「荒神絵巻」 こうの史代 宮部みゆき

2015.11.02 Monday

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    宮部みゆきさんの小説「荒神」は、江戸時代、架空の村を舞台にした、時代小説と、ホラー、ファンタジーの要素を合わせ持つ不思議な物語。

    もともと『荒神』は新聞に連載されていた小説なので、毎回あらすじに沿ってこうの史代さんによるすてきな挿絵がつけられていました。

    しかし、単行本化するにあたり、そうした挿絵は文と切り離されてしまいます。

    それは、あまりに残念だということでしょうか。『荒神絵巻』は『荒神』の別冊のようなかたちで、こうの史代さんの絵と『荒神』の抜粋された文章が楽しめます。

    江戸時代の和綴じ本のような表紙イラストも凝っています。物語の重要な鍵をにぎる女性・朱音が「荒神絵巻」というタイトルに寄りかかっているイラストは、鏑木清方の「一葉女史の墓」を思い起こさせます。「荒神」の悲しい物語性にもあっていますね。

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    「荒神」感想→
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    日本人にとっての「上海」とは。 『魔都上海 日本知識人の「近代」体験』 劉 建輝

    2015.09.30 Wednesday

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      魔都上海 日本知識人の「近代」体験』は、幕末から昭和まで「魔都」と呼ばれた蠱惑の都市・上海に日本人がどのように関わってきたかが書かれています。

      時代の変遷によって、求められる姿を変えてきた上海。なぜ、こんなにも多くの人が「上海」を目指したのか。その魅力に迫ります。

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      幕末から明治にかけての上海


      幕末、高杉晋作が上海に渡った話は有名ですが、幕末日本人における上海は、一番近い「西洋」であり、そこから西洋、またはアジアの情勢や情報、最新文化を吸収する役割を持っていたそうです。

      当時の上海は、西洋列強が「租界」という名の外国人居留地が設けられ、今も残る外灘(バンド)や、西洋の建物が立ち並んだ、中国の中の西洋だったのです。

      明治に入ると、直接西洋に日本人を送ることができるようになり、日本を離れて一旗上げようとする野心家たちか集まりはじめます。


      文豪と上海


      大正にはいって、上海や、その郊外の杭州の湖水風景を売りに、そのころ発足したばかりの旅行会社から、ツアーが組まれるようになります。JTBができたのもこの頃で、宿泊施設が整備され、観光事業が始まりました。

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      その上海旅行の呼びかけに、いち早く飛びついたのが文豪たちでした。谷崎潤一郎は大正時代に2回、上海を訪れ、杭州地方の湖水を楽しみ、上海内山書店の店主・内山完造の紹介により、郭沫若ら中国文化人との交流を楽しみます。谷崎はどちらかと言うと、都市の魅力より、人との交流を楽しんだようです。

      逆に、芥川龍之介は、どうも魔都と相性が悪かったらしく、すぐに北京の方にいってしまったのだとか。

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      「魔都」上海に魅せられる日本人


      やがて、立身出世を願う者たちから、怪しい「魔都」の魅力にとりつかれた者たちが上海へ集まるようになります。

      上海に集まるのは、どうも、日本で食い詰め、にっちもさっちもいかなくなった連中や、ヨーロッパへの中継として上陸したものの、金の工面ができずにずるずると長期滞在するものたちです。

      特に、金子光晴は「どくろ杯」の中で、上海の独特の匂いについて語っています。旅をするとまず感じるのは、風景でも音でもなく、まず匂いと、体にまとわりつく空気だと思うのですが、そんな「体感」でしか感じられない雰囲気を、金子光晴は見事に描いてくれています。

      上海に魅せられた文豪たちによって、私たちは今はなき「魔都」の雰囲気を追体験することができるのです。

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      魔都上海関連
      「上海セピアモダン―メガロポリスの原画」→
      「上海航路の時代―大正・昭和初期の長崎と上海」
      上海租界時代の復刻ポストカード→
      「そんへえ・おおへえ―上海生活三十五年」→
      「グ印亜細亜商会」→

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      まんまことシリーズ『まったなし』畠中 恵

      2015.07.23 Thursday

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        今回、NHKでドラマ化もされた「まんまこと」主演の麻之助役の福士誠司さんはじめ、イケメン俳優さんが清十郎や吉五郎を演じてらして、眼福です。そして、まんまことシリーズ5巻め「まったなし」も発売。

        今回は、麻之助の親友、八木清十郎の結婚話を中心に、麻之助の初恋の人で、清十郎の義母であるお由有の過去絡みの事件もおき、麻ノ介が友の縁談をどのようにまとめていくかが物語の軸になってきます。

