プロローグ・エピローグ『王様のみみはロバのみみ』(ポプラ社)


            栞子さんの妹、文香は口が軽く、そのせいで過去、栞子が事件に巻き込まれたため、今では思ったことをパソコンに打ち込むことで、おしゃべりを抑えているらしい。日記のようなその文章は姉妹の日常や、ビブリア古書堂の仕事についても触れられています。文香ちゃん、影で大輔のことを「侍従」って。(;´・ω・)。
            実はこの「日記」には秘密があるのですがそれが『王様のみみはロバのみみ』のタイトルとリンクしているんですね。

            ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)
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            3巻まででいろいろな謎が出てきました
            ・なぜ、栞子さんの母親は失踪したのか
            ・なぜ、「クラクラ日記」を栞子さんに遺したのか
            ・栞子さんの母親の謎の出自や写真嫌いというのも何か関連しているのではないか
            ・栞子さんの母親を描いた絵の中の、あじさいの意味は?

            きっとこれらの謎が、栞子さんと母親が再会する鍵になりそうな気がします。

            「ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち」
            「ビブリア古書堂の事件手帖2 〜栞子さんと謎めく日常〜」
            「ビブリア古書堂の事件手帖4 〜栞子さんと二つの顔〜」
            「ビブリア古書堂の事件手帖5〜栞子さんと繋がりの時〜」

            古本屋を舞台にした小説・漫画
            「月魚」(三浦しをん)
            「ブンブン堂のグレちゃん」(グレゴリ青山)
            JUGEMテーマ:注目★BOOK

            「ビブリア古書堂の事件手帖2 〜栞子さんと謎めく日常〜」 三上 延

            2012.11.05 Monday

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              北鎌倉の古書店「ビブリア古書堂」の店主・栞子さんは、膨大な本の知識と洞察力で本にまつわる事件を解決する力を持つ女性です。ただし、極度の人見知りで、本の知識以外の会話がおぼつかない。そんな彼女を支えるのが、とあるきっかけでビブリア古書堂で働くことになった主人公・五浦大輔。大輔はトラウマから本が読めない体質のため、栞子さんから聞く本の話が好きで、彼女自身のことも想っているけれど、「本の虫」である栞子さんには、いまいち伝わっていないようで…。

              今回「ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)〜」では、栞子さんの過去が少し明らかになります。栞子さんには10年前に出奔した母親がいて、彼女もまた栞子さんと同様に本にまつわる洞察力で事件を解決していたらしい、ということがわかってきます。
              栞子さんは出奔した母親に複雑な思いを抱いているらしく、2作目から登場するプロローグとエピローグに登場する本が、今後の物語の流れに関連していくようです。

              ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)
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              第一話 アントニイ・バージェス『時計仕掛けのオレンジ』(ハヤカワNV文庫)


              ビブリア古書堂の常連の女子高生・小菅奈緒が、妹の書いた『時計仕掛けのオレンジ』の読書感想文について相談を持ちかけます。過激な暴力シーンを肯定するような妹の感想文を読んだ栞子さんは、妹が「ほんとうの意味で小説を読んでいない」と結論づけます。この話では子供時代の栞子さんの描写がありますが、本のためなら遠い距離の本屋さんにも自転車を漕いでは通っていたとは…。さすが栞子さん。

              『時計仕掛けのオレンジ』は映画の印象が圧倒的ですが、映画の原作って、実は結末が異なるってこともあるらしいのです。「太陽がいっぱい」の原作も結末が真逆だったりしますから

              第二話 福田定一『名言随筆 サラリーマン』(六月社)


              大輔は元カノ・晶穂から、父親の遺した本の査定を頼まれる。中には数十万の値のつく本もあるらしいが、栞子さんには珍しく、査定に迷いがでているようだったけれど、なんとか査定を終え、晶穂が引き取る価値のない本を新古書店(ブック○フみたいな店)に持ち込むようアドバイスするものの、実はその中にこそ「価値ある本」が潜んでいて…。

              元カノが出てきたことで、栞子さんと大輔の関係がかき乱されたり、進展したりするかなと思いきや、まったくそんなことはなく…( ´Д`)=3 ただ呼び名が「五浦さん」から「大輔さん」に変わったけれど、それは進展て感じじゃないしなあ。