        清十郎の縁談が決まると、先代の後添いのお由有さんは再婚し、家をでることが決まっている。

        友の結婚は、お由有さんとの別れも伴うわけで、麻之助としては、ちょっと寂しいことでしょうね。

        読んでいるこちらからすると、何とか2人が初恋を叶えて、一緒になってくれないかと思うのですが…。

        今回は、麻之助の年上の親友である高利貸しの丸三と、その妾のお虎さんも活躍します。高利貸しとして悪名高い丸三も、年下の友達に嫌われたくないと、一生懸命、友のために働く姿がいじらしいというか。

        お虎さんも初登場ですが、丸三といいコンビで、すっかり麻之助たちの世話を焼いています。

        さて、今後、お由有さんの過去の因縁がどうかかかわってくるか、麻之助がこんどこそお由有さんを守れるかが話の筋になってきそうです。楽しみ。

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        NHKでドラマ化された「まんまこと」シリーズ。シリーズ「ときぐすり」の前半部分までがドラマ化されています。福祉政治さんのひょうひょうとした麻之助、桐山漣さんのイケメン清十郎、趙ο造気鵑涼砲蕕靴さ噺渭困離肇螢が痛快でかっこいい。えなりくんが番頭役でいい味をだしています。




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        「ときぐすり」→
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        「こいわすれ」→
        「まんまこと」→

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        ショート・ショート時代小説 「ならぬ堪忍」 山本周五郎

        2015.06.10 Wednesday

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          山本周五郎の「ならぬ堪忍」読了。もともとBS11の本紹介番組「すずらん本屋堂」のショート・ショートSHOWという企画で紹介された短篇集です。

          時代小説でショート・ショートって、珍しいなと思い読んでみると、ああ、なるほど、こういうことになるのかと納得。短い文章の中に武士の生き様が描かれています。

          その他にも、情よりも武士としての建前をとるもの、人のために自分を犠牲にするものなど、様々な武士の生き様が描かれています。


          「ならぬ堪忍」あらすじ


          とある藩。大六という少年が、重助という相手との諍いから、決闘にまで発展する。決闘を決意した大六に、叔父の又十郎は、「侍の命は君主に捧げたもので、私事で捨てるものではない。」と諭すのだが、大六は聞き入れない。

          そこで又十郎は、大六に、内密だが、近々戦があると打ち明ける…。

          時勢に流されない、山本周五郎の思い


          「ならぬ堪忍」は昭和20年に書かれました。私情に流されず、主君のために命をささげるのを良しとする戦意啓発の物語ですが、一方で「命を粗末にせず、大事の時まで生き抜け」とも書かれています。

          おそらく戦時中の人が読むと「主のために命を捧げる」が主で、現代人が読むと「命を粗末にしない」という点に重点が置かれるのではないでしょうか。

          他の小説も、戦時中に書かれたにしては、無闇やたらに命を捨てさせる戦意高揚というより、武士道を通じて、どう生きるかを説いた物語が多く、制約の中でも山本周五郎の反骨の心意気が感じられます。


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          こちらも番組で紹介されたショート・ショートを集めた「極短小説
          「SHORTEST STORIES」を、「極短小説」と訳したのは洒落がきいていますね。

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          勧善懲悪のない、大魔神。「荒神」 宮部 みゆき

          2015.05.19 Tuesday

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            宮部みゆきさんの「荒神」読了。いや、すさまじい話でした…。時代物、ホラー、ミステリ、ヒューマンドラマが、相反することなく見事に交わり、壮大な物語が織り上げられた感じです。例えるなら、勧善懲悪のない「大魔神」かな。

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            荒神 あらすじ


            享保の頃、東北のある地方。小平良山の麓の仁谷村で、村民が襲われ、生き残ったものも隣の永津野藩へ逃げ込むという事件が起きる。永津野は香山の主筋にあたるが、香山の民を狩り、非道を行っていた。そんな永津野へ村民が逃げるのは、どれほどの理由があったのか。

            香山藩の若君暗殺の疑いをかけられ、城下を追われた元小姓・直弥は、原因究明のため、小平良山へ向かう。

            一方、永津野藩で鬼と恐れられる曽谷弾正の妹・朱音は、養蚕振興のため、国境の名賀村へ移り住んでいた。兄と違い心優しい朱音は、ある時、怪我をした子供を拾う。実はその子供は、隣の香山藩の子供・蓑吉だった…。

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            勧善懲悪のない、「大魔神」のような物語


            村を襲った化け物のは「何」なのか、若君の暗殺、間者の暗躍…。香山、永津野、両側の視点から交互に描かれていき、物語の後半、個々に展開していた物語が一気に交わり、最後まで息もつかせぬ展開になっていきました。


            「荒神」を「大魔神」みたいだな、と思ったのは、圧政に耐え忍んでいた人々が「人外」の力を頼む。結果、荒ぶる神は、敵も味方もなく暴れて手が付けられなくなり、美しい娘の、清い心によって怒りを鎮める。「荒神」も、大筋だけだと「大魔神」と似ているのですが、そこは宮部みゆきさんですから、いろいろな人の思い、いいものも悪いものも、全てを含めた、深い深い物語になっています。

            孤宿の人」を読んだ時も思ったけれど、ちかごろの宮部みゆきさんの時代物は、こういっちゃなんだが情け容赦がない。

            ちなみに、大魔神はこちら。おっかないんですよ…。

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            人の業


            「荒神」は、敵対する香山と永津野、両方の住民の視点から描き、そこへ蓑吉という香山側の少年が、敵側の永津野に投げ込まれることで、双方の言い分や立場が見え始めます。

            お互いに憎みあってはいるけれど、どちらの村人も、思いやりのある人々なんです。それが差別や偏見、圧政によって歪んでしまう。強大な力の前には、協力しあってことにあたればいいのに、そんな理想論は起こらず、曽谷弾正に至っては、己の野望のために怪物までをも利用しようとする。

            そんな、圧倒的な力の中でも、屈することなく、小さな勇気と、知恵を絞りながら抵抗する人々もいます。
            恐ろしく強大な絶望のあとには、残された希望はほんの一握り。それでも、それでも、前を向いていくしかない。

            切なく、悲しい話でした。

            朝日新聞連載中に描かれた、こうの史代さんの挿絵が本になった「荒神絵巻」こういうのは嬉しいですねえ。
            連載中の挿絵って、本になってもみたいですもの。

            荒神絵巻→

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            ドラマ 荒神


            「荒神」はNHKでドラマ化されました。朱音と弾正の永津野藩側からの視点で描かれています。平岳大さんの弾正が悪なんですが、魅力的でした。平岳大さんは本当に魅力的な悪役がうまい。

            スペシャルドラマ「荒神」


            「ケルトの白馬」 ローズマリー・サトクリフ

            2015.04.15 Wednesday

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              2015年本屋大賞を受賞した、上橋菜穂子さんにも影響を与えた、イギリスの作家ローズマリー・サトクリフ「第九軍団のワシ」を読んで以来、ローズマリー・サトクリフの描く物語の世界に惹かれています。

              「ケルトの白馬」は、「第九軍団のワシ」から200年くらい前のお話。イギリスに残る「アフィントンの白馬」の遺跡をモチーフに、その地に住むケルト人、イケニ族の若者・ルブリンが丘陵に「アフィントンの白馬」を描くまでのエピソードが描かれます。

              私はもともと、ケルトの紋様のデザインが好きでしたので、そうした紋様をつくった人々の話にも興味がありました。紀元前のイギリスでそれらの紋様は、どのように生まれ、かたちづくられていったのか。

              ローズマリー・サトクリフは、実在する出土品や遺跡から、それらを作り、使った人々の物語を紡ぎだすのが本当にうまいんですよ。まるで、歴史そのものを垣間見ているような気持ちになれます。

              「第九軍団のワシ」ほど、長くないので、さくっと読めます。

              「ケルトの白馬」あらすじ


              族長の息子、ルブリンは、幼いころから自然や動物が、作り出すかたちに興味をもち、独特の感性で描き残すことを好んだ。また彼は親友のダラとともに、商人から伝え聞いた北の大地と、先祖の冒険をなぞらえて、いつかの冒険に出ることを夢みていた。

              しかし、ダラが妹の夫として族長の継承者となり、一族もまた、南からの部族によって壊滅的被害を受ける。奴隷となったルブリンは、敵の族長にかけあい、丘に巨大な馬の姿を描くことで、一族を開放しようと試みる…。

              ケルトの氏族


              ルブリンが属するイケニ族は、馬の放牧を行う種族で、馬の女神をまつり、一族の長の継承者は女性。世継ぎの姫と結婚したものが族長となる、女性の血統が重視されています。他にも、吟遊詩人や賢者(ドルイド)なども登場し、まるで、ファンタジーの登場人物のようでした。



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              私がはじめてケルト人を知ったのは、このマンガでした。

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              ローズマリー・サトクリフ作品
              『第九軍団のワシ』→
              『ローマとケルトの息子』→

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              ローマ時代のイギリス冒険譚。「第九軍団のワシ」 ローズマリー・サトクリフ