              第三話 足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房)


              ビブリア古書堂に漫画の査定を持ち込んだ客が、査定を待たずに消えてしまう。栞子さんは途中まで書かれた住所や本の状態から、客の居場所を推理します。実は一連の行動はその客が数十年前に彼女の母親が行った推理を再現し、栞子さんの能力を試すためのテストでした。栞子さんはここで足塚不二雄(藤子不二雄)の初期作『UTOPIA 最後の世界大戦』を巡り、彼女の母親の起こした事を知るのですが…。

              プロローグ・エピローグ 坂口三千代『クラクラ日記』(文藝春秋)


              『クラクラ日記』は坂口安吾の奥さんが書いたエッセイ集で、失踪した栞子さんの母親が彼女に残していったもの。
              栞子さんの母親は、かなりキワドい取引も平気でやってのける人だったらしく、それが栞子さんの心のトゲとして刺さっているらしい。『クラクラ日記』にまつわる栞子さんの秘密を解いた大輔は、その勢いでデートを申し込むものの、栞子さんの「行きたいところ」はやっぱり古書店…。これじゃデートじゃなくて買取なのでは…(;´・ω・)

              JUGEMテーマ:注目★BOOK



              「ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち」
              「ビブリア古書堂の事件手帖3〜栞子さんと消えない絆〜」
              「ビブリア古書堂の事件手帖4 〜栞子さんと二つの顔〜」
              「ビブリア古書堂の事件手帖5〜栞子さんと繋がりの時〜」
              ビブリア古書堂シリーズで紹介された本が一冊に「栞子さんの本棚」

              古本屋を舞台にした小説・漫画


              「月魚」(三浦しをん)
              「ブンブン堂のグレちゃん」(グレゴリ青山)

              「ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち」 三上 延

              2012.11.04 Sunday

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                ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)」は北鎌倉の古書店・ビブリア古書堂の店主の栞子さんと、あるきっかけからビブリア古書堂の店員なった五浦大輔が、古書にまつわる事件を解決してゆきます。古書の由来と事件がうまく結びついている上質のミステリでした。

                店のある北鎌倉ってのがまた古書店に似合う場所なんですよ。実際にありそうに思えるのに、でもどこにもない空間。そんな店の奥には美しく、聡明なヒロインが本の謎を解き明かしてくれるんです。

                古書は新書と違い、本そのものに「物語」があります。これまでどんな人に読まれ、大切にされてきたのか、想像するだけでわくわくします。そんな本にまつわる物語を紐解いていくのがビブリア古書堂の店主・栞子さん。
                この女性がまあ、絵に描いたような「本の虫(本オタク)」なんです。
                古書にまつわるエピソードが詳しく、情緒的で、栞子さんの本の話に大輔と同じように惹きこまれていきます。


                第一話 夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店)


                五浦大輔が、祖母の残した本の査定をビブリア古書堂に持ち込むものの店主は入院しており、病院を訪れるとそこにはかつて大輔が店で見かけて気になっていた女性・栞子だった。極度の人見知りで人と話すこともままならない栞子さんだったが、本に関することになると「スイッチ」が入ったように明るく、饒舌になっていきます。そして祖母がのこした漱石全集「それから」に残された署名。本の情報と署名から、祖母の過去の恋が紐解かれていきます。


                第二話 小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)


                ビブリア古書堂で働き始めた大輔は常連であるせどり屋(本を安く手に入れて高く売る業者)、志田から盗まれた本を取り戻して欲しいと相談を受ける。


                第三話 ヴィノグラードフ、クジミン共著『論理学入門』(青木文庫)


                初老の男が『論理学入門』を売りに来たが、その後すぐ彼の妻から「本を売らないで」と連絡が入る。『論理学入門』にまつわる夫婦の話を聞いた栞子さんは、夫が隠している秘密に気づき…。


                第四話 太宰治『晩年』(砂子屋書房)


                栞子さんの怪我は誰かから突き落とされたものだった。犯人は彼女の持つ希少本『晩年』を手に入れるため、じわじわと彼女を追い詰めていきます。栞子さんは本を守るため、大輔は栞子さんを守るため、「罠」を仕掛けます。この最終話は、少し恐ろしい結末でした。貴重な本のためなら、手段を選ばない「本好き」たちの行動にはゾッとします。栞子さんはそんな犯人から本を守ろうとするのですが、その方法は人より本を優先したものだったため、大輔は憤り、ビブリア古書堂を去る決心をしますが…。