              2015.02.01 Sunday

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                ローマ時代のイギリス冒険譚「第九軍団のワシ」を読みました。大好きな「精霊の守り人」の著者、上橋菜穂子先生が著作やインタビューで何度も取り上げられていたのがこの本です。

                読んでみて思ったのは「子どもの頃に読みたかった!」です。しかし、その反面、おとなになった今だからこそ、培ってきた経験値で物語の風景や状況が想像でき、より深く、物語の世界を楽しめました。

                「第九軍団のワシ」あらすじ


                紀元前100年頃のローマ時代。ブリテン島(今のイギリス)では、カレドニア(スコットランド)以外の土地はローマの支配が進んでいた。百人隊長としてブリテンに赴任したマーカスは、地元の氏族との戦いで負傷し、軍を退役する。

                やがてマーカスは、身を寄せていた叔父のもとで、かつて父親が所属し行方不明となった第九軍団と、その象徴である<ワシ>の噂を耳にし、叔父の友人である司令官に、<ワシ>の探索を願い出る。
                奴隷剣闘士として殺される運命にあったエスカを救い、旅の道連れとしたマーカスは、ローマの支配が及ばないカレドニアへ向けて旅立つのだが…

                第九軍団のワシ (岩波少年文庫 579)

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                ファンタジーのような歴史小説


                カレドニア(スコットランド)、ヒルベニア(アイルランド)など、ローマ時代のブリテン(イギリス)の古い呼び名は、異なる異世界のようでした。それだけでも異世界っぽいのですが、あまりなじみのないローマ時代のイギリスは、今のイギリスとは全く違う世界のようでした。


                体感することのできる文章


                小説の中には、読者がまるで、その世界に入り込んだような錯覚をおこさせるものがありますが、ローズマリー・サトクリフの文章はまさに、体感できる小説です。

                前半、氏族との戦いでの雨の質感、丘をわたる風のここちよさ、カレドニアの氏族の聖地の暗闇、逃亡の緊迫感など、マーカスやエスカの体験が、ぴりぴりとこちらの皮膚にも伝わってくるような感覚が味わえます。数は少ないものの、食事のシーンの描写はどれも美味しそうなんです。

                また、この小説を寸分違わぬに日本語で翻訳してくれた猪熊葉子さんの力もすごい、と思います。


                <ワシ>と鹿の王


                この物語の根幹にある民族の対立や冒険譚は、上橋菜穂子さんも影響をうけている気がします。特に上橋さんの「鹿の王」では、国との対立と人同士の絆が描かれ、両方を読んでみると、共通点があるような気がします。おそらく、「第九軍団のワシ」は、上橋作品に影響を与えた作品であることが伺えます。

                「第九軍団のワシ」に描かれた支配者側と非支配者側との対立は、その違いを埋めるためにどうすればいいか、それを探す旅だったのかもしれません。それは普遍的なテーマとして、「鹿の王」に受け継がれている、そんな気がします。

                鹿の王文庫全4巻セット(角川文庫)

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                サトクリフ作品感想
                『ケルトの白馬』→
                『ローマとケルトの息子』→

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                昔の人の日常が伝わる、古典入門「ビギナーズ・クラシックス今昔物語集」

                2014.11.23 Sunday

                0

                  ビギナーズ・クラシックスとは


                  古典文学には興味はあるが、なかなか難しくて手を出せない…(;´Д`)
                  私を含め、そう思う人は多いのではないでしょうか。

                  そんな知りたい、でも面倒くさいと言う人にぴったりなのがこの「ビギナーズクラシックシリーズ」です。

                  至れり尽くせりの古典テキスト


                  このビギナーズクラシックは、現代訳、それもやや砕けた言い回しの文章と、原文の両方を掲載しているので、物語の概要を現代文で、古典の雰囲気を原文で楽しめます。

                  内容がわかってから原文を読むことで、古文への理解を深めることも可能です。それだけではなく、辞典の挿絵ように当時の道具や風俗の絵がついているので、物語の登場人物がどんな服装でどんな武器をもっていたのかなどが視覚ででわかるので、物語の理解が深まります。




                  「今は昔」の、人の暮らしが伝わる物語


                  今昔物語集の中には、芥川龍之介が「藪の中」や「羅生門」の元となった有名な物語があります。でも、やはり芥川作品と原文では内容は同じでも人物描写がだいぶ違っていて、この両方を読み比べても面白そうです。

                  また、紫式部の父親や、清少納言の夫など、有名人の身内のエピソードもでてきます。紫式部の父親は、地方官の任につくために漢詩をつくり、藤原道長に認められて見事職をゲットしています。

                  清少納言の夫は「枕草子」では、無骨で気の利かない体育会系男子として描かれますが、その剣の腕はすばらしく、盗賊たちを一人で切り倒したエピソードがあります。でも、平安時代では、そういうところも知性派の清少納言とは合わなかったのでしょうね…


                  蛇蔵さん、日本語教師の凪子先生の「日本人なら知っておきたい日本文学」では、今昔物語集のエピソードが漫画で描かれています。ギャグ満彩でおすすめです。



                  「蜻蛉日記をご一緒に」 田辺聖子
                  「日本人なら知っておきたい日本文学」

                  JUGEMテーマ:歴史

                  「小太郎の左腕」 和田 竜

                  2014.07.13 Sunday

                  0
                    戦国時代、神の手を持つ鉄砲の名手を巡る戦いを描いた和田竜さんの「小太郎の左腕」。なんというか、悲しい物語です。

                    小太郎の左腕



                    敵対する児玉家との戦で傷ついた戸沢家の猛将・林半右衛門。半右衛門と家臣三十郎は、風変わりな猟師(地鉄砲)の爺と少年・小太郎に助けられる。半右衛門は命を助けてくれた褒美を問うと、小太郎は城下で行われる鉄砲の大会に出たいという。

                    半右衛門は望み通り、鉄砲大会に出場させるも、最初は的にあてることも出来ない小太郎だったが、半右衛門は小太郎の特徴に気付き、特別仕様の鉄砲を与えると、神の如き射撃の腕を発揮することになり…


                    戦国時代の悲劇


                    一見、凡庸に見える主人公が、実は、秘めたる才能をもっているというのは、「のぼうの城」でもみられた設定ですね。小太郎は、あの戦国時代の鉄砲専門集団、雑賀衆の生き残りで、神の如きと表される鉄砲の腕をもっていますが、それは平時では発揮されることのない才能です。

                    しかし、「のぼうの城」が戦国時代の痛快さを描いたとしたら、「小太郎の左腕」は戦国時代の悲劇を描いているのではないでしょうか。

                    時代の名も無き人々を描いた歴史ドラマ「タイムスクープハンター」でも、民が戦に駆り出されたり、巻き込まれていく様子が描かれています。そこには痛快さもかっこよさもなく、ただただ苦痛が与えられるだけでした。

                    ただ、人並みになりたいと願い、鉄砲をとった小太郎。兵を救うため、小太郎に銃を取らせるために、最も嫌う卑怯なまねに手を染める半右衛門。

                    このふたりが出会い、小太郎が銃をとったことで、運命が大きく変わっていきます。

                    たとえ戦国時代の価値観が、現代とは違ったものだとしても、戦いに巻き込まれる人の悲しみは変わらないのでしょう。

                    ただ、それでもやはり、小太郎の左腕による鉄砲技の場面は素晴らしいのですけれど。


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                    和田竜作品感想


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                    「そんへえ・おおへえ―上海生活三十五年」 内山 完造

                    2014.04.17 Thursday

                    0

                      伝説の内山書店、その始まり


                      大正時代、上海でひとつの本屋が開業しました。夫の行商の留守に妻が内職がわりに勤しむための、小さな書店でした。

                      しかしそれが上海在住の日本人、魯迅をはじめとした中国人インテリなどが集まる一大サロン、有名な「内山書店」の始まりでした。

                      当時の中日文化交流のサロンとしての役割をになった内山書店、その創業者である内山完造氏の上海での出来事を綴ったのが「そんへえ・おおへえ―上海生活三十五年」です。内山書店創業のエピソードや氏が行なった広告手法、書店以外に手がけた日本語学校の創設など、当時の内山書店と、内山完造氏の体験談が書かれています。

                      そんへえ・おおへえ」とは、上海を現地の発音で聞き取ると、こう聞こえるのだとか。また、「おおへえ」とは、上海の下海地区を同じく現地発音読みしたもの。なんだか、レトロでノスタルジックで、どこか優しくなつかしい響きです。

                      内山完造氏が暮らした当時の上海は、きっとこの言葉「そんへえ・おおへえ」の音のように、おおらかだったのでしょうね。
                      旧仮名使いの古い言葉は、読みづらい部分もあるのですが、かえって古き良き時代への憧れが駆り立てられます。
                      岩波新書の特装版の装丁も美しく、レトロ上海好きには、手元に置いて楽しみたいと思える一冊です。


                      そんへえ・おおへえ―上海生活三十五年 (1950年) (岩波新書〈第16〉)

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                      詩人の金子光晴も内山完造にめんどうをみてもらっていたのだとか。

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