                栞子さんの世界は、よくも悪くも本を中心に回っています。それはちょっと危うい感じがします。そんな彼女が、大輔と出会ったことで変わっていくのでしょうか。まあ、今のところ恋愛感情は皆無で、大輔のことは「本の話を聞いてくれるいい人」程度なんでしょうけど。がんばれ大輔…。


                ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)
                三上 延 アスキーメディアワークス (2011-03-25)売り上げランキング: 707


                「ビブリア古書堂の事件手帖2 〜栞子さんと謎めく日常〜」
                「ビブリア古書堂の事件手帖3 〜栞子さんと消えない絆〜」
                「ビブリア古書堂の事件手帖4 〜栞子さんと二つの顔〜」
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                ビブリア古書堂シリーズで紹介された本が一冊に「栞子さんの本棚」

                古本屋を舞台にした小説・漫画
                「月魚」(三浦しをん)
                「ブンブン堂のグレちゃん」(グレゴリ青山)

                古本屋を舞台にした小説・漫画
                「月魚」(三浦しをん)
                「ブンブン堂のグレちゃん」(グレゴリ青山)

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                手に汗握る、スパイゲーム。「ダブル・ジョーカー」 柳 広司

                2012.09.17 Monday

                0
                  旧日本陸軍のスパイ養成所・D機関を舞台にした「ジョーカー・ゲーム」の続編「ダブル・ジョーカー」今回もまた、手に汗握る展開にワクワクしながら読んでいました。いよいよ大戦の影が近づく昭和10年代の世界を舞台に、D機関のメンバーたちが活躍します。

                  「ダブル・ジョーカー」


                  D機関の活躍を快く思わない陸軍は、あらたなスパイ組織「風機関」をたちあげ、双方を競わせようとします。
                  英国とのスパイ活動が噂される、白旗元外交官を調査・逮捕するため、白旗の書生を脅して情報を得た風機関でしたが…。

                  風機関は、スパイ活動に必要なものはとことん利用し、終わったら殺すことも厭わない。殺人は「目立つ」ため、もっとも忌み嫌うD機関とは対局に位置します。

                  でも今回一番すごかったのは、一般人に変装した風機関の正体を見破った女中さんでしょう。風戸中佐は、自分が見下した人間に油断し、まんまとそれをD機関に利用されてしまったわけです。しょせん軍人の凝り固まった価値観では、D機関の敵ではなかったようです( ̄ー ̄)ニヤリ

                  「蝿の王」


                  前線の部隊付き軍医・脇坂は、一方でソ連のスパイとして活動している。ある時D機関によるスパイ狩りの情報をつかみ、逆にスパイ・ハンターを追い詰めようと、慰問の「わらわし隊」の関係者に目を光らせるが、D機関のスパイは意外な場所にいて…。

                  完璧、と思えた脇坂のスパイ活動も、D機関にはすべてお見通しなんですね。さすが。
                  文中、脇坂がソ連のスパイとなった原因が記されていますが「格差社会、政治家の癒着、官僚の保身、真実を語らない新聞」など、現代の問題とほとんど変わらないのに驚きました。戦争と娘の身売り以外は全然変わってないのだなあ…。


                  「仏印作戦」


                  仏印(現在のベトナム)で陸軍の視察に同行した暗号通信技師がD機関の人間と接触し、陸軍にも内密に暗号通信を打つことを依頼される。西欧風な街並み、多国籍な人々、戦前のベトナムは金子光晴の「マレー蘭印紀行」のように、ノスタルジックな雰囲気に満ちあふれていていました。それが緊迫するスパイ合戦の清涼剤のような役割をになっています。

                  また当時の陸軍と海軍の仲の悪さを描写した一幕もあり、それが事件につながっていくわけですが、もう少し双方があゆみよっていれば、もっと戦争が早く終わっていたでしょうに…。

                  「棺」


                  ヒットラー政権下のドイツ。スパイ・ハンターのヴォルフ大佐は列車事故で急死した日本人を調べるうちに、彼にスパイの匂い、それも20数年前「魔術師」と呼ばれた優秀な日本のスパイの感触を感じ、調査を行う。

                  結城中佐が過去、どのようにスパイ活動を行ったかが描かれます。優秀なスパイだった結城中佐が捕まった理由が、本国陸軍からのチクリだったとは。その頃から陸軍て腐ってたんだな!ヽ(`Д´)ノプンプン


                  「ブラックバード」


                  アメリカでのスパイ活動を行うD機関の「仲根」はアメリカ人実業家の娘と結婚し、地域に根づくことに成功する。しかし、日毎につのる日本人排斥の激化、二重スパイの活動など、さまざまな困難が襲う。仲根はそれらの事態にも冷静に対処し、二重スパイの情報漏えいを防ぐことに成功するものの…。
                  戦争の大きな流れは、たとえ結城少佐率いるD機関としても留めることはできなかったのですね…。

                  太平洋戦争勃発後のD機関には、どんな運命が待っているのでしょう。D機関のモデルとなった「中野学校」は戦争末期はスパイ活動よりもゲリラ活動に移行していったようですが。

                  「眠る男」


                  「ジョーカーゲーム」の「ロビンソン」の外伝的なエピソード。「スリーパー」といわれる敵国に潜む工作員、その工作員側からの視点で描いた短編です。
                  自国を裏切ってまで敵国スパイを助けるスリーパー側の事情が語られ、興味深かったです。


                  ダブル・ジョーカー (角川文庫)
                  柳 広司 角川書店(角川グループパブリッシング) (2012-06-22)売り上げランキング: 10579





                  D機関シリーズ


                  「ジョーカー・ゲーム」
                  「パラダイス・ロスト」
                  「ラスト・ワルツ」

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                  引きこもり探偵と友人の絆 「青空の卵」 坂木 司

                  2012.08.30 Thursday

                  0
                    BSでドラマ化された坂木司さんの「青空の卵 (創元推理文庫)」を読みました。
                    過去のトラウマから心を閉ざし、引きこもり生活を続けるプログラマー鳥井と、彼を支える友人・坂木。人を信じられない鳥井は、坂木のみを信じ、彼の開いてくれる窓からしか世界をみれない。平凡な坂木は非凡な鳥井に憧れ、彼が自分以外の人間と交流を持てるように心をくだく。

                    あるとき、買い出しに行ったスーパーで出会った女性・巣田香織との出会いによって、2人は近所で起こる男性へのストーカー被害事件に関わることに。その後も人のいい坂木が助けた人物から事件が展開し、人のことをほうっておけない坂木が困った人に手を差し伸べ、その人物たちが抱える事件を鳥井が聡明な頭脳で解決していきます。

                    青空の卵 (創元推理文庫)」は日常に起こる事件を描いた日常ミステリです。坂木が鳥井がその冷静な判断力で事件を解決し、派手な事件ではない分、関わった人たちの痛みや悲しみ切なさが伝わります。そして彼らとの関わりによって鳥井も少しずつ成長していく。そんな鳥井を坂木はうれしい反面、寂しさを隠せない。事件の展開のほかに、鳥井と坂木、2人の成長と関係の変化がこの物語の魅力ですね。

                    純粋で傷つきやすい子どもの心と、大人の理知的な部分を併せ持つ鳥井。人に対してはぶっきらぼうな口を叩くくせに、坂木が悲しむと、鳥井はこちらがびっくりするほどうろたえてしまう。
                    坂木は自分は非凡な人間で、鳥井がいるからまっすぐでいられるというけれど、鳥井があれだけ信頼し、依存できるのは坂木が持っているものもまた、非凡ではないと思うのです。

                    2人の関係は友情と呼ぶには深すぎるし、恋情と呼ぶには純粋すぎる、一番近いのは「野生動物と飼育員」もしくは「赤ちゃんと僕」かな(^^)

                    作中、みんなで食卓を囲む、何気ないシーンがすきです。鳥井のつくる料理や名産お菓子がおいしそうで。(^^)
                    特に高校時代の友人滝本とその後輩の小宮が「雑煮つくってくれ!」と押しかけてきたところがお気に入りです。事件を通じて知り合った栄三郎老も加わって、賑やかにお正月をすごす。家族の団欒をしらない鳥井にとってなによりの「ごちそう」なんだろうな。本人は認めないだろうけど。


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                    「ジョーカー・ゲーム」 柳 広司

                    2012.08.29 Wednesday

                    0
                      旧日本軍のスパイ学校・D機関を舞台にしたスパイミステリ小説「ジョーカー・ゲーム」読了。

                      いやー、面白かった!痛快なミステリ仕立てのこのスパイ小説は、ドキドキハラハラしながらページをめくる手が止まりません。私の大嫌いな戦前の軍国主義的空気はほとんどなく、逆に固定概念にとらわれないことが信条のD機関は頭脳ゲームを駆使して二重三重に張り巡らされたスパイゲームを解いていきます。

                      「ジョーカー・ゲーム」に収録された短編は、D機関のスパイが潜入し情報を得るものや、当初、D機関と関わりをもたない人物からの視点で語られる話など、バリエーションに富んでいて飽きさせません。

                      「ジョーカー・ゲーム」


                      D機関設立直後の話。陸軍から出向の佐久間の視点で語られる。親日家ゴードンを宅をスパイ容疑で家宅捜索することになった佐久間とD機関メンバー。それは彼らを陥れるための陸軍大佐・武藤の仕掛けた罠だった。証拠をつかまなければ窮地に陥るD機関のとった行動は…。

                      「なにものにもとらわれない」を信条にするD機関は、憲兵隊の「盲点」をついた捜査はさすが。

                      「幽霊(ゴースト)」


                      用心テロ暗殺計画が発覚し、英国総領事グラハムに疑いがかかる。D機関はテイラーの職員・蒲生次郎になりすまし、グラハムの身辺を調査するが、決定的な証拠が見つからない。そこで蒲生は書斎に潜入し、証拠を探るのだが…。

                      D機関メンバー側からの視点。協力者をつくるため、相手の弱点をつかみ、相手に応じて協力の内容を変化させてゆく、たくみな心理戦がすごい!

                      「ロビンソン」


                      英国での調査中、英国情報部に拘束されるD機関メンバーの「伊沢」。自白剤を打たれ、極秘事項である暗号文通信でニセの情報を送らされる。隙をみて逃走を試みるが、敵側のフェイクに絶体絶命の危機に。

                      その時、上司の結城中佐から渡された「ロビンソン・クルーソー」の話からヒントをつかみ、再び脱出を試みる…。

                      D機関では敵国諜報部員に拘束された時の対処法も伝授されており、そこには敵に明かして良い秘密と、そうでない極秘事項は脳へのインプット方法も計画的に行われる。


                      「魔都」


                      上海憲兵隊に配属となった本間は、上司の及川大尉から内部通告者の調査を依頼される。その時、及川大尉の自宅が爆弾テロの標的となり、調査をすすめるうちに本間は陸軍のスパイ組織・D機関が事件に関わっているのではないかと聞かされる。

                      D機関のメンバーを追ううちに本間は魔都・上海の姿とそこに魅入られた人々の陰謀に巻き込まれることに…。

                      「XX(ダブルエックス)」


                      ドイツ人記者のダブルスパイ容疑を調査中、対象者が殺害されるという事件が起こる。担当者飛岬はスパイに「あってはならない」出来事を結城少佐へ報告と指示を仰ぐ。殺人事件の捜査という形式をとりつつも、D機関のメンバー・飛崎の過去と事件との意外な関連性を表した話。

                      特に「魔都」がお気に入りです。当時の上海は「魔都」と呼ばれ、退廃的な空気に満ちた都市でした。アヘン、賭博、秘密結社、美しく怪しげな女性や少年たち…。そんな魔都の描写と、魔都に魅入られ、落ちてゆく人々の様子が描かれていて、当時の都市の雰囲気が伝わってくる。上海はD機関メンバーに似合う街です。

                      魔都・上海についてはこちら
                      「上海モダンの伝説」
                      「上海セピアモダン」

                      D機関は有名な陸軍中野学校がモデル。ちなみに小野田少尉は中野学校の分校出身。「死をもって名誉となす」よりも「生きて任務をまっとうせよ」との教育を受けていたため、生き残っても戦っていたらしい。

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                      『ジョーカー・ゲーム』は2016年アニメ化、NHKのベストアニメ100で12位に選出された、原作を生かしてクオリティの高いアニメとなっています。

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